3
夜ももうすぐ明けそうではあるが、まだまだ闇の支配が勝っていた。 鬱蒼とした森の中、静寂を破る叫びが響いた。 「うごがぁぁぁぉぉぉぉぉ」 それはランプから魔神がでるような、魔法陣から悪魔が召喚されるが如く、眠っていた女教師の口から狐夢魔が飛び出して来たのだった。 女教師の夢の世界から逃げ出してきた夢魔は実体を具現化させた。 はじめは障気を含んだ霧状の姿で、彼女の口から抜け出て、傍らに立った。 その姿はヒグマ程の大きさもあった。 鋭い爪とむき出した長い狐面から牙が見えた。 しかし、その姿はぼろぼろだった。傷からは黒いススのようなものがこぼれ続ける。 「はぁはぁ。ちぃ、今一歩のところで」 夜明けにはまだ間のある暗い山の中、大きな木の根元にもたれて女教師と臨はまだ目覚めずに眠っていた。 「忌々しい小娘が!」 憎々しい目で眠っている臨を見た。 「しかし夢の中にその意識があるうちは、身体はまったくの無防備のはずだったな」 乱暴に頭と肩を掴んで持ち上げても、臨はまだ目覚めなかった。 「貴様の命、もらっていくぞ」 夢魔は臭い唾液を滴らせながらするどい牙をむき出しにして喉笛を噛み切らんとした。 その時、狐夢魔の背後から声がした。 「お断りね」 虚を突かれた夢魔の背後に、その少女はいた。 「なに?」 「誰がお前なんかにやるものか!」 腕に掴んでいる少女と、同じ顔、同じ姿をした少女が狐夢魔の後ろに立っていた。 それは事前に身体の半分を分けておいたもう一人の臨、右側から分身した『右臨』だった。 「ぐぉっ! 二人? しまったぁ」 右臨の右手に持った刀が、夢魔の胸に深々と突き刺さった。 ブシュリと、果汁の詰まった果実にナイフが突き立てられたような音がした。 「うがっ……」 夢魔の捕まえていた少女、女教師の中で戦っていたもう一方の臨が目覚めた。 左側から分身した『左臨』。彼女が夢の中から戻ってきた。 「そういう事! これが多身術。私達はどちらも同じ夢守臨」 夢魔に捕まれていた腕をひねると、大木を蹴って頭上にまわり込んだ。 「 臨 空……」 術法を唱え、双子以上に同じ顔形をした少女が、コンビネーション攻撃を繰り出した。 「……天 神 波!」 零距離からの攻撃術法が、現実世界に存在を許されない夢魔に撃ち放たれた。 「ぎゃぁ〜〜!」 断末魔の叫び声が夜の闇にこだました。 「やったね。右臨」 「お疲れ様でした、左臨」 互いの握り拳を軽く当てる、二人の臨のお決まりのポーズだった。 退魔の術法をまともに喰らい、狐夢魔の姿は次第に夜露と消えようとしていた。 「ケケ……、まぁいい。私の役目は果たした……」 釣り上がった目がギョロリと開かれた。 「お前の泣きっ面が見られないのが残念だが、あとは‘あの方’が……ケケケ」 右臨と左臨が互いに顔を見合わせた。 「どういうことだ」「どういうことだ」 「ケケ、いつまでここにいるつもりか。今頃お前の大事な館は……」 言い終わらないうちに夢魔は消滅した。 「今のは一体?」 森に再び静寂が戻った。 夢魔を倒した事で周囲の魔性気は薄れ、刀も戦闘衣さえ存続していられなくなった。 しかし、魔性力場は消えたわけではないのだった。 「右臨」「左臨」 ふたりの臨は互いに顔を見合わせ、それぞれの右臨は右手を、左臨は左手を重ねた。 小さな振動音さえ聞こえてきそうなリズムが重なると、その間に二人の『臨』は文字通り、一体化したのだった。 「……そうだったの」 誰にいうでもなくつぶやいて、半分だったそれぞれの臨は、もう一方の自分の体験した事を理解した。 臨は走った。 一刻も早く館へ戻らなければ、取り返しのつかない事になる気がしたのだった。 