枕草子 | Topへ | |
千年前の30代の日本女性が、こんなに深い人間理解、鋭い観察力、細やかな表現力を持っているのは、驚くばかりです。それを可能にしている日本語も素晴らしい。 | ||
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2019年5月17日 枕草子(1) Pさんと読み始めた『源氏物語』は半年で中断することになった。彼曰く、「私のレベルでは、難しく、楽しめない」と。センテンスが長く、主語が不明、それも途中で変わったりするので、うまく味わえないようであった。私は紫式部の文章にほれ込み始めたところで、ちょっと残念だったが、あっさりと、テキストを『枕草子』に切り替えることにした。 |
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2019年5月 25日枕草子(2) 多くの日本人は(私もそうなのだが)、古文といえば、高校の国語の時間で読んでい以来、ご無沙汰という人が多いと思う。それなら、高校生用の参考書から再出発してはどうだろうか。歳をとって読む日本の古典は面白い。 増渕恒吉『枕草子評釈』清水書院 2016(初版1966)は、注釈は、簡潔で、文法事項も適当に解説してあって、文法を忘れた人にも読み易い。Pさんは、岩波文庫版によって読み始めたのだが、、同書に切り替えてもらって、進み易くなった。古典叢書などにある日本の古典は、高校の古文レベルの事はマスターしてある前提で、注釈は異本や付帯事項の説明が多く、初心者には注釈自身が、読みにくく、煩わしいのである。(だからといって、古典を現代語訳で読むのは反対である。) 山本淳子『枕草子のたくらみ』朝日新聞出版 2017 |
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2020年3月29日 枕草子(3) Pさんとの『枕草子』の学習は、飛び飛びであるが、第64段まで進んでいる。ゆっくりと英国人と読む『枕草子』は滋味に富み、学ぶことが多い。この本の特徴の一つ、ものずくしは、列挙の文学と言えるものだが、植物や鳥好きのPさんは面白いらしい。私は図録として、第一学習社の『新訂総合国語便覧』を利用しているが、スマートホーンでインターネットにアクセスして、見せることも多くなった。例えば、ホトトギスであれば、その姿だけでなく、鳴き声まで聴くことができる。 清少納言の列挙の仕方が素晴らしく、例えば、「鳥は」(第39段)では、鸚鵡、山鳥、鶴、鴬、ほととぎすを取り上げた後、「夜なくもの、何も何もめでたし。ちごどものみぞさしもなき。」つまり、夜なく鳥はみな素晴らしいが、赤ん坊の夜泣きだけはそうでない、と結ばれている。こんな個所にPさんはhumourを感じて喜ぶ。 私は、別の個所を注目する。それは鴬について、春に限って啼くのなら素晴らしいのだが、夏も秋になっても、老いた声で鳴くのは残念だと言っている。晩節にかんして、「草の花は」(第64段)では薄(すすき)の素晴らしさを述べたあと、「色々にみだれ咲きたりし花の、形もなく散りたるに、冬の末まで頭のいと白くおほどれたる(乱れひろがる)も知らず、昔思い出顔に風になびきてかいろぎ(よろよろ)立てる、人にこそいみじう似たり。よそふる心ありて、それをしもこそあはれと思うべけれ。」 列挙の面白さについてはUmberto Eco(2)参照 |
2020年2月17日自然教育園にて |
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