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言語学バーリ・トゥード 川添愛 働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 川添愛 ヒトの言葉 機械の言葉 川添愛 Making Sense David Crystal 英語の謎 歴史でわかるコトバの疑問 岸田緑渓・早坂信・奥村直史 英語史概説 F.A.モセ 中動態の世界 意志と責任の考古学 國分功一郎 |
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川添愛『言語学バーリ・トゥード』東京大学出版会 2021 「バーリ・トゥード」という言葉を知らない人は、「バーリ・トゥードって何だろう?」と気になるし、知っている人は、これは面白そうだと手にする。タイトルで既に著者の術中に嵌っている。 著者の漫談を楽しみながら、言語学の幾つかの視点を学ぶ本といえば余りにもそっけない紹介になろうか? 皮の厚い美味しい饅頭にちょっぴり餡(言語学)が入っているといった感じ。本書は餡より皮が美味しい饅頭 餡の部分を著者に無断で、私流にで取り出すと次ようになります。 01 あいさつの研究 02 意味と意図 03 AIと意図 04 「コピュラ文」 「は」と「が」 「同一のもの系」と「役割に担い系」 05 言語学は何か 06 チョムスキーの普遍文法 言語とは 07 過剰一般化 08 自虐的発言への応答 09 言葉に組み込まれた前提条件 10 チェコ語に挑戦 11 変な文探し 12 変な英語 13 プロレスの技の名まえ プロレス・ファン向け 14 言葉は難しい 15 覚えるための語呂合わせ 15 「 」 ・・・の機能 この本はある読書クラブでは2021年8月20日岩嵜誠 さんが紹介しておられるが、私はその時、図書館に予約申し込みをしたのだが、10か月後に届いた。 |
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川添愛『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』 人工知能から考える「人と言葉」 朝日出版社2017 一口言えば、「言葉が分る」とはどおいうことか?かの追及であるが、川添愛さんの 『ヒトの言葉 機械の言葉』が面白かったので、少し前の本でこの人の考えを確かめたかった。 イタチが役に立つロボットを開発しようとする寓話を通じて、人と機械の言語学的追及をしているのだが、章ごとにグレイの頁で、言語学的知見を纏めてあるので、私は、そこだけを読んだ。基本的には『ヒトの言葉 機械の言葉』と変わりがないのだが、良い復習となった。 備忘のため、目次とキーワードを記録しておきます。 1.言葉が聞き取れること 音声 ー 音素(音声のカテゴリー化) ー 単語の区切り ー 人間の無意識の能力 2.おしゃべりできること 言葉が分る ー 人間と機械の区別 ー チューリングテスト 明確な目的を持った会話と雑談 3.質問に正しく答えること 記憶力と検索能力 「答えのタイプ」の推測 ― 「検索用キーワード」作り、情報源を検索 ー 「答えの候補」の抽出 ー 信頼度に基づき答えを選ぶ。 「言葉の世界」だけの「理解」 リンゴを食べたことのない人どう説明するか?体験、信頼性 4。言葉と外の世界を関係づけられること 画像認識 ー 深層学習 ー 画像が表現できないもの ー 外界と真偽 5.文と文との理論的な関係が分ること(1) 論理学入門 ー 論理片付かないもの、 感情、間違い、言葉の定義、隠れた前提、曖昧性、 6。文と文との理論的な関係が分ること(2) 文を推論パターンに当てはめる。 7.単語の意味について知識を持っていること 機械用辞書を作る。 ー 意味の自動獲得 8。話し手の意図を推測すること 意味と意図との食い違い - 多義語 会話の含みー Griceの協調の原理(量、質、関連性、様式) 9。その後のイタチ 人間の言語習得の不思議 ー 言葉についてのメタな認識 ー 他人の考え感情の推測 著者が最も時間をかけたのはイタチやタヌキや様々な生き物が登場する寓話の部分であろうが、それを読み飛ばして、ちょっと失礼をしたという感がぬぐえない。 2021・11・6 |
