漢詩和訳の遊び |
T0pへ |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
FBの書き込みの中で、Makoto Miyakawaさんが 「私が漢詩に興味を持ったのは、井伏鱒二の『厄除け詩集』を読んだからで、なるほど漢詩もこんな具合に読めるのか、と小さな衝撃を覚え、今それを真似て遊んでいます。」 とあったので、そういえば以前そんなことに興味があった時期もあったなあ、と本棚を探すと、3冊出てきた。 翻訳は、発想の部分を他人のものながら、一種の創作だと私は考えていますが、詩となれば、韻律の問題がこれに絡み、複雑というか、面白い現象を生じます。 |
漢文、漢詩には、読み下し訓読という方法があり、それが日本文芸の大きな支えとなってきたことは、言うまでもありません。 また、そうでないと伝わらないものも多くあります。だから、詩吟がすたれない。 原詩を原音で読む 原詩を訓読で読む 原詩の和訳を読む 原詩の戯訳を読む 原詩のバロディを読む いずれも楽しい。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
この本は、タイトルから分かるように 井伏鱒二の『厄除け詩集』の向うを張るように、漢詩の和訳集です。 本人は和訳と言わず、戯訳と呼んでいますが、漢詩好きな人はニヤニヤしながら読むでしょうし、漢詩に馴染のない人には、一種の入門書とお勧めです。 右の文章は20年以上前読んだ時のものですが、今、どのページを開いても、面白い。 ハナニアラシノタトエモアルゾ 「サヨナラ」ダケガ人生ダ」 で有名な『厄除け詩集』の漢詩訳、17首の内、10首は、実は、江戸時代の潜魚庵(1725~1793)の『唐詩選和訓』のほぼ引き写しであることが、井伏鱒二の死後半年たって明らかになった。その辺の事も詳しく出ています。(同書p110~) 何首かは原文も対比されています。 この本には、他の人の和訳に触れている箇所が、沢山あります。佐藤春夫、土岐善麿、那珂秀穂、私には初めて名を聞く澤田瑞穂『閒花零拾ー中国詩歌隋筆』から6首。和訳を楽しんだ人たちが多くいることが分かります。 「あとがき」には奥様松下千恵子さんの戯訳が始まった経緯や本の出来るまでが書いてあって興味深いです。 2023・2・23 |
松下緑『「サヨナラ」ダケガ人生カ 』 集英社2003年 世渡リ巧者ガ出世シテ この詩が面白いと感じるとしたら、あなたは50才を越したサラリーマンだと思う。 は松下緑訳ではこんな風になります。 花ガヒラケバアメカゼニ 漢文訓読み方式は一種の風格がある文体といえなくないが、詩に限って言えば、詩吟で特にそう思うのだが、どこか違うなと言う感じがしてならない。詩は韻律であり、調子なのであるから、他の国のことばには置き換えられないものなのである。 桃ハノビノビ 詩経「桃夭」の松下緑訳である。従来の訓読み方式に比べ、遥かに原詩の雰囲気を捉えていると思う。 この本は総て原詩と読み下しと作者、字句の注がついていて、漢詩のファン以外でも十分楽しめます。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
本書より訳詩の一例 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
この詩には、次のエッセイが素晴らしい。 http://heinrichfuna.jugem.jp/?eid=75 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
安東孝行『唱和の遊び』 1974年 桜楓社 著者は哲学者。 漢詩の和訳は勿論、それを圧縮した和歌や俳句を、古今の作品、自作を含めて掲げる。 そのような行為を「唱和」と呼んでいるのである。 詩歌についてのかなりの蓄積が無いと出来ないことです。 パロディーとは異なり、詩の世界の延長上にある。 和歌訳の例:
千すぢかヽれる瀧の白糸 有功(1) いづくゆも降りつる雪ぞまそかがみ 歎きかさねしひとよおもほゆ 白雲(2) (1)幕末の家人千種有功(ちぐさありこと)、漢詩240首に、和歌を付けた『和漢草』という作品がある。 (2)著者、安東孝行の雅号。「ひとよ」には一夜、一世、人生をかけたつもりと自注。 同書p30~ |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
柏木如亭『訳注聯珠詩格』岩波文庫 内容は左の本の表紙ご覧ください。 漢字の横に和語のルビを振ってあって、漢詩を和語で理解したいという、多くの読者の要求に答えています。 韻律という点では余り工夫がなされていません。 2023/2/20 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|