真山青果は自然主義文学勃興期に、その思潮を体現する作家として注目を浴び、瞬く間に評価を下落させていった。この浮沈の軌跡を追うと、明治40年代の文学空間に横たわるいくつかの問題群が視野に入ってくる。発表では彼の「枝」(明42.4)に焦点を合わせ、悪評を〈自己表象〉する行為の意味を考えつつ、文学テクストとゴシップジャーナリズム、「芸術」に対する作家の姿勢などに分析を加えた。