私の「アーサー王伝説」入門(2)   
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   アーサー王の物語を一言で表現すれば、「Noblle高貴とはなにか」を示す物語だと思う。  

  
 マロリーのLe Morte D'Arthur
半分読み終える
   マロリーのLe Morte D'Arthur第6巻全17章は、ランスロットの活躍について描く。強く、気高い騎士の中でも最高の騎the flower of all knightsで、女性の憧れの的。ランスロットが結婚しない理由を明らかにしている。女難、剣難、数々のアドベンチャーの中で、彼は騎士道を発揮する。(2013・07・29)

   漱石はマロリーの『アーサー王の死』を3種類持っていた。さらに、14世紀末の韻文物語『アーサー王の死』も読んだ可能性がある。江藤淳『漱石とアーサー王伝説』(1975東大出版会)88頁、109頁による。

   Tennyson The Lady of Shalott( illust. Geneyiere Cote)Idylls of the King((Signet Classics)が到着。読むのは何ヶ月か先のこと。後者の表紙はフランスのタピストリー「貴婦人と一角獣」である。なんとも心憎い選択ではないか(2013・08・02)

   マロリーのLe Morte D'Arthur第7巻全35章を読み終えた。ガレスは出自を隠してアーサ王の厨房で1年間過ごす。乙女ライネットの姉の救済への旅へと付き従うのであるが、厨房にいたという理由から、乙女からさげすまされ、幾多の武勲を立てても、いつも口汚くののしられる。この繰り返しが面白い。ついに姉のライオネスを救い、やがては、結ばれ、壮大な結婚式をあげるのだが、その過程は波乱万丈で読み飽きない。ガレスという男は意識的に貴種流離譚を演じているのだが、清清しい。ライネット、ライオネスという二人の女性も神秘的で魅力がある。贅沢な夏の読み物だった。(2013・08・05)

   アーサー王伝説がそうさせているのか?「貴婦人と一角獣展」の影響か?よくわからないが、ヨーロッパ中世に強く惹かれるようになった。ホイジンガ『中世の秋』など、書架には探せば色々あるはず。英語世界に限っても、洋々たる世界が開ける。いまさら中英語の勉強も出来ない?(2013・08・08)

    マロリーのLe Morte D'Arthur第8巻全41章読了。騎士道精神に馴染んできた。この巻はトリストラムとイソードの物語が中心。好き合った同士が、惚れ薬を一緒に飲むとどうなるか?美しきイソードの外に、白い手のイソートが出てきて、トリストラムは後者と結婚してしまう。成り行きは次巻以降へ。(2013・08・10)

   よくぞこんな面白い物語を作り出したものだとマロリーの腕前に感心してしまう。予期しない出来事にあえて身をさらす-adventure-の連続なのである。沢山の先行作品を総大成したからこんな豊かさが生まれたのであろう。登場人物の主役は高潔な騎士。覚え切れないほど並みの騎士、悪い騎士、王たち。女性の活躍も目覚しい。女性は妖術を使えるものが多く、影で男たちを動かしている。騎士道の精神卑怯なことはしない、約束は守る、相手が慈悲を請えば許す、忠誠、特に自分のLadyへは誠実さは信じられないほど。彼女たちの拒絶に会うと騎士たちは狂ってしまう。なんとも清清しい。(2012・08・11)

   アイルランドのヴォーカル・グループのCeltic Womanの女性たちの姿に、グイネヴィア、イソード、その他乙女たちの姿が重なる。彼女たちは、中世貴婦人たちの末裔に相違いない。ただし、ぽっちゃりと、太めなのが気に掛かる。先の「貴婦人と一角獣展」の貴婦人や、他のタピストリーや当時の絵からわかることは、中世の貴婦人たちは、すんなり、細めで、楚々とした姿をしている