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川添愛 『ヒトの言葉 機械の言葉 「人工知能と話す」以前の言語学』 角川新書 2020 A I ― 機械学習 ― ディープ・ラーニングといった人工知能の事柄が十分に理解できていないので、少し明瞭なイメージを作ろうと色々と探索している。この本もその一つである。この著者の語り口は上手い。 第一章 機械の言葉の現状 優れた記述で、AIに関するもやもやが一掃される。。 要は、AIは入力(数字)と出力(数字)の変換するものであり。 限られたデータの中からパターンを発見し、新しいデータに対し分類や予測をする関数を求める技術である。ディープラーニング(ニュートラルネットワーク)も膨大なパラメーターを持つ関数である。(同書63頁) これを分かりやすく説いている。数字とあるのをもう少し詳しく述べたり、ディープラーニングについて、もう少し紙幅を与えれば立派なAI入門書となると思う。 問題はその関数が膨大過ぎて人間では追えなくなり「ブラックボックス」化する事である。 もう一つは機械が意味を分かっているのか?という問題に当面する。 第二章 言葉の意味とは何か 実は、これが分かっていない。「心の中のイメージ説」「脳の状態説」「外のっ世界にある何か説」「心理条件説」など言語哲学の分かりやすい説明。現状では意味とは何かははっきりしない。機械は意味を理解出来るのだろうか? 第三章 文法と言語習得の謎 われわれは殆ど無意識に母国語を習得しているが、そのメカニズムはっきりとわかっていない。 褒められたり注意されたりして言葉を覚えるというスキナ―の説 より多くの事例に当てはまる規則性を見出すという機械学習と同じ学習説。 限られた事例のどこに目を付けるかに関して「形状類似バイアス」「相互排他性バイアス」 ある。 ニューラルネットラークを用いた脳のモデルを利用して、言語習得のみならず、人間の知的能力全般を説明しようとする考えは「コネクショニズム」と言う。 チョムスキー は 「先天的なÞ繰り込み」「普遍文法」あるという・ 第四章 コミュニケーションを可能にするもの 言語が分かったらコミュニケーションが出来るかというと、言葉の意味と話者の意図とが異なる場合もあり、その意図を理解するには言語以外の環境の理解必要。「フレーム問題」という。 第五章 機械の言葉とどう向き合うか 「どうすれば機械が知性を持ってるかどうかを判断できるか」の一つの基準をしましたのが「チューリング・テスト」 機械が人間と同じ仕方で言葉を理解しなくても役に立てば良いという考えもある。 いづれにしろ、機械の言葉を考えることは、人間の言葉の本質を探るうえで重要である。 2021・10・27 |
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Making Sense The
Glamorous Story of English Grammar
by David Crystal 2017 英語、文法に関心ある人には、面白い本である。 生後18か月のスージーちゃんの言葉から、言葉が意味をなす(make sense)というのは、どういうことかという話となり、sentence(文)という概念が導入され、彼女が言葉を習得する過程に沿って、文法の基本概念、主語・述語、シンタックス、語尾変化、品詞、格・・・と、素晴らしい話術で、文法の世界に導入される。 18世紀に風靡したLindley Murrayの規範文法話から、文章の「分かりやすさ」を取り上げる所から、さらに面白くなる。 意味を分かりやすく伝えるend-weightの法則や、Sooner or later やfish and chips など2つの語が対になっている言葉でなぜ、それが逆にはならないのか?といった、様々なトピックスが続く。私はこの部分が最も面白かった。 後半は、歴史、地域による語彙、文法の差異は言語の変化を鳥瞰するのに役立つ。 初期近代英語ではシェイクスピアにも数ページを割いている。(Thou とyouとの使い分けは、シェイクスピアから事例を示す。)Harry Potterの英版と米版にも触れ、英語と米語とは文法的に差異は大きくないという。英語のグロバル化、インタネットによる流通など、変化を続ける様相が示されている。最後に、教え方やテストの際の留意点など、先生用の情報が付いている。
