David Copperfield  by Charles Dickens

   デイヴィッド・コパフィールド
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     半世紀も前、30歳前後の時、「デイヴィッド・コパフィールド」を岩波文庫の6巻本(市川又彦訳)で読み、とても感動したことがあった。もう内容はすっかり忘れてしまったが、いつか原書で読みたいと思って手元に、2冊用意しておいたが、積読状態が永く続いた。

   今年になってふと手に取って、1頁読んだら、すぐに虜になってしまった。
 分らない所のために、新潮文庫(中野好夫訳)を図書館から借りた。
 私が読むのはEveryman's Library版(右図)である。
文中での引用文の翻訳は断らない限り中野好夫訳である。

 後で思い出す手がかりとして、メモを残しながら読みます。
 記憶に残る人物は太字。 〇は表現のメモ

 2023・1・5~
Charles Dickens
1812年2月7日 - 1870年6月9日
David Copperfield
1849年から1850年にかけて、雑誌に月刊連載された。
https://en.wikipedia.org/wiki/David_Copperfield
ここに書影がある。

  
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Chapter Ⅰ I am born   出生  (中野好夫訳による。以下同じ)

   誕生の様子、大叔母Betsey Trtwoodの登場。巧みな語り口で読者を引き入れる。
  
〇 posthumous child - 父親の死後に生まれた子。
〇 caul ― 羊膜の一部、胞衣(えな)のこと。これを頭につけて生まれてきた子は幸運なことされる。水難防止の護符となり、売買される。
  caulを付けて生まれた子として、バイロン、フロイトが挙げられる。
https://en.wikipedia.org/wiki/Caul#Notable_people_born_%22in_the_caul%22
 
〇 貨幣とその価値が分らない。下記はpoud比
  guinea 1.05, sovering 1, crown 0. 25, shilling 0.05, sixpence 0.025, penny 0.0042, farthing pennyの1/4

  上のcaulは売買されている。
Davidのお母さんは年150poundの年金が残されている。1848年頃のメイドの賃金は年20ポンド前後。
 右欄文献参照。

    2023・1・9

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ChapterⅡ I observe 私は見た

  観察力と記憶力の強い子、幼児期の回想。
  乳母ペゴティー(Clara Peggottyは主人公の母と同じ名前なので、姓で呼ばれる)の結婚ついての考え。
  母の再婚相手となるMurdstone登場、ペゴティーの強い反発。
  マ―ドストーンに連れられ遠出。
  ペゴティーのYarmouthにある兄の家へ2週間行くことになる。

 〇Yarmouthイングランド東部地域のノーフォーク州にある海岸沿いの町。ヤール川の河口、ノリッジの東30kmに位置する。1760年以降海辺の保養地。ニシン漁の拠点ともなっている。

   2023・1・14

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Chapter Ⅲ  I have a change  転地

 ペゴティーのお兄さんの家に行く道中や家での描写が面白い。
素朴なお兄さんの言葉;
 〇'Glad to see you, sir,' said Mr.Peggotty. 'you'll find us rough, sir, but you'll find us ready.'30p

  中野好夫にかかると
 「これはこれは、ようこそ」とミスタ・ペゴティーは言った。「 わしら何にもおかまはできねえがね。気兼ねは一切なしにしとくなせいましよ」

  朝、浜辺でのエミリーとの会話、幼い恋人同士、それを見守る大人たち。
  同居の未亡人ミセス・ガミッジは何事にもネガティヴ。暖炉の煙がいぶっても;

 「どうせあたしなんんぞ、お構い手なしの捨てられもんですからね。すること、なすこと、うまくいったためしがないんでね」
 原文は
’I am a lone lorn creetur' were Mrs. words, when that unpleasant occurrence took place, ' and everythink goes contrairy with me ' 36p

 ペゴティーの兄が素晴らしい。
 2週間の滞在を終えての帰宅。エミリーとの離別。

  新しい世界が待っていた。
 (この時、デイヴィッドは何歳だったのだろうか?)

