『耽美桐葉舎』他 200000hit記念企画
いん・わんだーらんど! |
とある日曜日。 やっとレースもシリーズシーズンオフを迎え、少しだけ暇になった篤志くんは、夕日くんと二人で仲良く遊園地に遊びに来ました。 普段はバイクを縦横無尽に乗りまわしてるくせに、絶叫系のマシーンには案外弱かった篤志くん。これまたそっち系の乗り物が大好きという意外な一面を見せる夕日くんにさんざん引っ張りまわされ、ちょっとばかり頭がクランクラン。顔は無表情変化なしなれど、内心では少しばかりお疲れ気味の彼は、ふと、ぽつんと園の片隅に小さな迷路のおうちがあるのを見つけ、これ幸いとばかりに夕日くんを誘ったのでありました。 ドアの上に、『いん・わんだーらんど』と書かれた看板のついた、誰からも忘れられたように寂しげに立っている不思議な迷路のおうち。入り口をくぐり、中に入った二人ですが、はてさて、どんな迷路が待っていることやら……。 |
Attention! |
引き返す |
一歩中に入ると、そこはなにやら不思議な空気が漂っている感じだった。 どこにでもあるようなカラフルに彩色された壁に囲まれ、どこかで聞いたような楽しげな音楽が小さく鳴り響いて聞こえている。一見ごく普通のアトラクションのひとつ。だが、なんとなく空気が違う……。 まず入って一番先に目についたのは、迷路に向かう二つの入り口だった。 「なんだ、ここ? 入り口が二つあるぜ? 変な迷路だな?」 篤志がぽつんとつぶやいた。確かに、普通迷路と言うと入り口はひとつで中でいろいろと道分かれしているものだが、ここでは最初から右と左にスタート場所が分かれていた。それでもそとに通じる出口は一つだったのだから、きっとどこかでつながってはいるのだろう。 「どっちに行く?」 夕日が屈託なく尋ねた。篤志はふとしたお遊び気分で、ニヤリと悪戯っぽく微笑んだ。 「なあ、俺は右に行くから、おまえ左に行ってみろよ」 「え? 分かれて入るの?」 「どうせ出てくるところは一緒だろ? なら、どこかで会うかもしれないじゃないか? 面白いぜ」 夕日はちょっと目を丸くしたけれど、すぐにニッコリと笑った。 「そーだね。そうしてみようか」 「おう。じゃあどこかで」 「うん。篤志もがんばってね」 そうして、二人はそれぞれ別の入り口から中へと入っていったのだった。 |