They are maids who work at the mansion of NASUKA. NASUKA is gentle And a wonderful rich man with many mysteries and connections.The MAID WARRIORS are fights in order to keep employment of them, a mansion, and peace in the neighborhood!
 
 

紫 茄子花/1999/02/01
 小さな町の片隅にメイドさんの働くお屋敷があり……
 ダンナ様と呼ばれている人とメイドさんが一緒にいて……
 それは別なところで話すとして…
 実は隣に、その屋敷と同じくらいの建物があったりする
 そこにはメイドが沢山いるのだが……

赤「今どき、かわいいメイドのいるお屋敷がふたつも並んでいるなんてきっとここだけだよね」
ナ「待て! さりげなく自分の事も言ってないか?」
赤「え〜 かわいくないですか? ご主人、嬉しくないの?」
ナ「ま、別にいいけどな、どうしてメイド戦隊なんだ」
赤「だってご主人が「史上最強のメイド」さんが欲しいって」
ナ「言ってない×2 それになんなんだ史上最強っつーのは」
赤「でも、メカニックなら メイドグリーン!」
緑「グリーンでぇすぅ」
赤「冷静沈着なイエロー」
黄「……クールです」
赤「かわいいピンク!」
桃「僕は男ですからね、一応念のために言っておきますけど」
赤「ちょっと怖そうなブルー!」
青「あたしはまだあんたをリーダーと認めたわけじゃない」
 ブルーの言葉を軽く流して決めポーズ。
五人そろって「メイド戦隊ナスカ!!」
 のりのりのレッド。嫌々やってるブルー。
 実にやる気なさそうなイエロー。
 ニコニコお付き合いしているグリーン。
 恥ずかしそうなピンク
 一応、ポーズをつけているメイド戦隊たち
ナ「いや、全然、答えになってない。なんでメイド戦隊なんだ」
緑「まぁまぁ旦さん、一人一人は弱くても〜」
ナ「おっ ふむふむ」
緑「5人そろえば4人の力」
ナ「減っとるやないか!!」
黄「……5人もいたら、手が抜ける……」
赤「ってみんなが思ってたらそうなるわけか〜なるほど!」
ナ「納得すな!! 手を抜くな! 全力でやれーー!!」
 ナスカにどやされて散り散りに逃げるメイド戦隊たち

 ……今思えば、あの時、あんなことを言わなければ……。
 と ナスカ氏(年齢不詳)は語った。
 全力で……その言葉をあの5人は5人なりに守っていたんだ。
 物事には「限度」とか「ほどほど」っつーもんを知らなかったんだな〜、あいつら……。

志麻ケイイチ/1999/02/01

 ナスカが掲示板に書き込みをしていた。
『実家に帰らせていただきます』

「とっとといっちゃいなさい!」
 レッドがかわいらしい顔に険を立てて言った。
「ええっ、ええっ。わかりました。そうですよ。行きますよ。ハイハイハイ」
 ナスカは荷物をまとめながら開き直った。
「あの……ええと……でも、なにもご主人様かが行くことはないんじゃないかしら……」
 ピンクはハスキーな声を震わせながら、おろおろとつぶやいた。
「ほっときゃいいのよ。どうせ、夕飯までには帰ってくるに違いないわ」
 革張りの応接椅子にどっかりと腰を下ろしたメイドブルーは、お客様用のバハマ葉巻を、プカーーッとくゆらせた。
 ナスカは涙目で、キッとブルーをにらみつけた。
「……ブルー。君だな。いつも葉巻を吸っちゃっていたのは」
「あはははは。知らなかったの? バッカねえ」
 プルーは、どこに隠し持っていたのか、ナスカ秘蔵のバランタインをラッパ飲みして大笑いした。
「ちょっと、ブルー。やりすぎよ」と、レッド。
「なに良い娘ぶってんのよ。昨日のナスカ様のデザートのメロンを食べちゃって、かわりにトマトだしたくせに」
「な・な・なにぃ!? レッドぉ?」
「ナ、ナスカ様。ほら、あのトマトって北海道から取り寄せた桃太郎トマト(本当にあります。とても甘い)です。ビタミンたっぷりで、お肌すべすべですよ」
 レッドは、わたわたと手を振った。
「ああああっ、いいんだ。僕なんか。みんなが僕にたかっているだけなんだ。僕の払う給料だけが目当てなのさ」

