日本語論(1)        日本語論(2)  Topへ   
   日本語の素晴らしさを日本人自身が気付いていません。劣等感を抱く人もいて、私もかってはそうでした。この偏見は、外国人に日本語を教える過程で、日本語を姿が次第に分かり始め,
変化しました。
 

  
    2015年3月14日

日本語の美しさ

英人Pさんに、一年がかりで、文語文法を教えて、今、『竹取物語』や『徒然草』を読み始めています。理解を確かめる意味もあって、時々英訳してもらいますが、そこで感じることは、日本語はなんと美しいことか、ということです。
「つれづれなるまゝに、日暮らし、硯に向ひて、心に移り行くよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、怪しうこそ物狂ほしけれ。」
これを、皆さんも一度英訳(勿論、他の言語でもよいのですが)してご覧になりませんか。
翻訳と和文を比べると、和文の良さがよくわかります。


  • 『徒然草』序段の翻訳比較が
    http://tomoki.tea-nifty.com/tomokilog/2007/09/post_1db9.html
    にありました。
    読めない言語もありますが、ドイツ語訳は素直で見事。中国語訳も面白い。

    竟日無聊,對硯枯坐,心鏡之中,瑣事紛現,漫然書之,有不甚可理喻者,亦可怪也

    現代日本語訳は、おおむねお粗末。
  • 竹内 美紀 昨日読書会で、現代日本児童文学作家の作品を読んでいて、短いながらも美しい日本語に感動して、『枕草子』や『徒然草』を思い出していました。和文もちゃんと読めるようになりたいです。
 
 

  
   

松尾義之日本語の科学が世界を変える』筑摩書房 2015

「日本語は非論理的で科学には適していない言語である」という偏見に対して、日本語で十分科学できるし、さらに、日本語でなされた思考作業によって、世界的な成果が得られる。これが著者の言いたいことである。明治の始めすでに必要な語彙を持ち、その後も生み出して、自国語で科学できる数少ない国でことを示し、現実に多く世界的な科学者を生み出しているという。湯川秀樹を初めてして、最近のips細胞の中山伸弥に至る多くの学者を取り上げて、興味深い話題を提供しており、これは著者が長年の科学ジャーナリスト、科学雑誌の編集に経験なくしては書けないことである。
日本語そのもの分析はそれほど深くなされているわけでない。キリスト教の強い縛りや、二元論から自由な、日本文化の多神教的風土や現実重視の態度が、ユニークなアイデアを生み出していることも示す。科学の世界を鳥瞰して、日本の科学の特色を浮き彫りにしていて、素人の私が読んで面白かったが、実際科学の世界に身を置く方が読めば面白いだろう。アマゾン、科学テクノロジー部門第1位のベストセラー。

 

  
   
2015年2月21日

佐藤文夫『詩と民謡と和太鼓と』筑摩書房
この本は、3部に分かれていて、詩の調子について、民謡の伝統について、そして、和太鼓の国立劇場などでのパーフォーマンスの短評から成り立っている。いずれの部分も、知らないことが沢山あり、何よりも著者の情熱が感じられて面白かった。
巻末の収集文献のリストは、この方の探求の成果の一つで、読者にもありがたい。

英詩については韻律法(Prosody)の本が沢山あるのに、日本の詩歌の韻律について書いた良い本にはなかなか出会わない。(ご存知の方は教えてください)この文献リストの中にあるかも知れない

 
   
 
   

  韻  律

漢詩は詩形、平仄、押韻がしっかりしており、英詩には「韻律学」(Prosody)があるのに、言霊の幸ふ国、日本に韻律の学が発達しないのはなぜだろう。日本の詩歌の韻律について、なかなか良い本に出遭わない。
そんな興味から、笹公人『ハナモゲラ和歌の誘惑』小学館を手にした。ハナモゲラ和歌とは、例を挙げると「みじかぴのきゃぷりきとればすぎちょびれすぎかきすらのはっぱふみふみ 大橋巨泉」のような和歌である。和歌の韻律を持ちながら、意味不明なのである。全く無意味かというとそうではなく、何か解釈を許すところがまた一つの特徴である。
キャロル・ファンにはお馴染みの『鏡の国のアリス』のJabberwockyの詩のようなものである。ハンプティ・ダンプティが解釈して見せるが、もともと詩して、韻律を楽しむよう作られたものである。
韻律に関して、本書は前三分の一ほどに、母音を中心とした考察、57577の不思議といったことが述べられているが、私には目を見張るものはなかった。中程は、短歌における様々な冒険、後半は著者の和歌遍歴の自伝的な文章、俵万智の「サラダ記念日」への言及など面白く、最近の和歌の世界に触れる良い機会となった。
最後に収められた、著者とジャズ・ピアニストの山下洋輔との対談が、ハナモゲラ和歌の発生の現場を見るようで、興味深かった。

