質的比較分析(QCA)の用語

csQCA(クリスプ集合質的比較分析)

csQCAでは、原因条件が存在する場合はその原因条件を1の値、存在しない場合は0の値としてデータを記録する。結果についても同じことが言える。このような2値データを使って行うQCAがcsQCAである。単に質的比較分析(QCA)と言うときは、このcsQCAを指していることも多い。

fsQCA(ファジィ集合質的比較分析)

fsQCAでは、原因条件や結果をファジィ集合と考える。それぞれの事例のデータは、それらのファジィ集合メンバーシップ度として記録される。

mvQCA(多値質的比較分析)

mvQCAでは、原因条件や結果の値として2値(0と1)だけでなく、多値(例えば0と1と2)を取ることを認めるQCAである。

因数分解(factorization)

論理式の「因数分解」とは、例えばS = A ・ B + A ・ C + A ・ Dという論理式があったとき、それをS = A ・ (B + C + D)と変形することである。ここでA, B, C, Dは原因条件、Sは結果を表し、・ は論理積(すなわち「かつ」)、+ は論理和(すなわち「または」)を表している。基本的には、通常の因数分解と同じように計算できると考えてよい。

限られた多様性(limited diversity)

データの数が少ないにもかかわらず、条件の数を多くしすぎると、観察されたデータが存在しない条件の組み合わせが出てくるといった問題が生じてくる。これが「限られた多様性」の問題である。

簡単化(minimization)

論理式の「簡単化」とは、原因条件や項の数が少ない簡単な形に、論理式を変形することをいう。「最小化」とも呼ぶ。

キャリブレーション(calibration)

「キャリブレーション」とは、もとのデータの値を、ファジィ集合メンバーシップ度の値(0から1の間の数)に変換することをいう。

クリスプ集合(crisp set)

ファジィ集合と対比して普通の集合を指す場合に用いられる。

最簡形(minimal form)

「最簡形」とは、論理式を簡単化して出来上がった最も簡単な形の式のことをいう。

条件の組み合わせ(configuration)

「条件の組み合わせ」は、QCAで頻繁に使われる用語で、ある特定の結果(outcome)と関連する条件(condition)の組み合わせ(combination)のことを指す。これは、真理表の1行1行に相当する。

真理表(truth table)

「真理表」とは、もとのデータを、原因条件の「あり/なし」で分類しなおして表にしたものである。その結果、表の1行1行は条件の組み合わせを表すことになる。このとき、原因条件や結果が「あり」の場合の値を1、「なし」場合の値を0とする。「真理値表」とも呼ぶ。

整合度(consistency)

「整合度」とは、一方の集合が他方の集合の部分集合である度合いをいう。言い換えると、当該関係と整合する事例がどれぐらいあり、矛盾する事例がどれぐらいあるかを示す度合いである。

原因Xが結果Yの部分集合である度合いとして「整合度」を調べる場合は、「整合度」はXがYの十分条件である度合いを指すことになる。クリスプ集合の場合は、Xを持ちかつYが生じる事例の数を、Xを持つ事例の総数で割れば求まる。ファジィ集合の場合は、Xiをある事例iの条件Xについてのメンバーシップ度とするとき、Σ[min(Xi, Yi)] / Σ(Xi)として整合度を計算することが多い。

結果Yが原因条件Xの部分集合である度合いとして「整合度」を調べる場合は、「整合度」はXがYの必要条件である度合いを指すことになる。クリスプ集合の場合は、Xを持ちかつYが生じる事例の数を、Yが生じる事例の総数で割れば求まる。ファジィ集合の場合は、Σ[min(Xi, Yi)] / Σ(Yi)として整合度を計算することが多い。

単純化の仮定(simplifying assumption)

「単純化の仮定」とは、論理残余の結果についての仮定である。論理残余には事例がないので、論理残余を含めて論理式の簡単化を行う場合には、どのような結果が生じるかを予想して仮定をおくことになるが、そのことを指している。

ファジィ集合(fuzzy set)

普通の集合の場合、集合に属するか(値が1)集合に属しないか(値が0)という2値で集合への帰属を考える。これに対し、集合に半分だけ属する、0.8だけ属する、といったように、集合に属する度合い(メンバーシップ度)の概念を認めた集合を「ファジィ集合」という。

被覆度(coverage)

「被覆度」とは、一方の集合が他方の集合をカバーする度合いをいう。言い換えると、一方の集合が他方の集合の中に占める割合を指す。

十分条件関係の場合には、原因条件Xが結果Yの部分集合であるので、「被覆度」はXがYの中に占める割合となる。すなわち、ある条件の組み合わせXが結果Yを「説明する」度合いを指す。クリスプ集合の場合は、Xを持ちかつYが生じる事例の数を、Yが生じる事例の総数で割れば求まる。ファジィ集合の場合は、Xiをある事例iの条件Xについてのメンバーシップ度とするとき、Σ[min(Xi, Yi)] / Σ(Yi)として被覆度を計算することが多い。

必要条件関係の場合には、結果Yが原因条件Xの部分集合であるので、「被覆度」はYがXの中に占める割合となる。すなわち、必要条件Xと結果Yの関連の度合いを指す。クリスプ集合の場合は、Xを持ちかつYが生じる事例の数を、Xを持つ事例の総数で割れば求まる。ファジィ集合の場合は、Σ[min(Xi, Yi)] / Σ(Xi)として被覆度を計算することが多い。

被覆度には、いくつかの種類が存在する。例えば、いくつかの事例を調べた結果、S = A + Bという論理式が得られたとする。Sが結果、AとBが原因条件、+が「または」を意味する。すなわち、この式は原因条件AまたはBが、結果Sの十分条件であることを示している。今、結果Sが起こった事例のうち、原因条件A、Bのどちらか一方でも存在している事例の割合は0.8であったとする。この0.8のように、論理式が全体として結果を説明する割合を解被覆度(solution coverage)という。また、Aのある事例は0.6、Bのある事例は0.3であったとする。この0.6や0.3のように、論理式の中の各項が結果を説明する割合を粗被覆度(raw coverage)という。今の場合、AとBの両方がある事例は0.1となる。つまり、AとBのうちAのみがある事例は0.6 - 0.1 = 0.5、Bのみがある事例は0.3 - 0.1 = 0.2である。この0.5や0.2のように、論理式の中の各項が単独で結果を説明する割合を固有被覆度(unique coverage)という。

メンバーシップ度(membership score)

「メンバーシップ度」とは、ファジィ集合のそれぞれの要素が、その集合に属している度合いのことをいう。

矛盾する条件の組み合わせ(contradictory configuration)

「矛盾する条件の組み合わせ」とは、結果の値が0になる事例と結果の値が1になる事例の双方が存在するような条件の組み合わせのことを言う。

矛盾する単純化の仮定(contradictory simplifying assumption)

「矛盾する単純化の仮定」とは、結果の値が0となる条件の組み合わせと結果の値が1となる条件の組み合わせのそれぞれの簡単化を行う際に、同じ論理残余を使っている場合のことである。このとき、論理残余に関して相矛盾する仮定が置かれていることになる。

論理残余(logical remainder)

「論理残余」とは、実際の事例が存在していないような条件の組み合わせを指す。「残余部分(remainder)」などとも呼ばれる。