志麻ケイイチ/1999/02/01
「……それは違うな」
 ブルーがなにか思いついたように言った。
「みんなナスカ様の嫁さんになるって、玉の輿狙ってるんだぜ」
「ブブブブブ・ブルーーーッ!!」
 レッドがシレーヌのようなまなじりで叫んだ。
「あんたって娘は、なんてことをっ!」
「あのぉ、そろそろ飛行機の時間ですけれど……」
 ピンクはナスカの二十キロはあるトランクを、ひょいと片手で持ち上げて言った。
「いけない。こんなことでは。僕には使命があるんだ。それは……」
「カーーーッッ!!」
 執事のセバスちゃんが、部屋いっぱいに広がる気合い顔で一喝した。
「………………」
 腰を抜かしたみんなの前で、小さく咳払いをして言った。
「ナスカ様。羊ロボ・セバスの発進準備。相整ってございます」
「……じゃ、あの、愛知コミケに行ってきます」
「あんまり無駄づかいしないでくださいね」と、レッド。
「ハイ」
 毒気を抜かれたみんなは、ナスカと荷物持ちのピンクを見送った。

なかやみか/2000/01/01

「おかえりなさいませ、ナスカさま!」
 メイドレッドが元気に出迎えた。
「留守番ご苦労様でした。お土産がありますよ」
 にっこりとナスカは答えた。
 行きがけの騒動も、原点にふれる故郷への旅でひとまわり大きくなったナスカにとっては、今や些細な事となっていた。
「ナスカさま、口調が変わってるぜ」とブルー。
「暑さで熱出したんじゃ」とグリーン。
「じゃあ錯乱している内に賃金交渉を」と計算高いイエローが言った。
 ナスカは悟りを開いたような微笑みをたたえ、土産ものをカバンから出していた。
「皆さん!急にすごい雨です!お洗濯ものがー!」
 健気なピンクが庭から叫んでいた。いい嫁になりそうな男だ。
「うわ、すっごいな!」
「急いで!」
「いやぁッ濡れちゃうぅん!」
「なんかやらしーんだよ!お前がゆーと!!」
 ブルーがピンクを拳で殴る。
 バタバタと洗濯ものを取込んだメイド戦隊たちがホッとした時、ナスカは
「セバスちゃんもよく留守を守ってくれましたね」と、ベランダにいた羊ロボ・セバスちゃんの頭をなでた。その時!
 グヮラグヮラどッしゃーーーンン!! 目の前が真っ白になる程の落雷が至近距離で閃いた。
「!!!」
 セバスちゃんを介して、ナスカはまともに誘導雷をくらった。
「ご主人さまあ!?」
「ナスカさまっ!!」
 ぷしゅ〜と煙を立てているナスカに、涙ながらに駆け寄るメイド戦隊たち。
「賃金どうなるんだーー!??」
「お前らァあ!人が死にそうになってる時に!!」
 アフロになったナスカが叫んだ。
 一瞬の空気の静止の後。
「よ……よがっだぁ……・あああ〜〜〜〜ん!!」
 涙でべそべそになりながらレッドとピンクがナスカに抱きついた。
 3人並んでぐッと親指を立てているブルーグリーンイエローのそれには、一抹の何か違うものを感じながらも、皆が自分をこんなにも心配してくれている事をナスカは感じた。
『帰ってきて良かった』
 ナスカはそう思った。
『こいつらの為にも、また頑張らなきゃな!』
夕立のあがった空はナスカの心のように晴れ晴れとしていた。

「元にもどって良かったな、ナスカさま」
「やっぱりああでなくっちゃね」
「原稿出来たよ『落雷で奇跡が起こった男の話』。日テレの世界まるみえに売り込んで一儲けね」
 もう一度3人は、ぐッと親指を立てるのであった。

紫 茄子花/2001/01/10

『メイド戦隊ナスカ』第23話気味(気味!?)

「くっ、俺としたことが、まさかこんな罠に……」
 ナスカは天を仰ぎながら自分の命が薄くなっていくのを感じた。
「罠じゃねーだろ、てめぇが後先考えずに行動しやがって!」
 不良メイド、メイドブルーがナスカを殴った。
 冬の12月、驚異的な寒波に見舞われたある日のこと。