   2023・1・20



Everyman's Library 1965年版  837p






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Chapter Ⅳ  I fall into disgrace  屈辱

  
ペゴティーのお兄さんの家から帰ってみると、お母さんが結婚したマ―ドストーンがいて、直ぐにその姉もやって来て、家を占拠ししてしまう。この間の、デーヴィドとお母さんの哀れな立場へと。

 ディケンズの悪役の造形は見事、読者を惹き付ける。

T
he gloomy taint that was in the Murdstones blood, darkend the Murdstones religion, which was austere and wrathful. p49

マ―ドストーン一家の血の中にあるこの暗い汚点は、マードストーンの信仰まで、暗いものとし、それは峻厳、そして怒りに充ちたものだった。

  この二人の監視の下に、デイヴィッドの教育が進められ、苦しめられる。
  唯一の楽しみは、父親が残した蔵書。ドンキホーテ、ロビンソンクルーソーなどマあるが、私の知らい本の方が多い。

マ―ドストーンの教育で
デイヴィッドは苦しめられるのであるが、杖で討たれるところまで行く。杖で打つために抑えられている手を、デイヴィッドが噛むシーンがある。

 
and in the same instant I caught the hand which he held me in my mouth between my teeth, and bit it through, It sets my teeth on edge to think of it. p55

その瞬間だった、私は、私を抑えていた彼の手にぐっと噛みつくと、そのまま力いっぱい歯を食いしばった。 いま思ってみても、ぞっとする。

sets my teeth on edge  annoy, displeaseの意味のようだが、中野訳は面白い。

  デヴィッドは5日間、監禁されたのち、ロンドン近くの学校送り出される。お母さんとペゴティーの対応が心にしみる。

    2023・1・31
 
平成18年 32刷改版
巻末の簡潔な訳者の解説がある。
中野好夫は名文家の一人と思っているが、訳文を見事な日本語である。
翻訳とは半分は創作なのである。

  
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Chapter Ⅴ I am sent away from home  ところ払い

一種の託送便と送られる道中の出来事、

ペゴティーが、3シリングと母からの2半クラウン。渡される。
御者バーキスがペゴディーに思いを伝えて欲しいという。
” Barkins is willin' ”これだけでよいと。
途中の食堂で、給仕とのやり取りで、デヴィッドはの歳は8歳半と分かる。、不快の旅の後、受け取って、セイレム塾へ連れて行ってくれた、メル先生。先生の吹く陰気なフルート。

着いてみると、デヴィッドは"Take care of him. He bites"「御用心、噛みます」のプラカード背中に掛けさせられる。

〇send me to Coventry  私を仲間外れることを恐れる。

マ―ドストックとその妹の監視がないので、学業の方は次第に良くなる。

孤独の中で、寂しい夢。そして、メル先生ほか、ここでの生活に慣れてくる。

   2023・2・5

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Chapter Ⅵ I enkarge my circle of acquuaintance  友達ふえる

  休暇を終えた、生徒、先生がセイレム塾に戻ってくる。

校長クリークルが問題。義足の門衛(タンゲー)の付き添いの下に面接。小声だが恐ろしい校長。自ら

”I am a Tartar.”「わしはな、おそろしく厳しい人間でな。」という。
恐る恐る、皆が帰ってくる前に、プラカードを外してほしいとと言ったが、校長の態度に、ほうほうの態で逃げ帰る。

生徒の中で最初が最初がトミー・トラドルズ、最年長スティアフォースが最後に帰って来て、全員揃う。
 スティアフォースが私の有り金7シリング預かり、その中から、カラント酒(currant wine)やケーキを買い、皆にふるまう。

currant wine すぐりの実の酒

学内の色々な情報が明らかになる。

  2023・2・7



Collin版のGroomeによる挿絵。
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Chapter のⅦ My’First Half’at Salam House
          セイレム塾の半学期

  新学期が始まる。騒がしかった教室もクリークル校長が入ってくると死んだように静になる。校長のしごきが始まり、私をはじめ多くの生徒が、鞭うたれ、その日の授業が始まるまでに、まず全校生徒の半分は、早くも身悶えしながら泣いていた。
 〇Half the establishment was writhing and crying before the day's work brgan;
  しばらく校長の嗜虐的行動と生徒の反応の描写が続く。

