1.内容の薄いアドベンチャー
まず最初に、このゲームは「せやさん」から推薦され、購入しました。
情報ありがとうございました。
本作をプレイして思ったことは、内容、システム、ストーリー、全てにおいて、全体的に安っぽいということです。
(いくら悪口言ったって構わないって言ってたよね、裕一くん?)
本作はパッケージやオープニングからも分かるとおり、テレビ番組を意識しており、オープニングや途中にCM(これが雰囲気ぶち壊しなんだな、これが)などが入ります。
それはともかく、ゲームのプレイ時間までせいぜい30分ぐらいです。
シナリオもそれほど練りこまれたものではなく、2回プレイすればストーリーの全貌が見えてきてしまいます。
また、 実際にはホラーと言うよりはサスペンスのような内容で、まるで「『弟切草』を期待してたら、雰囲気が『弟切草』な『かまいたちの夜』だった」といった感じ。
怪談のようなものを期待して買った人は、ちょっと後悔してしまうかもしれません。
ザッピングシステムも大して活用されておらず、却って逆効果です。
別に他のプレイヤーに替わったからって言ってもストーリーに変化が起きるわけでもなく、ただ一つのシナリオを別の観点に移すだけです。
そうすると話のつながりが分からなくなって、却って混乱を招いてしまいます。
一人を集中して5回プレイするのが正しいやり方でしょう。
また、終盤以外はほとんど、どちらの選択肢を選んでもたいしてストーリーは変わりません。
逆に終盤ではちょっとした選択のミスでエンディング(バッドエンド?)になってしまいます。
この選択ミスが、この先に述べる理由で面倒なことになるのです。
セーブができないのも大きな問題です。
本作では1回エンディングまで到達すると表示されるパスワードによって、一応続きからプレイできます。
しかし、ゲーム途中ではセーブはもちろん、パスワードも出てきません。
(まさかメモリカードを扱えなかったんじゃないでしょうね?)
しかも記憶されるのは主人公の名前と、ザッピングで切り替えられる主人公だけ。
どんなエンディングを見ても、それはパスワードに記録されません。
とまあ、全般的に安っぽいのですが、それもそのはず。
本作では、「未来のために、エネルギーと資源を節約しましょう。」と、説明書とゲーム中で謳っているのです。
「なんでゲームで資源節約を訴えるの。」「だったらゲームなんて作るな。」というハナシもあるのですが、きっと本作はこのために安上がりなゲームとして制作されたんでしょうね。
もし、あなたが本当に地球の未来を考えているのであれば、このゲームを買うお金をUNICEFFに寄付した方がずっと良いと思います。
2.主人公の方がもっと怖いなんて、反則でしょ?
本作の特徴的なポリゴングラフィック、あまりにも独特過ぎて、はっきり言って不気味です。
元々このゲームは登場人物が少ないのですが、ストーリー中に出てくるどんなバケモノよりも、主人公らの方がずっと怖いです。
大体主人公からして、徹夜したのか、それとも花粉症なのか、常に目が充血して真っ赤になっています。
しかも栄養失調なのか、顔色がかなり悪く、手足がやけにやせ細っています。
いや、実際怖いというよりは、笑えます。
全体的なキャラクターデザインはまるで、「ゲームウェア」の「お兄さん」とか、「Techサターン」の「ポリゴン伯爵」を彷彿とさせます。
3.友情談疑
本作のサブタイトルとして「友情談疑」という造語がつけられています。
そう、本作のストーリーの根底にあるものは、「友情」なのです。
(※ネタバレ注意、見たい人はマウスで選択しながら見てください)
本作のストーリーの黒幕は、もう一人の徹夜目のデブ、裕一です。
彼は小学校の6年間、ひどいいじめを受けていました。
にっくき英明と京子に復讐するため、彼はこれを機に彼らを捕獲してバケモノに改造し、自分の手下にしようともくろんでいました。
作戦は成功、あとはついでにやってきた主人公達を処分するだけです。
しかし、よく考えてみると、彼は確かにいじめを受けていたものの、このメンバーと一緒にタイムカプセルに願い事を書き入れ、埋め、そして掘り出しにきているのです。
また、英明は裕一の持ってきたジュースを疑いもせずに飲んでいるのです。
「ドラえもん」で言えば、「ジャイアン」は「のび太」をいじめていますが、時にはのび太をかばったり、助けたりするのです。
英明はそんなガキ大将のような、ちょっと違った「友情」を持って裕一に接していたのかもしれません。
4.余談〜ストーリーのアラ探し
友情をベースに、人間の怖さを描いたストーリーはよいのですが、まだ練り込まれておらず、「なぜ」「どうして」と思うことが全然解決できないことが結構ありました。
野暮ですが、ストーリーで疑問に思ったことを列挙します。
(※ネタバレ注意、見たい人はマウスで選択しながら見てください)
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主人公達がタイムカプセルを掘り出す約束を交わすまでどのような経緯があったのか?
