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ゲーム探検倶楽部ゲームレビュー #105
東方見文録(ファミコン)

購入金額:6000円

ゲーム内容

ナツメのファミコンゲームデビュー作にして、今でもバカゲーマーの間で語り継がれる怪作アドベンチャーゲーム。

主人公「東方見 文録 」は東南アジア大学の4階生。
「東方見聞録」のマルコ・ポーロに憧れ、「黄金の国ジパング」は嘘ではないと信じる彼は、自ら製作したタイムマシンで、代官山で日本一の雑貨屋を営むための資金を得るため、秋葉原で買い込んだ格安の日用雑貨を持って、マルコ・ポーロの時代へタイムスリップしていく。

ゲームの内容は、「新・鬼が島」のように、二人のプレイヤーを切り替えられることが特徴の、普通なアドベンチャーゲーム。
しかし展開は尋常ではなく、主人公「東方見 文録」の性格もあって、キケンで狂ったストーリーが繰り広げられる。
ゲーム内容だけでなく、パッケージイラストやパスワード入力画面までもが異常である。
パッケージにもあるとおり、「ニューウェーブ・サイケデリック・アドベンチャー」というのがふさわしい。

詳しい説明は、バカゲー関連の書籍(後述)を参照。

名言

東方見文録

このゲームの主人公の名前。
「東方見」が姓で「文録」が名前。
東南アジア大学旅行工学科の4階生で、性格のヒズミ大のマッドサイエンティスト。
代々商人の生まれで、夢は代官山で日本一の雑貨屋を営むことである。
今回は卒業旅行、尊敬するマルコポーロに会いに行く、雑貨屋の資金調達の目的で、自ら製作したタイムマシンでタイムスリップするのであった。

彼はゲーム史上類を見ないマッドっぷりで、孤独の賢者をチェンソーで真っ二つにするイベントはクソゲーマー・バカゲーマーの間でも有名である。

おかーさーん…

このゲームの主人公「東方見 文録」が、このゲームで最後に口にする言葉。
このゲームのラストシーンは、想像を絶するものであった。

H.Kuwanoの考察

1.まさしくニューウェーブ

このゲームには、「こういうゲーム展開もあるんだゼ!!」という開発者の声が聞こえてきそうな、まさしくニューウェーブなゲームです。

これまで、これほど狂った、そしてキケンなゲームはあったでしょうか。

主人公「東方見 文録」はマッドサイエンティストで、性格のひずみ大です。
そのため、多重人格か精神異常じゃないのかという行動をとります。
盗まれた荷物を持っていたからといって、訳も聴かずに殴りかかったり、尊敬するはずのマルコを見捨てて、バラスルビーをもらいに行ったり、互いに顔が見えないように一つの木にされた恋人たちを、合わせるためにチェンソーで真っ二つにしたり、ランプの精に女装させた後、殴って気絶させて生贄にしたり、オシャレだからといって宮殿のカーテンをマントにしたり、宮殿で待ちくたびれたからといって秘密通路を発見したり、竹でバズーカ砲を作って宮殿を破壊したり、もうメチャクチャです。

また、メッセージに出てくる実名の一字違いも問題です。
やたらと街の人を殴ろうとすると、「あなたはカワマタブンジですか」というメッセージが出てきます。
この芸風は、同社が開発したゲーム「アイドル八犬伝」でも、「ヤモリミユキ」「タジロマサシ」「ワレナベトオル」などのキャラクター名に受け継がれています。
(しかも名前だけではなくキャラクターになっており、知名度も高いからタチが悪い)

特に印象的なのはラストです。
こんな終わり方のシナリオは、ゲームではもちろん、どんなお話でもみたことがありません。
ネタバレになってしまいますので、そのラストの内容はバケゲー関連の書籍(後述)を参照してください。

2.デキはあまり良くない

シナリオの独特さ(毒々しさ?)はともかく、ゲームとしての完成度は低く感じられます。

まず、シナリオが十分に練られていないようで、矛盾したところもあります。
例えば、東方見文録は裕福な家に生まれ、金歯を入れているのですが、どうして代官山の雑貨屋開業の資金を調達する必要があるのか?
文録は魔法のランプのことは知らないはずなのに、どうして黄金の尿瓶を魔法のランプと分かるのか?等です。

