1.子供向けにしては難し過ぎる
本作はトレジャー制作といえども子供向けのテレビアニメのゲーム化作品です。
子供向けアニメのゲーム化なら、ゲームも子供向けであるのが一般的です。
しかし、難易度、キャラクター、いろいろな面からも、大人向けのゲームになってしまっています。
・ちょっと操作がややこしい
本作の特徴はなんと言ってもジェット移動にあるのですが、これが誤った方向に行きやすいのです。
コントローラーにもよりますが、たいていは誤って斜めが入ってしまい、敵に突っ込んだりしがちです。
攻撃にしても、十字キーを押さずに攻撃するとパンチ、下を押しながらだとキック、上を押しながらだとレーザーが出るのですが、レーザーは遠くまで届く反面スキがあるので、誤発して攻撃を食らうこともしばしば。
回数制限のあるスペシャル技として、パンチを出しながらジェット移動する技と画面全体の敵を攻撃しつつ麻痺させる技があり、それぞれL,Rボタンに割り振られています。
しかし、使い分けが難しく、Rボタンばかりを使ってしまいがちです。
・パターンを見切らないと勝てない
本作はジェット移動で飛んでいる間は完全無敵になります。
そのためか、この無敵を使わないとかわせないような攻撃をバンバン出してきます。
しかもダメージがでかく、初代「ロックマン」みたいに3回攻撃を食らうとアウトになるようなものもよくあります。
ジェットはすぐに出せるようなものではなく、何度も繰り返してプレイして攻撃パターンを見切り、攻撃が来る前に準備する、といったことが必要となります。
・マニアックな手塚治虫キャラ
本作では、鉄腕アトムを超えたさまざまな手塚治虫のマンガのキャラクターが多く存在します。
分かる人にとっては感涙モノなのでしょうが、子供にとってはそれが何なのかを知らず、逆に抵抗と感じるでしょう。
会話に漢字を多く使っているところも難。
・やや難解なストーリー
本作では、ストーリーもなかなか複雑になっています。
詳しくはゲームのないように触れてしまうので書きませんが、勧善懲悪といったものではなく、人間とロボットのジレンマに苦悩しながらアトムは戦っていくのです。
さらに過去と未来の時間的なつながり、そして原作の設定に忠実(らしい)な多くの手塚治虫キャラクターが大きく関わり、多面的なストーリーになっています。
2.セガガガとの共通点に見られるゾルゲール哲のスタンス
本作のプロデューサーは「セガガガ」を作った男、ゾルゲール哲氏です。
そのためかゲームの作り方に共通点が感じられました。
その共通点を挙げてみます。
・○○ワイワイワールドを作りたがる
「セガガガ」ではセガのゲームのキャラクターが集まってセガを(そして世界を)救うという、いわゆる「コナミワイワイワールド」のセガ版を実現しました。
本作では手塚治虫キャラを集めた、いわゆる「手塚治虫ワイワイワールド」となっています。
「セガガガ」ではきっと、「セガワイワイワールド」は氏の夢で、実現したかったんじゃないかと思います。
本作では氏の夢だったのか分かりませんが、手塚治虫ファンも自分と同じで「手塚治虫キャラがたくさん出てくるゲームがあったらうれしいんだろうな」と思って作ったんじゃないかと思います。
・どこかにセガのゲームのオマージュを「明示的に」取り入れる
氏は間違いなくセガファンで、それは「セガガガ」で実証済みです。
それが本作でも現れています。
詳しくは忘れてしまいましたが、ラストの面の2番目の中ボスの面が何かのセガゲームのオマージュであると、クリア後のキャラクター一覧に載っておりました。
「セガガガ」なら分かりますが、このゲームでわざわざ明かさなくてもいいのに、と思うのは僕だけでしょうか。
・奇妙な存在「ドルメヒカ」
「セガガガ」では重要な存在「ドルメヒカ」がありますが、それが本作にも出てきます。
それは「ドルメヒカ症候群」となって、ストーリー上のとある人物がかかっている病気となっています。
知らない人はそれまでですが、「セガガガ」や「ユーゲー」を知っている人はニヤリとすることでしょう。
もしかすると氏のかかわったゲーム全てに、「ドルメヒカ」が出てくるかもしれません。
・フォント(文字の形)
「セガガガ」ではメインではないものの、開発室などに好んで使われているフォントがあります。
いまいち名前や具体的な特徴(下が伸びたような感じ)はうまくいえませんが、わりと最近になって使われているフォントです。
本作でも原作にふさわしくないこのフォントを一部で使っています。
アトムハートの画面です。
・善悪がはっきり区別されないもの同士の、二極対立をベースとしたストーリー
「セガガガ」ではいろんな二極対立がありました。
セガとドグマ社は善悪がはっきりしているのですが、開発室のイベントである対立は、善悪がつけられません。
デザイナーとプログラマー、シナリオ重視とグラフィック重視とシステム重視(これは三極対立)、夢を抱き続ける者と、夢を捨て出世を望む者…。
これらの対立はどちらも良い悪いはなく、間違ってはいません。
最終的には、主人公の力でそれらの対立は丸く収まり、共存していくのです。
そして本作では同じような二極対立に、人間とロボットというものがあります。
もちろん、どちらの存在も誤っていませんが、やがて対立の構図が現れてきます。
それでもアトムの努力によって最終的には和解し、共存していくのです。
おそらく今後もこのような(悪役が「お前たちのやっていることは本当に正義なのか」と問いかける様な)ストーリーが多くなるのではと思われます。
3.総評