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『英語の謎 歴史でわかるコトバの疑問』 私は、中学、高校と英語嫌いで、その大きな原因は、スペルと発音の関係が余りにも恣意的で、訳が分からなかったからである。"a"は多くの場合,オと発音されるし、"o"はアと発せれる。発音されない字も多く、同じスペルで、現在と過去では発音が異なる。動詞の不規則のな変化も不思議。要は不合理な言語で、暗記を強いるだけという印象が強かったからである。しかし、高校2年になって少し英語にも興味を覚え始め、先の質問となったわけである。 言葉には、例外があり、理屈でわからないことあることは、承知しているが、英語は奇妙な言語であるというイメージが今でもある。だいぶ慣れてきた(慣らされてしまった)けれど、この本は、私の英語についての多くの疑問に答えてくれた。 |
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F.A.モセ 郡司利男・岡田尚訳 『英語史概説』開文社出版 英語史の本は何冊も買ったが、最後まで読み切った本はなかった。この本も何年か前に、キャロル協会で安井泉先生が面白いと言っておられたので買い、そのまま放置していたのだが、最近、枕頭に置いているうちに読み終えてしまった。フランス人による英語史概観で大部のものでないので、大雑把に歴史を知ることができ、ちょっぴりすっきりした。ノルマン・コンクエストにより、フランス語の影響を大きく受けたのは当然のことであるが、ラテン語、ギリシャ語など貪欲に吸収し、語彙を増やしていく。産業革命以降の英国の隆盛に伴い、逆に英語がフランス語に取り入れられる様も示してくれる。アメリカ英語についての記述も面白い。 この翻訳のお蔭で何とか英語の歴史を辿ることがで出来たのはありがたかった。そして、私がいつまで経っても英語ができない理由も分かった。何しろ語彙数が圧倒的に多い。 松村 恒 :この訳書はまだ出ていたのですね。書影のデザインの版はみたことがありませんでした。モセの影響力は大きくて、中英語マニュアルはそれを英語訳して、英語圏の学生もいまだに使っています。英語史の原書はリヨンででていた言語叢書の一冊ですが、同じ叢書にルイ・ルヌーのサンスクリット語史があります。ヴェーダ語文法もこのシリーズです。いずれもモセの書におとらぬ出来映えですが、モセの書ほどもてはやされていません。両言語の学習者人口数を考えてみれば、当然かもしれませんが 宮垣弘 :松村様 上記の本は2002年4月 第44刷のものです。 |
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國分功一郎 『中動態の世界 意志と責任の考古学』 医学書院 「する」は能動態、「される」は受動態という枠組みに馴れているが、かって,ギリシャ語やサンスクリットなど古い言語には能動態や受動態の他に中動態があった。ラテン語以降消えてしまったが、この中動態を追及した本です。著者は「誰も気にかけなくなった過去の事件にこだわる刑事のような気持ちでこの中動態のことを想い続けていた。」と言っている。私もどこへ連れて行かれるのか分からない、推理小説を読むような楽しさを味わった。 能動態ー受動態という図式で物事を捉えることに慣れてしまっている我々には、中動態は理解できない。もともと、能動態ー中動態という対立図式があって、そこから、受動態が生まれるといった議論に進み、やがて、動詞の発生経路から,中動態が先なのだという風に展開する。これを理解するには、著者の周到な論述を経ないと分からないのだが、その展開の中で、言語と思考、言語の発達史、意志、自由、権威、暴力といった刺激に満ちた議論がなされるので、読みだしたら止まらなかった。 アリストテレス、スピノザ、カントをはじめ、ハンナ・アレントやドゥルースなどに交じって、日本の英文学者、細江逸記の言説(1928年)が取り上げいるのは愉快。(著者は、金谷武洋『英語にも主語なかった』(2004年)によって知ったという。なお、金谷は同書の中で20頁にわたり中動態(相)について論じている。)
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