タイムカプセルを掘り出すのは分かりますが、なぜいじめていた裕一を混ぜたのでしょうか?
さらに言えば、なぜいじめていた裕一と一緒にタイムカプセルを埋めたのかということが未解決です。
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何故真っ暗な学校の校舎を、明かりも持たずに歩けるのか?
主人公達は夜中の1時にタイムカプセルを掘り起こしに来たのに、明かりの一つも持っていません。
そもそも夜中だというのに、窓の外は夏の午後6時ぐらいの明るさです。
それでも、防空壕の中でも明かりを持たずに歩けるなんてスゴイ目の持ち主ですね。
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英明と裕一がなぜ鉢合わせしなかったのか?
主人公達の中で、この約束の集合前に学校に入った人は二人います。
一人はタイムカプセルを事前に掘り起こした英明です。
そしてもう一人は「特殊メイク室」(「オペ室?」)の準備をした裕一です。
特に文章には出てきませんが、心拍数計測器やガスボンベなどの大掛かりな設備もあり、学校に事前に入って準備したと考えるのが普通でしょう。
すると、二人がかち合ったりしなかったのか、シナリオでは良く分かりません。
英明がその大掛かりな設備に気付く可能性はあると思うのですが。
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なぜ廃校になった校舎のトイレを使おうとしたのか?
主人公達で二番目に校舎内に入った英明と京子ですが、裕一に痺れ薬入りのジュースを飲まされ、腹痛を訴えてトイレに駆け込みます。
しかしなぜ、水道も電気も止まっているような校舎のトイレを使おうと思ったのでしょう?
だいたい、痺れ薬で腹痛になるのか?
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壁にかかっていた京子と英明の体は一体何なのか?
主人公で理科室(「特殊メイク室」(「オペ室?」))の壁には、特殊メイク(改造手術)される前の京子と英明の体があります。
縄で縛られ、首を天井から吊るしています。
彼ら二人は裕一の手によって特殊メイク(改造手術)されているはずなのに、これらは一体何なのでしょう?
5.結論「怖いというより、気分が悪くなるゲーム」
本作の結論として、「怖いよりも気分が悪い(胸糞の悪くなる)ゲーム」という言葉でまとめられます。
ホラーゲームというものの、バケモノとか幽霊とかの怖さというよりも、人間の怖さの方が上です。
その復讐劇が卑怯かつ残忍な手口で、怖さよりも激しい憎悪感を覚えることでしょう。
とんでもなくグロテスクな魑魅魍魎が出てくるような、アメリカンなスプラッター映画のようなホラーゲームを期待すると、期待はずれとなるでしょう。
本当にザッピングの楽しめるホラーゲームとしては、RPGですが「スウィートホーム」、ホラーというよりコミカル気味ですが「マニアックマンション」の方が上です。
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