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ゲーム探検倶楽部ゲームレビュー # 182
ひぐらしのなく頃に〜祭 (プレイステーション2)

購入金額: 6980円 (箱説付)

ゲーム内容

話題となった同人ソフトをPS2にアレンジ移植。
昭和時代の片田舎を舞台に、惨殺事件に巻き込まれていくという根本的なストーリーはそのままに、原作にはなかった選択肢を追加し、よりアドベンチャーゲームっぽくなった。
さらにキャラクターデザインの変更や声優による声の追加など、さまざまなパワーアップを図った。

H.Kuwanoの考察

1.選択肢は蛇足

本作の原作は、選択肢がないただ見るだけの(見たものから自分で考える)ゲーム(?)です。
ひとつの根幹となっている殺人事件を、何通りかの側面で辿ったものをそれぞれの話とし、複数の話をまとめてその根幹を推理してもらうというものなのですが、プレイヤーが話の決定に介入する点がないので、一般的には単なるデジタルノベルという括りになってしまいます。

(このようにゲーム性を持たせたのが画期的だと言うことのようですが…)
多分そのままだと「これは本当にゲームといえるのか?」というツッコミが殺到するでしょうから、PS2版では選択肢による分岐をつけたものと思われます。

しかし、この選択肢のある場所が中途半端なのです。
選択肢が出る場所は数箇所あり、それが原作の第x話またはオリジナルストーリーに分岐するようになっているのですが、これが「どこかから足音が」「どこからか人影が」みたいに、どちらを選ぶとどう変わるのかよく分からないのです。
特に「ヒロインを選択してください」には絶句しました。

逆に、主人公の行動をプレイヤーが決定するような選択肢が殆どなく「なんでそんな行動取るんだよ圭一!」と思うこともしばしばありました。
ここで選択肢をつけ、誤った行動を取るとバッドエンドとかになればよりスリリングなサウンドノベルにでもなったのに…。

また、無理やり話をミキシングした感も強く、突然知らない人が出てきたり、出てきても実はちょい役だったり、急に話が展開したり、これまでの流れと不自然な場所もいくつかありました。
本作をプレイする際に選択肢を決定してもらった「ひぐらしナビゲーター」ことNさんは、本当はこんなところで出てきてはいけない人がいる」ということで、その場面をスキップさせられました。
僕らは原作の第一話(「鬼隠し編」?)に沿ってプレイしていたのですが、その場面は第二話になるのだそうです。

こりゃぁ、初心者は「ひぐらしナビゲーター」がいないと、本作は正しい順序で楽しめそうにないな!!

これなら、原作どおり選択肢をなくし「デジタルノベル」として出すか、「かまいたちの夜」みたいに選択肢を増やしてサウンドノベルっぽくするか、どちらかにして欲しかったと思います。

 

2.追加シナリオはバッドエンド?

Nさん曰く、追加シナリオ=バッドエンドになるそうです。
一瞬その追加シナリオ「盥回し編」に入りましたが、そこは「ひぐらしナビゲーター」、「鬼隠し編」に戻されました。
しかし、主人公が死ぬのがグッドなんですか?というのは野暮なのでトゥルーエンドとしておきましょう。

 

3.後半はいいのに、前半部分で損しすぎ?

本作は大きく分けて、ギャルゲーチックな学校生活を楽しむ前半部分と、事件がおきて歯車が狂い始めるサスペンスホラーな後半部分があります。
前半部分は、まず主人公が転校してきた田舎の学校で、地元出身の女の子に囲まれつつ、過激な罰ゲームの部活を楽しむ生活を何日間か見るというものです。
しかもキャラクターの性格が強烈にギャルゲーナイズドされていて、マニアックです。
特にマニアックなのは罰ゲームで、スクール水着やネコミミを着せたり、膝枕やメイド口調を強制させたり、まるでギャルゲーです。
一応事件までの伏線も張られているのですが、それにしても長すぎて、正直部活のシーンは要らないような気もします。

KGRさんは、前半部分が長すぎて、相当うんざりしていました。
僕も「ひぐらしナビゲーター」の忠告を無視してボイスを聞きながら読み進めていったので、途中で時間がなくなって、ポンポンボタンをおしてボイスをキャンセルしながら進めていきました。

後半部分は、ストーリーの核心になるのであまり触れられませんが、いよいよ事件が発生し、主人公たちが事件に巻き込まれていく、という内容です。
ここからは「かまいたちの夜」みたいにサスペンスホラーアドベンチャー(?)風な展開が見られ(しかも主人公にボイスがつく)、これまでの登場人物が殺されたり、裏切ったりします。

ようやくKGRさんも後半になって身を乗り出して画面を見るようになりましたが、それでも前半の疲れで集中力が欠けたのか、時折Nさんに話しかけていました。

 

スタッフロールも何もない第二話(鬼隠し編)が終わったあとも、KGRさんも「前半で引いた」と言い、「個人的には合わない」とバッサリ。
KGRさんは原作もプレイしたのですが、どうやら推理モノのアドベンチャーゲームが嫌いなようで。

僕としても、確かにストーリーは面白いのですが、前半部分と後半部分が乖離しているような感じがします。
「ファミコン探偵倶楽部」みたいに前半と後半で分けると、まったく別物のゲームのように思えてしまいますね。

