たまには映画も(2) Wonderstruck         (1)へ (3)へ  Topへ
   これは映画と本と両方で楽しむ作品です。  

  
   2018年8月24日(金)
  Kさんから宮垣へ

以前お話したかどうか定かではないのですが、
インドの若い女性監督の作品『マダム・イン・ニューヨーク』はご覧になりましたか。
よくあるマサラムービーとは違う素晴らしいドラマです。

9月4日 23:59まで GYAO! で無料で見ることができます!
https://gyao.yahoo.co.jp/player/00679/v07480/v0734000000000524631/


あと、もうひとつは4月に公開された『ワンダーストラック』です。
こちらは無料ではないのですが、とてもよかったので、
もしよかったら、ご覧くださいませ。
1927年と1977年のニューヨークが平行して描かれる素敵なつくりです。

『ワンダーストラック』予告
https://www.youtube.com/watch?v=qbjI78KBVcQ

大好きでDVDも買ったのですが、できればまた映画館で観たい作品です。

レンタルも始まっていますが、
博物館内や1927年、1977年を再現ニューしたヨークの街並みが見事なので
映画館で観ると、臨場感があってより楽しめます。

目黒シネマにて
9月1日(土) ~ 9月14日(金)上映されます
http://www.okura-movie.co.jp/meguro_cinema/now_showing.html

Kより
 

  
  2018月9月11日

Wonderstruck(1)『ワンダーストラック

 キャロル協会のKさんは大の映画ファンで、時々、面白い映画を教えてくださる。
インドの最近では、インドの若い女性監督の作品『マダム・イン・ニューヨーク』これはネットで見たのだが、素晴らしい主演女優の演技、家族愛の結末に大変感動した。
次に『ワンダーストラック』は、1927年、1977年を再現ニューヨークの街並み、博物館内が面白いですよと推奨してくださり、丁度、近くの目黒シネマでやっていたので見てきた。1927年、聾唖の少女が、ニューヨークに母親をファンの女優に会いに行く話(白黒サイレントで表現)と1977年、父親を捜しに行く少年の話、この少年も雷で聴力を失っている。(カラー有声で表現)この二つの話が交互に出てくるので、前半は、流れが掴めず、少し困惑するのだが、最後、すべての話の糸がつながって、大きな感動を呼ぶ作品であった。https://eiga.com/movie/86620/
私が興味を持ったのは、原作のBrian Selznickの本では、聾唖の少女のストーリーが、文章ではなく作者自身の描いた挿絵で表現されているということであった。映画を見て暫くして原作が届いた。それは、6百ページをはるかに超え、目方も1.4kgもある本で、半分は著者の丁寧な鉛筆画であった。おそらく、文章を書くに要した時間の数倍もかかったであろうと思われる。そのエネルギーに圧倒された。世の中にはいろんな人がいるものだ。

竹内 美紀 最近こういったグラフィックノベルの進化系がはやっているそうです。先日のケンブリッジでの絵本の学会のオーサートークもそうでした
宮垣弘 文字の世界に対して、画像、映像の世界の伸びが大きい気がします。
 
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  宮垣よりKさんへ
先日、ワンダーストラック見てきました。映画半ばまで、いったいどうなるのか分らず、戸惑いましたが、後半盛り上がって、最後、すべての糸が結び合って、大きな感動を得ました。同時上映の「さようなら、僕のマンハッタン」もなかなかの出来栄えでした。ともに家族の意味を深く感じさせました。
ちょっと報告が遅くなったのは、映画を見る前に注文していたBrian Selznickの原作の到着を待っていたためでした。今日やっと届きました。6百ページを超える、ずっしりとした本で、半分は挿絵。実はこれを見たくて注文したのですが、これから楽しみに見てゆきます。
良いきっかけを作ってくださってありがとうございます。 宮垣 

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 Kさんより宮垣へ
わたしがワンダーストラックに惹かれたのは、はじめは映像表現のおもしろさでした。
絵でしか見たことがないヴンダーカマーを立体で再現してくれたところにときめき、
ワンダーストラックに足を踏み入れたときのローズの高揚感に重なり「こういうのが見たかったのよ!」と感激しました。
原作者のセルズニックが、完成したセットを見て感動して泣き出してしまったように。

