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1900年代に作られた映画の中から、好きなもの30本えらんでみました。
自分の中での定番モノ、ワンシーンがやたら心に残ってるもの、たまたま思い出したもの、いろいろです。だからベストとは言い難いけど…

 タイムトラベラー/きのうから来た恋人  99年/監督ヒュー・ウィルソン

「ジャングル・ジョージ」のブレンダン・フレイザーは世界一美しかった。「ハードロック・ハイジャック」はロック映画としては最高(だけどブレンダンの性格があんまり可愛くない…)。「ゴッドandモンスター」はほんとに泣けちゃう。だけど彼の出演作でいちばん好きなのはこれ。
「原始のマン」では氷付けの原始人だった彼が、本作では核シェルターの中で地上のことを知らずに育った純粋無垢な青年に扮します。「スプラッシュ」のダリル・ハンナ、「ビッグ」のトム・ハンクスなど、この手のコメディは主役のキュートさと演技力が命。ちょっと太りかけだけどブレンダンの魅力が存分に堪能できます。登場シーンがカワユすぎ。

 デトロイト・ロック・シティ  99年/監督アダム・リフキン

The hottest band in the world…KISS!! 夢のコンサートはもうすぐだ。だけどママや学校は大反対、幾多の困難を乗り越えて、彼等はキッスに会えるのか…
「キッスは悪魔の使いよ!」とゴミ箱に捨てられたレコードがくるくるまわりはじめて、ラヴ・ガンとともにあの時代が飛び出してくる。ニクソン辞任会見、スタジオ54、スターウォーズにジョーズにチャリエン…私はリアルタイムじゃ知らないけど、このオープニング何度みても心が躍る。あとドクターラブの流れるあの場面もいいね。
最後のライブシーンも楽しくて、「ジーン・シモンズの口の中から」見たシーンが忘れ難いです(笑)もう特別ページ作りたいくらい大好き。

 ジャッキー・ブラウン  97年/監督クエンンティン・タランティーノ

これもオープニングが好きな一作。タランティーノの中でもいちばんお気に入りです。
「パルプ・フィクション」が突風のような幕開けなら、こっちは身体の芯までじわじわくるサウナ風呂のような始まり。といっても、スチュワーデスのパム・グリアが動く歩道に乗っている上半身が延々と映るだけなんだけど。それに「110番街交差点」がかぶさるともうほんとに渋くて格好良くて、こうしちゃいられない、こんなとこに座ってる場合じゃないよ、と心がうずいてきます。いつかまたこういうの、作ってほしいな…

 ブギーナイツ  97年/監督ポール・トーマス・アンダーソン

そしてこれはラストシーンが好きな映画…じゃないけど(笑)時代的には裏「デトロイト〜」。
どんなヤツにも、人に負けないものがひとつある!エディ(マーク・ウォルバーグ)のそれは股間の大砲だった。バート・レイノルズにスカウトされた彼は一躍ポルノスターとなり、ブギーな皆が支え合うファミリーで人生最高の時を過ごす。
私はポール・トーマス・アンダーソンのじめじめゴタゴタしたとこが好きです。だからこの作品は最高。音楽もいい。エディにひとめ惚れするフィリップ・シーモア・ホフマンもいい(笑)

 浮き雲  96年/監督アキ・カウリスマキ

カウリスマキ映画はぜんぶまとめてベストワン、にしたいのですが…とりあえずサイト名を拝借したこの一作を。
(くわしくはこちら

 エド・ウッド  94年/監督ティム・バートン

「史上最低の映画監督」エド・ウッドの物語。ジョニー・デップ(エド役)もマーティン・ランドー(ベラ・ルゴシ役)も素晴らしい。エドの映画観る気にはならんけど…
ちなみにティム・バートンといえば雷鳴ですが、この話ではエドの新作が上映される日に雷が轟きます。
バートン映画をみると理屈抜きで心が踊る。たとえて言うなら、久々に遊園地にやってきてバイキングに乗ったときの気持ち(大好きなんです、あれ)。色使いもいいし、ロマンチックなんだよね。

