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ゲーム探検倶楽部ゲームレビュー #125
魔法の少女シルキーリップ(メガCD)

購入金額:1980円

ゲーム内容

1992年に日本テレネットが発売したアドベンチャーゲーム。
「テレビアニメのような魔女っ子アドベンチャーゲーム」とあるように、 話ごとに毎回オープニングテーマとエンディングテーマ、それに中間にアイキャッチが入る。
主人公リップは魔法の国の10歳の少女で、女王候補に選ばれ人間界で1年間修行をするというストーリーもお約束
もちろん同社お得意のビジュアルデモもバッチリ!!

アドベンチャーゲームとしては、街の中を歩き回り、いろいろな人と話し、場面によっては道具や魔法を使うという、オーソドックスな内容。
しかし、会話になると画面が変わり、会話シーンでは相手の話に応じて「怒り」「喜び」「哀しみ」 の対応を選択でき、その内容によって会話内容や感情値が変わる。
この会話シーンが本作の大きな特徴で、適切な選択肢を選ぶと良いエンディングを見るための「評価ポイント」が上がるが、この感情値は会話で選択できる対応や戦闘に影響するため、うまくコントロールする必要がある。
ストーリーの中で戦闘場面になることもあり、魔法がぶつかり合うバトルがアニメーションで繰り広げられる。

H.Kuwanoの考察

1.確かに洗脳度は高い主題歌

本作の評価で必ずといっていいほど口にされるのは、「主題歌のインパクト」です。
中には「オープニングテーマのために買え!!」といわれているほど。

実際に聞いてみましたが、まあ、いつもKGRさんからヘンな歌や洗脳ソングばっかり聴かされているからか、そこまで洗脳度は高くないと感じました。
まだ「君はホエホエ娘」の方がスゴいかな、と。

しかし、本作は全ての話のはじめに、このオープニングテーマが流れてくるのです。
全部で11回 も、このオープニングを見ることになります。
さすがにテレビアニメを意識した作りで脱帽。

そうすると、否が応にも、オープニングテーマが脳に焼き付いてきます。
普段でも「リ〜ラ〜ルル〜 ラ〜リ〜ルル〜 リップ〜」とかが頭の片隅に浮かんできて、「あ〜ヤベ〜、これハマッたかな?」と思ってしまいます。

 

オープニングテーマの明るさとは対称的なエンディングテーマも結構ガツンときます
「みんな みんな ありがとう リップは幸せです」という歌詞があまりにもストレートすぎて、なんか毎回のエンディングテーマというよりは、まるで最終回の最後の場面(例:卒業式や結婚式など)で流れるような挿入歌です。
(確かに最後で流れますが)
なんというか、ちょっとホロリとしてしまうような感じがしました。

それにしても、「キアイダンOO」「デコボコ伝説」といい、歌作るの好きね、日テレ(日本テレビじゃないよ)。

 

2.おいおい、小学5年だぞ!!

歌にもあるとおり、主人公のリップは11歳(ゲーム開始時は10歳)なのですが、きちんと3サイズも設定(Bらしい)されており、ライバルのイザベラはとても小学5年生とは思えないような体つき(Dらしい) になっています。
魔法の国出身の二人以外にも、この学校の小学生は結構マセており、バレンタインデーでチョコを渡したり、「エッチな体しやがって、このデカパイ」 とか言ってる始末。
いくらなんでも、小学5年生でコレはやりすぎなんじゃないかなぁ。
ロリ○ン狙いのゲームだったのかな?

そういえば、本作の続編的存在の「ひみつ戦隊 メタモルV」も小学生 だったなぁ。
もしかして、製作者の趣味なのか?

 

3.どこか影を残すシナリオ

本作は全てがハッピーエンドというわけではなく、どこか影を残しています
各回はほとんど、「事件は解決した。しかしこれで本当に良かったのだろうか?」 というような、どこかひっかかるような終わり方になっております。
悪く言えば「後味が悪い」ということですが、これは製作者のユーザへの問題提起であると考えます。

キャラクターもどこか影があり、病気の親がいたり、トラウマを持っていたり、実は元不良だったり、完全に善良で幸せそうな人はいません。
主人公のリップはそのような人間界での修行で苦悩し、そして「幸せとは何か?」を考えながら成長していくのです。

はっきり言って、これは魔女っ子モノのアニメなんかよりもずっとヘビーなシナリオなんじゃないでしょうか?

本作の製作者は、シナリオにも定評があり、固定的なファンもいると聞いたことがあります。
確かに納得できますね。
ゲームをクリアした後、楽しみにしていたゲームが終わった空しさと似た感覚の他に、一種の哀しみが湧き上がってきてしまいました。

 

4.会話はゲーム的にも考えられている

本作では会話によって「喜」「怒」「哀」の3つの感情値が変動し、「喜」「怒」が高いと戦闘で有利になります。
ただし、戦闘で必ず勝つ必要はありませんし、あまりやりすぎると他の感情値が0になって、会話時にそれしか選べなくなります。
また、他にも「評価ポイント」があり、適切な選択をすると上がり、逆だと下がります。

つまり、うまく会話や魔法で感情をコントロールしていくということが必要になるのです。
これはなかなか面白いと思いました。

ちなみに「サクラ大戦」というゲームで「LIPシステム」という会話のシステムがあり、ゲーマーの中にはこのゲームから採った(または本作が元祖)と考える人もいるようです。
僕は「サクラ大戦」はプレイしたことはありませんが、多分この「LIPシステム」は「コマンドにタイマーがあり、時間切れや、選択するまでにかかった時間で展開が変わる」 システムのことだと思うので違うのではないかと思います。
まあ、会話でステータスを上げ下げするのは一緒ですが。