   Le Morte D'Arthur第9巻の冒頭に、立派な服装だが、体にあっていない不恰好な姿の青年がアーサー王のところへ現れる。ケイ卿は早速彼にLa Cote Male Taile(不恰好なコートを着た男)とあだ名をつけた。同じ頃、現れた乙女の冒険の旅へ同行するのだが、絶えず、乙女から、さげすまれ罵倒される。これは、第7巻の、ケイ卿にBeaumains(美しい手)とあだ名を付けられたガレスが、乙女に罵倒され続けられたパターンと同じである。その耐えている姿が感動を呼ぶ。

   第9巻には、トリストラムが美しきイソードの愛を失ったと思い、悲しみのあまり、気が狂う話が出てくる。同様のことが、後に、ランスロットにも起きる。(第12巻?) トリストラムが亡くなったという噂が伝わったとき、美しきイソードも自殺を計るな二人の話はまだまだ続く。二人が再会したとき、イソードがすぐ彼だとわからないところが、なんとも悲しい。小犬が一役買う。(20章)

   Le Morte D'Arthur第9巻全43章読了。Penguinvolume1 467頁、マロリーを半分読んだことになる。波乱万丈の中世騎士の世界を満喫でき、文句なしに面白い。Caxton版(1485年)の、シンタクスも単語もそのまま(ただし、スペリングは近代化)の編集なのが良い。シェイクスピアより100年前以上前の文章が、意外に容易に読めるのが愉快。中世世界への格好の入門になり、この本に出会ったことは本当に幸運であった。漱石がのめりこんだのもわかるこれから後半に移る。(2013・8・12)

   日本語を教えている英人フィリップさんにとって『アーサー王』は、自分が最も感激した2冊の本の一冊。「すごく感動して、人生は色々なことが起きるものだ、そして悲しい、と感じた。」と言う。何時読んだのかと聞くと8歳の時だったと言う。彼は大学のとき、読み直している。(2013・8.13)

   井村君江訳『アーサー王物語』(筑摩書房 5冊本)を図書館で借りてきて、マロリーのわからない箇所があるとこれを参照している。この本は私の読んでいる、ペンギン版を底本としている上に、一語一句ゆるがせにしない翻訳なので、辞書代わりに利用でき重宝。 マロリーの原文を見ずに、いきなり翻訳を読む読者には、やや、稚拙に見えるかもしれないが、原文の味を良く伝えていて、頭が下がる。

   リチャード・バーバー著高宮利行訳の『アーサー王 その歴史と伝説』の巻末年表によると、マロリーの前に、80ほどの先行作品が載っている。吟遊詩人たちによって伝えられた物語の一部が写本の形で残っていたのである。マロリー以降現在に至るまで、数え切れない再話、創作がなされているかと思うと気が遠くなる。そんな中で、高宮利行『アーサー王伝説万華鏡』の中には、テニスンの「シャロットの女」の元になっている、「アストラットの女」は、実は「アスコラットの乙女」ではないか、つまり、tとcの差を追究したプロセスが明らかにされている。巨視的にも、微視的にも、気の遠くなるような世界に私は迷い込んでいる。

   The Illustrated Encyclopaedia of Arthurian Legends by Ronan Coghlanがイギリスより到着。翻訳本と異なり、図版が全部カラーで大きいものも多い。入手済みのA Dictionary of Medieval Heroesとあわせて人名レファレンスこれで十分。(2013・08・15)

   Le Morte D'Arthur第10巻は88章もあって、この巻だけで、全体の5分の1に当たる。5冊本の井村君江訳では1冊分である。騎士たちは、相変わらず、joust(馬上槍試合)tournament(槍試合の大会)などアドベンチャーを求めての遍歴が続く。マロリーの本の半分は、騎士たちの戦いのシーンといってよい。よくも飽きずに書くものだと思うほどだが、読む方も不思議と飽きない。貴婦人への愛の話が上手く織り込まれているからかもしれない。中世の騎士たちも、ホイジンガの言う「ホモ・ルーデンス(遊びの人)」なのだろう。命がけで戦っているようで、それが遊びなので、一種の清清しさを感じさせるのである。(2013・8・16)