 ザ・コミットメンツ  91年/監督アラン・パーカー

ダブリンで結成された大所帯ソウル・バンド、ザ・コミットメンツの栄枯盛衰?を描いた青春音楽物語。音楽はオーティス・レディング、ジェームズ・ブラウン等々90年代とは思えぬシブさ。ラストの「トライ・ア・リトル・テンダネス」が泣けます。
私もその昔お遊びでバンドやってたことあるのですが、夜中にスタジオ練習してるときのダレた…それもまたちょっと楽しい…雰囲気、クルマで移動するときのイベント気分、そしてなにより最初は赤の他人だったメンバー同士が軽口叩くようになり(まあこの話では国民性の違いからかはじめからそんなもんだけどね)、でも決して心通じ合ってるわけではなかったり、陰では男女関係もうまれてしまったりという面白さ、そういうのがなんかリアルでね。ああ世界中に今日もこういうことしてる若者がたくさんいるんだろうなー、と思うとなんだか楽しくなる。

 ハード・ウェイ  91年/監督ジョン・バタム

アイドル映画スターのニック(マイケル・J・フォックス)は、メル・ギブソンから刑事の役を奪うため(「あいつの刑事なんて皆見飽きてるよ!」(笑))NY市警のベテラン刑事モス(ジェームズ・ウッズ)のもとへ勝手に弟子入り。世間知らずの彼のせいで、現場は大混乱。
私が好きなシーンはね、ジェームズ・ウッズの仕草を真似るマイケル。ウッズがタバコをぽんとはたいてくわえれば(草ナギくんが野菜とかでやるアレね)よし自分も、と挑戦するがもちろん上手くはいかない。しょせんはプロと甘ちゃんだ。
しかしその後、酒場に入ったウッズはひとりその技を繰り返してるのであった。日頃から練習してるにちがいない!なんて可愛いんだ。

 ヘアスプレー  87年/監督ジョン・ウォーターズ

60年代のボルチモア。ダンスが大好きなオデブの女子高生トレイシー(のちに「クライ・ベイビー」「シリアル・ママ」にも出演するリッキー・レイク)は、テレビのショーに出て一躍人気者に。黒人の音楽で踊るなんて!と反対してたママ(これが遺作となったディヴァイン)もウキウキ、一緒にオシャレしてはりきっちゃう。さて、オートショーのクイーンは誰の手に?
かつて「ミス・ちょきちょきガニ」だったというライバルのママ、デボラ・ハリーが最高。ビーハイヴもぶっとんでます。他の出演者も皆一筋縄ではいかない。ウォーターズ本人の役もかなりおかしいし(笑)
とにかく可愛くて明るくてパワフルなお話です。ジョン・ウォーターズのセンスを堪能しつつ最も観易い、という妥協線?上にあるようなかんじ。

 アフター・アワーズ  85年/監督マーティン・スコセッシ

偶然が偶然を呼び、最悪の一夜を過ごすはめになる青年の物語。他人の不幸は面白い。
女の部屋に行こうとタクシーに乗ったら、お金がすべて窓から飛んでいってしまう。部屋についてみると、女にはレズビアンの恋人が。帰ろうにも外は雨。地下鉄に乗ろうとすれば、料金値上がりで切符が買えない…しまいには殺人事件にまでまきこまれてしまう。
そして翌朝、主人公は偶然にも自分の会社の前に車から放り出されます。よかったね。

 カイロの紫のバラ  85年/監督ウディ・アレン

1930年代、不況にあえぐアメリカ。貧しい生活、働かず暴力ばかりふるう夫に疲れ果てているウェイトレスのセシリア(ミア・ファロー)の唯一の楽しみは映画。
今日もお気に入りの「カイロの紫のバラ」を観に行く彼女。すると、なんと憧れのスターがスクリーンの中から話し掛けてくる!二人は映画館をとびだして、夜の遊園地でデート…
映画を題材にした映画の中ではいちばん好きなファンタジー。にがくて甘いラストもいいです。

 刑事ジョン・ブック/目撃者  85年/監督ピーター・ウィアー

駅のトイレで殺人事件を目撃してしまったアーミッシュの少年(ルーカス・ハースがとにかく可愛い)。ハリソン・フォード演じる刑事ジョン・ブックが、組織に狙われる彼とその母親を守って活躍します。
ルーカスはまだ幼いのに、きちんとした帽子と礼服のようなものを身につけている。昔はたんに可愛いなあと思ってたものですが、これアーミッシュの服装なんだよね。毎日銃をふりまわしている都会の刑事ジョン・ブックが、いまなお電気もひかれていない素朴なアーミッシュの村で戸惑いつつも気をつかい、美しい未亡人に心惹かれながら、なじんでゆく描写が面白い。青空のもと、皆で家を建てるシーンがすばらしいです(ハリソン・フォードは元大工だしね)。