狐夢魔の最期の言葉を考えると、ヤツは臨の命を狙っていたと同時に、臨を足留めするよう命じられていたとしか思えない。 館へ戻らせないで一体何をする気なのか…… 臨はますます早く館へと向かって走った。 その時、頭の中にダイレクトに声が伝わって来た。 「(臨……お臨)」 ハッと声のする方角に意識を向ける。それは紛れもなく館の方向だった。 「この声。この天心通は、刀自様? それとも御館様?」 これはもはや予感などという生易しいものではない。 「刀自様……御館様」 御館様は、肉親を知らない臨の親代わりであり、剣術の師でもあった。 そしてもう一人。己の運命を語り、夢魔に対抗すべく術法を教えてくれたのは『刀自』だった。 刀自は齢を経て、老いたとはいえ、術法の熟練者だった 刀自も本当の名前ではなかった。ただ同じ一族の者であるというだけしか知らない。 しかし母のような優しさと、女の子としての礼儀作法を教えてくれた人だった。 「早く帰ろう。夢魔と出会った事、退治したことを御館様に報告しなくては」 臨は刀自様の作る手料理が急に恋しくなった。 刀自様はきっといつもと変わらない笑顔で迎えてくれるだろう。 なぜか次々とこれまでの刀自との思い出が頭に浮かんできた。 「久しく夢魔の事を聞かないし、このままもう悪さをしなければよいのですがねぇ」 刀自はよく破れた臨の服を繕いながらそう呟くことがあった。 「夢魔は確かに人に悪夢を見せて苦しめる。しかし夢は所詮、夢。その程度の事ならばわたしらが出るまでもない」 おとぎ話代わりに聞かされた『夢守りの民』の歴史。 子守歌代わりに聞かされた『術法』の話。 すべては夢魔がおとなしくしていれば戦う必要はなかった。 「夢魔には永遠に醒めない悪夢の迷路に閉じこめんとする輩も存在する。さらには定着し、人の心と身体にとりついて現実に災いを成す夢魔もいる」 そして眠りの中、夢の中は臨の修行の場だった。 夢守りの民は、人の夢に忍び込み人々を苦しめる夢魔と戦う運命を背負っていた。 夢魔に対抗すべく、術法は刀自様に、剣術は御館様に鍛えられたのだった。 様々にそんな事を思い出していた最中、再び頭の中に声が響いた。 「(来るな! 臨!)」 走り続ける臨の頭に声が響いた。 「これは、やはり御館様の天心通(テレパシー)」 「(臨……)」 「御館様! 先程、夢魔が……」 「(うむ。判っている。ここにも夢魔の大軍が攻めて来ている。館は夢魔で溢れている)」 「えっ? そんな、こんなこと今まで一度もなかったのに」 夢魔は夢守の民を恐れていた。逃げ隠れする事はあってもこんな大規模に夢守りの民を抹殺しようと攻撃をしてくるなど考えられない事だった。 「(臨、やつらの動きが不穏だ)」 まるで電波の弱い受信機のように言葉が途切れ途切れに伝わって来た。 「(臨よ……『夢守り』の名を受け継ぎし夢守りの民の戦士……)」 あらたまった御館様の言葉が事態の深刻さを物語っていた。 「(長の転生しし御方を守り、他の夢守りの民を覚醒させよ)」 「え? 『夢守りの民』の末裔は私達以外にもいるのですか?」 ついに森を抜け、山の頂に立つとやっと館が見えた。 位置を確認すると、館にいる御館様と刀自様のビジョン−遠隔同調波−が伝わって来た。 御館様の部屋を無数の小型夢魔と中型の夢魔が二人を取り囲み、じわじわと迫っていた。 「私もすぐ応援に参ります」 「(臨。私を誰だと思うてか。)」 「ですがその数では……」 館を取り巻く膨大な数の夢魔に臨が心配したのだが 「(この程度の夢魔にくれてやるほどこの命、安くはないわ)」 返ってきたのはいつもの御館様の自信に満ちた言葉だった。 御館様と背中合わせの位置に刀自様がいた。 「(お臨は京都へ向かいなさい。