私の「アーサー王伝説」入門(3) (1)へ (2)へ (4)へ (5)へ |
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そこには、武勇、忠誠、慈悲、愛情、嫉妬・・・といった人間の情念が素朴な形で表現されており、その中をnobleという価値観が通っているいるので、すがすがしい。 | ||
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テニスンの国王牧歌Idylls of the Kingに取り掛かる。 | ○ アーサー王からしばらく離れ、Ruth OzekiのA Tale for
the Time Beingを読んでいます。津波でカナダの海岸に流れ着いた、少女Naoの日記を作家Ruthが読んで行くのが主な流れのようですが、その筆法に嵌められて、どんどんと深みはいります。日本語が沢山出てきます。例えば、おたく、帰国子女、いじめ、過労死、フリーター、自殺・・・現代日本の風俗を巧みに織り込んであるので、身をつまされる思いをしながら読んでいます。ミステリー(だと思う)的迫力があります。付録には、道元や量子力学の解説もついているので、最後まで読ないとなんともいえませんが、とにかく面白い。この本は今年のブッカー賞の最終候補となっています。(2013・10・13)
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Lancelyn Green の本も読む |
○ DedicationとThe Coming of Athur(518行)を読み終えた。グイネヴィアを嫁に出すまでのプロセスで、アーサー王の出自をあぶりだしていく手法は凄い。多少のわからないところがあってっても、スキップしても十分楽しめる。The marriage of Geraint に入る。これはマロリーにはない話、
この間、平川祐弘『アーサー・ウェイリー 「源氏物語」の翻訳者』やJohn Le CarreのA Most Wanted Manなど面白い本を沢山読んだ。
前半、魔術師マリーンの支配力が大きすぎ、アーサー王の影が薄いのには気になったそのうち調子が出てくる。随所に活躍する乙女(damsel)をはじめ女性が大きな位置を閉めていることに改めて感じた。 マロリーにない話ではGeraidとEniの物語、GawainとRagnellの物語が特に面白かった。(後者については別に書きます。) 第四部では、聖杯探求のことがひとまとめにしてあって、わかりやすかった。ファンタジーの色合いの濃い聖杯の話は日本人にはちょっとピンとこないのだが、それを得るには「心の純粋さ」が鍵となっており、ランスロットはグイネヴィアとの関係について、心に引っかかるものがあって、その資格を失っている。二人の恋はやがて王国崩壊へと繋がる。その壮絶な終局は「アーサー王物語」の読みどころに一つだが、グリーンはうまくまとめている。 |
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2015/10/1 「ガーウエインとラグネル」(その一)
R.L.グリーンの『アーサー王と円卓の騎士たち』第6章の紹介。
アーサー王の宮廷でクリスマスの宴会が開かれている。そこへ美しい乙女(damsel)が駆け込んできて、夫が拉致されてしまったと王に救助を求める。ガーウエインを始め、王が一人で行くのことに反対する中、アーサー王が単身でその救済に乗り出す。乙女に導かれ目的地に着くと拉致した騎士(グローマ・ソマー・ジョール)が待ち構えて、その余りにも勇壮な姿に、馬もアーサー王も脅えてしまう。これはモルガン・ル・フェ(アーサーの異父の姉、魔女)の企んだもので、乙女も騎士もその支配下にあったのである。アーサーは勝負にあえなく屈して、騎士に慈悲を乞うことになった。騎士は許す条件として、「この世において女性が最も欲しいものは何か?」という謎の答えを、多くの女性に聴いて持って一年後に来い。正解であれば、許すが、さもなくば首を刎ねるという。アーサー王はその条件を飲み、帰って、その経過をガーウエインに話すと、彼も謎解きに協力しようと言う。
一年が過ぎた。
アーサー王とガーウエインは謎の答えを書いた2冊のノートを携え、グローマ・ソマー・ジョールの所へ向かう。その途中、世にも醜い婦人に出合う。彼女が言うには、二人の用件を知っているが、彼らの持参した謎の答えはは正解ではないので、アーサーは殺されるだろ。自分は答えを知っていて、アーサーが自分と結婚してくれれば、その答えを教えようと言う。アーサー王が申し出を断り行こうとする。ところガーウエインが、自分が代わりに結婚を約束をしたらどうかと言うと、婦人は喜んで承知して答えを教えてくれる。
目的地に着いて、アーサー王は二人を森に残し、単身、例の騎士に会いに行き、謎の答えをノートを読んで披露。「華麗、国、綺麗な衣裳、歓楽、愛、贅沢、怠惰・・・・」と読み上げるが、騎士は、その中には正解はない、これから首を刎ねると言った所で、途中出合った醜い婦人の教えてくれた答えを言う。***答えはネタバレとなるので省略***
