Ken Follett (1)  (2)へ

The Pillars of the Earth 『聖堂』

 topへ
   The Pillars of the Earth
    by Ken Follett  SiGNET BOOK

評判の翻訳本『大聖堂』は3冊本なので、始めて、ケン フォレットを読むには、大部すぎるので、もっと簡単なものからと思って、The Pillars of the Eartという本を注文したら、実はこれが『大聖堂』の原本であった。

頁数は991頁:行き掛かり上これを読むことにする、並行して読んでいる本も数冊あるので、その隙間を縫って、少しずつ読むことにする。

この作品の続編が2つもあることが分かった。

2024・6・5

フォレットの大聖堂シリーズは3種類あります。
これから読まれる方は、要注意です。
邦訳はいずれも文庫版3巻。
 原書(邦訳タイトル)  出版年  翻訳者  翻訳の出版社
 ①The Pillars of the Earth
『大聖堂』
 1989  矢野浩三郎  ソフトバンク
クリエイティブ
 World Without End
『大聖堂 果てしなき世界』
 2007 戸田裕之  同上
 ③The Evening and Morning
『大聖堂 夜と朝と』
 2020  同上  扶桑社

図書館から邦訳3種、それぞれ文庫本上中下の3感あり、そのの上巻のみ借り出してみました。(右図)いずれも、巻頭に登場人物表が付いています。(これが翻訳書の良いところ)

これら3作は、時代、場所、人物は異なるようですが、がどのような関係にあるか知りません。

  2024・6・19
 

 

 The Pillars of the Earth

エピグラムには1120年、White Shipの海難によって、王子を失ったヘンリー世(1100-35)の後、後継者問題があり、政局は安定しなかったとある。

Prologue

時代・所:1123年、イギリス南部の町での絞首刑の現場の一場面。金の眼をし、妊娠した女が、祭司、騎士と修道士に呪いをかけて去る。

 ー Rart One   1135-1136  ー

Chapter I

大聖堂の建設を夢見る石工のTom,妻のAgnes,息子のAlfred,娘のMarthaの四人が、仕事を求めて、旅をするところから始まる。財産の豚を途中で盗まれると事件などあり、話は飽きない。なんといっても12世紀のイギリスに降り立ったような気分にさせられ楽しい。

英文は易しく、時々辞書を引くのもまた、楽しい。
  以上3節まで。
    2024・6・6
 
彼らはいまSalisburyに着ている。

エピグラムは、1120年、ヘンリー一世の一人息子を海難事故(White Ship事件)で
失うことが述べられ、後継者問題が生じていることに触れている。
この物語の時代背景を象徴?


あらすじは
https://www.weblio.jp/wkpja/content/
   Ⅳ 冬が早くやって来た。仕事なく、飢えと寒さに苦しむ。
森の中でのAgunesの出産と死。エレンとの再会。

とてもリアルに描かれていて、これだけでも、十分楽しめたし、千ページ近い大著を読むことになりそう。~85頁

  2024・6・8

Chapter 2
 イギリス兵によって、父母を殺された、フィリップとフランシス兄弟が登場します。共に修道院で育てられ,兄は修道士として集世、弟は貴族に使える。王位継承の争い
フィリップが中心に修道院の様子が、修道院長選出に向けて、リアルに描かれます。
修道院の土地所有の形態、院長選出のプロセスなどもわかります。

  2024・6・22

Chapter 3

この章は、波乱万丈、大衆娯楽小説かと思う程であるが、細密な描写と構成で読ませる。

 豪族ハムレイ家(主人パーシー、妻、リーガン、息子ウイリアム)
貴族シャーリング伯、娘アリエナ。
  両家の縁談破棄から、武力衝突に及ぶ。戦乱の逐一が描写されている。
これに、トム一家の面々が噛んでくる。職を得ることなく、放浪を続けることになる。

 背後の王位継承に関する陰謀がある。

  2024・6・28
 修道院の階級、決り、など具体的にわかる。
訳本を借りてきた機会に、、修道院用語の翻訳をチエックした。

 sacrist   聖具係
 curcuior  規則係
 cellarer   供給係
 Kitchener  厨房係
 guestmaster 接待係
 imfirmarer  看護係
 almoner    慈善係
 treasurer   宝物係
 chamberlain  被服係
 cantor    聖歌係
 
   Chapter 4

トムたちはキングスブリッジ聖堂に辿り着くのであるが、ここでも職を得ることが出来ないことが分かった。
ジャックは聖堂が燃えれば、仕事にありつけると、考え、放火する。

その生々しい状況を細部描写していくのであるが、聖堂の構造に関する語彙など難しく、半分は翻訳を読んだ。

ハードボイルド小説の迫力のある章である。

 悪役を演じるウオールラン、リミジアスを適当に配置し、伴侶のエリン、前の妻アグネスへの思い出・・・
心理描写も伏線をうまく回収しながら進める見事なプロットも申し分ない。

