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自然科学万能の時代に生きて居ながら、その基礎となっている、相対性理論も量子力学も殆ど知らない。 カルロ・ロヴェッリの本はつまるところ、世界をどうとらえるかを物理学者として述べているのですが、同テーマで、野口慊三さんが、 『「意識の宇宙」のアリス』の第2章科学(p30-88)で、科学の限界を含めて、易しく語っています。 『世界は「関係」で出来ている』 『時間は存在しない』 『すごい物理学講義』河 |
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カルロ・ロヴェッリ『世界は「関係」で出来ている』 冨永星訳NHK出版2021 英文からの重訳:英文タイトル: Helgoland:Making Sense of the Quantum Revolution この人の語り口に魅せられているのである。翻訳が良いのかもしれない。 {わたしはこの本を、何よりもまず量子物理学にはなじみが薄いが、それでも量子力学どんなもので何を意味しているかをできる限り理解したいと考えている人々に向けてまとめた。」p12 読んでみるとやはり面白く、その目的は果たしていると思うが、骨が折れた。 後半、ナーガールジュナの「空」に共感を示し、シェイクスピアの「テンペスト」にも及ぶのだが、物理学は哲学、宗教教理に近くなっている。 物の世界と心の世界をどうすれば結びつくのか、真剣な追及がなされている。(が、答えはない。) ー----- 以下備忘メモ 第一章 1925年、ハイゼンベルク(当時23歳)北海の孤島ヘルゴラント島での思索。 電子が原子核の周りを決められた軌道を廻っているが、軌道から軌道へ飛び移る<量子飛躍>について考える。観測可能な量だけ考える。元の軌道と飛躍する軌道を「行」「列」で表わす。 ハイゼンベルク、ボルン、ヨルダンー行列理論の計算結果はボーアの仮定していたエネルギー値と合致。 観測可能な量だけ。「行列力学」 シュレーディンガー 電子を波とみなし、Ψ(プサイ)と名付ける。「波動力学」 確率の予想. アインシュタイン「神はサイコロを振るか?」 私たちが電子を見ていないときは、シュレーディンガーの書いた方程式に従って発展する。そのくせ私たちが電子を見ると、ひゅっと1点み凝縮して、小さな粒子を目にすることになる。 エネルギーをはじめとるる物理量は粒状(離散的) プランクー波は基本エネルギーの整数倍でしか伝わらない。 ħ は「エイチ・バー」 ħ =h/2π h:プランク定数 XP - PX =iħ 第二章 量子の「重ね合わせ」 相反する2つの性質が同時にある。 われわれ見ることが出来るのは重ね合わせの結果「量子干渉」だけ。 観測するだけで干渉は消える。 シュレーディンガーの猫 多世界解釈、隠れた変数、波動関数の自発的収縮 認識論的解釈 QBイズム 観測主体について考えられていない 第三章 相互作用なくしては、属性なし。(属性のないものは存在しない?) ある対象物にとって現実であるような事実が、常に他の対象物にとって現実であるとは限らない。p89 明確な属性を持つ互いに独立した実体ではなく、ほかとの関係においてのみ、さらには相互作用したときに限って属性や特徴を持つ存在だ。p93 出来事はとびとびで連続しておらず、確率的で相対的だ。p94 第四章 エンタングルメント 遠く隔たった2つのものが、あたかも語り合っているようようにある種の奇妙なつながりを保つ現象。 2つの説明とジョン・ベルの反論 リー・スモーリングの直観 自分の体のすべての原子が、この銀河の至る所に散らばっている何百万もの原子とエンタングル状態にある。p102 二つの対象物の属性は、三つ目の対象物に関する事柄を表わしている。 間主観性 公準 (1)ある対象物に関する情報の最大量は有限である。 (2)いかなる対象物に関しても、常に新たに関連する情報を得ることが出来る。 ハイゼンベルクの不確定性原理。 ΔXΔP≧ħ/2 光子の粒状性 日常生活では量子干渉は肉眼では見えない。 第五章 ボグダーノフとレーニンの対立 【唯物論と経験批判論」でボグダーノフでマッハを「観念論者」とする。 エルンスト・マッハ 「感覚を超えたところにある仮想の現実を推定したり直観的に把握したりすることで知識は得られるとは考えなかった。それらの感覚に関する私たちの考え方を効率よく組織化する試みこそが、知識なのだ。」p126 「感覚」は「要素」「関数」 レーニン:「唯物論」を精神の外側に世界が存在するという信念と、定義している。」 「この世界には時間と空間を動く物質以外に何もない」p130 「対象物のあらゆる属性(変数)は、煎じ詰めればほかの対象物関してのみそのような属性として存在する。 量子力学の中心となるこの特徴は、専門用語では「状況依存性」contextualityと呼ばれている。」p143 西洋哲学の歴史で、未だかって究極の基礎として万人に受け入れられたものはない。 ナーガールジュナ(竜樹)の『中論』との出会い。p151~ 独立した存在があり得ないことを「空」śūnyatāという専門用語で表わしてる。 究極の実体、出発点は存在しない。 著者は竜樹に痛く共鳴するのだが、インド哲学全般の中での竜樹の理解が必要だし、何よりも、竜樹は直観(覚醒)でのものを言っているのであって、著者の物理学の延長上にはない。 第六章 「意味」の追及。「情報」と「進化」のに面からアプローチ。 「相対情報」「有用性」「妥当性」 「妥当な相対情報」が物理世界から心的世界へ結びつける第1歩。 過程や出来事、ひいては、関係論的な属性や関係が織りなす世界の観点に立つと、物理的現象と心的現象の隔たりも、それほど深刻には見えなくなる。なぜならどちらも、相互作用が織りなす複雑な構造から生じる自然現象と見なせるようになるからだ。p184 第七章(終章) 結論のない物語の締めくくり シェイクスピアの『テンペスト』からの引用。 古典的世界像はもはや確認された幻覚ではない。当面は、実体のない粉々になった量子の世界こそが、現実に最もよく調和する幻覚なのだ。p198 2022・8・1 |