「御主人! 灯油の買い置きがなくなってます」
 メイド戦隊のリーダー、メイドレッドが慌ててやってきた。
「買い置きのヤツをこのバカが無計画に使ったからな」
 雇い主を雇い主とも思わないブルーはナスカの首根っこ締めた。
 仕方なく電気ストーブをセットしたら、停電になった。
「電子機器が、パソコンが……」
 メイド戦隊のメカニック、メイドグリーンが涙目でやってきた。
 後ろから可愛いエプロン姿のメイドピンク。
注:メイドピンクはこんなにキュートだが、性別は男の子!
注2:ピンクは好きでこんな格好をしているわけではない!
「ナスカさん、お湯を沸かそうと思ったらガスが……」
 ガスすらも止まった。
 今、ナスカの屋敷は完全に火の気をなくしていた。
「……こよーぬし、雪で帰れない……時間外手当、出る?」
「この非常時の第一声がそれか!? イエロー」
 通いのメイドである最年少のメイドイエロー。
 可愛い顔して、お金にシビアでクールな少女。
 さらに大雪がこの地域を襲い、玄関の半分が埋まった。
 脱出すらできない。
「どうします、御主人」
「どうすんだよ え? オイ」
「……こよーぬし、働く人の労働安全衛生は守って……」
「旦サン、どうしましょぉ」
「どうしたらいいんですか、ナスカさん」
 集まる5人のメイドたちにナスカはたじろいだ。
「落ち着け! こういう非常時こそ落ち着くんだ」
 ここはこの屋敷の主である威厳をみせるナスカ。
 おもむろに厨房蛇口をひねった。
「よし、大丈夫! 水道は出るな」
「うう、ナスカさんが壊れてる」
「水なんざ、外の白いモン溶かせばいくらでもあるだろ!」
「……溶けないかも……寒すぎて」
「イエロー、怖いコトいうなよ」
 リビングに集まると、グリーンが開口一番
「しょうがないぃ。じゃぁ、メイドグリーン愛用ツールのこの『ハイパーナパーム』で!」
 メイドグリーンは巨大な火炎放射器を抱えた。
「お前はこの屋敷ごと燃やすつもりか!」
 叫ぶナスカの横でイエローがポツリと
「愛用って、使ったの見た事ない……」
 イエローのいつものツッコミをかわしつつ
「スイッチオン!」
「だぁ こっちに向けるな!!」
 カチっ……
 シーン
 砲口から炎が出るはずが何も作動しない。
「どうした?」
「……エネルギーが切れてる」
「エネルギーって?」
 立ち尽くすグリーンにピンクが尋ねる。
「灯油」
「灯油があるくらいならんなもん使わんわい!」
 騒ぐメンバーを他所にイエローが横たわった。
「大丈夫か? どうしたイエロー」
 目を閉じて、胸の前で手を交差したまま
「じたばた見苦しく凍るのヤだから……氷の美少女」
 イエローの言葉にポンと手を打ち、納得。
各々思い思いのポーズでじっとした。
………………30秒経過……
「だぁ〜! やってられっか、こんな後ろ向きな事!」
アクティブなナスカ、ブルーには絶対無理。
「やっぱり駄目だよ〜、イエローもグリーンも起きて」
「むにゃ、春まで起こさないでぇ」
「グリーンが冬眠しとる」
「何が悲しくて自分の家で遭難せにゃならんのだ」
 ナスカの叫びにピンクが不意に頭を過ぎるものがあった。
「(雪山で遭難?ってもしかしてよくある話だと……)」
 服を脱いで肌と肌を寄せ合って温めあうとか。

 純情少年メイドピンクの頭の中でイケナイ想像。
「ホラ、恥ずかしがらないで、非常事態なんだから」
 メイド服に手を掛けて近づいて来るレッドの姿。
 ん? 気がつくと全員ピンクを取り囲んでいた。
「なんかピンクの体温が一番上昇してる」
「…人間パネルヒーター」
 手をピンクにあてるイエロー。
「おい、何かHなコト考えてんじゃねえのか」
 グリグリと拳をこめかみに押し付けるブルー。
「わぁ、ピンクあったか〜い!」
 レッドがピンクに密着する。
「おやぁ、さらに体温上昇ぉ」
 ボォ〜ッと顔から火が出るようだった。
 しかし、いつまでもそんな事でごまかせない。
「仕方ない。残るは厚着だ」
「なるほど さすが御主人」
「そういえばぁ物置に防寒着が」
 グリーンの言葉に全員走る。
「ありったけの物を着込むぞ」
 しばらくして…
「御主人、何故泣いてるの?」
「うう、メイド服が、メイドたちがなぜ、なぜ…」
 メイド服に身を包んでいたはずなのに、今は
「よく、こんな着ぐるみありましたね」
 なぜか、レッドは子ブタ。隣はブルーがオオカミのぬいぐるみ。
 ちゃっかりイエローは可愛いネコ耳のぬいぐるみだし、
 ピンクはキュートなウサギのを着込んでいた。
 グリーンのカエルのぬいぐるみも何故か彼女に似合っている。
「で…なんで俺がいもむしのぬいぐるみなんだ!?」
 寝袋のような格好で転がるナスカ。
 ともかく、だるまのように着込んだ。
 着膨れした全員は腕も曲がらないほどコロッコロと…
「とりあえずこれで明日の朝までしのぐんだいいなメイド戦隊!」
「了解」

