日本文学史  Topへ
   西洋の文学に目を奪われて、自分の国の文学について、余りにも無知で過ごしてきた。  
  
   風巻景次郎『中世の文学伝統』岩波文庫1985


  巻末の久保田淳の解説によると、本書は風巻景次郎(1902-60)が昭和15年、38歳の時、日本放送出版協会から「ラジオ新書」の一冊と刊行された。  
  浅学の私であるが、中世の和歌の世界がこんなに分りやすく説いた本を知らない。驚くべきことは、38歳の若さで、ここまで書く知識と分析力と表現力である。

   俊成、西行、後鳥羽院、定家、宗祇 など多少は知っている歌人たちが、この和歌史の中で、上手く位置づけられているし、知らない歌人たち、歌集、歌論書、二条家、古今伝授など、ふんだんに出てきて、和歌の命脈がどのように受け継がれてきたかよくわかる。

  万葉重視、古今集以降の和歌の軽視する私の偏見を改めるに十分な本であった。  

  これは中世の和歌史であるが、勅撰和歌集が中心なので、政治経済の歴史を学びたいという意欲を刺激する不思議な本でもあった。

    1955・8・17  初読
    2022・2・7   再読

 

  
  丸谷才一『日本文学史早わかり』講談社