トラッドルズ(Traddles)は、中でも、最も愉快で、みじめな少年で、毎日、叩かれるが立派な少年であった。スティアフォースの受けるべき罰を受けた時も、告げ口sneakしなかった。いつも骸骨の絵を描いていた。
道化の役を演じ人気者、義侠心もある。

  スティアフォースの庇護は続く。そのためにいじめには会わなかった。
更に、彼に、読んだんお話を毎夜することによって、さらに絆が深まる。

ペゴティーから待望の手書きの、品物が届く、その中に、
cowship wine  くりん草ワイン(ハーブ酒の一種?)が入っていた。

 ミル先生は私をかわいがってくれたが、スティアフォースは先生をにいつも反抗していた。校長が病気をで休んでいた時、騒然とした教室の監督に当たっていたミル先生とスティアフォースお大喧嘩が始まる。
  結局ミル先生は学校を去ることになる。

 ペゴティーのお兄さんとハムが面会に来て、場面はほっとする。
ステェアフォースとも引き合わせる。
 やがて、学期が終わり、帰省ということになる。

 長い、波乱に富む一章であった。

  2023・2・18

 

Collin’s  Illustrated Pocket Classacs 
1920?876p
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Chapter Ⅷ  My Holidays, Especially One Happy Afternoon
                        休暇
 

 帰りの馬車もパーキス
の馬車で、道中、彼のペゴティーへの思いを話す。
 帰り着くと、母は生後間もない弟を抱いていた。
  帰りが早かったせいで、マ―ドストーン兄妹は不在で、母とペゴティーと3人での水入らずの楽しいひと時が流れる。
 パーキスの話へのペゴティーの反応が面白い。
 
  マ―ドストーン兄妹が帰宅。二人の支配下にある母の姿。
 デイヴィッドにも部屋に引きこもりがちな陰気さを非難され、ペゴティーとの接触も禁止される。

 マ―ドストーン兄妹のいる家は、もう家庭ではない。

 1か月の休暇も終わり、家を去るのも悲しくない。
 母は庭の門に立って、両手で赤ん坊を差し上げて、私に見せようとした。これが母の見送ってくれた姿で、 後で夢にも見る。

  2023・3・4

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 Chapter Ⅸ I have a memorable biethday
           忘れえぬ誕生日のこと

  タイトルから、なにか素晴らしい出来事が起きるのかと、期待していたら、母の死であった。

  クリークル校長夫人から、その死を告げられてから、デイヴィッドの心動きが描き出されてゆく。トラッヅルズが枕を貸してくれる。

  途中、オーマーに店で、喪服の寸法を取ったり、悲しいことに、棺桶を作る音まで、聞く。
 ミス・マ―ドストーンは「シャツは持って帰ったか?」聞いただけだった。

  埋葬のシーン
  ペゴティーから母の最期の様子を聞く。
  母の心の優しさだった。

  2023・3・20

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  Chapter Ⅹ I become neglected, and provided for 逆境

 ミス・マ―ドストーンが最初にやったことは、ペゴティーを1か月後に解雇することだった。私は放置された。

  そして、ペゴティーが一時兄の処に身を寄せることなって、付いて行くと一緒に付いて行ことになる。
  パーキスの車で、ペゴティーの兄の所へ向かう。 
 エミリーとの再会、相変わらず愚痴ばかりのガミッジ夫人・・・


  ここでの会話にのなか、ステアフォースのことを自慢する場面が続く;
〇 ’Nothing seems to cost him any trouble' said I, ' He knows a task if he only looks at it'
 「どんなことだって、へっちゃららしいですよ。勉強などでも、一目見りゃあ、わかってしまうんですよ。」
  

  残酷な程徹底した無視と行動の制限を受うけ、友達を作ることは許されず、ペゴティーに会うのもまれになってくる。
  ペゴティーの結婚した相手、パーキスは相当のちん坊(something of a
miser
)で,彼女の表現を借りると,、ちょっとした節約家シマリヤa little near)
あることも分かる。

、私は、ロンドンにある酒商、マ―ドストーン=グリンビー商会の小僧に出される。
  厄介払いである。

  憎まれ役のマードストーン姉弟が、どして少年にこのようなむごい扱いをするのか分からない。

    2023・4・10
 
 
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Chapter Ⅺ I bebin on my account, and don't like it.
           苦しい自活

