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  • Right Ho, Jeeves' by Wodehouse 1934
    ' Who's Who in Wodehouse' by D.H.Garrison 1989

ジーヴス・シリーズ5冊目。
主人公バーティーの魅力の一つは、友情に厚く、親戚縁者には義理堅いところである。皆が彼を頼ってやって来て、彼も恋愛をはじめ、多くの問題の解決に力を貸す。それに従者ジーブスが惜しみなく協力する所が素晴らしい。しかも、問題の解決はほとんどジーブスの才覚と行動力による。こうなると、友人、縁者もバーティーに近づくのは、もっぱらジーヴスを目当てにし、それをあからさまに言うので、バーティの自尊心が傷つくことが多くなってくる。5冊目も、問題続出のドタバタ劇。次々と読者の予想を裏切って、物語を展開する作家に出会ったのは初めてである。こんなことが可能なのは、登場人物が、皆、変人奇人、強気個性の持ち主が多いからである。ウッドハウスの面白さは、これらの人物が繰り返し出てくるので、読めば読むほど、知識が増えて面白くなってくる。読者が、手元にWho's Whoを置きたくなる。そして、日本人になじみの薄い、使用人たちのことも気になり始める。
’The Rise and Fall of Victrian Servant' by Pamela Horn 1990

文章は難しい。「マクベス」のセリフをさりげなく織り込んであったり、英語圏読者には、笑いを誘う表現がばらまかれているのだが、私は筋を追うだけでやっと。こんな文章を一体どんな風に訳しているのか気になり始め、図書館に森村たまき訳『よしきた、ジーヴス』の予約を入れた。(続く)


  • 戸苅 康子 ご興味あるかどうか...アンドリューロイドウェバーが昔ミュージカルにしています。ロンドンとブロードウェイで観ました。私は面白いと思いました。2014年にに日本でもやりましたがそれは未見です。https://www.google.co.jp/.../www.../news/20140611-jeeves/amp
  • 宮垣弘 戸苅さん、ウッドハウスの作品の映画化、演劇化されたものが沢山あるようですね。ウッドハウス・ファンの英国人に言わすれば、映像化、舞台化されたものを見ることによって、ウッドハウスの言葉使いの面白さがよくわかるようになると言っています。私も折あらば見たいと思っております。

 

  
   

P.G.ウッドハウス 森村たまき訳『よしきた、ジーヴス』国書刊行会

  皇后のご発言に端を発した「ジーヴス・シリーズ熱」は下火になったのだろうか?図書館に予約した本は待つことなく届いた。原作はあと2章残っていたが、そこを翻訳で読んでみた。日本語だとあっという間に読めてしまった。そして、それほど違和感はなかった。
  ジーブスの丁寧な言葉遣い'Yes,sir.'とあるところは「はい、ご主人様」と逐一訳してあって、戸惑うが、これも、階級差のはっきり社会の小説らしくて良いのかもしれない。。
  ジーヴス・シリーズは、場面設定が、第一次大戦前のイギリスで、主人公のバーティーが、語り手を務めているのだが、バーティーはその時代の言葉使いをふんだんに使って語るのである。
  相手の呼びかけ語もchump,bean,bird,thing,egg,fish,chapie・・・などにoldやpoorなどを付けて使うのだが、信じられないほど豊かである。goという代わりに、repairを使ったり、yesの代わりにratherを使ったり、表現が万事古めかしく、一種の戯作文に近い文体なので、到底訳しきれるものではないのだが、逐語訳的に、そのニュアンスを伝えようと、時々訳注も挿入して、訳者の努力は相当なものだと思った。、

 今日、英人Pさんに会った時、文中のある女性一人だけが、the Bassettとthe が付いているのか尋ねたら、彼は、笑い出して、これがWodehouseのうまいところで、Bassett(姓)の者はたくさんいるが、読者が想像できるある人を指すのだという。私にはそのおかしさが理解できなかった。翻訳でもこのtheは無視されていた。

  改めて、読み残しの原文、最後の2章を読んでみると、筋が頭に入って所為か、すらすら読めた。私程度の英語力の者は、翻訳と原文、両方読むと良いのかもしれない。P/G

 

  
   

The Code of the Woosters by P.G.Wodehouse 1938
(『ウースター家の掟』)

この本を電車で読んでいて、2度乗り過ごしてしまった。次の駅が小さな駅だと向いのホームから引き返せば良いのだが、大きな駅だと階段の上り下りが伴う。!

cow-creamarってなんだろ?日本人には馴染みがない。銀製のウシ型のクリーム入れなのだが、これをコレクションの対象としている人がいる。ダイア叔母さんのバーティー・ウースターへ命令はこれを獲得することにある。一方、旧友グージーから、結婚寸前に破綻が来そうだとSOSが来る。ページをめくる毎に、新しい展開があり、いくつかのプロットが絡み合いながら進む。上流社会の、いづれも強烈な個性を持った面々が、繰り広げる椿事。作り話と知りつつドキドキさせられる。最後、込み入った難題を、ジーヴスの知恵で見事大円団に持ち込む手際も見事なもの。
ユーモア小説の傑作といえる。

問題は英語が難しい。Jeevesシリーズでは、殆どが主人のバーティー・ウースターの語りによってなされているが、その語り口は、第一次大戦以前の口調だと言われる。大げさな、持って回った言い回し、故事、詩の引用など、その表現自体が、英米の人には面白らしい。ジーブスの馬鹿丁寧な応答、登場人物の言葉遣いそのものが、作品の魅力なのであるが、英語話者でない我々にはわからない。翻訳ではこの面白さは消えるのであるが、森村たまき訳は、逐語的に丁寧に訳されており、訳注も大いに役立つ。例えば、Sidney Cartonという名が出てくるが、これが、[ディケンズの『二都物語』の登場人物。愛する女性のために夫の身代わりとなって処刑される。〕という訳者の注がなければ、会話が理解できない。

このシリーズの面白さの一つは、主人公ウスター・バーティーの人柄にある。金持ちのボンボン、気はいいが、少し抜けたところもある。しかし、なんといっても、友情に厚く、友達、親戚の期待に全身で応えていくところに、得も言えぬ爽やかさがある。ウースター家の掟は"Never let a pal down"
「汝、友を落胆させるべからず」