私の「アーサー王伝説」入門(5) ラフカディオ・ハーンのThomas Malory論 (1)へ (2)へ (3)へ (4)へ |
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アーサー王伝説の大成者、トーマス・マロリーの『アーサーの死』に対しラフカディオ・ハーンが絶賛しており、日本の学生に読むことを強く勧めています。 | ||
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ラフカディオ・ハーンのThomas Malory論 我々はトーマス・マロリー卿ついて何も知らない。エドワード・ストラチー卿や他の人もそれについて書いているけれど。彼は、その人物に関する限り、ただの幻である。 しかし、1470年にこの本を書いた紳士が誰であろうと、彼が、紳士であり、学者であり、英語散文の大家であることを認めるだろう。最初の偉大な散文のロマンスはあの陰気な紳士ジョン・マンデビル卿のTravelsであると申し上げた。ある程度、マロリーの文体は、マンデビルのそれを思い出させるかも知れない。しかし、マロリーは、マンデビルに比べ、遥かに力強く、もっと音楽的、もっと詩的、何より、もっと近代的である。 イギリスの散文の中で、この15世紀の文章ほど、読んで楽しい本はない。読むのに、中世英語の用語集や辞書の助けは必要がない。“truller”(娼婦?)といった馴染みのない単語も文章の前後から容易に理解できる。この本の魅力は、単に響きの良い、美しい英語の魅力だけではない。この本の大きな魅力は、それが表現しようとする理念(idea)にある。つまり、完全な騎士道の理念、それは、戦士の行動に、家臣(retainer)の行動に、指導者の行動に、友達の行動に現れる理念なのである。恋人や夫の行動についてはそれほど多くはないが、十分に汲み取れる。西洋や東洋の - 中世ヨーロッパや昔の日本のこれらすべての理念は、ある観点からは、大変相異があるものであるが、しかしながら、日本の学生がこの本をきっと楽しんで読むことができると思う。古いサムライの理念でこの国(日本)で意味するすべてのことは、この素晴らしい本で示された理念によって、イギリスでも表現されているからである。イギリスの騎士と日本の武士は、細部では、同じ義務を負うものではないが、基本的には同じ理念である。君たちがこの本を読めば、両者はある意味で、心の兄弟(ghostly brothers)と感じるだろう。安くて最上の版は、Macmillan Globe Libraryにある。Strachey編纂のもの。それは全員が蔵書すべき本の一つである。 これ以上お話する時間はないが、一つ付け加えると、今見るような形で、この本をあるのは、イギリス最初の印刷者、キャクストンCaxtonのセンスの良さのお陰である。彼の版本は、1485年、手稿が作られて15年後に現れた。この驚くべき本の出現と共に、イギリス中世ロマンスは終わりを告げた。それは先行するロマンスのどんなものより優れ、それを越えたり、匹敵するものを書くことは望めない。 --------------
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