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   AIの進歩によって、大きく社会が変わろうとしている。技術の進歩という側面と、反射的に人間理解への大きな挑戦となっている。
  人工知能AIと自然知能NI(これは外山滋比古の命名?)と一体どう違うのか?ディープ・ラーニングが出てきてにわかに現実の問題となってきた。

哲学、心理学、言語学・・・の概念を鍛え直すきっかけとなっている。
 

  
   ROBOT=PROOF   by Joseph E. Aoun
  Higher Education in the age of
    Artificial Intelligence

  邦訳『AI時代の大学教育』

  この本は、今年の東大の入学式の総長挨拶に取り上げられていた。また、チャットGPTのオープンAI社のサム・アルトマンが岸田首相に会うといったこともあって、対話型AIが国全体の話題となっている。

robot-proofとはロボットに負けないという程の意味だが、AI時代に、人をどう育てて行ったよいのか?
既存の教育は、人に知識を与え、問題をどう解決かの能力を向上させるものであったが、その能力は、AIの方が優れている時代になった来たのである。

 

  
   田方篤志『普通に会話のできるドラえもんの
       心のつくり方
』① 2021
      コンピューターに意識が発生するまで

 Youtubeで、「ロボマインド・プロジェクト」として、AIについて歯切れの良い説明が目についたので入手した。これはYoutubeでの説明を、本にしてほしいとの視聴者から要望に応え、そのままに活字化してあり、本書はその一巻目。

  人と会話のできるレベルのロボットをつくるという目的のためのプロジェクトを進める過程で、今のAIのレベルがどんなものか浮き彫りにされている。

  AIを理解するうえの基本的知識やおもしろいエピソードが散りばめていて、一気に読まされます。

  本書は世界は意識の作り出した仮想世界だという所で終わっている。
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  仮想世界仮説ですが、20年ほど前、野口慊三さんと「世界はバーチャルリアリティだ」ということをきっかけに対話が始まりした。そのことはHPに「自分を探すアリス」として載せています。
  alice/cat1 (alice-it.com)
また、本にもなっています。
  「意識の宇宙」のアリス | 野口 慊三, 宮垣 弘, ジョン・テニエル |本 | 通販 | Amazon

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私にとり興味があったキーワード

前半、1章~10章

心身一元論、 心身二元論、 身体は心の命令によって動く機械 アラン・チューリング  映画「ブレードランナー」 チューリング・テスト、 ゲーゲルの不完全性定理 チューリンング・パターン、 ディープラーニングの構造的限界、画像認識、 人間を含んだ社会システム、 シンギュラリティー、 AIが超えられないのは会話、意味の理解。 新井和子『AI VS.教科書が読めない子供たち』 コンピューターが扱えるんは論理、確率、統計、 GoogleのBERT 文章の穴埋め問題、 問題と答えだ一対一対に対応、将棋や碁 目的とルールが決まっている。
自然言語処理、サイクプロジェクト、言葉のルールは知識、 会話の目的

後半11章から20章

  言葉の意味を理する。 不要な情報を削除、会話は感情を伝えること、 行動の予測、 認知世界を言語空間に投影したものが言葉心理パターン 嬉しい、感謝、恐怖、憧れ、嫉妬、後悔・・・数十個から100個
ウィトゲンシュタイン 『論理哲学論考』、世界は物とことの組み合わせからなる事実でできている、 言葉に先立って頭の中に論理的な世界がある、 本能、不快を避け、快を求める。プラス感情、マイナス感情、 社会に受け入れられるには、共通の心理パターンが必要  独自言語でのコミュニケーション、AIに善悪の判を持たせる 善のルール 相手にプラスになるように行動すべき カントの『実践理性批判』 我が内なる道徳法則 プログラムで実装できる程度に落とし込んだ善悪の心理パターン これがロボマインド・プロジェクト 人間社会を作り出す強力な心理パターン「恥」 j基準以下の能力と他人の視線が「恥」の構成要素 第二次AIブーム、エキスパートシステム論理式、推論マシーン 並列処理、自然言語処理、意味の理解の仕組みの解明、心理パターン、ソフトバンクのロボット、ペッパー君  感情の分類、 相手の存在、社会的感情、感謝、怒り善悪、恥  チンパンジーの言葉の学習 物を認識するとは  無意識でできる活動(裏の自分)と意識しないとできない活動(表の自分 裏の自分は記憶できない、意識がない。 ライントレーサー反応で動くだけ。現実世界を本当に生きているのは裏の自分、ヴァーチャルリアリティ、VRゴーグル、意識が現実と感じているこの世界は幻想、「意識の仮想世界仮説』、意識と言葉 意識と世界はペア、 

