The Fourth Day : October 12, 1988

昨夜は日暮れとともにみな床につく。夕食後までなんとも無かったのに、夜半から頭痛と吐き気、お腹の調子まで悪くなった。食べ過ぎ?緊張のしすぎ?それも高山病?

0:30 ガイドに起こされる。茶とビスケットを用意してくれるがのどを通らない。気分が悪い。
Jimは体調が悪く頂上へは登らないという。オレよりずっと調子がよさそうだが・・・。
アスピリンを飲み、何とか体をだまして登ることにする。ここまできたら意地だ。

1:20 Start。星はきれいだが、すごく寒い。日本からスキーウェアを持ってきて着込んでいるのだが、まだ寒い。こういうときに限って、温度計はジャマになると思って小屋に置いてきた。
ガイドと2人で登る。年寄りに追い越される。こりゃ相当まいっているかな。

3:30 半分までやってきて、岩場で休憩。座るとこのまま寝てしまいそうだ。
後半、登りがきつくなり足場も悪くなる。すぐそこに頂上が見えているのに、全然近づかない。ジグザグとした登山道を曲がるたびに立ち止まる。頭はボーとして半分寝ているようだ。
夜明け前、寒さが一段と増す。つま先、頭がしびれてくる。

5:30 東の空が赤みを帯びてきた。流れ星がひとつ。星を下に見て歩くのもいいもんだ。
普通、頂上が近くなると歩速が早まるものだが、5,000mをこえるといくら頂上が見えていてもかけって登ることができない。
5:45 尾根たどり着き、クレータを見下ろす場所に出る。日が出るまであと数分ある。追いつ追われつしてきた夫婦連れもぐったりとして言葉も無い。
じっといては寒くてたまらない。かといって一歩動くだけで息切れしてしまう。

6:00 Gillmans Point 5685M 到達。
大きな岩の上に旗があるだけ。やっとたどり着いた。気温は‐10℃くらいか。
UHURU PEAKまで行きたかったのだが、この体調では無理。ガイドに止められる。立つこともできないんだから。
ここで記念写真を撮っていこう。一人で来ている元気なおばあさんがいる。ひょうひょうと歩き、山慣れしている様子。
日があたりはじめると少し暖かくなる。休めば体調が良くなるかと思っていたが、どうにもならない。ガイドに下ろうと言われても、名残惜しい。

6:30 下りはじめる。時折振り返りながら恨めしく見上げる。
道自体は名の苦労も無いところなのに、何であんなに苦しかったのだろうか。高山病なんてどうって子と無いと思っていたが体調が良くなきゃどうにもならない。先週の疲れ、寝不足、緊張が重なってこんな結果になってしまったのか。

8:20 小屋に着くなり、ベッドに転がり込む。ジャケットをかけただけで眠りこむ。人と話すこともできない。ガイドにはポーターの少年を一人残しておくように言って、先に行かせる。
9:50 少年に起こされる。少しの睡眠をとるだけで気分が良くなる。
夜中に登るなんてことを誰が考えついたのか。もう一度登りたいが、ここには水も食料ももうない。

10:05 Kibo Hut発。昨日雪の中を歩いた道を戻っていく。後ろ髪を引かれる思いで・・・。
風が強くて日差しがあっても寒い。ポーターの少年と2人、とぼとぼと歩いて行く。
12:30 HOROMBO HUT 着。

小屋の中で、Jimに「登れば良かったのに。」と問うと、彼が言うには、「昨夜、登ろうか登るまいか考えた。しかし、自分の体のことを考え、自分がここに来たのはなぜかを問うた。頂上に登ることよりも、自分が、今、Kilimanjaroにいるということで満足している。」
こういう考えがあれば、無理して頂上にこだわる必要もなかったんだ。ここまでの道で、ずっと楽しんできたんだから、オレも少しは見習って、余裕のある山歩きを心がけよう。
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