  

  マ―ドストーン=グリンビー商会での生活は、みじめそのものだった。
 給料 週6シリング後に7シリングで食費をまかなうのは大変だった。
 マードストーンの知人、
ミコーバーMicawberさんと所に下宿することになる。

  ミコーバーさん一家
   主人ー海軍の士官上りらしい。今は商社の注文取り
   夫人ー良家の出、
   子供ー4歳の男の子、3歳の女の子、双子の赤ちゃん

 、極貧の一家で、債権者に追い立てられ、しまいには、刑務所に拘留されれます。

  ミコーバーさん一家とは、歳の差もあるにもかかわらず、下宿人以上の付き合いが始まる。家財の処分や質入れを頼まれる。

 ミコーバーさんが 刑務所に入った日のこと、日曜に面会に行ったことなど、細やかな描写が続く。

 その後、家財は、ベッド、2,3客の椅子、食卓を除き、持ち去られ、やがて、デヴィッドも転居することになる。

マ―ドストーン=グリンビー商会で、平凡な勤めが続く。
〇 
with the same sense of unmerited degradation as at first.
何となく不当に落ちぶれたような感じも同じだった。

刑務所のミコーバーさんとの交流は続き、ミコーバーさんが中心になって,
破産者拘置法(the law of imprisonment for debt)の改正の請願書をまとめる状況が詳しく描写される。

    2023・5・26

 この章は、デイヴィッドの苦しい生活が伝わって来て、読むのに辛かった。
ミコバーさん一家の経済的惨状も強く心を打った。
当時の読者には週6,7シリングの生活どんなものかも分かるので、同情を呼んだことだろう。


ミコーバーさん入れられた刑務所は、
the King’s Bench Prison (中野訳:債務者拘留所)は王立法廷監獄で、名誉毀損、破産、その他の軽微の事件が審理されました。そのため、刑務所は1860年代に慣行が廃止されるまで、債務者監獄として使用されることが多かった。 ウィキペディア(英語)より。



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Chapter Ⅻ 
Liking Life on my account no better,
          I form a great resolution

              一大決心


  ミコーバさんたちの請願はとうり、釈放とということになり、やがてプリマスへ移住することになる。私は別の下宿に移ることになる。
  ミコーバーさんは去る前に教訓を残して行く。
 身内同然のミコーバーさん一家が去ると叔母の所に行く決心をする。
 ペゴティーに叔母に居場所を訪ね、半クランを借りて、出発。
  悪い驢馬引きに遭って、半クラウンも失ってしまう。

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Chapter ⅩⅢ The Sequel of my resolution
      決心の成果


  勤めを逃げ出し、ドーバーの小母の所へ、徒歩で行く道中の、さまざまな困難には、読者はい息を呑む。野宿を続け、金を奪われ、着ているチョッキや上着を売りながら、やっと叔母の家を探し当てる。

中野好夫の翻訳も、躍動に充ちている。例えば;

上着を売る店での、陰気な店主の言いぐさ、

「ええ、いったい、なんだっていうんだよ、用は? いったい全体、なんだっていうんだ? チエッ!べらもうめが!」
’Oh, my eyes and limb, what do you want ? Oh, my lungs and liver, What do you want? Oh, groroo, groroo ! '
こんな店の主人と渡り合うのである。
 

















私は、2023・6・10~24日の2週間、肺炎で日赤に入院した。
この章は、入院中に読んだのだが、野宿し、チョッキ、上着を売りながらの旅は、全く感情移入して、辛い程であった。
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Chapter ⅩⅣ My aunt makes up her about me
             伯母の決心



  
なんと翌月もまた入院という椿事もあり、更に、その後、ジョセフ・キャンベルやノア・ハラリハラリ他面白いものが沢山出てきて、ディケンズともすっかりご無沙汰していた。

再開するにあたって、第14章を、翻訳で2度読んだ。
伯母と同居のディックさんの描写と、なによりも、マードストン弟姉がやって来ての伯母との丁々発止としたやりとり、それを見ている私。
この章だけでも、価値がある。

2023・9・27