 次の日、雪は溶けた。というのに
「…私、学校があるから…」
「あ、僕も……あの、イエロー、助けてくれないかな」
 イエローだけはきっちり着込んだモノを取っていつもの格好。
 それ以外のメンバーは丸々としたぬいぐるみの姿のままだった。
「ぬ、脱げん! チャックに手が届かない」
「う、動けないです」
「コラ! イエロー、早くこのチャックを外せ」
 騒ぐ面々を他所にイエローはマイペース。
「なんで、電卓をたたく! こら〜!」
 そんな喧燥の中、グリーンは一人、幸せそうに眠っていた。

紫 茄子花/2001/01/10
メイド戦隊ナスカ   第7話っぽい(っぽいって……)

赤「御主人! 御主人って何の仕事してるんですか?」
主「うっ!」
 それはいきなり。メイドレッドの素朴な問いから始まった。
青「オレも聞きたいと思っていたんだよなぁ。イエローは?」
黄「…こよーぬし、払いはいいから。まだ善意の第三者でいたい」
桃「そんな、ナスカさんを犯罪者みたいに言わなくても……」
 相変わらずのそっけないイエローと優等生のピンク。
主「ピンクの言う通り。少なくとも法に触れる事はしていない」
桃「そうですよね〜」(にっこり)
主「スレスレな……」(あっさり)
 メイドピンクの顔がさぁ〜っと血の気が引いていく。
赤「じゃ、どうしてこんな所に住んで、5人も雇えるんですか?」
緑「旦さぁん、裏の印刷機とぉ何か関係あるぅ?」
 ひょこっとメイドグリーンが顔を出した。
主「ない! ついでにそんな印刷機もないだろ!!」
 ピンクが何やら非合法な香りを感じて心臓が不整脈……。
黄「……どうした、ピンク、顔色悪い……」
桃「いや、ちょっと心臓に悪い」
主「わかった、実はな……」
 ナスカの次の台詞をみんな待っていた。
主「近所の泉に鉄の斧を落したんだよ」
青「嘘付け〜!」
赤「うんうん、それで?」
主「そしたら中から泉の精と名乗る綺麗なお姉さんが出てきた」
青「で、金と銀の斧を差し出してどっち落したのかって?」
主「ドキッ! な、なぜそれを、さては見てたな!?」
青「みてるか!!」
主「うう、本当は小さなつづらを選んだんだよ〜」
青「それは『舌切り雀』じゃねぇか!」
主「裏の畑でぽちが鳴いたんだよ〜で大判小判がざっくざくと」
赤「そうなんだ! いいなぁ私もぽちに会いたいです」
桃「ナスカさん、レッドが信じるから、もうそのくらいで……」
青「いいから、みんな、行こう×2」
 呆れたブルーに促されてメイド達は部屋から出ていった。
 バタンと扉が閉じたのをみて、ナスカは汗を拭った。
主「ふぅ〜なんとかごまかしたな」

