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志麻ケイイチ/2004/10/31
「ちょっとちょっとちょっとーーっ! みんな見て!」 イエローが雑誌を振り回して居間に駆け込んできた。 「イエロー。走らないの。はしたないよ」 ブルーが人指し指を立てて言った。 イエローは複雑な表情をブルーに向けて応えた。 「……うん……ねえ。ブルー」 「なによ?」 「おめでとーー!」 イエローは、写真いっぱいの雑誌を、みんなの前で広げた。 「なになに?」 全員が顔を突き合わせて覗き込んだ。 そこには水着姿で颯爽と歩くブルーの写真がデカデカと掲載されていた。 「なっ! ななななっなによそれ!」 目を剥いたブルーをレッドとピンクがはがい締めにして押さえ込んだ。 ブルーの肘打ちに頭をぼかぼかにされながらレッドが聞いた。 「写真を破かれる前に説明しなさいよ!」 「えへへへぇ。今年、ナスカ様のプライベートビーチにみんなで言った時に撮った写真よ。なんと特賞。賞金\200,000!」 「嘘だな」と、いつのまにか現れたナスカが言った。 「ナスカ様。嘘って?」とレッド。 「イエローが\200,000などとはっきり言うからには、賞金は\1,000,000と見た」 みんなの冷たい目線がイエローに向けられた。 「……や、やだなあ。賞金はみんなで分けようかと思ってたのにい」 「ますます怪しいわね。みんなで分けるですって?」と、レッド。 「イエロー。聞いてもいいかな?」 ビンクが言った。ぎょっと肩をすくめてイエローは引きつった笑みを浮かべた。 「応募したのはブルーの写真だけ?」 彼の言葉にみんなは、ハッと気づいた。海には全員で行ったのだ。 イエローがそんなチャンスを無駄にするわけがない。 ましてやブルー一人にチャンスを掛ける道理がない。 イエローはじりじりと逃げの体制に入った。 レッドはブルーを放り出した。こめかみに大きなバッテンマークが浮きでていた。 「それはつまり。私たちの水着写真も送ったけどボツだったと。ブルーが特賞で、この私は選外だったと。そういうことかしらぁ?」 「え、選んだの私じゃないし! ホラ、みんなにも公平にチャンスをあげたんだし」 「ほおおおっ。あなたの写真の腕じゃないと? ブルー以外は一山いくらのイワシにふんどしだと。そう言いたいんだ」 「イエロオオオォォォォォォ!」とメイド戦隊。 「うきゃああああーー!」 |
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志麻ケイイチ/2005/10/18
メイド戦隊ナスカ−「ソイネリーベ来日 from MAID RUEGHEL」
「はじめまして。皆様」
凛とした美しい声で、褐色の肌の女性は言った。
グラマラス。まさにその一言がピッタリの女性だった。
プロ野球選手のお尻のような胸。中学生のようなウェスト。台所のボールいっぱいにプリンを二つ作って大皿並べたようなヒップ。
屋敷の居間に整列したメイド戦隊は、ナスカが連れてきた外国の女性に息をのんだ。
美しいメイドは、大きな目で微笑みながら5人をゆっくりと見た。
「はじめまして。あなたがレッド?」
「は、はじめまして」
レッドは圧倒されて口ごもった。
彼女はレッドよりも少し身長が高い。メイドらしい機能的なローファーに、グレー基調の清潔なメイド服をまとっていた。
しかしウェストの位置が、どう見てもレッドよりも5cmは高かった。
……足ながっ……
身体の半分以上が脚なのだろう。むかつく気にもならないほど、べらぼーなスタイルだ。
おほん、と咳払いしてナスカが言った。
「みんな。あらためて紹介しよう。アメリカのポートランドから来たソイネリーベ君だ」
「こんにちはぁ」
五人は声を揃えて頭を下げた。
「こんにちは。皆様」
赤道直下な美しい艶の肌に、インド人のような堀の深い顔だち。そして目の色はゲルマン人も嫉妬する碧眼だ。
「……負けた」ピンクがつぶやいた。
プッとブルーが吹き出した。
「素材が違うわね」
「馬鹿にするな。僕はブルーより足長いし、ウェストはレッドよりも……」
ハッと口をつぐんだが、もう遅い。ゴリっと爪先に激痛が走った。
「ピンクゥーーっ。私よりなんですってええ」
レッドのまなじりがキリコリと音を立ててつり上がった。ピンクの足をグリグリと踏みにじる。
「レ、レッド。ごめ、痛い……」
「くらえ清掃拳!」
「たんまーーーっ!」
ドンガラガッシャン!!
ナスカはいたたまれずに、視線をさまよわせながら言った。
「ああっ。ソイネリーベ君。こういう連中だ。よろしく再教育してやってくれたまえ」
「おまかせください。ナスカ様。「メイド・ブリューゲル」のサービスは一流です」
褐色のソイネリーベは、にっこりと微笑みながらバキボキと指を鳴らした。
続く
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