1.猫又である理由は
本作はタイトルにもあるとおり、主人公が猫の侍で、これが大きな特徴となっております。
猫といっても猫又であり、二本足で立てるし人語もしゃべれます。
(KGRさんが期待するような猫ミミ少女の類は一切出てきません、あしからず)
猫又にも人間の社会と同じような社会があり、人間社会に溶け込んで生活しています。
主人公が猫又である一番の理由は、やはり猫の自由気ままな感じを出したかったのだと思われます。
普通の人間だったら、仕事をしないといけないし、食事や睡眠はほぼ規則どおりにならざるを得ないのですが、猫なら関係ありません。
猫ならば、なにもしなくてもいいし、いつ寝てもおかしくありません。
(にしても猫らしくなく2〜3日寝なくても平気なのですが)
さらに言えば、お金などの概念を排除したかったためかもしれません。
本作では賭け事のみに使用できる掛札と、街を歩くと溜まる疲労度しかパラメーターはありません。
もし人間だと、生活するためにお金の概念を入れて、さらに仕事の概念も付加、といったように複雑になっていたかもしれません。
また、ただの猫ではなく侍にしたのは、単なる江戸生活アドベンチャーではなく、時代劇風なイベントも取り入れたかったのだと思われます。
侍であるため多くの猫又に頼りにされ、時には剣を持って戦います。
しかし、これだけで侍にしたというのは安易です。
侍である一番の理由は、「人を斬るという罪を背負って生きていく侍の姿を描きたかった」のだと思われます。
主人公が元いた「御神楽府」は暗殺集団 です。
実際主人公は何人もの人(猫)を斬ってきたことでしょう。
その集団を抜け出して江戸に来たということは、単に追っ手から逃げるだけではなく、自分の行いを反省して更生したい、さらにはこれまで斬ってきた罪滅ぼしをしたい、いろいろな理由があったのではないでしょうか。
そして江戸での生活は、プレイヤーもそのような苦悩があることを忘れさせ、あるときふとその苦悩に気づかされます。
まるで犯罪者の逃亡生活 のようでもあります。
そう考えるとこのゲームのストーリーは結構深いですね。
ややネタバレになりますが、ゲームの期限(9月30日)に明確な理由を作りたかった、というのもあるかもしれません。
(個人的には後味の悪い、切ない終わり方です。他にエンディングはあるのでしょうか)。
2.ゲームシステムはシェンムーに似ている
本作のゲームシステムは、以下の通りです。
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日付・時間の概念があり、昼と夜がある
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主人公は街を歩いて複数ある地点に移動する
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街の人(猫)には生活があり、時間帯によって会えなかったり、居場所が違ったりする
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人(猫)と話すと好感度があがる
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地点・好感度・日時など、ある条件を満たすとイベントが発生する
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移動したり地点に入ったり、地点で何かすると時間が経過する
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街を歩いたり建物に入ったりすると疲労が蓄積し、いっぱいになると1日間の強制療養
僕はこれまでやってきたゲームの中で、「シェンムー」に似ていると思いました。
目的が決まっていることや、疲労がないこと、活動時刻が制限されていること以外はシステム的に似ていると思います。
また、パソコンのアダルトゲームが元の美少女アドベンチャーゲーム「同級生」というゲームの方が似ているという話もあります。
ですが、僕はこのゲームはプレイしたことはないので詳細は分かりません。
どちらにせよ、共通していることは「行動の自由度が高い」ということです。
2.自由に生きるか、攻略させるか
本作の説明書には、「本作は江戸の生活を楽しむゲームなので、攻略などにこだわらず、自由に生きてみてください。」という注意書きがあります。
一方、「○周目」の表記やイベント達成表など、「くりかえし遊んで攻略しろ」と言っているような仕様があります。
さらにイベントがそんなに発生しない(数は多いが発生条件が難しい)という問題も抱えています。
本当に自由に生きると、ほとんどが毎日いろんなところにブラブラするだけの日がな一日になってしまうでしょう。
本作ではこのイベントが重要なのです。
イベントはストーリーを楽しむ上で大切なものです。
本作ではメインのストーリーは最初と最後があるだけで、その中のストーリーは自分が作らなくてはなりません。
さらには、主人公が「弟斬」と呼ばれる由来など、ストーリーやキャラクターをより深く知るためのイベントも多くあります(これらは必然的に発生するイベントではありません)。
結果、本作を楽しむなら、やはり攻略した方が面白い、と言えるでしょう。
本当に自由に生きてもらいたいのなら、1周目だけで十分楽しめるようにすべきです。
3.顔グラフィックは評価できる
上記のこともあり、僕は初回プレイは自由に生きてみました。
その結果、本作ははっきり言って展開が単調で、あまり面白いとは感じられませんでした。
(エンディングは心に残りましたが)
江戸の町を駆けずり回って、時折起こるイベントを見るだけです。
イベントもさほど面白い物ではなく、ミニゲームもさほど面白くありません。
開発者もそう思ったのか、そういう人のために日単位で時間つぶしができる ようになっています。
(これも攻略を要求する表れの一つのような気がします。)
そんな中、評価できるところを探すと、なんと言っても一番は顔のグラフィックでしょう。
ポリゴンで作られたキャラクターの顔は、他のPSゲームのポリゴン顔と比べても観賞に耐え得るクオリティ で、しゃべるときに滑らかに動きます。
それもそのはず、フェイストラッカーを使用しているのです。
他にもマップのグラフィックが頑張っています。
3.開発元が倒産した大きな理由
本作の開発元は、本作を出した1年後ぐらいに倒産してしまったそうです。
本作は ディスク3枚のボリュームですし、時代考証とかもしっかり行っていたようなので、結構開発費が掛かったと思われます。
もしかすると本作の不振がメーカーを潰してしまったのではないか
と思います。
ゲームシステムだけでなく、こんなところも「シェンムー」との共通点なんですね。
4.総評:シェンムーの方が面白い
総評としては、僕は個人的には本作をプレイするのであれば、「シェンムー」のほうをオススメします。
話の大筋が決められているので、自由に生活している中にも達成感を感じられるのです。
ミニゲームも良いし、かけたお金が多い分キャラクターの動きなどのクオリティも抜群です。
ただし、時代劇が好きな人には面白いのではないでしょうか。
もちろん、攻略が必要なので時間は必要です。
本作にもっとイベントが頻繁に発生し、毎日が充実していれば評価は変わったでしょう。
残念です。
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