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MerryXmasを届けて!

―シンデレラは嘘をつく・クリスマス特別番外編―

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――後編――



 結局ようやく高速を抜けて家に戻ったのは、夜の12時をとうに過ぎて1時近い頃だった。
 相変わらず雪がチラチラと降り続いていた。街路樹の枝先や看板の上などには、もうふんわりと積もり始めている。汚れた街が、ほんの一時だけ清らかに白い衣をまとう。聖なる夜に相応しく。
 保はすっかり疲れ果てて、乗ってきた社用車を駐車場に入れると、ヨタヨタと重い足取りでマンションの入り口に向かって歩いていった。
 と、大きなガラスドアの横の地面に、ぽつんと黒い影が見えた。
(……なんだ?)
 訝しげに眉をひそめる保の目に、すぐにそれは意味のあるものとして飛び込んできた。
 それは、レンが造りの床に腰を下ろして寒そうに丸まった川原の姿だった。
「ジーン! 何やってんだよ、こんなところで?」
 驚いて大声で叫んだ保に、川原は凍えた顔をあげてふわりと笑った。
「あ、お帰りなさい、保さん」
「お……お帰りじゃないってば。何してんだ? そんなところに座り込んで」
 川原は当たり前のように答えた。
「待ってたんです、保さんが帰ってくるの。俺、バカなことに保さんから預かってたカードキー部屋に忘れちゃって。オートロックのマンションってこう言う時困りもんですよね。中に入れなくって」
 そう言ってハハハと笑う川原の声が寒さで震えていた。薄暗がりの中、見ると顔は熱を失って白っぽく、唇はすっかり蒼ざめている。保は慌てて駆け寄ると、大急ぎで引っ張って立たせた。
「ば、ばか……凍死するぞ。いったいいつからそこにいたんだよ? 何考えてるんだ?」
「何って……あなたとクリスマスパーティしたくって。ほら、料理。冷えちゃったけど」
 見ると、手には有名なイタリアレストランでテイクアウトに出しているお惣菜がたくさん入った袋をぶら下げている。それと飲み干して空になったそこらで売ってるワンカップの日本酒。川原はにこっと笑った。
「あ、これはカイロ代わり。体の心から暖めてくれるってね、ハハッ」
 保は呆気に取られて、茫然としながら尋ねた。
「でも……だって……、ジーン、パーティやってたんじゃ……。たくさん人がいたのに……」
「え、なんのことです?」
「さっき……ジーンの携帯に電話したら、皆で騒いでる声がして……それでてっきり友達とパーティやってるのかと」
 川原はそれを聞いて可笑しそうに顔をほころばせた。
「ああ、それきっと大学のダチどもですよ。なんか飲み屋が全部一杯でいきなり俺の部屋に押しかけて来るってんで、俺さっさと部屋だけ明け渡して逃げ出したんです。だってあいつらに見つかったら、この料理全部食われちゃうから。……そうか。俺慌てて携帯まで置いて出てきちまったんだな」
 保はあっけらかんと喋る川原をぼうっとして見つめていたが、すぐに彼の凍てついた手に気づいて、慌てて言った。
「と、とにかく中に入ろう。ジーン、全身氷みたいだ。風邪引いちまう」
 焦って鍵を開けると、急いでマンションの中へと引っ張り込んで、エレベーターに飛び乗った。突然のことでなんだか訳もわからず、だが何より彼を暖めなくてはとだけ考えていた。
 マンションの小さなエレベーターが上がりはじめる。保の住む八階のフロアに到着するのをまどろっこしい思いで待ちわびていた彼の肩を、川原が後ろから優しく掴んで、ゆっくりと振り向かせた。
「……ジーン?」
