(社)日本建築家協会近畿支部 建築家カタログ

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住まいの相談窓口比較表

建築家カタログ1集より

建築家
(建築家に設計を依頼し、
その図面に基づいて
工務店に施工を依頼する。)
工務店

工務店に設計も施工も依頼

住宅メーカー

(住宅メーカーに設計も施工も依頼)

1.依頼の仕方 まず、気に入った建築家を探し、
お互いに要求や条件を提示して、
合意すれば設計監理契約を結ぶ
気に入った工務店を探し、
要求や条件を提示して、
まず、設計の依頼をする。
設計契約をしない場合もある
展示場を訪れ、要求にあるものがあれば、
敷地条件等を提示して設計を
依頼する
2.設計料 通常、工事監理も含めて、
工事費の8−16%程度、
工事費が高いほど料率は下がる。
設計料が明示されていない場合が多い。
その場合は工事費の中に含まれている。
○規格型
モデルの開発費=設計料と考えられる。
その費用は各住宅の
販売価格に含まれている。

○自由設計型
自由設計の分だけ規格型より高い。
設計料を別途請求される場合もある。

3.設計者 依頼者が直接契約した、
建築家とその協力スタッフ
工務店に所属する設計者か、
工務店が外注した設計者、
設計者を指名することは難しい。

*その工務店に建築士がいるのかどうかを
事前に確認しておくこと。

○規格型
そのモデルを開発した人が
本当の設計者だが、
実際に対応するのは営業の人

○自由設計型
メーカーに所属する設計者か
外注の設計者。
対応するのは営業の場合が多い。

4.設計内容
(設計の自由度)
依頼者の要求、敷地の形状、環境等を
総合的に判断して、
あらゆる可能性を追求する。
設計の自由度は高い
原則的には、建築家の場合と同じであるが、
自社の得意な工法や作りやすさに
重点が置かれる場合がある。
メーカーの規格の範囲内の設計。
むしろあらかじめ決まっているものを
買うところにメリットがある。
設計の自由度は低い。

*自由設計型といっても、
部材や詳細が決まっており、
洋服に例えれば、イージーオーダーの
イメージに近い

5.構造の種類 総合的に判断して、
あらゆる可能性を追求した上で、
依頼内容を実現するために
最適な構造や工法を提案する。
原則的には、建築家の場合と同じであるが、
自社の得意な工法しかできない場合もある。
メーカーの採用している工法
6.設計期間 通常は3ヶ月から6ヶ月。
依頼条件の複雑な場合などは
もう少し掛かる。
同左 ○規格型
標準プランが決まっているので、短い。

○自由設計型
部材や詳細が決まっているので
規格型よりは長いが、建築家よりは短い。

7.工事費 工務店の見積を建築家が査定。
複数の工務店のコストとの比較ができる。
工事の内容とコストを総合的に判断して、
適切な工務店を選べる。
第3者による工事費の査定が出来ない。
複数の工務店に見積を依頼しても
設計の内容が違いがあれば、
単純にコストの比較が出来ない。
従って適切な工事費かどうか
建築主には判断しにくい。
他のメーカーとの比較は可能。
しかし、仕様は異なるので
完全な比較はできない。
また、一式見積のケースが多く、
コストの構成が分かりにくい。
標準をはずれるとコストが高くつく。
8.施工者
(決定と契約)
建築主は建築家と相談しながら施工者を決定できる。
契約書式も建築家のアドバイスを受けて、
最もトラブルの少ない方式を選択できる。
依頼者が素人の場合、どうしても工務店主導の契約になる。
後でトラブルが起こらないように、
工事内容がよくわかる図面と見積をつけた
契約書を作っておくのが大事。
契約のアドバイスはワンポイントアドバイスへ
オプションの範囲が広いので、
契約時に確認しておくこと。
実際の施工者は、代理店契約を
結んでいる地元の工務店である。

