『味比べ』 ・三種盛りあわせ |
いろいろ取り揃えてみました。三種、お楽しみくださいませ(^_^) |
|
――二人の愛の巣、海外出張中の兄の部屋にて…… 静かな部屋の中に、子猫がミルクを舐めるようなピチャピチャと言う音が、かすかに響いていた。ときおり甘い吐息のようなうめきが聞こえ、そこに荒い息が絡みつく。ひっそりと交わされる愛の営みは、やがて小さな声で終わりを告げた。 「………………くっ!」 同時に、篤志の膝の間にうずくまっていた夕日が、苦しそうに咽かえった。 「げほっ、げほげほっ!」 「大丈夫か、夕日?」 焦って尋ねる篤志に、夕日はしばしうつむいて必死になにかを嚥下していたが、やがて涙でいっぱいに潤んだ瞳をあげてうなづいた。 「うん……だい、じょ……ぶ」 「ばか、無理しやがって」 篤志は申し訳なさそうにつぶやいて、床にペッタリと座りこんでいた夕日を、自分の座るソファの横に引っ張りあげた。そして自分の膝を枕にし、仰向けになるよう寝転がらせる。夕日の薄紅に上気した顔を見つめながら、乱れた髪を優しく指で梳いた。 「悪い、我慢できなかった」 篤志がポツリと漏らした言葉に、夕日は微かに頬を染め、プルプルと首を振った。 「ううん、僕わかっててやったんだもの。僕……一度篤志の、飲みたかったんだ……。いっつも僕ばっかりしてもらってるから」 「そんなの……いいのに」 てれくさそうにそっぽを向く篤志に、夕日は膝の上から遠慮がちに尋ねた。 「篤志……?」 「ん?」 「気持ち……良かった?」 一瞬間があり、いっそうてれくさそうにしかめっ面をし、篤志は指できゅっと軽く夕日の鼻をつまんだ。 「バカ、当たり前だろ?」 「えへへへ」 わずかな沈黙の後、今度は篤志がイタズラっぽく口元に笑みをたたえて尋ねた。 「で、おまえの感想は?」 「え? な、なんの?」 「初めて飲んだ感想。まずかったろ?」 夕日はちょっと考えるように唇を尖らせ、やがてボオッと赤面しながらつぶやいた。 「……そうでもなかった」 「無理するなって。あんなの、美味いわけないんだから」 「ええっ、だってほんとだもの。そりゃちょっと生臭かったけど……でも篤志のだし……なんか、幸せって感じで……嬉しかった」 「夕日……」 篤志は感きわまったようにじっと夕日の顔を見つめ、そのうちそっと身を屈めて、夕日の唇に軽いキスをした。長い髪がさらさらと枝垂れて、二人の顔を覆い隠した。 目を閉じて満足そうに篤志の唇を受け入れていた夕日だったが、突然大きな瞳をくるんと見開き、がしっと篤志の顔を両手でつかんで引き離すと、泣き出しそうな声で叫んだ。 「ごめんね! ごめんね、篤志!」 「な、なんだよ、急に?」 「僕、僕、……いっぱい篤志の口に出しちゃってた……。まずいのに……ゴメン」 「はあ?」 一瞬何を言い出したのかわからず、唖然として目を丸くする篤志。夕日は必死の形相をしながら、腕にしがみついて嘆願した。 「僕、もう絶対いかないから。今度から絶対我慢するから! だからもう飲まないでよね、篤志!」 「飲まないでって……」 「ごめんね! 僕もう、絶対に篤志の口にはいかないよ! 約束する!」 「お、おい、夕日、そんなの勝手に約束されても……」 「だってだって、篤志、今まで無理して飲んでたんでしょ? まずかったんでしょ? ごめんね、僕知らなかったんだ。ごめん……」 「あーバカ! なんで泣くんだって! おいこら、泣くな、そんなことで! 夕日っ!」 だが夕日はポロポロと盛大に涙を流してしゃくっている。篤志はしばらく困ったように見下ろしていたが、やがてカリカリと頭をかくと、がばっと抱きかかえて床にひきずりおろし、そのままがっしりと押さえつけた。 そして目をむいている夕日をしりめに、ずり下がってすっぽりとあそこを口に含んだ。 「あっ、やだ、篤志! あんっ!」 一瞬にして感じ悶える夕日。 「いやぁ、そんな! そんなことされたら僕……! あああんっ!」 「そんな約束させてたまるか。絶対いかせてやる」 「だってえぇ……あーん、篤志、いっちゃうよぉぉ!」 ……はいはい、二人で勝手にやってなさいね(ーー;) (作者談) |