 ナスカ……その職業はいまだ謎に包まれている……おわり

志麻ケイイチ/2001/01/10
「これが鯨!? ちょっとなにこれ。980円/100グラムですって? 赤井川の特上豚ロースよりも高いじゃない!」
 イエローがきんきん声で、よくわからないたとえを叫んだ。
「しかもレッドったら2,700円分も買っちゃって」
 あまりのイエローの剣幕に、ひきつった笑いを浮かべながらレッドは言った。
「ほらお正月は一富士・ニ鯨・三茄子花って言うし……」
「いわないっっ!」
「まあ、料理してみましょう」
 レッドの危機にピンクが助け船を出した。
 塩付け状態だったので、まずは塩抜き。
 コンブと椎茸と人参その他でつくったスープは味付けせずに用意して、スライスした鯨をいれた。
 醤油味にするか、味噌味にするかは様子を見て決めることにした。
「こ、これは……!」
 むわっ、と立ち昇る生臭さ。
「鯨って哺乳類じゃなかったの? 魚のアラで作ったスープの匂いじゃない」
 レッドは意外な展開に驚きながら、調味料を握り締めた。
「これは味噌味ね。ぜったい。あわせ味噌をベースに生姜と赤味噌も入れたいわ。それも八丁味噌クラスの強烈なやつ。まだある?」
「1年前のなら」と、ピンク。
「腐りゃしないわ」
「……ねえ、レッド。ちょっと豚肉入れていい?」
 ピンクは、レッドの返事も待たずに豚肉を入れてしまった。
 コトコトと煮込んでいくうちに、案の定不充分な塩出しが効いて塩辛くなってきた。
 ピンクはどぼどぼとお酒を入れて味を調節した。
 レッドは鯨のスライスを摘み上げて味見をした。
「くじらベーコンの味だわ」
 そう。以前に函館の朝市に行った時に食べた「クジラベーコン」の味がした。
「けっこうおいしいじゃない」
 そしてスープもいい感じに仕上がった。
「いただきまーーす」
 食卓に立ち込める魚臭さに目を白黒させながらくじら汁をいただいたみんなは、意外とおいしい味に驚いた。
「くじらじる……じらじる……じらじるじらじるじらーららべら。この世は魔法がものを言う」
 グリーンが変なことを口走った。
「ララベルとくじら汁って音が似てると思わない?」
 へんなグリーンを無視してナスカが言った。
「くじら汁とかけてビールの飲み過ぎと解く。その心は、にょーいが凄い」
「……ナスカ様。お下品」
 ピンクが泣きべそをかいた。

なかやみか/2001/12/16
「えっ、今夜は二人だけなんですか!?」
 メイドピンクが驚いて拭いていた皿を取り落としそうになりながら、レッドに尋ねた。
「そうなのよ。イエローとグリーンは新春アキハバラ電脳市とかいうのに
 行っちゃったし、ブルーはたまには一人で映画が観たいんですって。
 御主人も今夜は呑み会で遅くなるって、さっき電話があったから」
「……そ、そ……そう・なんです・かっ」
 やにわに緊張のピークに達したピンクの心を、レッドは知らなかった。
 なぜあろうピンクは、実はレッドに惚れているからこそ、この理不尽なバイトにも耐えていたのである。女らしいがピンクも男。惚れた女には弱かった。
『れ……レッドさんと二人きり……嬉しいけど、ど、どうしよう』
「あの……あの、ええと、い、イエローさんもアキバに行くなんて、珍しいですねえ」
「そうよね。何だかね、原価ギリギリまで値切り倒すのに挑戦しに行くとかって」
「あははははは、はは。ら、らしいですねえ」
 ホッペタの筋肉が緊張でひきつって、カラカラとしたセリフしか出ないピンク。
 震える手には力が入り、ティーカップの柄をもぎとらんばかりである。
「あ、ブ、ブルーさんも、映画なんて珍しいですよねえ。何の映画かなあ」
「ええとね。『ナトゥ・踊るニンジャ伝説』だったかな」
「…………………すっごく意外ですね」