   毎日、マロリーを読んでいると、アーサー王(マロリー)病にかかって、頭がおかしくなる。馬上一騎打ちにしろ、その大会にしろ、毎ページこれでもかこれでもかと出てくると出てくると、いささかうんざりするのだが、離れることが出来ない。一種の中毒症状である。大スターともいえるラースロットにトリストラが文句なしにストーリを引っ張っているのだが、無数の騎士たちが、絶えず死闘を繰り返す異常な世界なのだが、皆生き生きとしている。女性も面白いし、悪役マーク王が異彩を放つ。彼なくしては主役たちも引き立たない。マーク王がトリストラムを目の敵にして、次々と姦計を繰り出すのも、自分の妻イソードとトリストラムとの関係への嫉妬だと自ら言っているが(10-51)彼の武勇への嫉妬でもある。これほど騎士道に反して卑怯な行動にでる人物も珍しい。(2013・8・20)

  マロリーを読んだ後はテニスンを読む計画だったのだが、その前に、Sir Gawain and the Green Knightを読まねばと思うようになった。これは、マロリーよりもさらに古い14世紀のもので、かつ、韻文なので、マロリーのようなわけには行かない。トールキンの翻訳をはじめ色々な現代訳あるので迷うことしきり。

   マロリーのLe Morte D'Arthur第10巻全88章を読み終えた。ここまでくると、マロリー読みも日常の生活にビルトインされて、マンネリに近くなるが、相変わらずの、変化の連続で飽きない。この巻は、トリストラムとイソード(トリスタンとイゾルテ)が多く登場するが、イソードを恋するパロミデスが目立つ。彼は異教徒(サラセン人)であるが、その武力は抜群。いつかはトリストラムと一騎打ちをすることになっているのだが、この巻では実現しない。ランスロットやトリストラムの騎士振りを光らせるために、多くの人々が配置されている感じ。(2013・8・22)

   『ユリイカ 19919月号 特集:アーサー王伝説』入手。和書は極力買わない方針だが、これにはテニスンの「シャロットの女」の坪内逍遥訳があるので欲しかった。20年以上も前の雑誌が新品同様の形で届いた。(2013・8・23)

 

マロリーのModern Libraryの一巻本


























 シェイクスピアと比べる    ここまで読んできたマロリーのLe Morte D'Arthurをシェイクスピアと比べると前者は、文章が易しく読みやすい。語彙が少なく、古語はグロッサリーが付いているうえ、すぐに馴れる。構文も単純で、現代英語と違うところがかなりあるが、これもすぐに馴れる。登場人物は恐らく100人をくだらないと思うが、皆、生き生きと立ち上がってくる。細かな感情表現や状況描写をせず、読者の想像に委ねているかも知れない。ラーンスロット、トリストラムといった、大スターの胸をすくような活躍をはじめ、個性ある騎士たち、貴婦人、乙女がうまく登場する。短編の積み重ねのように話は進むが、その都度、清清しい感動を齎す。価値観は平明。編集者のCaxtonの序文(1485年)を引用すると、Wherein they shall find many joyous and pleasant histories, and noble and renowned acts of humanity, gentleness, and chivalry. For herein may be seen noble chivalry, courtesy, humanity, friendliness, hardiness, love, friendship, cowardice, murder, hate, virtue, and sin. Do after the good and leave the evil, and it shall bring you to good fame and renown.つまり、望ましい徳目と避けるべき悪徳が示されていて、素直に賛同できる。

  マロリーのアーサー王の世界から見れば、シェイクスピアは、複雑で、難解で、その価値観があいまいで、読後感は、清清しいとは言いがたい。中世から、近世、エリザベス朝へと一大飛躍をする中で、こんな複雑な演劇が必要だったのかもしれないが、観衆はそれなりに熱中するものがあったのであろう。ちょっと不思議な気がする。