|
――二人の愛の巣、森太郎のマンションのベッドの上で…… 静かな部屋の中に、ときおり小さくうめくような低い声が聞こえていた。それが、絶えきれずに身悶えてうごめく者の、シーツの微かな衣擦れの音と絡み合う。ひそやかな愛の営みは、突然一人の男のつぶやきで終わりを告げた。 「あ……啓太さん、やばい……」 同時にくぐもったうめき声があがり、直後に盛大に咽かえって咳き込む音が部屋中に響き渡った。 「けほっ! げほげほげほっげほっ!」 森太郎は自分の足と足の間で、シーツに額をくっつけてのた打ち回る啓太を心配そうに見下ろした。 「だ、大丈夫ですか? 啓太さん?」 啓太はしばらく返事も返さずに突っ伏していたが、ようやく咳が治まったかという頃、ガバッと顔をあげて叫んだ。 「森太郎―! てめーな―、何しやがるんだ、ばっかやろー!」 「な、なにって……いや、あんまり気持ちがよくってつい」 相変わらずしらっとして応える森太郎に、啓太は真っ赤に顔を染めて怒り狂った。 「何が気持ちが良くってだ、アホンダラ! こっちは初心者なんだぞ! 少しは遠慮しやがれ、てめー!」 「そうは言われても……。初心者のわりには啓太さんお上手なもので、我慢できなかったんですよ。ましてや、貴方にされてるなんて考えるだけで俺には興奮度アップなんですから、仕方がないでしょう?」 森太郎のなめらかな甘言に、怒っていた啓太もついつい言いくるめられ、少し落ちついた様子を見せながら唇を尖らせた。 「お、おまえなー……おだてたってダメなんだぞ、ちくしょー……。マジに苦しかったんだからな」 そうつぶやく啓太の瞳が、涙でいっぱいに潤んでいる。森太郎は手を伸ばして、彼の頬にそっと触れた。 「飲んじゃったんですか?」 「飲んだよ! だって突然咽の奥にぶちまけられりゃあ、飲むしかないだろーが!」 「すみません」 殊勝に謝って優しく微笑む森太郎。啓太は耳たぶまで赤く染めて、すねたみたいにうつむいた。 「……そりゃ、しゃあないかもしれないけど……一言教えてくれりゃあ、こっちだって覚悟ってもんが……」 「俺、ヤバイって言いましたよ?」 「なに言ってんだ! 言ったと同時にイキやがったじゃないか! あんなの覚悟する暇もねぇ!」 怒鳴りつける啓太の肩を、森太郎は腕を伸ばして引きずり寄せ、その広い胸の中へと抱え込んだ。甘く抱きしめられ、啓太は文句をやめて黙り込んだ。 肩から回された手が柔らかく髪を撫でる。啓太は目を閉じ、森太郎の胸に頬をうずめてもたれかかった。 しばし穏やかな沈黙があり、やがて啓太が呆れたようにつぶやいた。 「……おまえ、よくいっつもあんなの平気で飲むよな。感心するぜ」 「そりゃあ、啓太さんのものですから。なんだって平気ですよ、俺は」 「へん、くさいセリフ言うな、バカ」 そう文句を言いつつも、あながちまんざらでもなさそうに啓太は頬を染めて唇を尖らせた。腕がするっと伸びて、森太郎の体をぎゅっと抱き返す。森太郎は満足げに微笑した。 しばらくして、森太郎が探るように尋ねてきた。 「そんなにまずかったですか? 啓太さん?」 「そりゃーまずいのなんのって。もう俺は金輪際飲まねえからな。あんなもん」 「冷たいなぁ」 「だってなぁ……」 啓太は思い出したように顔をしかめて話しだした。 「あーんなよ、ドロっとして、生温くって、ベト―っとして、うええって感じで、ぬちゃあっとしてて……」 ふと啓太の言葉が止まる。森太郎は顔をのぞきこんで問い返した。 「啓太さん?」 「……わる」 「は?」 「思い出したら……胸、悪くなった……。やべ、吐きそ……」 口を押さえてうつむく啓太の顔は真っ青である。森太郎もまた顔色を変えて叫んだ。 「だ、大丈夫ですか、啓太さん? だめですよ、こんな所で吐いちゃ。ほら、トイレに行きましょう、さあ」 「あ……やば……うっ」 「うわあっ、啓太さん! うわあああっ!」 ――後片付けはきみが頑張ろうね、森太郎くん(^_^;) (作者談) |