「睦みあいの邪魔をして悪いがな」
 どこからともなく艶のある声がして、くないのような短剣が軽い音を立てながら、それでも鋭くキッチンの壁に幾本も刺さっていった。
「あなたは、メイドシャドウ!!」
 さすがにメイド戦隊である。ピンクは抜群の反射神経でそれをよけて相手を確認した。
「なによ!む、睦みあいってのは、どういう意味よ!!」
 というか本当に言葉の意味を知らないらしいレッドであった。
「久し振りだな、メイド戦隊。怨みはないが総統イチハラ様の命令だ。死ぬがいい」
 メイドシャドウはその美しい肢体を豹のようにしならせると、クイックルハンドシコロを逆手に持ち二人に挑み掛かって来た。
「あぶない!レッドさん!!」
 そういうとピンクはシャドウの前に立ちはだかった。
 しかしいきなりシャドウの豊満なバストパンチを顔面にくらい、そのまま壁に押し付けられた。
 きっとナスカがいたなら、俺に代われ!と言ったくらいのラッキーシチュエーションではあったが、ぷりゅんと豊かなシャドウのバストでの圧迫はそれだけで恐るべき武器であった。
「むぶゥ!!」
 ピンクはたちまち呼吸困難に陥った。
「ふッ。どうだメイドレッド、こんな技は。貴様もやってみるか?ふふふ」
「なっ!なんて事するのよ!!ピンクを放しなさい!!!!」
 レッドは正義の怒りと、それとはちょっと違った怒りとに燃えた。
「ピンク!そんな氷のうオンナに負けちゃダメよ!」
「あッははは、可愛い負け惜しみだな。さて、武器を捨てないとコイツの息が止まるぞ」
「くうっ!」
 レッドが歯噛みをして、手にしていたメイドブレードを床に置いた。
 ピンクは息苦しさで手旗信号のようにもがいている。
「ボエーーーーーーーーーッッッ!!!」
 その時、危機を察知して駆けつけた、というかたまたまやってきた羊ロボ・セバスチャンの雄叫びが響いた。さしものシャドウも瞬間たじろいだ。
 今だ!レッドがその隙を突いた。
「メイドスラッガー!!」
 白く波打つメイドのカチューシャを両の手で挟み込むと、ブーメランのようにシャドウに向かって投げつけた。
 柔らかいフリルは一瞬で硬化し、鋭い羽手裏剣となってシャドウの胸をはすった。
「あぅッ!」
 メイドスラッガーは、一閃の光と共にシャドウのボディスーツを切り裂いた。
「まさか……特殊合金繊維で出来ているハダッカー・エプロンが斬られた!?」
 さすがにシャドウは驚きを隠せず技を解いてしまった。ピンクが反撃に転じようとしたが、シャドウはその攻撃をかわしピンクをふんづけて身を翻し窓際に立った。
「ふ、少しは腕を上げたようだな。次が楽しみだ。はッ!!」
 シャドウは傍らにあった小麦粉をブチまくと、煙幕にのがれその姿を消した。
「大丈夫!?ピンク!!」
「う、あ……は、はい」
「なんて無茶するのよ!」
「すみません……。で、でも……僕は!僕はレッドさんが……危険だったから…。
 ……レッドさんが……!!!!!」
 ピンクは思わずレッドの肩を握りしめていた。しかし、それ以上は言葉が出ない。
 体も動かない。ただあふれそうな想いをこらえ、レッドの瞳を見つめていた。
「ピンク……」
「……レッド……さん」
 レッドもじっとピンクを見つめている。
 ピンクは、このままずっと、ずっと時間が経たなければいいと思った。
 こんなに間近にレッドがいる。それも誰にも邪魔されずに。そう思っただけで涙がこみあげてきそうに切なかった。
 深く綺麗な瞳を見つめる事を、今自分だけが許されている。たまらなかった。
 レッドの艶めく唇が、ゆっくりと開いた。
「ピンク……二人で今夜は……」
「……!?えっ!?」
「ギョウザを作りましょうか」
 ピシッ。ピンクの何かにヒビの入った音がした。
「………は?」
「ほら、これを見てたら思いついたんだけど、たまには夕食にギョウザもいいんじゃないかなってね♪」
 そう言って、無邪気な笑顔を見せながら、レッドはピンクの頭のカチューシャを指差した。
 硬直したピンクの心の中では、何やら寒々としたロシア民謡っぽい音楽がぐるぐると回り、件のギョウザは、しょっぱいピンクの涙の味がしたという。

なかやみか/2001/12/16
「これ知り合いから貰ったんだが、俺は出かける用事があるからお前達行って来るか?」
といってナスカが差し出したのは、今日迄が期日の映画のタダ券であった。
「えっ、御主人、いいんですかそんな?」レッドがきょとんと聞き返した。
「おう、ちょうど5枚あるし。夕飯は外で人と食うから今日はいいよ」
「きゃあ♪ みんな、みんなァ〜〜〜〜!!」
  レッドはパアッと満面の笑みをこぼれさせると、風巻く勢いで皆の元へ走り出していった。
「御主人がね、御主人がねっ!! 皆いっつもよくやってくれるから映画でも観ておいでって言って下さったのよ♪」
 そんな事は露程も言ってないが、レッドは善意に解釈しまくって感激しきりである。
「へええ? 珍しい事もあるモンだな」ブルーはさすがにいぶかしげだ。
「嬉しいですね〜♪ (レッドさんと)映画を観たいなあと思ってたんです〜♪」
 気弱な下心がほんのり香るピンク。
「いきなりどうした事かしら〜」グリーンがほんにゃりと言ったのを受けたように、
「タダ券で福利厚生とは、あざといな」とイエローがぼそりとつぶやいた。
「イエローお前!! 守銭奴みたいに何でもそうやってカネに換算してどーすんだ。素直に喜べ、素直に」
 いつの間にやら近くに来ていたナスカが言うと、イエローは『守銭奴』の所で、かすかにピクリと頬を引き攣らせたが、それ以上何を言う事もなかった。

