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2016年8月27日 映画『薔薇の名前』1986 原作を読んで出来上がったイメージを壊されたくないので、その映画化されたものを見たくないという気持ちがあり、映画『薔薇の名前』を見るのはためらいがあった。 このDVDには監督ジャン=ジャック・アノーの解説が付いていて、これが抜群に面白かった。俳優の選択、セットの構築、大道具、小道具などの話から、撮影、音声技術など、制作にまつわる体験を、率直に語っており、しかも、映画のシーンを流しながらの話なので分かりやすい。そして制作にかけた情熱に感動し、この映画をもう一度見ようという気になる。 原作は、ウンベルト・エーコが何十年にわたり蓄積した中世の研究をもとに、2年がかりかけて書いたものを、ジャン=ジャック・アノーが4年かけて映画にした。その成果を、3時間あまりで味わえるとはなんと贅沢なことだろう! |
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2016年4月13日 ウンベルト・エーコ / ジャン=クロード・カリエール 対談 Sさんに勧められて手を出したら、面白くてやめられず、読みかけの『薔薇の名前』を中断して、こちらを一気に読みました。コンピューターやインターネットなど情報技術の世界の急激な変化の中で、我々は大きく変貌を強いられていますが、二人の碩学が、その広い見識と自らの体験をもとに、本を中心に、知のあり方全般にわたって、話し合っています。そのレベルは高く、刺激的で、西洋の知性とはかくの如きか!と驚嘆いたしました。 「人生を愉しむことが人生の目的になりうるように、読む愉しみそのものが読書の目的になることもあるんですね。・・・」(374頁) 本好きの人には当然、情報のコレクター、作家、大学の先生にお薦め。 木下信一:壮大な蔵書自慢という感じもしました。 宮垣弘:カリエールは「キャロルの直筆書簡が入った本」を持っていますね。 蔵書だけではなく、話のスケールが大きい。 |
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2016年8月25日 Confessions of a Young Novelist by Umberto Eco (1) The Name of the Roseの出版が、1980年、著者48歳の時で、この本を書いている今、まだ28年しか経っていないので、小説家としては若いのである。本書を手にしたのは『薔薇の名前』の裏話でも聞けたら面白いだろうと思ったのと、第4章がMy
Listsとあったからである、彼の小説には列挙的記述が散見され、私は所謂enumerationに興味があるからである。 My Listsについては又、別に書きます。 |
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2016年8月25日
Confessions of a Young Novelist by Umberto Eco (2) 第4章My Listsは、カタログ、メニュー、辞書をはじめ、列挙されるあらゆるものを論じるのだから壮観であるが、その中心は、文学上の表現スタイル、enumeration(
enumiratio 列記)である。私がenumerationに触れたのは、丸谷才一の『闊歩する漱石』で、坊ちゃんの罵倒の言葉「ハイカラ野郎の、ペテン師の、イカサマ師の、猫被りの、香具師の。モモンガーの、岡っ引きの、わんわん鳴けば犬も同然な奴」から、古今の文芸における、列記(enumeratio)の系譜を概観して見せる40頁ほどの文章だが、事例が、ホメロス、聖書、ラブレー、ジョイスなど同じものが多い。才一の初出は1998年で、エーコより10数年早く、その上日本の豊富な事例が列記されているので、もし、エーコが日本語を解して、読むことができたら、喜んだに違いない。 「尽くし」ー豊かさの祝典ーという見出しで、清少納言をはじめとする「尽くし」のことを書いておられて、その終に「そして何より「尽くし」の本当の喜びは、いくら尽くしても到底尽くしきれない世界の豊かさを、多くの人と分かち合い、共に愛でることにあるのだ」と結んでおられた。 |
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