 シュガー・ベイビー  84年/監督パーシー・アドロン

「バクダッド・カフェ」のパーシー・アドロンのデビュー作。主演は彼の映画における女神、マリアンネ・ゼーゲブレヒト。
葬儀屋に勤めるデブの中年女・マリアンネが地下鉄の運転手に恋をし、猛烈アタック。冒頭はほとんどストーカーなんだけど、そのうち甘い恋の物語になっていきます。パーシー作品の特徴である、なんというか悪い夢のような色遣いでさえも、甘ったるく感じられてくるからフシギ。

 トップ・シークレット  84年/監督ジム・エイブラハムズ

東ドイツのフェスティバルに招待されたアメリカのロックスター、ニック(ヴァル・キルマー)が国家的陰謀にまきこまれる…というあらすじはどうでもいい、いつものZAZ作品。これと「フライング・ハイ」の2作がやっぱり最高!
「全員がきわめて普通の顔でバカをやりつづける」のがZAZものですが、私の場合、メインキャラより通りすがりの人が何気なくやってるのがなぜか心に残ってしまう。この作品で、冒頭ふと車窓から見ると「木の列車」に乗った男が…ってのとかね。いやもちろん全篇笑えるんだけど。牛最高。歌って踊ってギャグをやる、ヴァル・キルマーも偉い。
ようやく発売されたDVDでは、カットされたシーンを見ることもできます。

 ボディ・ダブル  84年/監督ブライアン・デ・パルマ

誰かとビデオ観るときなど、なにも思いつかないときはデ・パルマのを借りておきます。よく言われてる覗き見の美学とかそういうのはよくわかんないけど、撮り方やスジがたんに面白いから。
ケイン様大活躍?の「殺しのドレス」、ロック映画の極北「ファントム・オブ・パラダイス」もいいけど、なぜか何度も観てるのはコレ。デ・パルマの中でいちばんブナンな、中間とったような作品というイメージがあります。鏡の使い方も例によってドキドキする。胸にシリコン入れる前のメラニー・グリフィスが、更衣室でカーテンの隙間からパンツはきかえてるとこ見せてくれたりします。
最後のオチがあっけらかんとしてて、悲壮感がないとこもいいね。

 U・ボート  81年/監督ウォルフガング・ベーダーゼン

設定聞いただけでぐっときちゃうのが、パニックもの、脱獄もの、そして潜水艦もの。
男たちが汚い狭苦しいところにいるってのがいいのです。そういうタイプの人が好みっていうわけじゃないけど、余計なことを考えずに楽しめる。
「適度に古い」ってのも重要で、「レッド・オクトーバーを追え!」くらい新しくなってしまうと(といってももう10年も前ですが)せっかくのドロドロしたかんじが失われ、もはやアレック・ボールドウィンの制服姿しか覚えていない。
最後の大どんでん返しで心寂しくなってしまう本作ですが、お約束のソナー合戦といい、乗組員の発狂姿といい、潜水艦モノの醍醐味がじゅうぶん味わえます。

 ミッドナイト・エクスプレス  78年/監督アラン・パーカー

麻薬の不法所持で逮捕され、トルコの刑務所に入れられた主人公。しかし出所間際に裁判のやり直しでなんと30年の刑期延長判決が。
国際政治のいけにえとなった主人公の、生への執着を描く社会派もの…なんだけど、刑務所モノ好きとしては囚人たちの陰惨な生活描写がツボにはまります。とにかく暴力。発狂。そして男同士の愛。
ラストはあまりにもあっけなく脱獄に成功。まあ脱獄手段自体が話の主題じゃないのでそんなもんかなとも思うのですが(ちなみに「ミッドナイト・エクスプレス」というのは「脱獄」の隠語)。
「バーディ」も驚くほど拍子抜けするような終わり方だったな。観終わった私のアタマに残ったものは、マシュー・モディンの裸の尻とラストに流れた「ラ・バンバ」。アラン・パーカーってそういう持ち味なのだろうか。

 ピクニック at ハンギングロック  75年/監督ピーター・ウィアー

1900年、オーストラリアの名門女子校。岩山(ハンギング・ロック)へピクニックに出かけた先生と生徒達のうち、数名が忽然と姿を消してしまう。
実話をもとにしているのですが、ソフトフォーカスが多用され、全篇夢の中のような雰囲気。謎が解き明かされない快感というのもあるんだね。
岩山というところが好きです。普通の山よりわかりやすそうなんだけど、実際はもっと怖いかもしれないってね。