  2024・7・19
 協会内部の構造の図解が欲しい
これなくては、この章の生き生きとした描写は十分に理解できない。

  
  -  Rart Two  1136-1137 ー

 Chapter 4
   
 Ⅰ トム
、聖堂の設計図をつくり、フィリップに見せる。
 Ⅱ ウオールランがフィリップをバソロミューの城に呼ぶ、
  (そこには、シャーチング伯の娘アリエナが隠れ住む。)
 Ⅲエレンが、修道院から追放される場面。強烈な彼女の行動

Chapter 5

  
謀反者から取り上げた爵位とその土地を巡る、ハムレーとウオールランとフィリップの闘争。緊張感ある見事なプロットと心理描写で読みだす止まらない。
  最後の節は、結婚を拒まれた、アリエナにウイリアムが復讐、凌辱するハードボイルド的シーン。

  ここまで、原書339頁、翻訳文庫版上巻597頁。
 7割は原書で辿った。

   2024・7・31
 
 この作品の魅力の一つは、登場人物が皆個性豊に造形されていて、その心理まで描かれていることである。

主役級の、トム、フィリップは勿論、全員に作者の細やかな筆使いが感じられる。


女性:

アグネス:トムの妻、早く亡くなるが、トムの心に生き続ける。
エリン:森に住んでいた女、魅惑的なところがある。トムと一緒になるが。。。
リーガン:パーシー・ハムレイの妻。醜いが知恵者。ハレイム家を支配している。
アリエナ:17歳、シャーリング伯の娘。
マーサ:トムの娘、未だ幼い。
モード:王位継承者の一人

男性

トム:建築家。大聖堂を建築したいという夢がある。実務的な才能がある。
フィリップ:キングズブリッジ修道院院長、聖堂再建を目指す。小さい時別れた双子の兄弟フランシスがいる。

ジャック:エリンの息子、10代、
アルフレッド:トムの息子、単細胞、ジャックをいじめる。

パーシー・ハムレイ:豪族、後にシャーリング伯。
ウイリアム:パーシーの息子。粗野。単細胞。
ウォルター:ウイリアムの従者
リチャード:アリエナの弟、14歳

ウォ-ルラン:策士、司教
ヘンリー:司教、王の弟


  
   Chapter 6

 
Ⅰアリエナとリチャードの逃走から始まる。
 Ⅱ,Ⅲ 二人の姉弟の遭遇する様々な困難と乗り切る場面、
   読みだすと止まらない。

Chapter 7
  石切り場と森林は、聖堂建設のため、フィリップの独占的に利用できることに王の許可があるのに、石切り場に来てみると、パーシー伯側が、既に採取を始めている。
  これに対抗するか?また、建設を妨害しよとする、ウオールランが、ヘンリー司教、パーシーたちを連れて乗り込んで來る。
それにどう対抗するか?volunteerの一つの在り方を見る。
 エリンとの再会。

  ここまでで445p、翻訳では中巻207頁。

  2024・8・7
 verderer:王領林野管理の役人
 clogs木靴


中世の馬の種類
 courser:
 palfrey:

fulling clothes: 羊毛加工の一工程。羊毛をclean and thickenする。縮絨

  
  原文と翻訳

 


  2024・8・8
 図書館から、翻訳書中、下巻も借り出した。
翻訳は、原文の分からない所を見るのと、訳者の解説を読むのが楽しみなのだが、
愉しみなのだが、訳者の解説は無く、養老孟司が書いていた。

原著者からのメッセージが5頁ほど付いていた。これは私の持っている原著にはない。
着想は、1973年頃に始まる。技術も機械力もない中世に、そうして「大聖堂」を立てたのだろうか?執筆に取り掛ったのは、1986年からで、その間、大聖堂のことや中世の生活のことを調べるのに使われたとある。

養老孟司の解説は、この人の持っている歴史観や国民性、フィクション論を披歴しているだけで、作品への深い分析は見られなかった。
(文庫本の解説に有名人を起用しているのをよく見かけるが、概して、面白い作品論ではない。)


翻訳:
 上巻:597頁
 中巻:588頁
 下巻:670頁
  合計1855頁

原文: 983頁

  
   - Rart Three 1140-1142   ー
 
Chapter 8

ウイリアムの娼家での放埓な行動ではじまり、、父の死、財政難が浮き彫りとなり、侯爵位継承にも不安が起きる。リチャード、アリエナ再登場。
Ⅱ キングスブリッジは繫栄するのを、ウイリアムは妨害しようとする。ウオールランが加わる。
Ⅲ妨害のため石切り場にやって来たウィリアムたちに、石切り場の職人たちは抵抗する。

