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  古事記
  竹取物語
 

  
 
2015年12月13日
三浦祐之 訳・注『口語訳 古事記 [完全版]』文芸春秋 2002
   古事記の通読は、これまで何度も挫折しているが、口語訳とはいえ、この本によって初めて達成した。
   その秘密の一つは、神々や人名をカタカナ表示したことである。当時、カナが発明されていたら、安倍仲麻呂もきっとそうしただろう。人名のカナ表示は、翻訳文学で馴れているので意外と抵抗がない。最も大国主命とか須佐之男命など漢字表示が有難いのだが、天国押波流岐広庭命(欽明天皇のこと)の横にアメノクニオシハルキヒロニハとルビを振られると煩わしく読みづらい。この本はカナ一本で押し通し、原文の漢字表記が知りたければ巻末に対照表がついている。
第二の秘密は、古事記は語り部によって語られたものとして、訳者が語り部として、語り口調で訳すほか、本文にない、ほんのわずかな言葉を挿入することによって、物語がスムーズに流れるようになっている。古事記が語り部・稗田阿礼の誦えるものに基づいて書かれたことを考えると、このやり方は理にかなっている。
  下注も柔軟で、音橘姫の入水のところで、オフィーリアが、大蒜が
出るとドラキュラが登場するのは筆の滑り過ぎの感があるが、民俗学や神話学の知見も取り入れられていて楽しめる。専門の方からはいろんな批判もありそうだが、私にとってはありがたかった。一度通読してしまえば、今度は、新潮社の、横にセピア色の口語訳のついている日本古典集成版古事記も通読できそうな気がする。
なんといっても古事記は我が国文古典の原点で、そこへうまく導いてくれた訳注者にお礼を言いたい。

  
  2013年12月11日

    竹取物語

   『竹取物語』は本文56ページ。高校時代、難しいと思っていた古文も、今では比較的容易に読み通せる。いつの間にか読解力が付いたのかしら?作者も成立年代も不明のようだが『源氏物語』よりかなり古い。物語の元祖といわれるだけあって、描写は生き生きとしている。富士山が出てくるとは今回初めて知った。 スタジオジブリ、高畑勲監督の『かぐや姫の物語』は淡彩画の背景が美しい。人物は水墨画タッチで、作画には、とても苦労しただろうと思うが、なかなかのものだった。原作にない監督の工夫の箇所は皆、生き生きとしていた。かぐや姫は月に帰りたくなかった。なぜか?これも監督の創意で、見所の一つかもしれない。

  2016年4月30日

孫崎紀子『「かぐや姫」誕生の謎』  現代書館 2016

   日本の物語文学の元祖とされる『竹取物語』の著者は誰か?
何人かの候補が挙げられているが、結局、わからないというのが定説のようである。
   本書ではその著者は菅原道真の孫の文時であると主張する。そして、その背後に、飛鳥時代に我が国に渡来したペルシャ人があり、その鎮魂のための物語でもあるという。
また「かぐや姫」のモデルはササン朝ペルシャの王家の娘だったかもしれないと。
   飛鳥時代とペルシャの関係は随分昔、松本清張の追求していたように思うが、謎の多い『竹取物語』に面白いスポットを当てたと思う。
(トンデモ本にされないことを望む)