 

5.パソコンゲーム的なグラフィック

移動画面は昔のパソコンゲームみたいで、グラフィックにディザパターンを多用し、建物の影に入ったりできます。
なぜか同社の「迷宮のエルフィーネ」を思い出してしまいました。

でも、ちょっとプログラム的な雑さが目に付いてしまいました。
なぜか女子更衣室では、画面上に行くと戻ってこられなくなる(右の壁を伝っていけば抜けられる)し、顔の表示される登場人物と話すと、別れてもまだ顔が残ったままになるし、人と話そうとしてもすり抜けたりしてなかなか話せないし(魔界八犬伝SHADAか)。

また、いっぱいあるアイテムや魔法、コマンドに無駄なものが多いのも残念です。
魔法は回復と感情値の均一化以外は殆どストーリーを進めるのみでしか使えないし、戦闘でも使えないカテゴリの魔法が存在します。
さらにはアイテムをもらっても使わずに済んだり、アイテムを「わたす」のもあまり効果がないような気もします(本当はあるかもしれないけど)。

ところで、時々話の合間に流れるデフォルメキャラのショートデモは、なんだか「デコボコ伝説」に似てません?

 

6.街の移動シーンは賛否両論?

移動シーンは一般のRPGみたいに街の中を移動するのですが、なぜか無駄に広いです。
おそらく本作を期待して買ったプレイヤーは、なんで街の探索なんて、と思った人も多いと思われます。
しかし、これもゲームの世界を広げる要素の一つなんだ、と僕は感じました。

あいまいな情報を元に目的地を「探す」楽しみがあり、これはまさしく僕が行っている探訪そのものです!!
さらに、普通のRPGとは違って街の作りがしっかりしているので、いいと思いました。
もしかして、「たまには違う道を通って帰ると、面白い発見があるよ」という楽しみ方もこのゲームに盛り込んだのかもしれません。

それ以上に重要なのは、リップの「生活感」やこのゲームの「世界観」を演出する役割を果たしていることです。

家の前にはホームレスがいて、道路には緑のおばさんがいる。
商店街には理容店や本屋など、いろいろな商店があり、病院や神社、銀行などの様々な施設がある。
川には犬を散歩させている人や、子供と遊ぶ人がいる。
いろいろな建物があり、いろいろな人がいる。

 

7.会話シーンの音質の悪さが気になる

本作の肝(?)である会話シーンですが、残念な点が一つあります。
それは会話の全てが音声で出ないということではなく、その音声の音質が悪いことです。
会話の一部は、画面表示だけでなく声優による音声が聞けるのですが、その声がなんかこもったようなひずんだような音質なのです。
ちょうどテープレコーダーで録音したような音質で、「ユーゲー」でも「ノイズが混じっている」などと指摘されています。

同時期に出た「ゆみみみっくす」はもちろん、「惑星ウッドストック」ですらクリアに喋っているのに、どうしたんでしょう?
まあ、僕にはそれほど気になりませんでしたが。

しかし、メガドライブは音質で損することが多いですね。
メガドライブの「フェリオス」はヒロインの「アルテミス」がダミ声だったし、「シルフィード」だって「本当はCD-DAで音楽を鳴らしたかったけど、転送速度の都合上内蔵音源を使うことにした」ことが裏目に出て「音楽が弱い」と指摘されていたしね。

それでも、「ナイトストライカー」はドットが粗さと引き換えに「移植度は最高」という名声を受けていました。
本作もきっと、音声をクリアかつフルボイスにすると、全てのお話が入らなかったんでしょう。

 

8.なぜメガCDで出したんだろう?

開発元はもともとPCエンジンの方がノウハウがありますし、きっとPCエンジンで出した方がウケていたんじゃないかと思われますが、どうしてメガCDで出したんでしょう?
正直PCエンジンSUPER CD-ROM2でも実現できそうですし。

しかし、PCエンジンだとロードが長そうだし、もしかしてスタッフがメガドライバーだったとか…。

余談ですが、メガCDで本作と同時期に出た、「テレビアニメのような」をウリにしたアドベンチャーゲームがあります。
ゲームアーツの「ゆみみみっくす」 です。
こちらは全てがフルアニメーションで進行するのですが、残念ながら選択肢が少なく、アドベンチャーゲームとしてはかなり物足りないものとなってしまっています。
(まあ、僕は世界観にハマってしまったわけですが。)
ただ、どちらの作品も作者に対して根強いファンが生まれた ことは共通して言えます。

 

関連情報

ひみつ戦隊メタモルV…本作の続編的存在で、本作のディレクターが手がける戦隊モノを意識したアドベンチャーゲーム。
                               発売は毎日コミュニケーションズから。
                               会話で返事を選択することによって仲間のパワーアップをはかったりするのは本作と一緒。
                               さらには小学生の少女というのも一緒だが、変身すると途端に大人びるのがばつが悪い感じ。
迷宮のエルフィーネ …日本テレネットが1990年にPCエンジンCD-ROM2で発売したアドベンチャーゲーム。
                             「とろりん」こと西村知美を起用している。
                             不思議な世界をわらしべ長者の要領で進めていき、章の最後はミニゲームが待っている。

ゆみみみっくす …ゲームアーツがメガCDで本作と同時期に出したデジタルコミック風アドベンチャーゲーム。
                       原作は自称少女マンガ家の竹本泉。
                       フルアニメーション・フルボイスが特徴で、本当に「テレビアニメを見ているような」感じ。


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