Nさんは本作を「(余計な選択肢がついて正しい順序でストーリーが進まなくなった)失敗作」と切り捨てるほどの原作の熱心なファンです。
当然原作も似たようなシーンがありますが、本作ほどしつこくはないのか、またはそういう部分には目をつぶっていたのか、ギャルゲーの類をめったにプレイしないNさんがはまったのは、多分後半部分のストーリー展開が大きかったのではないでしょうか。

 

ですが、前半部分も本作の構成要素のひとつ(「ギャルゲー要素」)だと思います。
そうでないと、ここまでヒットはしなかったのではないでしょうか。
それは秋葉原での騒ぎや、世の中に出回る二次創作品の数々が物語っています。
前半で散々ハーレムゲームっぽく見せかけて、後半は残虐かつ悲惨な結末にしてしまう、そうすることでキャラクターの印象をより強烈にプレイヤーに刻み込むのです。
ある者は鉈を持ったヒロインのフィギュアを飾り、ある者はオリジナルな同人誌を作り、ある者は対戦格闘ゲームの同人ソフトを出し、本作を盛り上げていきました。

ただ、逆にその結果本作のホラー感を薄めてしまった感じもあります。
「嘘だっ!!」で笑いがこみ上げてくるのはなぜだろう。

 

4.原作の登竜門となるか?

Nさんは何度も「原作をプレイしてみてくださいよ」と持ちかけました。
このサイトでは同人ゲームは取り上げないこととしているので、ごめんなさい状態なのですが、僕の中にいまだに同人ゲームに対して抵抗があるのもまた事実です。

このPS2版が原作をプレイするきっかけになるとは、僕には思えません。
いくら原作の方が安くても、結局は同人ゲームです。
入手も家庭用ゲーム機のソフトほどたやすくありませんし、やっぱり抵抗を感じる人も多いのではないでしょうか。
また、キャラクターにボイスはありませんし、正直キャラクターデザインもプロが作ったPS2版には劣ると思います。
正直なところ僕も「この絵柄で惨殺事件はねぇ・・・。」とひいてしまいました。
(逆に、これだけキャラクターが受けたのは文章の力(表現、描写)だと思います。すごいですね。)
原作にはどれだけ残虐なビジュアルシーンがあるのか分かりませんが、倫理規定(ソニーチェックとも言う)がしっかりしていて安心してプレイできるのも家庭機版の強みでもあります。

また、本作をPS2版からスタートするようなプレイヤーは、おそらくキャラクターの絵柄や声優に引かれて買ったような人が多いのではないでしょうか。
多分そういう人は原作には見向きもしないと思われます。
僕らのように「同人ゲームで話題のゲームが家庭用に移植(厳密には移植ではないが)されたから、どんなものか見てみよう」と思って買う人はまれだと思われますが、もしいたとしても「なんだこんなものか」で終わってしまうのではないでしょうか。

 

5.もはや書籍でもいい

僕としては、本作はPS2のような据え置き型のハードで出すのではなく、PSPやDSなどの携帯ゲーム機で出すのが良かったのではないでしょうか。
本にしおりを挟むように、電車の中などで少し読んでは中断する、というようなスタイルで。

もはや書籍でも良い(マンガではなく小説で)、と僕は感じました。
小説であれば、もっと一般の人にも読んでもらえるでしょう。
にしても、キャラクターのマニアックすぎる趣向を薄めないと、一般には受け入れられないでしょうね。

ちなみに、KGRさんは「ゲームブックにしたら良いのではないか」と言っていました。
これは、僕の意見でもあった「もっと主人公の行動をプレイヤーが積極的に決定できれば良い」ということと同じようなことを考えていたのでしょう。

しかし、Nさんはこの会話を聞いて「それは、このゲームをアドベンチャーゲームと思ってやっているからいけないんですよ。本作はRPGです。」と言っていました。
なんと、しかもPS2版ではなく、全く選択肢のない本編をそのように捉えているのです。
まるで「頭脳戦艦ガル」や「キングスナイト」をRPGと銘打ったメーカーをも凌ぐ様な、RPGというジャンルの広義解釈。
僕らはまだ中級レベルです。

初級:ギャルゲー
中級の下:恋愛アドベンチャー
中級:ホラーアドベンチャー、サウンドノベル、推理アドベンチャー
特級:RPG

名言

嘘だッ!!

本作を代表する、ヒロイン「竜宮レナ」の叫ぶ名言。
にもかかわらず笑いが出てしまうのはなぜだろう?

アブラゼミがなく頃に

本作のタイトル画面。
タイトルが「ひぐらしのなく頃に」なのに、何故かアブラゼミの鳴き声がしている。
スタートボタンを押したときの笑い声(嘲笑?)とともに意味不明である。

お持ち帰りぃ〜

ヒロイン「竜宮レナ」の悪癖。
「かぁいいもの」を見ると周りのものが目に入らなくなり、周囲の人が薙ぎ倒されることもしばしば。
「かぁいい」も名言といえる。

関連情報

かまいたちの夜

チュンソフトがSFCで出した、サウンドノベル第二弾。
前作と異なり、孤立したペンションの中で連続殺人の真相を暴く。

ファミコン探偵倶楽部

任天堂がディスクシステムで出した推理アドベンチャーゲーム。
I「消えた後継者」とII「後ろに立つ少女」があり、GBAにも移植されている。


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