いろいろ惹かれる点はありますが、もっとも大きかったのは結末がファンタジーではなかったところです。
ひとつひとつ小さなヒントがつながって線になり、ローズとベンの物語が一つになったところがよかったのです。
現実にあり得ることが実話のようで感動しました。丁寧なリサーチと設定によるところだと思います。

物語の象徴として使われているデヴィッド・ボウイの『Space Oddity』ですが、
最後には、なぜ、エレインがいつもこの曲を聴いていたのかがわかりました。
これは宇宙に旅立ったまま取り残されてしまうトム少佐の物語です。
1969年の曲なので、ちょうどダニーが亡くなった頃だということに気づき、
手の届かない遠くに行ってしまったダニーをこの曲に重ねていたのだと思い泣けました。
こういう小さな時代考証のようなものがいくつも重なり、実話のように感じてしまうところがたまらなく好きです。

さらに、映画での演出について気が付いたのは、
大人になった現在のローズが登場するときに流れる曲のオリジナルは1968年の『2001年宇宙の旅』で使われた曲です。
実はこの『2001年宇宙の旅』に影響を受けてデヴィッド・ボウイは『Space Oddity』を作りました。
ということで…トム少佐であるダニーの素になったローズなので『Also Sprach Zarathustra』なのではないかと思います。
ただ、映画で使われたのは1972年のアレンジされたものですが。
70年代の雰囲気があるので映画に合うこちらを使ったのかもしれません。
そしてエンドクレジットで『Also Sprach Zarathustra』に続いて流れる『Space Oddity』は子供達が歌っています。
はじめはベンの気持ちを代弁するために子供バージョンを使ったのだと思いましたが、
今、調べたところ、これがレコーディングされたのは1976~1977年ということなので、
そちらで合わせたような気もしてきました。
http://www.keyofz.com/langley/

実は、ブライアン・セルズニック原作で映画化された『ヒューゴの不思議な発明』を見たときも
実話であるかのような錯覚を起こしてしまいました。
https://eiga.com/movie/56064/
ちなみに、こちらはアマゾンPrime会員であれば無料対象です♪  Kより
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 宮垣よりKさんへ
丁寧なお返事ありがとうございました。
Kさんの映画の世界をちょっと覗かせた感じかします。
蓄積があれば、それだけ、響きあうものが、大きいのでしょう。
私は『2001年宇宙の旅』もデヴィッド・ボウイは『Space Oddity』も知りませんでした。Youtubeでチェックしながらメールを読ませていただきました。
映画や新しい音楽に疎いことを感じます.  宮垣より
 
   

  
   2018年9月16日
Wonderstruck その2

630ページ程の分厚い本ですが、半分は挿絵ですし、英語も易しく、描写が生き生きしていて、サクサクと読めます。映画を見ているせいかもしれませんが、文章、挿絵、映画とが、互いに響きあって、面白かったです。映画好きのKさんによると、この中で現れている、デヴィッド・ボウイの『Space Oddity』https://www.youtube.com/watch?v=iYYRH4apXDoも大切な役を果たしているとのことでした。ストラウスの「Also sprach Tarathustra」の使用など、音楽的には『2001年宇宙の旅』とも関係があるようです。音楽を聴きながら読みました。50年隔てた2つの物語がどう結び付くかがこの作品の核ですが、ちょっと込み入っていて、地味な作品なので、映画または本で満足しない人も、両方見ると満足できると思います。主人公たちがdeafであることが、この作品のポイントの一つですが、あとがき(Acknowledgments)によると著者の兄も片耳がdeafであり、また、最後の場面でのニューヨークの停電(1977・7・13)は実際にあったこと、博物館へ逃げ込む話はKonigsbergの作品の影響があることが分かります。
また、引用句”We are all in the gutter, but some of us are looking at the stars"はオスカー・ワイルドのものであると。
物語は大停電の夜、主人公たちが星空を見上げるところで終わります。
 