「ねえねえ、何がいいかな、映画」レッドはもうウキウキだ。
「今年は話題の映画が多いからな」
「千と千尋の神隠しはどうでしょう」
「あっ、いいわねえ♪ 知らない町に迷いこんだ親子が魔法で、ライオンにされちゃって、千尋の谷に突き落とされるってアレでしょう?」
「お前、ライオンキングとごっちゃにしてないか?!」
 そんな空気をピシリと静止させるようにイエローの声がした。
「陰陽師がイイ」
 その声はまるで陰陽師の言葉のように厳然とした支配力を持っていた。

 そして映画館では、目をきらっきらさせて陰陽師に魅入るレッド、もののけの迫力にたじろぎ隣のレッドにすり寄るピンク、脚を組んでふんぞり返るブルー、ポップコーンをつまみに密かに酒を飲んでいるグリーン、に混じって何かを取り込むような瞳でじっと画面に集中しているイエローの姿があった。

「面白かった〜〜〜! 御主人、すっごく楽しかったです。有難うございました♪」
 パンフやグッズをかかえ、レッド達は嬉しそうに帰って来た。
「そいつは良かったな。どうだイエロー、素直に楽しかっただろ?」
「はい。お陰様で、法術が使えるようになりました」
 ほえ? と云った雰囲気がその場を一瞬包んだが、ナスカの爆笑がそれを一蹴した。
「あ、わはははははは! 陰陽師観たから? あはは、イイなそいつはお得だ。ははは!」
「信じてませんね」
 イエローは、笑い続けるナスカの二の腕にぴらりと一枚の符札を貼りつけると、右手の人さし指と中指をすっと自らの唇に当てた。
「天南星 白朮 威霊仙」
 ささやくように呪文をつぶやいた途端、ナスカの腕にまるで掴み上げられたような感覚が走った。
「ぅ痛たたたた! な、何だ?!」
 驚いている皆を後目にイエローは、伝統芸能のような美しい所作で尚も呪文を続けた。
「苦参 折衝飲 四逆散」
「いで! いで! 一体何がどう〜〜??」
 ドシッ、ドシッと体全体を揺るがす程に、断続的な衝撃が走る。
「イエロー! やめて、もうやめて! 御主人が死んじゃう!」
 んなワケないが、レッドは涙目で真剣に叫んだ。
「もうこれに懲りて、私をバカにしないですか」
 背後に妖気のゆらぐようなイエローに腰を抜かしているナスカの後ろでは、密かに符札の裏に仕込んだ、低周波モミモミパッド の「もみ」「たたく」の目盛りを最大にして遊んでいるグリーンの姿があった。

