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健康住宅研究会報告

下記の主旨で健康住宅研究会が組織され、結果が公表されました。
以下は建設省のホームページからダウンロードした内容です。


「健康住宅研究会」について               建設省住宅局住宅生産課

1.はじめに
 近年、住宅で使用される建材や施工材等から放散する化学物質による健康への影響が問題として指摘されている。
 こうしたことに鑑み、(財)住宅・建築省エネルギー機構を事務局とし、平成8年7月、建設省、厚生省、通商産業省、林野庁、学識経験者、関連業界団体などからなる
「健康住宅研究会」(委員長:今泉勝吉工学院大学名誉教授)を組織し、健康影響を与える可能性のある化学物質に関して、室内空気汚染対策の検討を実施してきた。

 本研究会では、「内装・実験分科会」(事務局:壁装材料協会)及び「木質建材分科会」(事務局:財団法人日本住宅木材技術センター)を組織して、2年にわたりそれぞれ内装材、木質建材による
室内空気汚染の状況について実証的実験研究を行うとともに、「設計・施工分科会」(事務局:住宅・建築省エネルギー機構)において健康影響を低減していくための住宅設計・施工の基本的考え方、
手法および入居者の住まい方等について検討してきた。

 先ごろ、健康住宅研究会は検討の成果として、「室内空気汚染低減のための設計・施工ガイドライン」(以下、「設計・施工ガイドライン」という)と「ユーザーズ・マニュアル」をとりまとめ、広く公表することとした。

2.研究会成果の概要

(1)研究の対象と範囲、優先取組物質

 本研究会の検討範囲は、引き渡し時に住宅と一体となっている材料・部品であって、室内へ放散した場合に健康への影響を引き起こす可能性の高い化学物質を含むものとした。さらに、住宅室内に放散される可能性の有無や健康への影響の可能性を勘案し、安全な居住空間を実現するために当面優先的に配慮されるべき物質として、次の3物質及び3薬剤を「優先取組物質」として選定し検討を重ねた。

3物質
1)ホルムアルデヒド 2)トルエン 3)キシレン

3薬剤
1)木材保存剤* 2)可 塑 剤 3)防 蟻 剤

*木材保存剤のうち工場処理で使用するものは、空気中への放散は極めて少ないことが明らかになったため、現場で塗布又は吹付けで利用されるものを設計・施工ガイドライン、ユーザーズ・マニュアルの検討対象とした

 設計・施工ガイドライン、ユーザーズ・マニュアル作成上の基本的な考え方は、優先取組物質の室内濃度が一般的に以下の特性を持つことを基礎としている。

1.優先取組物質の室内濃度は、優先取組物質を放散する建材・施工材(接着剤、塗料等の建築現場で利用する材料)の使用量に正の相関があること。
2.建材・施工材の選択によって優先取組物質の放散を低減できること。
3.優先取組物質の室内濃度は時間が経るにつれ次第に低減していく傾向があり、この低減速度は建材・施工材の種類、放散する物質によって異なること。
4.
建材・施工材の温度が高くなると、優先取組物質の放散量が大きくなる傾向があること。
5.換気量が多くなると優先取組物質の室内濃度は希釈されて低くなること。
6.
外装、基礎・床下・天井・構造躯体、内装下地材、内装仕上材の順番に後者ほど室内濃度への影響が大きくなる傾向があること。

(2)設計・施工ガイドラインの概要
1)設計・施工ガイドラインの性格
 設計・施工ガイドラインは、設計者・施工者を対象として、室内空気汚染による居住者の継続的な健康影響を低減する住宅づくりを実現するための、設計・施工時における基本的な考え方や手法を取りまとめたものである。

2)設計・施工ガイドラインの要点

 まず設計・施工者が入居者の居住条件や敷地の条件、構法の特性等を把握することが重要であり、これらを十分に踏まえて、
1)適切な材料選定を行うこと
2)現場での適切な施工管理を行うこと
3)通風・換気へ配慮した設計を行うこと
が入居者の健康影響の低減のために重要である。

 さらに、引き渡し時には、入居者に対し、優先取組物質などの室内空気汚染物質による健康被害を低減していくための住まい方について説明を行うことが重要である。

 建材・施工材の選定においては、優先取組物質を放散しないか放散が十分少ないものを日本農林規格や日本工業規格あるいは業界団体の定める自主規格、メーカーから入手できる化学物質等安全データシート等を参考にして適切に選択することが有効である。
 接着剤、塗料等の施工に当たっては、種類、使用量を目的に応じて適切に施工管理するとともに可能な範囲で養生期間をとることが有効である。
 換気・通風への配慮では、風による空気の流れをより効果的に活用できるような位置に窓や換気口を設けることや、適切な位置に換気設備を設けるほか、工期中または入居までの間の換気の実施が効果的である。
 リフォームにあたっては、ユーザーが居住しながら現場施工を行う場合が多いため、新築時以上に、使用する建材・施工材の選択や施工方法、施工管理、工期設定により十分な配慮を行う必要がある。
 なお、研究の結果、化学物質の健康への影響については個人差が大きいことや、室温、湿度、換気などの条件によって室内濃度は大きく変化すること、濃度予測手法についての研究が進んでおらず未だ困難なレベルにあることなどから、こうした予測手法については今後、各方面で取り組むべき研究課題であるとした。

 また同ガイドラインには、ホルムアルデヒドの室内濃度が高く居住者への健康被害が懸念される時に、現段階で最も簡便かつ有効な対処手段として考えられる換気の方法を居住者にアドバイスしていく簡易マニュアルと、ホルムアルデヒド濃度の簡易な測定方法についての解説を添付している。

(3)ユーザーズマニュアルの概要
 1)ユーザーズマニュアルの性格
 住宅に入居するユーザーを対象とし、ユーザーが住宅を建築あるいは購入する時の配慮点や住宅の選び方、日常の暮らしの上での留意点等を解りやすくまとめたものである。

 2)ユーザーズマニュアルの要点
 ユーザーは室内の空気環境に配慮して健康への影響を低減していくための住宅建築の基本が、

1)適切な材料選択
2)適切な施工
3)換気・通風への配慮

にあることを理解し、こうしたことに配慮された設計、材料選択がなされているか、さらに、建築現場で現実に正しく施工されているかを確かめることが重要である。

 日常の暮らしの上では、窓の開放によって自然換気を積極的に取り入れることや、給気口をできるだけ開けた状態にすること、室内ドアを開放して通気経路を確保すること、窓を閉め切る場合は台所換気扇などを運転することなどの換気への配慮が重要である。特に、数日間にわたって不在にした場合などは換気に留意することが重要である。

 さらに生活の中では建材等以外にも、室内空気汚染源となる可能性があるものがあり、それらをできるだけ持ち込まない、あるいは使用にあたっては換気に充分に注意する必要がある。

 入居後、「強い臭いがする」、「目がチカチカする」、「喉に渇きを覚える」などの症状をおぼえた時には、すぐに設計者、施工者へ相談して適切な換気の方法などについてアドバイスを受ける必要がある。

<本件についてのお問い合わせ>
健康住宅研究会 事務局
102-0084 東京都千代田区二番町4-5相互二番町ビル2F
 (財)住宅・建築省エネルギー機構・TEL 03-3222-6690 FAX 03-3222-6696