  
  2020・4・17
  Fさんから宮垣へ
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望羊亭のほとんどの分野は分からないので、「たまには映画も」のWonderstruckだけをしっかり拝読しました。
 
ニューヨークが舞台で、ジオラマがでてくるミステリという感じだったので、Youtubeで予告編、メーキング編を見て、さらに興味が増し、Amazon Primeにあったので、只今、全部鑑賞しました。
貴情報がなければ見ることができなかった映画でした。ありがとうございます。
 
何回か訪れたことがあるマンハッタンのアッパーウエストにあるアメリカ自然史博物館が舞台で、自然の姿の数多くのジオラマの完成度に驚いたことを思い出しました。
映画はタイムマシン的なことで決着がついたらつまらないなと思っていましたが、そうではなかったので安心しました。
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 2020・4・18
宮垣からFさんへ

メールありがとうございました。「ワンダーストラック」ご覧になったとか。ニューヨークに住まれ、自然史博物館に何度も行かれたFさんには懐かしかったことでしょう。ジオラマのスケールは大きいようですね。原作は作者自身の鉛筆の挿絵が300頁も付いている変わった本ですが、ジオラマのところを、座興に添付しておきます。
宮垣 弘
 
 

2020・4・19 
 Fさんから宮垣へ

原作本の挿絵画像ありがとうございました。

ニューヨーク市全体のジオラマは、アメリカ自然史博物館ではなくて、クイーンズ美術館にあることを映画で知りました。 ネットで調べたところこのジオラマは1964年の ニューヨーク万
博のために作られたもので、何の因果かフラッシング・メドーズ・コロナ公園に現存しています。

JFK空港からマンハッタンへの高速道路際にあり、外部に設置された大きな鉄骨製の地球儀は車窓から何回も見たことがありますが、ジオラマの話題を聞いたこともなく、見ることができなかったのは残念でした。

アメリカ自然史博物館にあるジオラマ(動植物の生態)がこの映画の主題で、博物館のジオラマ設計主任が調査で訪れた先で出会った女性調査員との間の子供が,父親が制作したジオラマを原画を無意識に記憶していたのことがミソであると理解しました。

原作者はクイーンズのジオラマと自然史博物館のジオラマから思いついて物語を作ったのではないかと思います。 その心はどちらも精緻に作られていて美術的であるということで
 しょう。

主人公の少女時代の話は文章がなく、鉛筆がで描かれているとネットの情報を得ました。その部分を映画では白黒で、少年の部分は文章で書かれ、映画ではカラー になっているのも納得できました。 原作者は脚本も書いているので、本の意図は十分反映されているのでしょう。

自然史博物館のジオラマは動物の生態、背景がリアルでそれらの生息地をガラス越に眺めているような感じがします。

実際の画像は、”アメリカ自然史博物館 ジオラマ”で検索するといくつも見られます。


話中のニューヨーク市全体ジオラマは、グーグルアースの3D表示ができるまでは、地上で鳥瞰できる珍しいものでした。 現在でもジオラマは3D画像よりも楽しいものです。

鳥瞰図好きな者として1964年と1965年にはニューヨークの自宅からの眺めを、眼で拾って遠近法の破綻にもめげずに年賀状用に描きましたが、今ではグーグル3D画像をつなぎ合わせればもっと詳細に描けるとえ思います。

宮垣さんのきっかけのお陰で久しぶりにGoogle Earthを眺めてみました。

ジェフリーディーバーのリンカーンライムシリーズも舞台がニューヨークなので、地図をみながら読むと面白いです。 6話ほど文庫本で読みましたが、それ以降のものには手がまわりません。
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Fさん提供
     Kさんから宮垣へ 2020・4・22

ワンダーストラックの追記を拝見しました。
Fさんの、タイムマシン的なことで決着がつかなくてよかった、という感想を読んでうれしくなりました。

ファンタジー的な結末ではないことに好感を持つのは私だけではなかったのですね。

映画紹介サイトなどでいろいろな感想をみると、ファンタジーを期待していたのに違ったためにガッカリという声が多くて私としては寂しく感じていましたので、Fさんの感想はうれしかったです。