 タワーリング・インフェルノ  74年/監督ジョン・ギラーミン

昔は年末年始にかならず深夜放映していたこの映画。何度観ても面白い。
138階建てのビルで火災が起こり、皆が右往左往。燃える!怖い!がんばれ!消えたぞ!やったー!
ただしラスト、ネコを抱いてうろうろするフレッド・アステアの姿は涙を誘います。

 フェリーニのアマルコルド  74年/監督フェデリコ・フェリーニ

「アマルコルド」とは「私はおぼえている」という意味なんだそう。フェリーニの故郷であるイタリアの港町を舞台に、ひとりの少年の目を通した四季おりおりの出来事が描かれます。皆で夜の海に豪華客船を見に行くシーンが美しい(あれビニール製なんだってね。ロマンチック)。
なんてことないエピソードの数々なんだけど、1年のうちにはやはり色々なことがあって、愛すべきバカっぷりだった少年もちゃんと…否応なしに、成長してるのです。せつないなあ。

 北国の帝王  73年/監督ロバート・アルドリッチ

1930年代、世の大不況の中、浮浪者たちは列車のタダ乗りをして日々すごしていた。
そんななか、皆から「北国の帝王」と呼ばれているタダ乗りのプロがリー・マービン。一方彼等におそれられている列車の車掌がアーネスト・ボーグナイン。二人の男の死闘を描いた物語。
「北国の帝王」ってなにかと思えば、列車のタダ乗りのプロのこと。こんな一銭の得にもならないことに命を賭けてるってのがまず面白い。
リー・マービンと、彼につきまとう甘ちゃん青年キース・キャラダインとの関係もいいんだなあ。偉大な先輩を尊敬してくっついてるのかと思いきや、スキさえあれば自分がナンバーワンの座に踊り出ようと虎視眈々と狙ってるセコい若者。旅路の果てに、二人の間には友情が…なんて安易な展開にはなりません。ああ非情。

 ベニスに死す  71年/監督ルキノ・ヴィスコンティ

ほんとの「恋」というのはこういうのをいうんじゃないかと思います。
つきあったり結婚したりする相手には、共通の趣味があったり、なんだかんだ「心が通じ合う」ことも大切なんだろうけど、恋ってのは本来理不尽なものじゃないかと。ただの美へのあこがれ、エロスの衝動。
美少年タッジオ役は言わずとしれたビョルン・アンドレセンですが、自然体なのか演技なのか、ともかく素晴らしい。セーラー服と縞の水着が世界一似合います。浜辺まで自分を追ってきた老人のほうをちらっと振り返る表情も絶妙。
いっぽう少しでも自分をよく見せようと髪をそめ、顔を真っ白に塗りたくるダーク・ボガード。愛する少年のあとを追って、徘徊する暗いベニスの町。
ラスト、白髪染めが彼の頬を黒い涙となって流れるシーンは忘れられません。

 ケス  69年/監督ケン・ローチ

イギリスのさびれた炭鉱町。男好きの母、乱暴者の兄と暮らす冴えない少年ビリーは、一匹のタカに夢中になる。
しょぼくて悲惨な話。で、たとえばカウリスマキみたいにそういうのを洗練された手法で見せるわけじゃなくて、しょぼいまま出してくるの。映像も音楽もきわめて素朴というかなんというか…でもその画面は今見ても古さを感じさせないほど輝いてるし、押し付けがましくない誠実さがひしひしと伝わってきます。
少年が「ケス」と名付けたタカに心奪われるというのがいちおうストーリーのメインなわけだけど、なぜかタカと一緒のシーンよりサッカーの授業(サッカーマニアの中年教師が笑える)やその他の場面のほうがヤケに長い。最後も容赦ないブチ切り方でね。そういうとこ好きだなあ。

 テオレマ  68年/監督ピエロ・パオロ・パゾリーニ

パゾリーニといえば、「乞食」の主人公が車だん吉にそっくりでした。
本作は、とある上流階級の家庭に謎めいた青年がやってきて、家族全員をトリコにし、やがて去って行くという話。若かりし頃のテレンス・スタンプが悪魔的(神的?)な誘惑者を演じます。
広い庭で、大股開いてイスに座ってるスタンプの姿が目に焼き付いてる。