  2022・8・6
 

  
   ディープ・ラーニング

最近のAIを理解するには、ディープ・ラーニングを理解しないと話にならない。左記の2冊を本を参考に探ってみた。

  言葉の守備範囲は次のようになっている。

人工知能 AI >機械学習 >ニューラルネットワーク>ディープ・ラーニング

という関係にある。

  まず、ニューラル・ネットワークは脳の神経組織をモデルにしたものだが、ある意味で分かり易く、且つ奥が深い。あらゆる生物の行動が説明できそうな汎用性を持つ。

未完
 

  
  東大教授が挑むAIに「善悪の判断」を教える方法
   鄭 雄一   扶桑社新書 2018

  私はこの本をAI理解のために買ったのだが、見事に裏切られた。
  つまり、ロボットがAIによって「善悪の判断」を学習して、深化するプロセスを知ることができるのかと期待したのであるが、「善悪の判断」はこの先生が必死に考え、それをロボットに教えるということであった。
  
  ロボットが人間と共存する時代に、ロボットの道徳エンジンを搭載するための研究だそうだ。
 
  「物事を分類するには、まず、大きく距離を置いて、より大きな特徴をつかむ必要があります。この手法を。物理・化学では、「粗視化と言います。

 古今東西の道徳に関する言説をこの「粗視化」という方法で、どんどんと分類して行きますが、それに注がれたエネルギーは膨大なものだったでしょう。エッセンスを取り出すと;

  道徳には「社会中心の考え」と「個人中心の考え」があり、
人を殺してはいけない」の人の考察から、「」とは「仲間」であると説く。仲間の範囲は様々。さらに、道徳は「共通の掟」と「個人の掟」があり、これを一つにまとめる「道徳の基本原理」を考える。
  道徳と欲との関係を考察するに際して、マズローの欲求5段階説を持ち出して、4つの道徳次元(レベル)に整理する。
それを「心の寛容性・多様性」を測定することによってこの次元は推定できるという。、

  ここまでで、全6回の講義の5回までが費やされる。

  最後の10頁で、道徳アルゴリズムがフローチャートで示される。そのフローチャートの最も重要な分岐は「仲間らしい?」である。

 ロボットに善悪を教える前に、「仲間かどうか?」の判定ロジックを教えなくてはならない。!!!

 この判断基準:閾値は記憶によってコントロールされるとなっているが、その最も知りたいメカニズムについては何ら説明されていない。

  何時の日にか、道徳エンジン搭載の「良い」ロボットが出現するだろうか?

  本書は 道徳というものを考えるためのトレーニングにはなります。

  しかし、道徳、善悪の問題は、人類が数千年にわたって考えてきた問題だのに、「粗視化」と称して、理系の先生が、こんなに軽々しく扱って良いのだろうか?また、AIの理解もこれで大丈夫なのか?文系の私は恐れをなします。

   2022・7・15
 

  
   前野隆司『脳はなぜ「心」を作ったのか』 筑摩書房 2004

  Youtubeでこの方の講演を聞いて、面白いと思って、著書を取り寄せた。15年も前の本だった。ロボット工学がご専門で、「意識」とは何かと探求して、私という主体があるわけではなく、脳細胞が作りだす錯覚だ」というのである。
  受動意識仮説と呼んでおられる。

  意識と言えば、〈私〉というものがあって、それらが、、知、情、意、記憶などを統括しているように思っているが、これらは、脳のニューロンのネットワークが作り上げた、錯覚に過ぎないというのである。

  意識が受動的であることを、幾つかの例を挙げて説明されると納得します。〈私〉がすべてを統括することは困難で、むしろ傍観者として、意識の流れを見ています。

  この人の意識のモデルは、それなりに一貫性があり、「心の地動説」として、とても刺激的です。

 第5章で脳の仕組みをやや専門的に述べておられてます。ここでは、
 AIとかディープラーニングと行った言葉は出てきませんが、考えは同じで、意外と単純な原理がそこに働いています。
自立分散型のニューロンが、民主的にことを決定しており、難しく言うと「任意の非線形演算を行える万能機械」となりますが、このAIが発達すると、心の仕組みについて、さらに簡明な説明を工学畑の人から聞く時代が来ると思います。

   2021・7・29