 川原は優しく微笑みかけた。
「改めてお帰りなさい、保さん。お仕事お疲れさまでした」
「え……?」
「さっきはすみません。俺、ガキみたいなワガママ言って。最初っから、遅くなってもかまわないって言えば良かったんですよね? 待ってるからって」
「……ジーン」
「雪振って大変だったでしょ? あ、食事は? 腹減ってません? これ、すぐに温めて食いましょう。俺もさっきから腹鳴りっぱなしで……」
 話しかけている川原の言葉が途中で止まった。保がどんと力一杯その胸に抱きついていったから。
 川原は優しく抱きとめながらも、戸惑ったような声で言った。
「た、保さん? どうしたんです?」
「……ごめん」
 消え入りそうな保の声が、川原の胸の中でささやかれた。
「え? あの……?」
「ごめん、ごめん……、ごめん、ジーン」
「ちょ……保さん? 何泣いてんですか? 俺なんか悪いこと言いました? 保さんてば」
 エレベーターがようやく到着し、止まって静かにドアを開く。だが保は彼の胸に抱きついたまま、その場から動こうとしなかった。
 雪に濡れて冷えきった川原の服が、押し当てた頬にひんやりと冷たかった。きっと随分長い間彼はあそこで待っていた。自分が勝手に勘違いして腹を立てていた時だって、きっと待ってくれていた。二人の特別な夜を信じて。
(ごめん……ジーン)
 保は心の中で何度も何度もその言葉をつぶやき続けていた。


 暖かいシャワーが全身を包み込む。保はしばらくその流れの中に身を預け、程よく暖まったところで手早く体を洗って風呂を出た。
 部屋に戻ると、一足先に浴び終えて寒さから解消された川原が、手際よくテイクアウト料理をレンジで温め直して、テーブルに並べてくれていた。部屋中に香辛料やオリーブオイルの芳しい香りが広がっててる。それを鼻が嗅ぎつけて、思わず胃袋をキュッと締めつけた。
 保の姿を見て、川原がにっこりと優しく微笑む。保はその笑みに応えるように、彼の座っている椅子の場所まで行って、その膝の上に甘えて座った。
「いい匂い……」
「ほんと。腹減ってるからたまらない。さ、早く食いましょう? 早く服来てくださいよ、保さん。風邪ひきます」
 川原はバスローブ一枚の保を気遣うように、軽く背を押して促した。だが保は動こうとせず、彼の膝に座ったまま、手を肩に回して、目の前の川原の額にとんと軽く自分のそれをくっつけた。
 すぐ眼前に川原の瞳がある。薄くてハシバミ色の、綺麗な瞳。長くて自然にカールした睫毛が、くっきりとした目許をいっそう深く印象付ける。
 保はその瞳を見つめながら、甘えた声でささやいた。
「俺、先に欲しいものがある。飯は後でいい」
「なんですか? シャンパンなら冷えてますけど」
「違う、そんなんじゃないの」
 保はちょっぴり呆れたように笑って、すぐに妖しく声を潜めてつぶやいた。
「俺、ジーンが欲しい。先にベッド行こう?」
 しばしの沈黙。やがて川原が優しく微笑んで、その手を保の背に回した。と思うと、膝の下にもう片方の手を差し入れ、保の身体を抱きあげて椅子から立ち上がった。さすがに長い間水泳で鍛えていたとあって、人並みより多少貧弱な筋肉のついた保の体など軽々といった風に抱きかかえる。そのまま隣りのベッドルームまで運ぶと、少し乱暴に投げ出して、自分もすぐにその上に覆いかぶさってきた。
 川原の顔が触れるほど傍にあった。見かけよりもずっとがっしりとした体が、何処にも逃がさないとでも言うように上から押さえつけていた。大きな手がゆっくりと頬を撫で、首筋に沿い、肩から胸へと柔らかく降りていく。バスローブがするりと体から滑り落ちた。
