日差しが暖かくなり、春が近づいてくると、私たち獣医師は4月からの「狂犬病予防注射」の準備を始めます。我が国では、狂犬病予防法によって飼い犬の登録と、年1回の狂犬病予防接種が義務づけられているからです。
狂犬病は、犬だけの病気とは限りません。私たち人間を含むすべてのほ乳類に感染し、この病気にかかると「100%の確率で死亡」してしまいます。人間への感染の90%が犬に咬まれることによるものだと言われています。
日本では、昭和32年以降の狂犬病の発症は確認されていませんが、それ以前は日本でも狂犬病で命を落とす人が多く見られたそうです。そこで、昭和25年に制定されたのが「狂犬病予防法」。犬はつないで飼うこと、狂犬病予防注射を受けさせることによって、日本から狂犬病をなくすことができたのです。
日本のように、狂犬病が発生していない国はオーストラリア、ニュージーランドなどmわずか十数カ国しかありません。その他、ほとんどの国では現在でもまだ、発生事例が報告されています。これらの地域から今でも年間1万頭以上の動物が輸入されているため、油断はできません。
現在、そしてこれからの将来も安心して愛犬と暮らすために、狂犬病予防注射は絶対に欠かせないものなのです。
平成22年3月27日付 いわにちリビング掲載
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「狂犬病」とは、その病名から“犬だけがかかる病気”と誤解されやすいですが、実際は犬や猫をはじめ私たち人間に至るすべての哺乳動物に感染する病気なのです。人間でも動物でも、一度発症すれば治療手段がなく、ほぼ100%死亡する悲惨な感染症です。
人への感染の95%が犬による「噛み傷」からといわれていますが、私たちが住む日本国内においては、犬に噛まれても感染の心配がほぼありません。しかし、世界に目を向けると、欧米などではアライグマやコウモリなど、自然環境に生息するありふれた動物からの感染事例も少なくありません。「狂犬病」の発生がみられない国は、日本を含め10余カ国しかないのです。
ではどうして、日本はこんなに「狂犬病」の感染が見られないのでしょうか?それは、1950年に『狂犬病予防法』が施行されたことにあります。その結果、飼い犬の登録制・予防ワクチンの接種義務・放浪犬の捕獲に努めたこともあり、それから7年後の1957年に広島県での事例を最後に国内の発症は認められていないのです。しかし、それ以前には「狂犬病は常駐し、幾多の被害を出していたのです。
諸外国との交流が盛んな現在、いつ「狂犬病」が侵入するか予断を許さない状況にあります。ですから、流行の予防策を考え、実行しておく必要があります。「狂犬病」を予防するためには、国内で飼育されてる室内犬も含めたすべての犬にワクチン接種が必要です。しかし、現在接種率が低下しているのも事実。再び「狂犬病」が流行する危険性もあります。安心して愛犬と生活するために、必ず予防接種を受けましょう。
平成21年3月28日付 いわにちリビング掲載
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子犬や子猫を家族として迎えるにあたって、健康と安全のために飼い主さんに知っておいてもらいたいことをご紹介します。
子犬や子猫は、生後1カ月位で離乳します。その後に検便と駆虫をオススメします。胎仔の時に胎盤や母乳から寄生虫の感染があるためです。生後2~4カ月ごろは、母親ゆずりの免疫を持っています。この間は病気にかからないという利点がありますが、同時にワクチンを注射しても効果が得られない時期でもあります。この母親ゆずりの免疫がなくなる時期を待ってワクチン注射を行うわけですが、この時期は個体差があるので、2~3回あるいはそれ以上のワクチンを注射する必要があります。確実な注射時期は、獣医師と相談しながら行うとよいでしょう。
また、犬の場合は生後90月齢以上で、狂犬病ワクチンの接種が法律で定められています。狂犬病ワクチンは、人間が狂犬病に感染しないようにするためのものです。狂犬病のない日本で安心して犬を飼うためには必要なワクチンです。最初の狂犬病の予防注射の時に、各市町村に登録を行います。これは、私たち人間でいう戸籍を作ることと同じ。新しい家族としてきちんと登録してあげてくださいね。
最後に、身元情報のキーとなる固有のID番号が書き込まれたマイクロチップの装着もオススメです。これによって、確実な身分証明書となるため、迷子になってしまった時やもしもの災害・盗難の時にも安心です。
平成20年10月18日付 いわにちリビング掲載
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狂犬病は狂犬病ウイルスの感染によって引き起こされる病気である。感染した動物に咬まれ、唾液中に排出されるウイルスが傷口より体内に侵入することが主な感染経路である。ワクチン接種による感染予防と感染早期のワクチン以外に有効な治療方法がなく、発症すると100%死亡する。
世界保健機構(WHO)の推計によると、世界では年間におおよそ5万5千人が狂犬病で亡くなっている。また、このうち3万人以上はアジア地域での死亡者と言われている。
狂犬病の特徴
- 発症すると有効な治療法がなく、100%死亡。ただし、人では感染後(咬まれた後)にワクチンを連続して接種することにより発症を防ぐことができる。
