1.1年というスピード続編
本作は、前作発売後わずか1年という期間で発売されました。
その開発力には驚かされますが、 早いから良いというわけでは…。
2.舞台や遊びは増えたが、ストーリーはパワーダウン
本作では舞台に大阪が加わり、遊び要素が増えました。
ゲームとしてはパワーアップしたように思えます。
しかし、ストーリーはパワーダウンしたと思います。
前作は「心に突き刺さる人間ドラマ」とあるように、「生きるということ」「仁義」「男の生き様」などといったメッセージ性がありました。
しかし本作では、そのようなメッセージ性は薄れてしまい、ただ事件を追って進めているだけ のように思えてきます。
主人公にとって大切な人物の多くが前作で亡くなったため、ストーリー上のキャラクターの死があまり主人公の心を動かさず、さらにプレイヤーの心にも響かないんでしょう。
結局は人間ドラマがサブキャラ間で展開されていても、主人公は傍観者でしかなく、プレイヤーもより傍観者であるという意識が強いのかもしれません。
(これには前作が初出だったことや、極道を題材にしたゲームなので人が死ぬのは当たり前、という先入観もあるのかもしれませんが…)
主人公が仲間を失った前作とは逆に、本作では主人公に異性への恋心が芽生えます。
でも、ちょっとシナリオのつながりが不自然で、どうして恋愛感情が生まれるのか、ちょっとおかしく感じたりもします。
多分スピード制作ということもあったんでしょうが、この恋愛のプロセスはきちんと描いた方が良かったのではないでしょうか。
それに付随して、主人公「桐生一馬」のキャラクターが変わってしまったことは大変残念です。
前作では友情や愛情といった「義」を忘れない強い心を持ったクールな男として描かれています。
それなのに、本作では狭山に心を奪われ、前作で好きだったはずの由美との約束(=遥を守る)を破りそうになってしまいます。<
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義に篤い男だったら、たとえ恋人がこの世を去ったとしても、一度心に決めた人を想い続け、守り抜くものではないでしょうか。
(本作では、堂島組長の妻が今も亡き夫を慕っていることについて、主人公が「これが女の強さだ」と言う場面があります。男も一緒なのでは…。)
さらにホストになったりキャバクラを経営したりするサブイベントがあり、前作と比べると軟化しています(前作もキャバクラがありましたが)。
前作では主人公の生き様に惚れた女性ファンも多々あったと思われますが、本作をプレイすると幻滅してしまうかもしれません。
前作では「練りに練った」とあり、中断する予断を与えない程よくできてきていましたが、本作では正直ストーリーはそれほど面白いとは感じませんでした。
(しかも前作よりも短いし)
むしろこのレビューを年内に終わらせたいがために無理やりプレイしたような感じでした。
本作の続編は何故か江戸時代が舞台となった剣戟アクションに変わってしまうようですが、多分本作発売後、この路線では続編は作りづらいと思ったのではないでしょうか。
もしくはネタに詰まってしまったとか。
3.選曲に難あり?
本作のBGMは半分が前作からの使いまわしですが、オープニングや途中のイベントでは「クレイジーケンバンド」のオリジナルの楽曲が使われています。
しかし、オープニングはともかく、挿入曲としてはちょっとイメージが違う
ように感じました。
歌をBGMに使うのは、ドラマや映画ではクライマックスで使うのですが、本作ではストーリー中のちょっとしたイベントで使われています。
しかも歌つきのBGMはここだけ です。
さらに良くないことに、セリフとボーカルがダブって聞こえてしまいます。
もっと首を傾げてしまったのはエンディング。
前作では「アメイジンググレイス」 で、こちらも首を傾げましたが、まだわからなくもありませんでした。
しかし、今回はクリスマスソングでおなじみの「サイレントナイト(きよしこの夜)」 です。
確かにゲームの時期的には合っているのですが、なんでこの歌が?と思ってしまいます。
4.本当に「龍が如く」を遊びたい人は1からやってください
本作は前作とストーリー的につながっています。
そのため、前作をプレイしたことがない人や、プレイしてもストーリーを忘れてしまった人のために、本作の冒頭で前作のストーリーのダイジェストムービーを見ることができます。
よくあることですが、前作をプレイしたことがない人がこのあらすじを見てしまうと、前作をプレイする意欲がなくなります。
前にも述べましたが、ストーリーでは前作の方が上だと思います。
「龍が如く」を正しく楽しみたい方は、前作からプレイすることをオススメします。
「ストーリーなんてどうでもいいからヤクザアクションを楽しみたい」「キャバクラめぐりを楽しみたい」なんて人は本作からでもいいです。
5.妙にアトラスチック
KGRさんは本作を見て「メガテンみたいだ」と言っていました。
確かに僕も、言われてみれば「デビルサマナー」と雰囲気が似ているような気がしました。
それは、以下の点です。
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主人公は白スーツ
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普通の店なのに裏では武器を売っている
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新宿が好き
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カジノに凝っている
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街中の陰鬱なBGM
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非現実的な仕掛け(床がせり上がって秘密の通路が出てくるなど)
中には「デビルサマナー」以外の要素もありますが、特に一番最後の要素はわれわれの間では「アトラスチック」
と呼んでいるものです。
6.D区分で日本ゲーム大賞受賞作?
本作は暴力シーンやギャンブル、風俗店などがゲーム中に登場するため、D区分(17歳以上対象」)となっています。
それでも、日本ゲーム大賞では優秀賞を獲得したようです。
個人的には、良いゲームはプレイヤーを選ばない(少なくとも制限を設けない)という信念があります。
(18禁ゲームが嫌いなのはこのためです。)
しかも前作ならまだしも、本作は続編モノです。
このようなゲームがそのような賞を取るのはどうなんでしょうか。
僕は複雑な気持ちです。
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