*展示場の仕様は
オプション仕様のことがあります。
標準の場合は、どういう仕様に
なるかも確認する必要があります。

9.工事監理 建築主の代理人として建築家が監理 工務店内部で自主監理。

*自分で第3者に監理を依頼することも
考えられるが、相手から断られるケースが多い。

メーカーの信用に期待。

*同時に複数の工事を
担当していることが
多く、中には深刻な見落としが
あるケースがある。

10.工事費支払い 建築家が工事の進み具体を判断して
工務店の請求書を承認後に、支払う。
建築主が工事の進み具合を判断して支払う。

*但し、契約の際に不利な支払い方法を
約束されられているケースがあります。

同左
11.施工者との
トラブルの処理
建築主の代理人として、建築家が処理する。 建築主が自ら処理する。 同左
12.工事期間 無理な工程は工事の質低下を招くことが
多いので、
適切な工事期間を施工者との
契約時から設定します。

*使えば使うほど、風合いがでるような
素材を選択することが多いためは、
工務店や住宅メーカーより
工期は長いケースが多い。

工期が長いほど経費がかかるので、
(同じ金額でも利益を多く出すために)
短めの工期設定をしがち。

*逆に、建築主の無理な工程への希望を約束し、
あとから約束を反故にしたり、
突貫工事で質が悪いといった
トラブルもあります。
契約前に適正な工期をよく協議。

工期が短いのはメリット。
規格型で早いものは2ケ月程度。
通常は4ヶ月程度。

13.アフターケアと
責任の所在
設計上の問題は建築家の責任。
施工上の問題は工務店の責任となります。
定期点検は、工務店が主体ですが、
建築家が結果を確認し承認します。
責任は全て工務店が負う。

*本来は瑕疵(かし)で補修すべき所を、
別の理由(経年変化)といつわって
報告するケースがある。

責任は全て住宅メーカーが負う。

*代理店契約をしている販売会社との
契約の場合は、
住宅メーカの責任は完成までで、
完成後の責任は代理店の場合がある。
万が一、代理店契約を打ち切った場合の
アフターケア体制も
契約前にメーカーに確認。

14.総合評価 お気にいり建築家を探し出すのは
ひと苦労ですが、
相性の良い建築家と巡り会えれば
この方式が設計内容・施工内容とも
優れている。
工事費の他に設計料は必要ですが、
全体的なコストも
査定による工事費の低減、
工事完成までの建築主の
苦労やリクスの減少が期待できるので、
決して高くないと言えます。
設計能力・施工能力共に実力があり、
しかも信頼できる工務店が見つかればこの方式も
メリットがある。
ただし、大手の工務店は経費その他の問題から
なかなか住宅の施工を引き受けないし、
引き受けたとしても割高。
中小の工務店は能力のばらつきがあり、
良質な工務店を見つけるのは建築家探し以上に
大変かも分かりません。
*工務店が手掛けた住宅を何件か
見学させてもらい、
建築主の経験談を聞いてみるなど
慎重に選んでください。
メーカーに対する信頼感と
展示場という見本を
見て買えるといった比較的
安心感があるのは確か。
但し、規格型では敷地と
うまく合わなかったり、
自由形では間取りの変更をいるうちに
モデルハウスとは
全く違った感じになる場合もある。
規格の範囲を超える注文を出すと
コストも割高になる。
その他 建築家は建築主の依頼を鵜呑みにして、
いいなりの設計をするわけではありません。
住宅は大切な個人の財産であると共に
社会資産でもあるからです。
周囲の環境にも配慮して、
いい地域づくりに貢献できるような
建物を作りたいと願っています。
また、専門的な立場から見れば、
建築主の要望が正しくないケースもあり、
表面的な要望から潜在的な需要を探り出し、
よりよい生活を送っていただきたいと
考えるからです。
工務店は玉石混淆。
また施工能力はあっても
設計能力が今ひとつのところもあります。

設計は建築家に依頼し、
施工は優れた工務店に頼むのか、

設計施工に掛けてみるのは

建築主の判断次第です。

日本ほど、住宅メーカーが
住宅建築の大きな割合を
占めている国は少ないと言われています。
モデルハウス運営の多額の経費を
大量販売で回収をするため
経営リクスが高いこと、
また住宅はひとつひとつの
受注設計・受注生産であり、
大量生産には向かないからです。
戦後復興の過程は、
質より量が要求されたため、
信頼のある中小のビルダーが
育たなかったことが
主な原因といわれています。

量的には充足し、質の時代に向かう中、
住宅メーカーはどのように変化するのでしょうか。