それが正解だった。アーサー王は、自分の命は助かったが、ガーウエインが自分のために大きな悲運を抱えることなったことを悔やみつつ、その花嫁となる醜い婦人(ラグネル)を伴い帰国の途につく。
城に帰り騎士たちに冒険の経過を話すと共に、立派な結婚式の準備を命じる。
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2015/10 /3 「ガーウエインとラグネル」(その二)
R.L.グリーンの『アーサー王と円卓の騎士たち』第6章の紹介。
ガーウェインが花嫁を連れて帰るということで、喝采で迎えようと通りに出た人たちもその醜い女性を見たとたん沈黙へと変わり、ランスロットほか仲間の騎士、婦人たちもお祝いの言葉が喉につかえて出ないほどであった。しかし、ガーウェインは彼女を世界一美しい花嫁として接し、婚礼の儀式が行われる。
そして祝宴の席では、花嫁は涎を垂らしながらガツガツと飲み食いするので、同席者全員の同情がガーウェインに注がれる。
そして初夜を迎える。「いとし夫、愛するガーウェインよ。キスして頂戴。今や私たちは、死が二人を分かつまで夫婦なんだから」と言い、ケタケタと笑う。ガーウェインは青ざめた、苦悩に満ちた顔を彼女に近づけ、唇にキッスする。その後彼はうめき声を上げ離れ、壁に寄りかかりこらえきれず肩を震わせて泣くのである。
と、「私の愛しいガーウェイン!」という声がするので振り向くと、そこには、かってみたことのないほどの愛らしい乙女がいたのである。彼は驚いて、自分の妻ラグネルはどこにいるのだと言うと、乙女は、自分がラグネルだ。魔法が解けて元の姿になったのだという。
しかし、解けたのは半分だけで、昼間美しい姿に戻るか、夜戻るか、いずれかである。昼間美しい姿だと宮廷の人たちに愛されて楽しいが、夜におぞましい姿で過さなくてはならない。逆だと昼間の苦労は夜に甘美なものとなって癒されることになるが、どちらかを選んでくれと言う。
***以下ガーウェインの選択はネタバレなるので省略***
全ての魔法は解け、夜昼元の美しい姿となったラグネルとの幸せな結構生活が展らけてゆく。だが、このラグネルは7年後いなくなってしまう。(以下略)
ガーウエインは円卓の騎士の中でランスロットと双璧をなす人物で、頭韻詩Sir Gawain and the Green Knightでも有名ですが、その骨太で愚直な性格には高貴さが漂い、人の心を掴みます。魔法が解けて元の美しい姿に帰ったラグネルがガーウェインに腕の中で泣きながら言う:There was never knight in all this world so noble and so unselfish as you!
この話は、岩波文庫の『中世騎士物語』ブルフィンチ作野上弥生子訳の中でも再話されていますが、グリーンと比べ精彩を欠き、内容も少し異なっています。答えを知りたい方は、グリーンの本を是非お読みください。この章は子供だけに読ますのは惜しいので、紹介した次第です。
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キャクストン |
『キャクストン印刷の謎』ロッテ・ヘリンガ著 高宮利行訳、雄松堂 1991 (この本は、シェイクスピアを読む会の仲間の四竃信行さんからお借りして読んだ。四竃さんは午後から始まる会読の前に、神保町によって、面白い本を買ってこられる。 私はもう本を買うことを極力抑えているので、四竃さんの買ってこられた本を見るのが楽しみの一つとなっている。) 2022年3月27日追記 この本は、どうしても、手元に置いておきたくて、昨年夏、ネットで購入した。 手に入れて満足して、再読していないが、時々、手にして、豊富な図版を眺めている。(右図は巻頭のカラー版4頁の内の2頁) |
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八行連詩 アーサーの死 |
『八行連詩 アーサーの死』清水阿や 訳 ドルファンプレス 1985 アーサー王伝説のファンには、最初から終わりまで、親しみやすく、面白い。 十 一さん:学校図書除籍本ならヤフオクにもある。
宮垣弘 :松村先生『ガウェインと緑の騎士』は中世の英語で難しいですね。私は現代英語の対訳本で目を通しました。
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この前紹介した Le Morte Arthur, A Romance in Stanzas of Eight Lines とても歯の立つような英文ではありませんが、NotesとGlossaryが付いているので、清水阿やさんの翻訳と相まって、解読できるはずです。 |
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