また、二人を切り替えられるシステムも、あまり有効活用されていないように感じられます。
二人の違いは殆どは「話す」「持ち物」で、まれに「調べる」「見る」にも差が現れることがあります。
この点はそこそこ考えられているのですが、その場にいない人に切り替えても無意味のはちょっと…。
このゲームでは、半分以上は二人の主人公のどちらか、さらわれていたり追い出されていたりで、その場にいなかったりします。
そのとき、いない人に切り替えても「彼はここにはいません。」と出るだけ。
それだったら切り替えられなくすればいいのに…。
(この「人の切り替え」を有効に利用したアドベンチャーゲームが、「マニアックマンション」です)

あと、コマンドはBボタンで次のページに移動する、サブコマンドを開いたらスタートでキャンセルするというのも不親切です。
おかげで、知らない人は、誤って「なぐる」を選択してゲームオーバー確定という状態にもなり得ます。
せめてサブコマンドでも「キャンセル」をつけて欲しいところです。

さらに、グラフィックもそんなにすごく良いものではありません。
キャラクターは少ない色で描かれていて、肌や唇の青い人や白い人が出てきたり、文禄の顔や紙の色が場面によって変わっていたりします。
グラフィックのサイズや枚数も少なく、一場面内ではあまり画面の変化が見られません。

3.クソゲー・バカゲー情報誌に見る、見解の違い

これだけスゴイのですから、当然、さまざまなゲーム関連書籍でも「東方見文録」が取り上げられました。
さらに、これだけ意味不明なのですから、いろいろな感想があり、いろいろな憶測が飛び交っています。

ここで、ちょっと面白い見解をしている例を挙げてみます。

3−1.実はド○えもんのパロディ(from ユーズドゲームズ)

ユーズドゲームズ誌において、裏技の音楽セレクトの画面のタイトルが「のびたの おんがくのとも」という点や、タイムマシンが机の上から出てくるところ、困ったときのランプの精、マルコが荷物を持っているところなどから、このゲームは実はド○えもんのパロディであるという欄外コラムがあります。
なるほど、言われてみると確かにそうです。
たとえばタイムマシンはコックの形をしていますが、手の形はド○えもんです。
また、文録の持つリュックには、秋葉原で買った格安雑貨がいろいろ詰まっています(多分上の「マルコの荷物」は、「文録のリュック」の間違いであると思われます)。
これは、面白い発見です。
ちなみに「のびた」はこのゲームの音楽担当の名前のようです。

3−2.実は技術進歩に対する警鐘(from バカゲー専科)

僕はそこまで考えているのではないとは思うのですが、「時を冒した者をどう処罰するか」という答えについて、僕は「なるほど」と感じました。
確かにSFやアニメなんかで、「時空牢」という単語を聞いた事がありましたし。 

それ以外にも、さまざまな対立関係を盛り込んでいるとか、歴史と徐々にずれていくというパターンを踏襲しているとか、この本にはさまざまな考察があります。
役に立たない発見かもしれませんが、なるほどと関心しました。
同じゲームについて考える者として、この考察は考え方を広げるヒントとなります。

3−3.このゲームは、まだ「ゲームが作品と呼べる時代」だからこそ作られた(from 悪趣味ゲーム紀行)

実際の本に書かれていたのは、「こんなユーザー無視の排他的なゲームが作られたのは、案外当時がゲームが「作品」足りえる時代だったからではないか」という感じでした。
僕はこれに共感を覚えました。
そう、このゲームは「作品」足りえるのです。

確かに、このゲームは、これまでのゲームの枠から逸脱し、自分の表現したいものを目指した感じがあります。
また、この後の時代は、「ゲームは金になる」とばかりに、別業種から参入してきたメーカーが増え、儲けを得るために「売ること」を第一に考えた「商品」としてのゲームが増えてきました。
(現在は、老舗の統廃合や倒産により、さらにこの傾向が強く現れているような気がします。
さらに新機種の登場により、ゲームの大容量化が進み、開発にはさらに費用と時間がかかるようになってしまいました。
このことからも、ゲームで儲けを出すことが重要視されているのでしょう。)