そこに我等『夢守りの民』の長がいる)」 「京都?」 「(夢魔の動きが変化した。各自がてんでばらばらに悪さをしているのとは訳が違う。恐ろしく統括された夢魔の軍団。それが狡猾に他の民人を襲い始めている)」 「(京都にいる転生された長である方はまだその力に覚醒されておらん。だから)」 館に近づくにつれ、二人の状況がますます見えて来た。 テレパシーで会話をしていながら、二人は次々と襲いかかってくる夢魔と端から戦っているようだった。 闇夜の館にうっすら青白い燐光が漂っていた。 何もみえないはずの闇。だが闇だからこそ、臨にはそこに無数に蔓延る夢魔がハッキリと見えた。 「しかし、これはあまりに多勢に無勢」 「(ふっ、この場の夢魔は……)」 「(ふふ、ここにいる夢魔は……)」 御館様と刀自様の力が高まり、共鳴しあった。 激しい空気の振動がビリビリと伝わり、イオン臭でもしそうな気配の変化が生じた。 「(私が断つ!)」 「(わたしが討つ)」 臨が高台から見ていると、館の扉の隙間、障子の隙間からまばゆい光が吹き出した。 「( 麗 光 亜 裂<レイコウアレツ>!)」 「( 真 空 光 神 罰<シンクウコウジンバツ>!)」 高圧の光子力が御館様から発せられたのだった。 夢守りの民、稀代の術法師である、刀自様。 民に伝えられる剣術流派、『夢守ニ天流』の伝承者である御館様。 二人の強大な術法と最強の奥義が炸裂した。 「ギャ、ぎゃぎゃぁ」 潮が引くように光が収まると、館の中にびっしりいた夢魔は、巨大な爆発に巻き込まれたように跡形もなく消えていた。 「流石は御館様……」 安堵の息をつくと、全力疾走していた歩みを緩めた。 やはり心配する事はなかった。どんなに大群がこようとも御館様があの程度の夢魔に負けるはずがない。 と、その時、感覚を同調していた臨の口の中に、血の味が広がった。 「?」 次の瞬間、ビジョンに御館様の背中を貫いて、胸を突き抜けた刃が映った。 長い大太刀の刃に血が伝わり、ポタポタと滴った。 「ぐっ、こ、これは……」 達人である御館様でさえ、その気配を察知することができなかったのだ。 「御館様! あぁっー!」 刀自が御館様に近づこうとした。 「……」 御館様の後ろから胸を貫いた『刺客』は凶刃を引き抜くと刀自を切りつけた。 「き、貴様は……」 刀自様は術法を使う間もなく崩れ落ちた。 「む、無念」 「御館様? 刀自様ー」 ビジョン−遠隔同調波−がそこで途切れた。 最後に伝わって来たのは血の匂い。そして炎だった。 臨は再び駆け出した。心臓が早鐘のように鳴り響き、疾風の如く館へと走った。 火を放ち、炎の中にいた『刺客』は2人の最期を確信すると、素早く立ち去った。 「と、刀自、許せ……刀自を守りきるつもりが、巻き込んでしまったな」 「何を……申されますか御館様。このような婆にもったいない」 燐光とは違う真っ赤な炎が館の中から広がった。 「御館さま〜〜!」 臨の見たもの。それは生まれ育った屋敷の炎上する姿だった。 「これは……夢か……覚めない悪夢か」 ようやくたどり着いた館の前で臨は呆然と立ち尽くしていた。 御館様がこんなことでやられるなんて、嘘だ。これは悪い夢だと思いたかった。 しかし、庭から見えた刀自の亡骸がまざまざと冷酷な現実を見せ付けていた。 「刀自様〜!」 助け出す前に、焼け落ちた柱と紅蓮の炎の中に刀自の姿は見えなくなった。 ごうごうと燃えさかる炎が、臨の大切なもの全てを飲み込もうとしていた。 そんな炎をキッと見据えると、臨は身体中の有らん限りの力を解放した。 「 臨 空 天 神 波 ! 臨 空 天 神 波 ! 