ちょっぴり感動編です
【苦労を見せない素敵な青年】
運送会社に勤めるその青年は、荷物の配達で顔を合わせるととても明るく「毎度有 |
がとうございます」と頭を下げます。その態度に、親しみと新鮮さをかんじたものです。 |
ある日、配達の時「今日で最後です。お世話になりました。」という言葉が返ってきました |
「どうして?」と問う私に、彼は「二年間働いて目標のお金が貯まったので、念願の学校 |
へ入学することが出来ます。」と言った。 |
そして「高校を卒業するとき、進学したかったのですが、お金が無くて諦めなければなら |
なかった。お金がないということ、本当に辛かった」と続けた。 |
淡々と話すのですが、日頃の彼から想像もつかないことでした。 |
親のお金で進学することが当然のようになっている風潮の中で、私はこの青年の言葉 |
にとても感動しました。 |
大学生の約3割は進学の理由を「ゆっくりした時間を過ごしたいから」「遊べるから」と |
考えてると言われます。 |
こんな中で自分で働いてお金を貯めて進学するという。こういう若者でしたら、これから |
の人生もキット頑張り抜いてくれると信じています。とかく非難されがちな若者のなかにも |
こんな素敵な青年がいたのです。 |
苦学が当たり前だった昔に比べて、豊かな時代に苦労をしなさいというのは無理かも |
しれない。でも、せめて他人の痛みがわかる、思いやりのある人間に育って欲しい。 |
これは、この青年を見て我が子に対しても言いたい言葉なのです。 |
1993年5月29日 朝日新聞「声」より |