ただ、このゲームは本当にユーザのことを無視して作られたゲームだったのでしょうか?
製作元としてはデビュー作になるのですから、ある程度はユーザーのことを考えていたと思います。
きっと、「最近のゲームはおとなしすぎてつまらない。もっと変わったゲームをプレイしたいと思う人もいるはずだ。」 と考えて作られたんじゃないでしょうか。
(それが、時期が早すぎて、受け入れられなかったんでしょう。いわば、「早すぎたバカゲー」。)

項目 バカゲー専科 悪趣味ゲーム紀行 ユーズドゲームズVol.1
タイトル・説明の見出し 摩訶不思議な世界へようこそ!
原作者は泣くでしょう
謎のオンパレード
不条理カルトゲーの極みのようなソフト バカゲーの範疇を超えてしまったかもしれない怪作AVG
クリアしないほうがいいかもしれません
主人公の紹介 紹介・画面写真あり
所属・研究テーマ・夢・尊敬する人
考察では、マルコと対をなす人で、「男」「科学」の象徴として描かれている。
画面写真も考察にある。
紹介あり
所属程度で簡単なもの
キャラクターは殆ど欠陥人格
紹介・画面写真あり
所属・研究テーマ・夢・尊敬する人
もう笑うしかない
ランプの精について 記述あり
「こいつはインド労働基本法により3時間しか働かない。役に立つようで役に立たない存在」
記述あり
インド労働基本法も記述がある。
「本当に巨大梟に食われてしまったのでしょうか?」
記述あり
インド労働基本法で3時間労働、もちろん夜は時間外労働
砂漠の木のエピソード

解説あり
「涙を禁じえないエピソードに対し、文禄の行動は尋常ではない。」
木の名前もある。
考察では、緑と白の木が実際の東方見聞録にあるという記述や、文禄の「科学」に対立する「自然」として描かれている。

記述あり
「あしゅら男爵のような木を、文禄はチェンソーで真っ二つ」
記述あり
「文禄は有無を言わせず斧で木をまっぷたつ」
パスワード画面について 解説あり
「本編とのかかわりは皆無」
BGM・メッセージも解説あり。
章クリア毎に脱力感
考察には、バタイユと本作の関係を考察する材料としてあげられている。
解説あり
「意味不明で文書化困難なパスワード。」
記述なし
その他のエピソードについて 考察にはたくさんのエピソードが掲載されている。 一字違いの名前について、解説あり
「あなたはカワマタブンジですか?」
文禄のヘロヘロのグラフィックの画面写真あり
ゲームオーバーについて 解説あり
顔が文禄の天使がENDマークをもっており、ハズレ文字で埋め尽くされている。」
記述なし 画面写真あり
「ENDマークを持った天使と、ハズレ文字」
エンディングについて 解説・画面写真あり
クリアする頃にはハチャメチャな世界に順応してしまっているが、それでも理解を絶する結末
簡単な説明あり
「以上、全て偽りのないストーリーです」
画面写真あり
説明書の文を引用している。
エンディングを見てこれまでのイメージを大幅変更せざるを得なかった。
クリアしないほうがいいかもしれません
音楽の評価 記述なし 解説あり
バラエティに富んだ大量のBGM。
四季からズームイン朝まで
解説あり
音楽にも怪しげなものが多い
サウンドテストのやり方、画面あり。
パッケージイラストについて 記述なし 写真あり
太田蛍一氏のガロ的パッケージに中身が負けていないのがスゴイ

写真あり
太田蛍一氏を起用し、購入者を限定している

総評 原作があるゲームは多いが、このゲームは全く違う。一体どうしてこんなゲームを作ってしまったのだろう? ファミコンでユーザー無視の排他的な製作姿勢が実現できたのは、案外あの当時が最もゲームが「作品」足りえた時代だったと思うのでした。 バカゲーファンならやらなきゃ嘘だ
H.Kuwanoが見た総評 東方見文録のファンや、バカゲーに対する深い考察を見たい人はこちら。
どちらかというとプレイした人向け。
唯一ストーリーの全容を解説している。
簡単にストーリーの内容を見たい人はこちら。
東方見文録の記述についてはあいまい。
しかし、別冊「バカゲー専科」にない説明もあるので、意外な発見があるかも。

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