Delia Owens ディーリア オーエンス Topへ

     

   Where the Crawdads Sing
     
by Delia Owens

(邦訳:ディーリア・オーエンスザリガニの鳴くところ友廣純訳あり)

  アメリカでベストセラー、他国語にも訳され、日本語版は2021年本屋大賞翻訳小説部門第一位ということで、私のミーハー心も働いて、手を出したのだが、英語は難しかった。アメリカ南部の自然を舞台に風物、動植物を描写して行き、さらに南部なまりも交じるので知らない単語が沢山出てくるからである。例えば、同じ沼、湿地,を表わす語、marsh ,swamp, bog, fen, lagoon, slough,・・・とあるが、辞書を引いてもそのイメージは浮かんでこない。(写真集でも出版されたらぜひ入手したい)
  しかし、各章が短く、ストーリが飽きさせないので、途中からは夢中で読んでいた。読後も奇妙な余韻が残って楽しめた。
  著者が70歳にして初めて書いた小説という。その瑞々しい感性を羨ましく思う。
  邦訳は未読だが、名訳だという評判なので、言葉の障害なしにスムーズに、楽しく読めるのではないかと思う。

   貧困と父親の暴力によって、家族は離散し、母親と兄弟姉妹に見捨てられた6歳の少女が、湿地の掘っ立て小屋で、父親と住む。そんな少女がどんな運命を辿るのか? 父親からも見捨てられて、少女が僻地に一人で住むという設定には少し無理があるように思ったが、少女の成長を気にしながら読んでいくと、17年後に起きた殺人事件というミステリーが巧みに組み合わされていて、後半は法廷ドラマとして読者を惹きつけている。


   日本語版には付いているかどうか知らないが、原書のペーバック(PUTNAM版)には、巻末に10頁程の著者へのインターヴューとDiscussion Guideがついていて、これが結構面白い。

インタビューの一部を訳出しておきます。

あなたのデビュー小説『ザリガニの鳴くところ』はどんな本ですか?

ーー『ザリガニの鳴くところ』は、ミステリー、ラブストーリー、法廷ドラマですが、第一に、自立(self-reliance),サバイバル、孤立が人間の行動にどう影響するかについて書いています。人間は社会的動物ですから、遺伝的に、固く結ばれた家族や友達とグループに属したいという傾向があります。・・・・(中略
この小説は、孤立した人間がどのように普通でない行動をとるか?他人から拒絶されるとどれだけ大きく変わるか?を探求しています。彼ら自身、排除された者に関して、、人は大昔サバンナで生き延びた人間、または、「ずっと向こうの、ザリガニが鳴くところ」で生きつづける野生の生き物たちと似た行動へとしばしば回帰ます。


2021・8・21

他に、「ザリガニは本当に鳴くのですか?」という質問もある。著者の答えは:

技術的にも、科学的にも、ザリガニは鳴きません。
しかし、わたしはそれについて自分で少し調べてみました。そして、わたしは、実際の森に全くの一人で行って、小さなテントを張る必要があると分かったのです。道からも村からもずーっと離れた所ですよ。駐車場もない、野生の生き物があふれている離れた土地のことです。
夕暮れになるまでに、森深く行き、暗くなるまで、身をさらし、一人ぽっちで立っていなければなりません。
足下に、この惑星を感じ、木々が動き廻るのを感じることが出来れば、耳をそばだてて聞かねばなりません。  ーお約束しますー あなたは、ザリガニたちがの歌うのを聴くでしょう。それはコーラスですよ。

   2022・10・14
   

  この本はドイツでもベストセラーとなっている。
   (朝日新聞のGlobe 2022年 1月号)

  Der Desang der Flusskrebe  (ザリガニの歌)

   2022・1・6 追記