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アマリリス



 全体のあらすじ

桃田さんと赤井くんは旅行雑誌編集部の同僚。しかし実家の花屋を継ぐことに決めた桃田さんは、皆にアマリリスの鉢植えを贈って会社をやめる。
互いのことがかなり気になっている二人だが、なかなか素直になれず気持ちはすれ違ってばかり…

 第11話のあらすじ (「ヤングユー」2002年3月号掲載)

結婚式のフラワーアレンジメントをいくつかこなし、軌道に乗った感のある桃田の店。
仕事が一段落ついたある夜、桃田はひとり缶ウーロン茶を手にちかくの公園へ。会社での飲み会の様子を思い出しながらほっと一息つく。
そのころ当の編集部員たちは飲み会の真っ最中、酒の席で怪談ばかりはじめる桃田の話に花が咲いていた。
いっぽう、公園で独り言を続ける桃田に一人の男が話しかけてくる。



「アマリリス」については2巻が出てからまとめようと思っていたのですが、たまたま今月号にちょっとひっかかるところがあったので、少しだけ書いておきます。

どこかというと、ラストのひとコマ。「一番のん気なのは赤井であった」というモノローグ?があるのですが。
こりゃなんなんだ、というわけです。
もちろんこういうのはマンガではよくあることで、たとえば「ちびまる子ちゃん」「動物のお医者さん」のようなタイプのマンガは、こういう「神のつっこみ」(まる子の場合は大人になったさくらももこととることもできますが)によってストーリーは何倍も面白くなったりする。
しかし岩館真理子がこういうことをあっさりとやってのけるなんて、かなりの驚きでした。

最もわかりやすい岩館作品の特徴のひとつとは、「ふつうにやればいいものを、なぜかヘンなことをしてしまう」登場人物たちでしょう。
一般的(?)にこれは「ギャグをやっている」「ギャグシーン」と受け止められがちですが、私はそのように考えたことは一度もありません。
岩館真理子の作品に出てくる人たちは「ああいう世界に住んでいる」のであって、なにも特別なことをしているわけではないのです。だからこそ作品全体に、なんともいえない愛らしさが生まれるのです。
よって「なんだこいつは」と判断を下すのは外側の世界(読者)だけでいいのであって、決して話の中につっこみを入れる人がいてはいけない。ボケに対するつっこみに限らず、作中人物の言動に対するあらゆる説明・意見は、岩館作品においては禁句だと思うのです。
もちろんこれまでに前例がなかったわけではないのですが(たとえば「冷蔵庫に〜」などでは説明調の文章による進行が結構みられます)、今月号のそれはあまりにも唐突に描き手の存在を示唆するものだったので、ちょっとびっくりしてしまいました。
もっとも、最後のコマを落ち着かせるためになんとなく入れてみただけなのかもしれませんが…

「アマリリス」に対してはちょっと違和感があると前に書いたことがあるのですが、それはこういうところに起因してるんじゃないかなとふと思ったり。作品と描き手の距離感を如実に感じてしまうというか。もちろんそのこと自体悪いこととはいえないのですが、少なくとも今の時点での岩館真理子は、それをオモテに出すことがプラスになるタイプではないでしょう。
あと今月号で言うならば、太一くんがアニメの話をしてるときの手書き文字「話題はアニメ」とか、次のページでの「また話題は怪談へ」など、いわゆるダメ押しがいちいち入る。つい入れたくなってしまうのかもしれないけど、これまでの岩館真理子ってこういうとこの不親切さがウリ、みたいなところが少なからずあったので、いまいちピンとこないのです。
近年でも他の作品ではそれほど目立たず、なぜか「アマリリス」だけそういうのに走ってるような気がする。「コメディ」というのをとくに意識してるんでしょうか。



(02/02/17)



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