|
――二人の愛の巣、京介の超豪華マンションのキングサイズのベッドの上で…… 部屋の中には、若い男の大きく喘ぐ声がいっぱいに響き渡っていた。荒い息とともに、途切れ途切れだったうめきが段々と激しくなり、やがて絶え間なくなって悲鳴のような嬌声へと変わっていく。官能的な愛の営みは、青年の咽からほとばしるような叫びで終わりを告げた。 「ああああっ、いくぅ! あああっ!」 彰人の体が大きくのけぞる。最も強い絶頂が通りすぎたあとに何度も何度も余韻が襲い、彰人はその度にぴくぴくと体を震わせた。 やがてそれが治まり、ぐったりとして荒い息をついていた彰人だったが、突然京介が一言つぶやいた。 「薄い」 冷ややかに、だがキッパリと言いきる。彰人は疲れきった顔を向けて、気だるげに問い返した。 「はあ? なにがぁ?」 「薄すぎる」 「だから、なにがって?」 ぼんやりとしながら尋ねる彰人に、京介は逆に問い返した。 「おまえ……今日、店休みだって言ってたよな?」 「うん」 「そのわりには、来るのがえらく遅かったんじゃないか?」 「え? ……ああ、……そうだっけ?」 一瞬妙な間を感じさせて、彰人は白々しくとぼけてみせた。京介は何気なさそうに視線をそらす彰人の横に体をずらすと、上から威圧するように覆い被さって言った。 「なにやってたんだ?」 「別にぃ。早く来たってあんたいないかなぁって思ったから、部屋でグータラしてただけだよ?」 「とぼけるなよ、彰人。おまえ、ここに来る前に浮気してきやがっただろうが」 「え? ええっ! いや、そんな……まさかぁ! ハハッ、そんなわけないじゃん。やだなぁ、京介」 彰人はからからと軽く笑った。だが笑う唇の端がかすかにひきつっているのを、京介は見逃さなかった。 「俺相手にばれないとでも思ったのか? 薄すぎるんだよ、おまえの。いったい何発抜いてきたんだ?」 「え……? いや、そんな……えーと……」 「怒らないから白状しろ」 「んーと……あー……二回……かな?」 京介のクールな顔がピクリとひきつる。彰人は焦って媚びるような笑みを向けた。 「やだなぁ、怒らないって言ったじゃないか。別に今更俺の浮気ぐらい、どうってこともないだろ?」 「他の日なら許すが、俺と逢う時は俺のことだけ考えろと言ったはずだぞ」 「だ、だからさ、ずっとあんたのこと考えてたってば。されてる最中もさ、京介ぇって」 京介の唇がピクピクとうごめいた。表情はさほど変わらないものの、静かな怒りを感じさせる。やがて意味ありげににやりと笑って言った。 「そうか。そいつは光栄だ。別の男にやられてる時も考えていてくれたとはな。ありがたくって興奮してきたぜ」 「ちょっ、ちょっと、京介……なにする……気?」 冷ややかな目でにらみながら、ずっしりとのしかかってきた京介に、彰人は戸惑ってつぶやいた。京介は冷たく言い放った。 「そこまで想われてるならちゃんと返さなきゃな。今夜は夜通しつきあってやる」 「へ? いや、あの……そんな……。あのさ、京介。俺、もう結構満ちたりてんだけど……」 「遠慮するな。まだ一回しかいかせてない」 「あ、だって……だからその……もう三回目で……」 「大丈夫だ。本物の俺が相手なら、まだまだいけるぞ」 「まだまだいけるって……。あ、やだ、京介、そんな……あああんっ!」 情け容赦なく押し入ってきた京介に、彰人は困惑した嬌声をあげた。 「だ、だめだってばぁ。明日腰立たなくなっちゃう。あっ、あっ、やあん! はああっ、京介、いいっ! すごいぃっ! ああっ!」 その日四回目の頂上に向けて、彰人は全開で突っ走っていった。 ――その夜、彼のマンションは愛の修羅場と化したそうです(笑) (作者談) |
しょーもないものを作ってしまったわ(笑) |