臨 空 天 神 波 〜 ! りんくうてんしんはー」 飛び上がっては術法を放ち、着地してはまた空を舞う。 そうして次々と気功の塊を連続して撃ち放った。 破壊消火で燃える柱を、炎を己の術法で吹き飛ばした。 しかし、本来は夢魔を倒す力。そして無尽蔵にこんな術法が使えるわけもなかった。 「はぁはぁはぁはぁ」 臨空天神波を放った瞬間は収まる炎も、すぐにまた業火となって大切な館を飲み込んだ。 額にいっぱい汗を浮かべながら、それでも臨はやめようとはしなかった。 「りんくう……て、ん……しんは…………」 地を蹴って跳び上がろうとしたのだが、疲労が脚に来たようだった。 気力を使い果たし、臨は膝をついた。 「なんで……こんな術法を体得したって……夢魔を倒せたって」 吹き出す額の汗、そして涙の雫が、握りしめた臨の拳にぽたぽたと落ちた。 「こんな火も消せないなんて! 大切な人を守れないなんて……」 臨はかぶりを振って叫びたかった。 夢、これは夢だ! また無意識に誰かの悪夢の中に入ってしまっただけなのだ、と。 臨は、早く誰のものとも分からぬ悪夢の中から脱出を試みようとした。 しかしそれは夢から覚める事ではなく、激しい疲労からきた刹那の夢への逃避だったのかもしれない。
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暗く何もない世界。大地と空との境もはっきりしない無の世界、それが臨の夢だった。 まるでスポットライトもない、永遠に幕の上がらない真っ暗な舞台のようだった。 いや、臨だけではない。古来より夢守りの民の女は一族の能力に目覚めてから『自分の夢』を見る事はなかった。 人は必ず眠る。幼い頃から眠りの中で鍛えられた臨は、刀自から術法と呼ばれる魔法や仙術に似たものを、御館様からは夢守りの民に伝えられる武術、『夢守二天流』をはじめ、様々な護身術と格技、剣技を伝授されていた。 もちろん。平和になった時代には一生涯、術法を使わなかった者もいたという。 攻撃だけではない。防御、その他様々な術法があり、民人は誰しも必ずひとつの術法を生まれ持っているという。 しかしどんなに鍛えられようと、人知を超えた術法が使えようと、臨はまだ少女だった。 己の運命を背負いながら、その心はいつも壊れそうだった。 それを支えてくれていた二人の保護者、御館様と刀自様が今、この世界に、いつもと変わらない姿で立っていた。 夢魔? 身構えた臨だったがその心配はなかった。 しかし 「死者の夢? そんな、ありえない……」 死者が夢をみるはずはない。しかし、この炎の中で眠っているとも考えられない。 ではまさしくこれは見るはずのない臨の見ている夢なのだろうか。 しかし、それがなんであろうとも今の臨にはどうでもよかった。 変わらない御館様と刀自様が目の前にいる。それだけで臨は嬉しかった。 「臨。夢守りの名を受けし者よ」 臨の耳に厳かな御館様の言葉が伝わった。 「臨よ、強くなれ! 自分の身を守れるように。大切なものを守れるように!」 厳しい中にも常に慈しみの気持ちがあった御館様が変わらずそこにいた。 「お臨や。お前は夢守りの民の中、『夢守』の名を冠する子。お前は夢守の民の希望なんだよ」 刀自の優しい言葉が心に染み込んで来た。 「臨。お前は強い。だから守ってやるのだ。お前以外の夢守の民は未だその能力にも、気がついていない者がほとんどだ」 残留思念が次第に弱くなっていく。 「わたしはお前を本当の孫も同然だと思っていたよ。もう料理を作ってあげられないが、お臨なら何でもできるはず。しっかりおやりなさい」 「臨。できることならお前も普通の娘として生活させてやりたかった」 御館様の優しい言葉。