   奥深いシェイクスピアの森を出て、アーサー王物語の森に入ってみると、シェイクスピアの森に劣らぬ、深い、大きな森が広がっていていた。外にも沢山の森があるのだろう。英国の文学世界は広い。(2013・8・23)

 
     
 マロりーの
Le Morte D'Arthu
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    Le Morte D'Arthur第11巻はラーンスロットには大切な巻。魔術とはいえ、ペレス王の娘エレーンと子ガラハッドをなし、さらにそのエレーンが、グウィネヴィアのいる宮殿へやってきて、ラーンスロットとまみえるシーンがある。グウィネヴィアの意志、その裏を掻く、エレーン側の詐術。まれに見る緊張の後、ラーンスロットは気が狂う。ラーンスロットにははじめから二心はないのだが・・・・狂気の2年間とその回復。劇的な巻であった。(2013・8・27)

   Knight  A Noble Guide for Young Squires  (子供向けの騎士入門書)、ブルフィンチ作・野上弥生子訳『中世騎士物語』(岩波文庫)入手。(2013・8・28)

   Knight  A Noble Guide for Young Squires  は子供向けの、いわゆる「飛び出す絵本」なのだが、騎士についての基本的知識を得るのは便利な好著である。

    Mark TwainもマロリーのLe Morte D'Arthurに嵌まったことを知った。1884年12月 巡回講演旅行中、同道のG.W.Cableに薦められ、手にして、1日か2日で読み上げたそうである。その5年後、A Connecticut Yankee in King Arthurが生まれる。テキストは既に手元にあるのだが、読むのは大分先になりそう。

   Le Morte D'Arthur第12巻全16章読了。この巻は、ラースロットの狂気からの回復、トリストラムとパロミデスとの和解、改宗を含み、前巻に劣らず感動的。(2013・8・30)

   King Arthur  Dark Age Warrior and Mythic Hero by ohn Matthew イギリスから来る。予想通り邦訳本より数等素晴らしい。2013・8・30)

   Simon Armitage訳のSir Gawain and the Green Knight届く。立派な造本で満足。(2013・9・6)

   色々とやるべきことができて、マロリー読みのスピードが少し落ちている。Le Morte D'Arthur第13巻全20章はガラハッドの華麗なデビュウ、円卓の騎士たちが、聖杯探求へと向う大きな屈折点となる。Le Morte D'Arthur第14巻全10章はパーシヴァルにスポットが当たる。蛇やライオン、美女(実は魔王)など出てきて、いろんな試練に遭遇するが、その純潔をかろうじて保つ。13巻あたりから、物語の調子に大きな変化があるように思える。相変わらず、adventures(予期せぬ出来事、冒険・・・多義的に使われる)が頻繁に起きるが、その中身が、夢、不思議な老人、死なない人、魔女、怪獣・・・と超現実的なも、他界との交差が増えているようで、また、Jesu Christという言葉も次第に多くなり、宗教色を強めている。(2013・9・8)
  マロリーのLe Morte D'Arthur第15巻はラースロットが、第16巻はボースが中心の、聖杯探求の旅の過程を語る。この頃になると、聖杯探求の資格のあるものは、ガラハッド、パーシヴァル、ボースの3人に絞られ、他の騎士の行動は徒労であることがわかる。騎士たちは、盛んに夢をみて、隠者や僧に夢解きを頼んでいる。美しい夫人や乙女も適当に出てきて興味を繋ぐ。聖杯探求とはそもそも何かが気になり、ふと、村上春樹『羊をめぐる冒険』(1982)を思い出した。調べてみると、1983年1月の『新潮』で四方田犬彦が両者の関連に触れていることがわかった。(加藤典洋編『村上春樹 イエローページ』による)その経路は、コンラッドの『闇の力』コッポラの『地獄の黙示録』へて、村上に伝わっているようだが、これは先に読んだ吉岡栄一『村上春樹とイギリス ハルキ、オーウェル、コンラッド』で聖杯伝説に触れていたか思い出せない。『ユリイカ 特集アーサー王伝説』(1881)高橋宣也「聖杯伝説の現代的変容」も聖杯の影響を追っている。(2013・9・16)