 アルフィー  66年/監督ルイス・ギルバード

ロンドンの下町に住むヤサ男・アルフィー(マイケル・ケイン)の女遍歴物語。
とにかくケイン様がかっこよくて倒れそうです。最初はタクシーの運転手なんだけど、この制服姿がまたすばらしいんだ…「ミニミニ大作戦」のつなぎ、「鷲は舞い降りた」の軍服コスプレショー(笑)なんかも勿論いいけどね!
ジュード・ロウでリメイクするそうだけど、彼もイイ男だけどさ、このしょぼい可愛らしさ、哀愁みたいなものはケイン様にしか出せないと思うなあ。あ、リメイクといえば新しい「ミニミニ大作戦」みるとアルフィーに会えるよ。見逃さないでね。

   60年/監督ジャック・ベッケル

「息がとまりそうになった映画」ナンバーワン。どういうシーンかは、思い切りネタバレになってしまうので書けませんが…
舞台はとある難攻不落の刑務所。同じ房の4人の男たちは、地下に穴を掘って脱獄する計画をたてていた。そこに新たに一人の青年が収容される。スパイか否か、疑いを抱きつつも男たちは彼を仲間に加えるが…
歯ブラシを使った見張り用の鏡、薬ビンを使った砂時計などのリアルな小道具を駆使しつつ、とにかく穴を掘る。掘りまくる。音楽などはまったくなし、ひたすら男たちが穴を掘る音が響き渡ります。
そして、ラストのあのシーン…心臓が悪い人は見られないかも。最高に面白いです。

 顔のない眼  60年/監督ジョルジュ・フランジュ

事故で顔の崩れた娘のために、少女を次々と誘拐して顔の皮を剥ごうとする医師。
娘がやっと登場したと思ったら…そこには「顔のない眼」。このタイトルはほんとに上手い。
ちなみにだいぶ中年になったアリダ・ヴァリが出演しています。私、この人と誕生日が同じ。そういうのがあると、なんとなく好感を抱いてしまうな。

 脱獄12時間  58年/監督ピエール・オードイ

朝6時にとある町へたどり着いた、3人の脱獄囚。一人は昔の女に金を預けてある。その金で外国へ逃げようとする算段、船が出るのは夕方6時。12時間のドラマ。
一箇所とても泣けるところがあって。
脱獄囚の情婦だった女は、今は写真屋のじいさんと暮らしている。彼のことがとくに好きというわけでもなく、食べてくために仕方なく…てなかんじで日々うんざりしている。男のほうもそれをわかってて、しかしどうしようもないのでついつい威圧的な態度を取ってしまう。
でも最後、女が本当に自分のもとから去ろうとするとき、すべてをかなぐり捨ててすがりつくんです。そのシーンが惨めで哀しくて、泣ける。
限られた時間、それぞれの人間にそれぞれの事情がある。地味な話だけど面白いです。

 眼には眼を  57年/監督アンドレ・カイヤット

診療を拒否されたために妻を亡くしたアラブ男が、医者を砂漠に連れ出す。抜け出したければおれの言うことを聞け。しかし医者の反撃により形勢は逆転。なんとか町へたどりつけると思いきや…
灼熱地獄での息づまるような心理戦、そして衝撃的なラストシーンが忘れられない一作です。
ところで、作家カトリーヌ・アルレーの短編に「地獄へのツアー」というのがあるのですが、砂漠つながりということで私はこれも好き(ちなみに、アルレーには「目には目を」という作品もある)。
砂漠を自動車で横断する途中、遭難してにっちもさっちも行かなくなった男女グループ。乾きに負けてエンジンオイルやサンオイルを飲み干すシーンなど、想像しただけで…

 恐怖の報酬  52年/監督アンリ・ジョルジュ・クルーゾー

「痛そうな映画」ナンバーワン。
油田で火災が発生し、鎮火作業のために4人の雇われ男たちがニトログリセリンを運ぶことになる。いつ爆発するかわからない危険物をやまほど乗せて、トラックはのろのろ出発。
腐った吊り橋、行く手をふさぐ大岩…最初から手に汗にぎるシーンの連続です。さらにはモノクロの画面から南米のうだるような熱さや男たちの思いつめた感じが伝わってきて、胸が苦しくなる。
で、「痛そう」というのは、流れ出した石油が池になってしまい、そこをトラックで渡らなければならないシーン。イブ・モンタンがハンドルを握るんだけど、先導役の相方が足をすべらせて転倒してしまう。しかし止まるわけにはいかず、そのままトラックは身体の上を…ああ思い出しただけで吐き気が…

(2001/05/03)



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