それがかえって臨には御館様の最期を感じさせた。 「私をひとりにしないで! 御館様、刀自様!」 追いかけようとした臨に向かって二人は振り向きながら微笑んだ。 「ひとりではないよ、お臨。長を、他の民人を守りなさい」 臨の顔を覗き込み、刀自様はそう励ました。 「お前の術法と剣技の中で我等は生きている。守り通せ、お前の大切なものを」 「お臨や、お前は強い。必ず己が運命を希望へと変えられる」 二人が段々遠くなり、陽炎のように揺らめき、そして消えた。 「私、そんなに強くない……御館様が、刀自様がいないと……どうしていいのか……」
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「御館様……刀自様……」 それは実際は一瞬の眠りに落ちただけだったのかも知れない。 が、臨にはとても長い時間のように感じた。 あれだけ燃え盛っていた炎は、館を全てを舐め尽くし、跡形も残さなかった。 大地に手を付き、濡れた頬に乾いた風が吹きつけた。 朝日に照らし出された住み慣れた館を、もう一度だけ振り返ってから臨は駆け出した。 女教師の見た悪夢は夜明けと共に消えるだろう。 しかし、臨の悪夢は夜明けの太陽を持ってしても消え去ってはくれなかった。 「御館様。私は長を、夢守りの民を束ねる長を守ります。私の『夢守』の名にかけて」 臨は炎のような太陽に誓った。もう、泣くまい……と。 師であり、育ての親であった御館様と刀自様の最後の言葉を胸に…… 統括された夢魔が軍勢を持って攻めてこようとも、夢魔達が何を企んでいようとも負ける訳にはいかない。 数少ない夢守りの民の末裔は、いまだ夢魔の不穏な動きを知らないのだ。 それどころか自分が「夢守りの民」であることにすら気がついてはいない者も多いのだという。 そして下手をすれば女教師に取り憑こうとしたように、完全に定着しようとするだろう。 そうなれば夢守りの民同士が敵味方となって闘う事になりかねない。 「急がなければ!」 夢魔は『夢守りの民』を恐れている。必ずその命を狙ってくるだろう。 臨は架せられた己の使命を果たすため、一路京都へ向かった。 臨は夢守りの民の末裔を守ると固く心に誓いながらもうひとつの事を考えていた。 「あのビジョンで見た長い刃を使い、二人を殺した『刺客』。必ず私が倒す」 姿は見えなかったが、恐ろしく長い刃を持つエモノを使うヤツが二人の敵のはず。 この旅立ちの果てにどんな結末が待っているのか、それは臨自身も知らない。 暁の太陽だけが、臨の旅立ちにエールを送っているようだった。
「臨様。心中お察しします。ですが元気を出して下さい」 臨の去った後、焼け果てた館の跡にその少年、『吉予夢−きっちょむ−』は立っていた。 「大丈夫。あなたはこれから他の夢守りの民の仲間と出会う事ができるのですから」 少年はそうつぶやくと、どこへとなく歩き出した。 [つづく]【1997/07/28】
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こうして臨ちゃんは旅立ったってわけ。 人の夢の中に入る事のできる臨。 大事な御館さまと、お婆ちゃんの刀自さまも夢魔によって最期を遂げてしまったけど、臨ちゃんには悲しんでいる時間はない。 そうこうしている間にもまだ、自分が夢守りの民の末裔であることを知らないで、恐い夢魔に命を狙われてる人がいるんだから。 え? 私と臨ちゃんはどういう関係かって? 焦らないあせらない! 時が来たら話すから。 頑張れ、臨! 負けるな、臨!
了
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