 熱く唇が重なって、それよりも更に熱い舌が押し入り、保がたどたどしく返す舌に絡みついては愛撫する。長いくちづけの後には、もうすっかり保の頭は朦朧と霞んでいて、身体の芯は火のようにたぎっていた。
 川原はそんな保をおいて服を脱ぎ捨てると、またのしかかってきた。そしてしびれるような、とろけるような眼差しで見据えて、からかうみたいにささやいた。
「俺、この極上の食前酒に酔ってしまいそうだ、保さん」
 相変わらずのキザな言葉が形の良い唇かさらりと零れ落ちる。保はぼうっとした頭で、声をかすらせながら応えた。
「俺なんて……もうとっくに、酔っ払ってる……」
 川原が耳元でくすりと笑うのが聞こえた。
 するするっと彼の身体が下にさがって、腰の辺りまで降りたかと思うと、唇を柔らかな腹の上に感じた。何度も何度もついばまれて、くすぐったくって身をよじった。しかしそんなふざけた行為ですらもが保の中の欲望を高めていく。多分とうに大きくなって川原の眼前に曝け出しているであろう自分の分身を思うと、保は耳の先まで赤く染まるのを感じた。
 ふわりと彼の手を感じ、同時に先っぽに優しくキスされた。最初の感覚に思わず全身がビクンと跳ねる。はあ、と、ため息とも喘ぎ声ともつかぬ声が唇から漏れた。
 湿って生暖かい彼の舌が、生きているもののように保の上を滑って巻きついた。根元から先に向けて、あるいはその逆に、幾度となく丁寧に、執拗に繰り返される愛の技。その巧みさの前では、とてもじゃないが快感に打ち震える己を隠すことなどできはしない。保はベッドの上で身をくねらせ、シーツを掴んで甘ったるく鼻声をあげた。
「あ、あっ……ふぅ……、ん、ああ」
 感じた時には素直に声を出せと教えられてきた。だから躊躇ったりはしない。だがそれでもまだ恥ずかしい。特に、なんのBGMもないこんな静かな部屋の中で自分の発する声だけが耳に届くと、どうしようもないほど羞恥に体が熱くなった。
 保は半ば恍惚としながらも、うっすらと潤んだ瞳を開けて、川原に向けてささやいた。
「ジーン……、ジーンのも……ちょうだい。俺も……したげるから……」
 彼がちらりと保を窺い見て、それでも請われるままに体を反転させて腰を近づけてきた。それはついこの間教わったばかりの行為だ。互いに愛し合ったなら、手っ取り早くていい。されるばかりじゃつまらない。だけど感じさせられてばかりの保はついついその快感に浸ってしまって、するほうが疎かになるのもしばしばだった。
 今もやっぱり感じて声をあげているのは保の方ばかりで、先に音を上げたのも保だった。
 保は咥えていた川原のものを離すと、息も絶え絶えにつぶやいた。
「待って、だめ……、俺もう、いっちまうから……やめて」
「いってもいいのに」
「やだ。ジーンと一緒のがいい」
 川原はちょっと困惑するように首を傾げて笑った。
「それは、無理だと思うけど」
 無理……そうかもしれない。保の未熟な頼りないテクニックでは、到底自分と同じように彼を高めることなどできはしない。どうしたって先にいかされてしまう。
 それに、保はまだ挿れられて真に感じるということを知らなかった。確かに快感は感じるのだが、それよりも痛みの方が勝ってしまって、いくどころではなくなってしまう。だから大抵二人のフイニッシュは、川原に口や手で愛されて保が先にいかされるか、彼がいった後に受けいれたままの姿勢で彼の手でいくかのどちらかであった。
 二人で愛し合うことはそれだけで素晴らしくはあったが、やはり「究極の悦びは同時に迎える絶頂である」……と、何かの本に書いてあった。それを川原に話したら、思いっきり笑われてしまった。そんなのお話の中だけの幻影だから気にすることはないのだと。
 それでもやっぱりそれは憧れで、少なくとも彼の方ばかりに気を遣わせてしまう今のSEXは、保には少々不満なのだ。