  上の高橋宣也の論文の中に、アラビヤのロレンスも砂漠に『アーサー王の死』を携帯していたとある。

  Le Morte D'Arthur第17巻は聖杯探求の達成である。ガラバッド、パーシヴァル、ボーアの三人。ガラバッドの手に入る。全般に神秘的過ぎて、聖杯そのものに感情移入できない読者には、それほど大きな感動を呼ばない。ガラバッド、パーシヴァルが天に召され、ボースとランスロットが、アーサー王の宮廷に戻る。ここまでLe Morte D'Arthurの5分の4に当たる。(2013・9・19)

   偶然、古本屋の店先の足元に『八行連詩 アーサー王の死 (全訳)』清水阿や訳が目に止まって買った。(2013・9・20)

   Le Morte D'Arthur第1巻全25章 聖杯探求も終わり、円卓の騎士たちは、アーサー王の宮廷に戻り、ラーンスロットはグイネヴィア妃の下に通うようになる。ただ、二人の仲が噂にならないように、ラースロットは宮廷の夫人や乙女の世話を焼く。これが逆にグイネヴィア怒りを買い、宮廷追放となる。食卓に毒林檎が供されたことの罪で、告訴された妃を窮地から助けるのもラースロット。騎馬槍試合参加の途上、アストラットの乙女と出会いとその死がある。一章毎に劇的な場面が出てきて、全巻の中でも最も盛り上がる巻ではないかと思う。後続の文芸作品、絵画、音楽に大きな影響を与える。漱石もその一人であった、(2013・9・23)

    Sir Thomas MaloryLe Morte D'ArthurCaxton版1485をモダン・スペリングにした、Penguin Classics2巻本1000頁)を読み終えた。2ヶ月半掛かったが、終始面白く、深い感動を伴った。読後感を一口で言えば、この本は、気高さnobleとは何か、永遠のloveとは何かを、壮大な舞台に、多くの騎士や婦人を登場させて示した大河小説だと思う。この作品の前後には英仏独羅・・・さまざま言語の膨大な作品群があるのだが、マロリーに出会ったのは、幸運だと思う。当初、この後、テニスンによるものを読む予定だったが、方針を変え、Sir Gawain and the Green Knightを読むことにする。これはマロリーよりさらに100年古いので。現代英語訳で読むことにする。 (2013.9.29)

   暗黒時代といわれる中世は、実は絢爛たる英雄的人物たちが活躍した時代で、これらの文化を引き継いだ近代西欧の強さの秘密もこの本によって感じることが出来る。子供の頃から、この物語に接する子供たちは幸せだと思う.

   マロリーを読んで思ったことあれこれ。
   ☆素朴な文体、限られた語彙、古譚の趣が楽しめた。
  ☆シェイクスピアの100年も前の文章が、シェイクスピアよりはるかに易しく読めるのは驚いた。逆に言えば、シェイクスピアはややこしい。
   ☆感情の表現も、怒る(wroth)いやだ。気が進まない(lorth価値観がはっきりしている。

   21巻9章 ランスロットがグイネヴィアのもとにつれてこられ、そして、彼女は婦人達に向って言う。「この方と私のために、今回のすべての戦は起こったのです。世界中で最も気高い騎士たちの死もそうです。私たちが愛し合ったばかりに、わが気高い殿は殺されたのです。・・・・」

 

 