Chapter 9

Ⅰジョナサン五才になっている。フィリップ、リチャードを伴って王のもとに請願に出かける。
Ⅱ戦争が始まる。戦闘シーンがリアルに描かれている。
  ステファン王側敗北、王も捕らえられ、フィリップはここで弟と再会。
Ⅲ勝利者側女王モードの宮廷:ウイリアムとフィリップの利権の裁定。石切り場はウイリアム、マーケットを開く権利はフィリップにもあたえられるが、年100ポンドの上納を要求される。

Chapter 10

Ⅰジャック、アリエナと言葉を交わす
ⅡMidsummer eveのパーティーでのゲーム、寸劇、河原での運動会の様子。ジャックの将来について。
Ⅲアルフレッド、アリエナに求婚、拒絶される。修道院長による裁判。人質交換により、スティーブン王、復帰。縮絨(felting)工程の機械化をジャックが考案。
Ⅳアルフレッドとジャック大喧嘩。(ジャックの父親に関して)
  トムとフィリップの裁定。
Ⅴキングスブリッジの市の模様、ウィリヤムによる焼き討ち。
  トムの死

  大きく状況が変わる。



 第一部から3年経っている。小説は時を自在に操る。

ウイリアムの行動のお陰で中世侯爵の支配力がよく分かる。
農民の中にはSerf【(農奴)という階級があり、侯爵の製粉所でないと製粉できないし、パン焼きもっ自由には出来ない。様々な賦役が課せられる。

【史実とフィクション】
この作品は、12世紀イングランドを舞台とする、エンターテイメント作品であるが、史実を反映していることも多い。
ステファン王も彼と戦う女王Maudも、共に歴史上の人物。ヘンリー1世(1100-35)のあと、イングランドは王権が不安定であったようだ。ステファン王の弟のヘンリー司教は、途中で裏切りもモード側に付く、モードを支持するグロスター(小説の主人公の一人、フィリップの弟が使える)も実在の人物である。こんな歴史上王位を争う様子は、下記のチャーチルの『英国史』に詳しく、小説でも上手く取り入れられている。


  
   - Rart Four 1142ー45   ー 

Chapter 11

ウイリアムの懺悔と、ウォールランの免罪。元のスティーブン王側への復帰。 アリエナ、フィリップ、ジャックなどのその後。Lammas Dayの様子。アルフレッドのアイエナへの求婚、リチャードのバックアップを約束。

Ⅱジャック、アリエナに会おうとして、監禁。母が救い、アリエナと会える。昂揚したシーンが続く。(濡れ場)。母、ジャックを逃がす。 結婚式、エレンの呪い。初夜。

   (以上翻訳、中巻)


Chapter 12

アリエナのジャックに会うために、大陸に渡り、巡礼路を辿る。
ジャック旅をしながら、色々な建築を学ぶ。流れて、トレドに至りサラセン人との交流、「涙の女」像を貰う。

アリエナとジャックの再開。
キングスブリッジへの帰還


Chapter 13

 罪を犯してもconfess(懺悔)して、bishopのabsolution(免罪)をもらえれれば、救われる。


Lammas Day 収穫祭 8月1日、色々なパンを焼いて楽しむ。












建築史に興味のある人は、面白い章である。

リエナガが乳飲み子を
抱えての長距旅行がどうしてできたのだろうか?馬に乗っての旅のようだが、路銀は?

いろんな奇蹟が起きるが、これが物語の面白さ。

  
   - Rart Five 1152ー55  ー 

Chapter 14
Chapter 15
Chapter 16


 

  
    - Rart Six 1170ー55  ー 

Chapter 17
Chapter 18

ケン フォレットの大聖堂(第一作目)を読了感想

  とにかく面白かった。こんな面白い物語を作る著者の腕前に目を見はった。
  話は、12世紀、イギリス。大聖堂を作りたいと思う建築家、修道院長を軸に、大聖堂が出来上がるまでの紆余曲折を、その家族や、それを妨害する憎まれ役も数名いて、章ごとに事件も起き、どうなることやらと読者を飽きさせません。ちょっと大衆小説的な匂いのする所もりますが、人物の造形、心理もすぐれ、登場人物に感情移入し、ハラハラしながら読むことになります。伏線もうまく回収され、大円段を向かえます。

  当時、王位継承の勢力争いなど、史実も抑えていますので、立派な歴史小説とも言えると思います。
原文は、修道院、聖堂の構造に関する語彙に馴染みがなく、図解した辞書が欲しいと思いました。
3分の2を原文、3分の1を翻訳で読みました。

 同じ、ケンブリッジを舞台の小説が後2作ありますが、又の愉しみに、当分、積読。

  読了9月。

  2024・11・16