同じ興味から、栗原敦監修、杉田洋子編『宮沢賢治のオノマトぺ集』ちくま文庫も覗いてみたが、使われている事象によって分類はされているのだが、韻律の面での掘り下げはほとんどなされていない。「知的・思惟的では切り捨てられがちな生理的・肉体的存在感の奥深さに満ちた賢治オノマトペの魅力はとうてい言い尽くせませんね。」と結ばれている。

日本語の韻律について、良書あればお教えください。



ーーーーーーーーーーー
;
Toshiro Nakajima 世界的に流行した「ピコ太郎」現象は、まさに英語の押韻を日本語に応用したものです。中村真一郎、九鬼周造、土居光知、兼常清佐などの日本語の韻律研究・実践はいいものです。とくに常兼はお薦めです。マチネポエティックの運動もご参照ください。
宮垣弘 nakajima先生
色々ご教示有り難うございました。折を見て、ご紹介の方の著作を覗いてみます。
韻律論で私の記憶に残るのは、別宮貞徳『日本語のリズム』(講談社現代新書、再版、ちくま文庫)くらいです。
  • Toshiro Nakajima 重なって所持している本は、またお送りします。この問題はなかなかいい答えが出ません。音楽家の兼常のものは贔屓です。
 
   

  
   

図書館の本の選択の怪

本の置き場がないので、できるだけ図書館を利用しているのですが、最近、不思議な現象に出会ったので報告します。写真の本の購入依頼をしたのは約1年前ですが、やっと、最近東京都中央図書館の本が回ってきました。区によって予算制約があり、利用者の希望を叶えられないのは理解できるのですが、調べてみると、都下にある多くの図書館のどこにもこの本はありませんでした。本書自体はとても面白く、日本語教師をしているなら、一読をおすすめしたい内容ですが、(FBのお友達には日本語教師はおられないので内容には触れません。)ただこの本は、現在日本語教育の標準的な教え方とは、全く異なり、従って、「日本語能力試験」などのレベル(教育進度)とは合いませんので、反体制的?とも考えられます。私が不安に思うのは、公立図書館の選書の基準に問題は有りはしないか?ということです。選書のルールがどうなっているか知りたいところです。

  • 宮垣弘 付記:

    外国人に日本語を教えることのない人には無縁の話ですが、この本の内容に付いてポイントを書いておきます。日本語教育では、我々が学校で習ったような文法を教えません。「~は~です。」「~は~じゃありません。」といった文型を積み上げながら習得させてゆきます。動詞の活用は、ない形、ます形、辞書形、ば形、よう形、て形(学校文法の未然形、連用形、終止形。連体形、仮定形、に対応)と呼ばれ、文型の中で、ばらばらに少しずつ導入されます。本書の特徴は、この活用を初期の段階で丸ごと覚えさせて方が効率がよく、そのため
    そのために『動詞つき50音表』暗唱させるという方法を提示していることにあります。他にも傾聴すべき意見が述べられていますが、特に革新的要素はありません。活用形の一括暗記ということが、外国語習得法の要ともなることを思い出させてくれた著者の功績は大きいと思います。問題は、これが何十年と続いてきた日本語教授法と進度が合わないとことと『動詞つき50音表』が特許とされているということです。この二つで、従来の先生は戸惑ってしまいます。

    私自身、著者の特許取得行為には強い違和感抱きますが、本書の内容には傾聴すべきものが多くあります。ネット上で「ニューシステムによる日本語」で検索すると内容がわかります。

    (私の疑問は、このような本が、都下では、中央図書館にだけしか無いということです。
  • 木下 信一 一応、日本語教育能力検定には合格しています(^^;;
    宮垣弘 日本語の先生ができますね。実際に教えて見ると良い思ます。

日本語論(2)