 
 Sir Gawain and the Green Knight    Sir Gawain and the Green Knightは14世紀無名の詩人による2530行の頭韻詩です。中英語は歯が立たないので、Simon Armitageの対訳本で読んでいます。現代語訳ですが、頭韻詩として訳されていて、原作の雰囲気を伝えており、私も頭韻詩とはどんなものかをこの本ではじめて知りました。同じ行に同じ頭韻の語を集めてくるので、口調が良いのですが、その分、難しい語彙が使われます。マロリーがほとんど辞書を引かずに読めたのとは対照的です。また、マロリーの素朴な味わいと比べ、その100年も前の作品なのに繊細で、洗練されています。
J.R.R.Tolkien
の訳も手元に置いてますが、これも頭韻を用いた訳で、韻文訳と言っていいものです。難しい言葉がでてくので、山本史郎訳を辞書代わりに使っています。
(2013・10.4)

  城主が狩に出た留守に、城主の夫人がガウエインに迫ってくる。その夫人の誘惑の仕方とガウエインがいかにそれを切り抜けるかが山場の一つで面白い。この狩の場と誘惑の場が3度繰り返され、盛り上がりつつ、最終ラウンドへと向う。Sir Gawain and the Green Knightを私はSimon Armitage対訳本で読んだのであるがそれは頭韻詩の形式を維持するために、私の知らない言葉が沢山出てきて、難しかっが、トールキンの現代語訳とその和訳を注釈書代わりに使ったので、筋や、表現のあやなども十分楽しむことが出来た。中英語の原文を一字一句、中英語の辞書を使って読むともっと面白いと思うが、それは将来の課題とした。ただ、原文をちらちら眺めながら読み進むと、実はトールキン訳の方が原文に近い上、はるかに読みやすいのではないかと思った。14世紀の末、こんな洗練された文学が英国にあったとは驚きだった。(2013・10・7)
  【安藤聡さんから】Sir Gawainの文体については寡聞にして詳しく知りませんが、この時代の英語の特徴にアングロ・サクソン系とノルマン・フランス系の類義語を併置するという手法があったと思います。見慣れない語はその前後の語がヒントになる場合が多いようです。(2013・10・7)

 

 
 The Lady of Shalott     アーサー王伝説は、これから、テニスンのものに移ります。手始めに、The Lady of Shalottを読みました。余りのも短いので、これがかの有名な詩かとちょっと肩透かしを食らった感じでしたが、何度も繰り返し読むうちに、心に沁みてきました。岩波文庫の『対訳テニスン詩集』にもおさめられており、『ユリイカ ー 特集アーサー王伝説』には坪内逍遥訳とこの詩に纏わる沢山の絵画が高宮利行の解説で出ています。

   木下信一さんから】葛生千夏の「The Lady of Shalott」は聴かれました? テニスンの詩に音楽をつけて、彼女の強いアルトが素晴らしい曲です。高宮先生も推薦されています。
   三村明さんから】Loreena McKennittというカナダのシンガーが、この詩に曲をつけて歌っていますね。

  Tennyson The Lady of Shalott( illust. Geneyiere Cote)Idylls of the King((Signet Classics)が到着。読むのは何ヶ月か先のこと。後者の表紙はフランスのタピストリー「貴婦人と一角獣」である。なんとも心憎い選択ではないかThe Visit (1991)に収められています。

   木下 信一さん】 http://www.amazon.co.jp/dp/B000002GBK/ http://www.amazon.co.jp/dp/B00005F2T0/ アーサー王伝説の音楽といえば、この二枚を外すわけにはゆかない。お奨めです(^^)
   三村 さん】 懐かしのRick Wakeman!息子はClive Nolanと組んでJabberwockyなるアルバムを出してますね。(Rickはナレーターで出演)  
   ..三村 さん】Henry PurcellにはKing Arthurというオペラ()がありましたね
〇【
.木下 信一さん】 DVDで持っています>パーセルのオペラ。ただ、演出が気に入らなくて、あまり見ていません。あと、アルベニスのオペラで「マーリン」があります。こちらも持ってるだけ