紫 茄子花/2001/12/24
黄「……プレステ2……」
主「うっ、高いモンを……よし、わかった!」
 街も、この屋敷もクリスマスイブを明日に控えていた。
 そしてこの日は、メイドイエローの誕生日でもあった。
赤「わぁ、イエローいいなぁ」
 ナスカは騒ぎ出しそうな他のメイドたちを呼び寄せた。
 円陣を組んでイエローに聞こえないようにひそひそと話す。
主「本当は家族で祝うはずがな、都合が悪くなったんだよ」
桃「だから、ここで、みんなでお祝いするんですね」
主「そうだ。だから楽しくぱーっとやろう」
 明日のクリスマスパーティとは別に、二夜連続でパーティだ!
青「しっかし、意外だよな、イエローのリクエストがアレとは」
 広間の大きなクリスマスツリーを飾りながらおしゃべり。
緑「てっきりぃ現金か金の延べ棒っていうかとぉ」
 今宵の主役がいないところですごいこと、囁かれている。
桃「そんな、イエローだって、まだ年相応なところがあるんですよ」
赤「ご主人、買い物なら私が行ってきましょうか?」
主「いや、プレゼントだからな、私が行こう」
赤「じゃ、お供します」
桃「レッドがいくなら、僕も……」
青「どうせ、ひまだしな。ついていってやるか」
緑「セバスちゃんの部品、まとめ買いしていい?」
 パーティの準備をすませると、主役のイエローは待機させて買い物へ!
 ところが……
主「え? 売り切れ?」
桃「やっぱりクリスマス前ですからね」
赤「仕方ないですね、ポイントカードはあきらめましょう」
 買うとポイントがつく大型店だったのだが、一向は別の店へ。
 しかし入る店入る店、すべてが同様の答えだった。
主「なに!? 在庫がない?」
 次第にあせりの色が濃くなってきた。
赤「ご主人……どうしましょう」
主「……今日はあいつの誕生日、年に一回の特別な日だ」
 いつものおちゃらけた口調とは違うナスカ。
主「メイド戦隊! いいか、なんとしても手に入れるぞ」
全員「了解!」
各々、思い当たるところを四方に散らばって捜索した!
 おもちゃ屋、デパート、家電店……しかし
主「う、いかん営業時間終了だ」
 ハッキリ言って、このクリスマス商戦を甘く見ていた。
 クリスマスという大イベント。
 それを機に、あの商品を買う人が増えるのは容易に想像がついた。
 再び集まったが、成果はなかった。
桃「あ、雪が降ってきた」
青「ちっ、雪か……」
 ホワイトクリスマスの演出には素敵だが、街を走るのには厄介。
青「金にモノいわせて、なんとからならねぇのかよ」
主「無茶なこというなよな。できるならやってるわい」
桃「ナスカさんったら、店員さんが無いっていってるのに」
赤「定価の倍出してもいいからなんて言い出すし」
 品薄商品、そして時間も無常に流れていった。
赤「こうなったら……奥の手」
主「こらこら、ほっかむりして唐草模様の風呂敷を背負うんじゃない」
桃「む、昔の泥棒ルック」
主「ふぅ、グリーン、お前プレステ2作れないか?」
 無茶なこと言っている。
緑「できなくもないかもぉ。でもぉ、お手本ちょうだい」
 すごく正当なご意見。
緑「設計図でもいいけど」
主「わかった、俺が悪かった……こうなったら最後の手段」


 一同は屋敷に戻った。
黄「……これは?」
 イエローの前に大きな包みが置かれた。
主「プレステ……がふたつでプレステ2……なんちって はは、ハハハッ」
 イエロー以外の全員の顔が引きつっている。
黄「……コレ、DVD、見られる?」
 充分予想されていた問いにナスカはすばやく切り返した。
主「大丈夫だ! ほら、DVDプレイヤーも買ってきた」
 2台のプレステと、DVDプレイヤーがイエローに渡される。
 三台を見ながら
黄「これ、くれるの?」
主「お、おう、そうだとも全部やる。イエローの誕生日プレゼントだ!」
赤「イエロー、お願い、ご主人を許してあげて」
桃「ナスカさん、すごい一生懸命だったんだよ」
青「お前の気持ちもわかるけどよ……」
緑「旦さんの想いだけはぁわかってあげてねぇ」
 みんなに声をかけられたイエローは一枚のDVDソフトを取り出した。
 セットすると、そこから、クリスマス関係の洋画が始まった。
 心温まるエピソード、サンタクロース、クリスマスツリー。
 それを見ながら、イエローがぽつりとつぶやいた。
黄「コレ、みんなで見たかったの……」
 映画が終わると、イエローはみんなに振り返った。
黄「ありがとう☆とっても嬉しい」
 ちょこっと小首を傾げ、そこには、天使のような微笑があった。
 そばにいる者を柔らかく包むような……。
主「あ、まぁなんだ、お前もいつもそういう顔しているほうがいいぞ」
 戸惑いながらそう言うと、
黄「……高いよ……」
全員「は?」
 イエローはいつもの表情にもどっていた。
黄「さっきので2万円分の笑顔……」
主「なんだ2万円って……あぁ! お前プレステ売る気だな?」
赤「いいじゃないですか、ご主人」
青「さぁ〜て、次に誕生日がくるのは誰かな?」
緑「私はぁ、何をぉおねだりしましょうぅ、ウッフッフ」
主「やらんやらん! 18歳以下限定だ!!」
?「えぇっ〜 ったく このロリコ○……」
主「誰だぁぁ 今言ったやつぁ 誰がロリ○ンだぁ!!」
 こうして、クリスマスイブの前の夜はにぎやかに、ふけていった。

 
 余談:
赤「ご主人!!」
主「どうした、レッド?」
赤「ご近所のコンビニエンスストアにプレステ2が今日入荷するそうです!」
主「なんだと〜!!」
 あの努力はなんだったんだぁ〜!
 イエローを除くメイド戦隊の雄叫びがクリスマス・イブの朝に響いた。

   終わり。

注:半分以上、実話です。(^^;) 求む! プレステ2のソフト&DVDソフト

Tokinashi-Zohshi 

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