- 大半では潜伏期が1〜3ヶ月と長い。
- 狂犬病はすべての哺乳類に感染する。人も例外ではない。地域によって感染源動物が異なる。
- 発病する前に狂犬病ウイルス感染の有無を知る手段がない。
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狂犬病は日本など一部の国々を除いて、全世界に分布する。つまり、海外ではほとんどの国で感染する可能性ある。平成18年11月16日現在、厚生労働省が狂犬病の発生していない地域として指定しているのは以下の地域である。
日本、台湾、オーストラリア、グアム、ニュージーランド、フィジー、ハワイ諸島、アイスランド、アイルランド、英国、スウェーデン、ノルウェー
日本国内では、人は昭和29年(1954年)を最後に発生がない。また、動物では昭和32年(1957年)を最後に発生がない。現在、日本は狂犬病の発生のない国である。なお、輸入感染事例としては、狂犬病流行国で犬に咬まれ帰国後に発症した事例が、昭和45年(1970年)に1例、平成18年(2006年)に2例ある。 2006年11月にフィリピンで犬にかまれ、帰国後狂犬病を発症して亡くなる事例があった。狂犬病の輸入感染事例は1970年ぶりである。
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主な感染源動物は以下のとおり。中でも、犬が人に対する主な感染動物である。
- アジア及びアフリカ イヌ、ネコ
- 西欧諸国及び北米 キツネ、アライグマ、スカンク、コウモリ、ネコ、イヌ
- 中南米 イヌ、コウモリ、ネコ、マングース
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吸血鬼は狂犬病にかかった人たちの話ではないかと言う説があるそうです。
色々な文献や噂によると、吸血鬼の特徴は以下のようなものです。
- 犬や狼とともに現れる
- 村々の犬を殺す
- 農村に住む貧しい男性である
- 夜間に行動する
- 他人(特に若い女性)や家畜の生き血を吸う
- 墓場に住む
- 吸血鬼に襲われると吸血鬼になる
- 犠牲者が現世にさまよう
- 犬や猫、こうもりに荒らされた死体が吸血鬼になる。
- ニンニクや鏡、水(聖水)、煙、十字架を恐れる
- 死後遺体の保存状態が良い
- 寿命は約40日間である。
これだけでへえ?と思う事も多いですが、何と!これらはほとんど狂犬病で説明ができるそうです。スペインの神経医学者Juan Gomez-Alonsoが提唱しています。
狂犬病は、RNAウイルスである狂犬病ウイルスによる人獣共通感染症です。犬、狼が最も主要な宿主ですが、猫、キツネ、コウモリ、リスなども感染します。感染した動物は凶暴となり、ウイルスは神経を伝わって脳に行きます。1日数ミリずつ神経を侵しながら脳に向かいます。手足を噛まれれば数ヶ月、顔なら数日で発症します。
最初は風邪のような症状だそうです。脳に達し、大脳辺縁系に感染すると、激しい攻撃性、性欲亢進、夜間の俳諧、知覚過敏(よってニオイの強いニンニクや光大きな音を避ける)、飲水による喉頭のけいれん(よって水を怖がる)などが起こります。吸血鬼そのものです。
1721年から1728年には、ハンガリーで犬や狼に狂犬病が大流行したそうです。フランスの哲学者ボルテールが「1730年から1735年の間、吸血鬼は人々の最大の話題であった。」としているのと一致します。
ちなみに、狂犬病は日本にはありませんが、いつ発生してもおかしくありません。隣の中国などほとんどの世界で発生しています。外国に行ったら動物に噛まれないように気を付けましょう。
日本の狂犬病は、1732年にオランダ人によって長崎にもたらされたそうです。それから全国に広まり、日本狼絶滅の発端となったとされています
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犬に限らず狂犬病に感染している動物がペットとして海外から日本へ持ち込まれる可能性は常にある。また、狂犬病以外の人獣共通感染症に感染した動物がペットとして日本に輸入される可能性もあり、近年の愛玩動物の輸入増加とともに問題視されている
海外の事例として、2003年にボリビアにおいて狂犬病に感染した状態でペルーから輸入されたハムスターが人を噛む事故が発生している。因みに2003年に日本に輸入されたハムスターだけでも約50万匹に上っている。
厚労省は輸入動物を原因とする人畜共通感染症の発生を防ぐため、2005年9月1日から「動物の輸入届出制度」を導入した。
狂犬病流行地ロシア船との貿易が多い北海道では、ロシアからの不法上陸した犬の存在が確認されており危険視されている。
一方、狂犬病行政の問題としては日本では犬以外のペット(特に狂犬病ワクチンの適応対象となっている猫)に対する狂犬病などの予防注射が法で義務化されていない事や、国内発生が長く無かったためそもそも犬の飼い主のモラルや遵法意識(未登録犬も含めた予防注射実施率は約40%)が低下していること、感染が疑われる動物に対する公的な調査体制が整っていないことなどが、再侵入の危険性に拍車をかけている。
もし、狂犬病が日本に再度入ってきたら・・・・
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