図書館の待ち順が30を越えていたので、買うことにした。 |
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カルロ・ロヴェッリ『時間は存在しない』富永星訳 ÑHK出版 2019 ジャケットの折り返しの所に、「詩情あふれる筆致で 時間の本質を明らかにする、独創的かつエレガントな科学エッセイ」とある通り。 前半、時間は宇宙どこでも同じように流れていると言った思い込みが、物理学の最先端の知見によって、崩されてゆき、世界を捉えるのに時間をなくしても説明できると言うあたりまで、理解できる。 中ほど、エントロピーの話が出てくるあたりから、分からなくなる。 後半、現実に時間を感じているではないか?このあたりから、物理学を越えた世界に入ったようで、時間を感じている、自己とはなにか?過去とはなにか?興味深い議論が、著者の豊富な教養を動員して語られる。 多くの問題意識を刺激してくれて、面白かった。 翻訳も読みやすい。以下、読書メモ; 第一部 時間の崩壊 〇時間は高い所と低い所では流れるスピードが異なる。 エントロピーの話になるが、配置には「特別」なものはない。 〇過去と未来の違いはない。 〇時間はじっとしている時と動き廻っているときとではスピードが異なる。動くものすべてにとって、時間はゆっくり進む。 〇「宇宙の今」は意味がない。 図でもって、直観的に分かるようにしてある。 〇時間についてのアリストテレスとニュートンに見解。 時間の歴史。1883年 標準時間帯の設定 〇空間についてもアリストテレスとニュートンに見解は分かれる。 〇両者の統合として重力場 〇時間の最小単位、粒状の時間 量子力学ー粒状性、不確実性、関係性 プランク・スケール、 プランク時間は10の-44乗秒。 プランク長さは10の-33乗センチメートル。 第二部 時間のない世界 〇この世はものではなく出来事で出来ている。 「明日、石はどこにあるんだろう?」と考えることができる。いっぽうキスは出来事で、「明日、あのキスはどこにあるのだろう」という問いは無意味である。この世界は石でなく、キスのネットワークで出来ている。(98頁) 〇「今」あるものを「現実」とする ー 「現在主義」 現在も過去も未来もすべて現実とみる ー「永久主義」「ブロック宇宙論」 〇わたしたちのように物理を信じている者にとって、過去と現在と未来の違いはしっこく続く幻でしかありません。ー アインシュタイン 〇「存在」するという動詞は様々な使い方がある。 〇量子重力の基本方程式には時間を含まない。 〇スピンのネットワーク。ループ理論 〇存在するのは出来事と関係だけ。 第三部 時間の源へ 〇我々の感じる時間はどこからくるのだろうか? 〇マクロな状態 → エネルギー → 「熱時間」 〇量子変数の「非可換性」 〇時間の核には、二つのぼやけの起源 ー 物理系がおびただしい数の粒子かななっているという事実と、量子的な不確実性ーがある。 〇過去と未来の違いはすべて、かってこの世界のエントロピーが低かったという事実に起因しているらしい。 〇10章11章:エントロピーの話で急に難しくなる。 地図と視点。記述には視点が必要。 〇12章は哲学的文学的で豊富な内容を持つ。 「自分」アイデンティーの要素を3つ挙げる。 「一つの視点」「自分とは別の生命体」「記憶」 物理学の到達した世界は、我々の時間に解いて抱く素朴なイメージとは異なっていている。 それは言わば、私を除く地図のようなものであって、それを見ている私とはなにかを説明できない。 中枢神経のシナプス結合結合など、他の学問の援用がなけれ解けないようだ。 理解できていない事も多かったが、知的刺激に富み、面白かった。 2022・7・1 |
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2017年6月9日 カルロ・ロヴェッリ 『すごい物理学講義』河出書房新社
最も厄介な数学(計算過程)を飛ばし、実験・観察ー検証を省略すると、わかりやすくなる。物理学の世界を鳥瞰しているので、相対性理論や量子力学を知ろうとして挫折した人にもお勧め。
竹内薫監訳・栗原俊秀訳 Nさんが「数式がほとんど出てきませんから、読んでみませんか?」と、貸してくださった本である。古代ギリシャから、相対性理論、量子力学を経て、現代の最先端の物理学の世界観を見事に描きだしたもの。すごい物理学講義であった。巧みな叙述、優れた翻訳によって読みやすく楽しかった。 時間、空間を軸に考える物理学が、次第に変容し、今や、「共変的量子場」となり、「無限」に大きい宇宙、小さい物が否定される。「量子重力理論」が現時点での到達点。最後に、「情報」という概念を物理学に取り込もうとする試みに触れ、これも面白い。 この人の文章はすごい。(翻訳が良いのかも)途中、ダンテやシェイクスピアも顔を出しが登場するので、文系の人もどうぞ。科学の方法に信を置く著者の楽天的態度も心地よい。 原書はイタリヤ語で英訳本のタイトルは Reality Is Not What It Seems: The Journey to Quantum Gravity |
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