「ジーン、挿れて」
 保がねだると、川原が探るように聞き返した。
「もう? いいの?」
「うん。早く欲しい……」
 困った顔をして、苦笑いを浮かべる川原。
「俺のことはいいのに。そんなに気を遣わなくたって。俺、あなたが感じるのを見てるだけで嬉しいんだから」
「違う! 本当に欲しいんだ。俺、ジーンとひとつになって感じたい……」
 川原は嬉しそうに微笑むと、ふわりとひとつ保にキスをして、保の体をくるりとうつ伏せにした。腰を高く持ち上げて、露わになった後ろの蕾にそっと舌先を伸ばして優しく舐めあげた。
「あっ……! やだ……んふぅっ……」
 保は妖しく声をあげた。恥ずかしげに真っ赤に頬を染めながら、それでもベッドに顔をこすりつけて身悶えするその姿は、川原からすると言葉にできないほど色っぽくて、あでやかで、艶めかしかった。本当に、見ているだけでいってしまうのではないかと思うほど感じさせられた。
 だから、正直に言ってしまえば、挿れてしまって自分の欲望をコントロールする方がよほど苦しいのだ。彼の痛みなど関係なく、荒荒しくかき乱してすべてを発散したくなる。だけどそうするには余りにも保が愛し過ぎて、いつも必死に自分を抑えてはできるだけ辛くないようにするのであった。
「ああ、ジーン……」
 保がねだるように小さくうめいた。川原は唇を離すと、保の華奢な腰を両手で押さえて、静かに身を寄せた。濡れてきらめいている1点に自分のものを押し当て、ゆっくりゆっくりと押し入っていった。
「……んっ」
 保が少し切なそうに体をうごめかせた。それでも川原は少しづつ奥へと進み、しっかりと最後まで到達したところで、保の耳に口を寄せてささやきかけた。
「大丈夫? 辛くない?」
「ん……平気」
 必死にその痛みに耐えているであろう愛しい恋人の背中に、唇をそっと押し当てて幾度となくキスをする。滑らかな肌は、柔らかな唇を惜しむように吸いついてきた。
 少し保の力が抜けたところを見計らって、川原は静かに動いた。途端に、保の体がぴくりとのけぞった。
「んあっ!」
「あ、痛かった? すみません」
 だが保は、ぶんぶんと頭を振って息をとぎらせながら言った。
「違……なんか、変な、感じ……。ジーン、もっと、動いてよ……」
 ねだられた通りに優しくスライドを続けると、保はいつになく激しい反応を示した。
「あ、あっ……や、やだ……。これ、これなに? ああっ」
「……感じる、保さん? 痛くない?」
「うん、うん、ちょっとだけ……でも、あ……。あああっ、ジーン、ジーン、やだっ! 怖い!」
 保は力一杯シーツを握り締めて、その初めての感覚に耽溺した。明らかにいつもとは違う、強い快感。普通に自分自身を刺激されて味わうものとはまるで違った快楽が、体の奥から恐ろしいほどに湧き上がってくる。
 痛みは多分あるのだろうけど、そんなものなど感じる間などないぐらいに保は快感に乱れ狂った。
「あ、ジーン……、いや、俺、変……、感じて……あああっ、やだ! ああん!」
「保さん……俺も……感じる、くっ……」
 川原のくぐもったような声が背中の上から聞こえていた。いつにない激しい行為に、彼もまた普段とは違った姿を見せていた。
 いつもなら悔しいくらいの余裕を見せて、痛いかとか大丈夫かとかの労わりの言葉をかけながら、じっくりと丁寧にしてくれるのに、今日の彼は己の快感に溺れてきって、どんどん自分勝手に攻めてくる。強く激しく突き上げてくる。
 さすがの保も少々痛みを感じてき始めたところで、意外にも川原のほうが先に白旗をあげた。
「ごめん、保さん……俺、いく……うあっ!」
「あ、ジーン、んあああっ」
