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魔法経済概論

 

 

魔法経済概論

 はじめに

 現在、世界には8億を越える人間が生活していると言われている。私たちは毎日なんらかの形で魔法に触れている。しかし魔法は日常的でありながら、その原理が未だ十分に解明されていない科学である。
 人間は魔法を行使して効果を得ることができる。しかしそれは魔法を発現させる一定の手順さえ学べば、だれもがたやすく手にすることができるものであり、それゆえに当然の権利として利用されている。
 魔法の原理と発生については、他の学問に委ねることとしたい。


 魔法もこの世の因果率に即したものである以上、魔法の行使には対価が必要となる。魔法の対価として魂が消費される。
 魂は生き物がいずれも持つものであるが、その概念は一般的ではない。魂の消費はリスクが伴う。消費量が一定量を越えたときに、魂の持ち主は「鳥」と呼称される存在に転位することが知られている。どのようなものに姿を変えるかはわからない。一度姿を変えた者も、理論的には元のものに戻ることができる。
 元に戻ることを試みたとき。多くの場合は、さらに転位しても別のものへと変化する可能性が高い。それほどに魂と肉体の関係は、微妙なバランス上に成り立っている。


 リスクを覚悟の上で、魂を売り買いする者たちがいる。
 魂の売り買いは、金本位制貨幣とは別の単位である「値金(チキン)」で行われる。
 魔法経済の特色は、資源を人間が有していることにある。人口の多寡が直接に企業なり国家の魔法力となる。人は労働力であると同時に魔法資源でもあるのだ。 
 個人の持つ時間を切り売りする古典貨幣経済とは異なり、魔法経済では魂の質の変化を切り売りする。それは才能とアイディアに価値を設定してサービスを取引する近代貨幣経済に近い概念と思われがちであるが、あくまで購入する側の論理であり、現実には文字通り魂を削って切り売りする危険な経済活動である。
 人は魔法を一定以上に消費したときに転位するが、それは突然に起こる変化ではない。消費するごとに少しずつなんらかの変化を呈していく。
 最初に変化が現れるのは食べ物の嗜好である。そして性格が変わりはじめ、考え方自体も変化する。最期に身体的な変化が訪れる。
 魔法自体を己の才能の範疇で事業化しようとすることは、極めて大きなリスクを覚悟しなければならない。自身の考え方に変化が起こるために、強い意志持って魔法の事業を始めても、充分な補給がを行われない場合には、当初の目的を維持することは困難であるのだ。
 「鳥」に転移した人間は、ほとんどの場合生殖能力を失う。しかしまれに「鳥」に転移しつつ生殖能力を保持する者が発生する。この者たちが子孫を残した場合、人間とは異質の存在が産み出されることとなる。
 繰り返しになるが、魔法は魂の質的変化を利用するものである。量の変化には価値がない。魂の徹底的な搾取を行おうとした場合、人の資源としての有効性極めて高い。搾取する個体が生存出来なくなるまで魂を活用することができるからだ。人は魂の「損耗」により死亡することはない。魂の「変化」に伴う肉体の変化が生命活動を停止させるのだ。
 ここでは魔法と魂の関係、そして社会と魔法経済のかかわりについて考察していきたい。


 

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