 ひときわ激しく攻められたかと思うと、保は身体の奥に熱いものを感じた。と同時に、川原がぎゅっと強く背中を抱き締めてきた。びくんびくんと、引きつったように震えている。
 大切な彼の絶頂の瞬間を、保は自分の中で感じとって深く感動した。
(ジーン……ああ……)
 肉体の悦びとは違う、精神的なエクスタシーを味わって、保もまたその一瞬に酔いしれた。残念ながら二人一緒に最後まで……という訳にはいかなかったが、それに劣らぬぐらい深い充足感に包まれて、保は川原が得た悦びを同じだけの悦びを感じていた。
 しばらくして、川原は保を抱きしめたまま、ベッドに気だるげに身を投げ出した。するりと彼のものが抜け出て、その刺激に保は思わず声をあげた。
「あっ……」
 それを耳にして、川原が後ろから抱く手に力を込め、耳元でささやいた。
「ごめん、保さん。欲求不満でしょ?」
 保は微かに首を振った。
「ううん、それほどでもない。すっごく感じたから」
「すみません……。俺、今夜のあなたを見てたらもう我慢できなくて。一人で暴走。ははっ、情けない」
 川原が申し訳なさそうにそう言って、背後から耳たぶをそっと噛みしだいた。ぞくぞくっとする感覚が全身を走りぬける。保は首を傾けて、川原にキスをねだった。
 しっとりと濡れた唇の、熱い返答。一度山を超えたあとの、少し抑えたようなくちづけ。
 保は川原に抱かれたまま、心行くまでその穏やかなひとときに身を委ねた。そして、惜しむように離れていった唇に、もう一度軽くキスして、艶のある声でつぶやいた。
「ジーン……俺、感じちゃった」
 川原が優しく微笑む。
「ええ、わかってました。物凄く色っぽかった」
「これで俺も一人前?」
 保の言葉に、川原はぷっと吹きだして笑った。
「一人前どころか、男殺しだ、保さん。俺、身も心もやられちゃった。せっかく今まではちゃんとリードしてたのになぁ。これでも歳下のハンデ背負って気負ってるんですよ? 素敵なあなたに負けないようにって」
「ジーンだって……かっこいい。俺よりもずっと」
 保はクルリと身を返して正面から川原に抱きついた。先ほどとは違って熱い身体が素肌に触れる。全身に彼の存在を感じていると、いったん消えかけた火がなんとなくまた熱を持ってくる。
 保は少し照れくさそうに頬を染めて、だが艶めかしく見つめながらささやいた。
「ね……も1回、感じたいな、中で。今の感覚、忘れないように」
 川原は思わぬリクエストにくるんと目を見開き、すぐに優しく微笑んで応えた。
「いいですよ。あなたが望むのなら、何度でも……」
 と、その時、川原の腹が大きな音を立てて鳴り響いた。一瞬目を真ん丸くして顔を見合わせる二人の耳に、今度は続けて保の腹のぎゅるりと派手な悲鳴が届く。
 二人はしばし互いに見つめあい、やがて声をあげて笑った。
「それよりなにより、まずは飯だよね、飯」
「そうですね。正直言って、もう餓死寸前。こんなんじゃもう勃たたないかも」
「それは困る! ほら、早く食べよう。もう冷たいままでもいいや。腹の足しにさえなれば。味なんて二の次だ」
「保さあん、一流レストランの料理なんですよ、それ? せっかく並んで買ったのに」
 二人の楽しそうな声が深夜の部屋に満ち溢れた。
 窓の外は雪。白く冷たい、だけど最高の天からの贈り物が、しんしんと音もなく降りつづける。
 一年でたった一度だけのクリスマスイブの夜が、誰の上にも幸福と共に訪れるようにと、優しい優しい願いを込めて。
 
     
                                            ≪終≫

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