神 戸     1984−1986
     
      忘  春 
     

     立ち枯れた茶の木の激しい朱を
     眩しいと思う
     ひそひそと咲き揃う
     梅の花の頼りな気な白を
     切ないと思う
     こんなに冬を引きずって
     この鈍い空の下
     春はどこに行くのだろう
     遅れてきたお前は
     その遅れを取り戻せぬままに
     夏の中へと消え入ってしま
     う
     
                           1984.4.4.



  
     日本の西の中くらいの海岸街、
     ありふれた水族館のさびれた水槽の中の、
     ポリプテルス・パルマスの眠り
     
     
     地表をゆるやかに流れる太古の芳りは
     いつからかお前の国より続いているものだろう
     ポリプテルス・パルマス
     お前の眠りを妨げる者はいない
     そして私はお前をこんなに愛しいと思う
     ザイールの泥沼を叩く
     あの緑色の雨を見ているか
     原色の鳥たちは賑やかに滑空して
     獣たちはなりをひそめ
     お前とお前たちの一族は
     切なく眺めてきた
     お前は独りだ いや
     独りなのは私たちだ
     埋めることの出来ぬ傷みゆえに
     あれほどの水と土を隔てたここまで
     お前を運び
     側に置いておきたい と
     それでもお前は
     地表をゆるやかに流れる太古の芳りに
     身をくねらせ
     泳いで戻っていけるのだ
     地球はどこに居ようと孤独な場所だ
     お前の水槽も
     私の六畳一間のアパートも
     ザイールの泥沼も
     人の行き交う地下街も
     同じほどの容積と湿度と密度を以て
     臆病な心を脅かす
     それでいながら
     お前はこの水槽に身を横たえて眠るだろう
     私も今夜
     狭いアパートの一室で
     ザイールの泥の沼を叩く
     緑色の雨を見ようと思うのだ
     
                           1984.4.9.



     
     
      夜 、 さ さ や か な 
     
     
     打ち寄す時の潮に巻かれ
     心荒ぶれ
     処を忘れ
     小さな魂たちは どの岸に上るのか
     
     区切られた時をひとつ終えて
     自分の内に深くくぐもった
     猛りを吐き出せば
     夜は折節
     頑なな面を和らげる
     そんな引き潮に似た夜もある
     窓をゆるりと開いて
     低いジャズにこの身のリズムを
     委ねられる時間には
     遠いあなたに耳を澄ませよう
     あなたの隠された言葉に耳を傾けよう
     
     そして これから
     どこへ行けば良いのですか 
     どのようにして在るなら
     この道はあなたへと通ずるのですか
     
     愛しい者の数が昨夜よりも増えた夜には
     頭を少しだけ高くもたげようか
     いつもの鼻唄の代わりに
     少しだけ深い沈黙を味わおうか
     そして三杯目のビールを高く掲げて
     あなたへの祈りと共に呑み干せば
     またあの悲しい思いを取り戻せるだろうか
     
     朝と共に潮は戻り
     私は私でない私に戻り
     空しい叫びをあげて海中に没するだろうが
     希わくば 打ち上がる次の岸に
     ささやかな野の花のあるように
     ひそやかな小鳥の唄のあるように
     
                           1984.5.10.



     
     
      三 葉 虫 
     
     
     僕の潜在意識の暗がりには
     一匹の小さな三葉虫が棲んでいる
     時折 不意に目覚めた朝に
     のっそりと消えていくそいつの
     後ろ姿が見える
     自分の存在に微塵の不安も感じぬ
     そいつにどこかで嫉妬して
     だから僕はそんな朝に
     自分のやり場を失くしてしまう
     
     波のうねりに起こされて
     僕は長い夢から解放される
     二十五年分の夢だ
     僕が僕であった二十五年が全部夢で
     奇妙な夢を見たと
     僕は重い眼球をこする
     単調で退屈な夢だった
     その中で僕は
     物事をねじ曲げて考え
     仲間に絡み すね 開き直ったりしていた
     いったい これは何の象徴かしらんと
     いぶかりながらのっそり身体を伸ばし
     僕は原始の海底を眺めまわす
     
     僕の潜在意識の暗がりには
     一匹の不細工な 二本脚の生き物が
     棲んでいる
     
                           1984.6.11.
     
     
     
     
     
      熱 帯 夜 
     
     
     微動だにせず ただ
     重みだけを不必要に増していく
     大気の底で
     じっとりと汗ばみ 低く唸りながら
     遠い生命誕生の朝を
     思い出す
     吸っては吐き出す
     生息する為の最も基本的な動作を
     かくも意識的に反復させながら
     僕は
     空気の孕む高い熱と湿度に嘆息し
     そして古いひとつのプランクトンに
     成り下がる
     彼らは今も
     この濃い密度の際を
     低く遊泳しているだろうか
     
     やがて ささやかな決意と共に
     人への僕は空しい進化を試みて
     身を起こし 明かりを灯し
     頬の塩を冷やかな水で洗い流す
     薄いアルコールで喉を湿らせて
     開け放った窓の外に身を乗り出し
     星すら無い原始の夜に向けて
     高く咆哮しようか
     
     身にまとうものも無く
     生き延びる方途すら無く
     思えば以前 このようにして在ったのも
     そう遠い昔でもないと
     浅い眠りに戻りながら 僕は
     どこかで始まる風の気配に
     じっと
     身の毛の全てを逆立てて
     海への回帰を密かに 夢想する
     
                           1984.7.4.
     
     
     
     
     
      直 下 型 
     
     
     ゆるやかに律動する地表は
     さながら
     赤子をあやす母の腕のように
     大きくたわんでは
     たおやかに沈むのだ
     激しく膨張し
     流出しようとするマグマを
     押さえ込もうとして 地表は
     苦痛に身をゆがめ
     幾度か切ない悲鳴を上げる
     どれほどのものが
     あるのだこの地上に
     陳腐な慣用句を以て今も表される
     お前の偉大は
     高みにしか目をやれぬ
     鬼子たちの取ってつけた
     愛想でしかないのだ今となれば
     
     お前とか 或いは
     国家とか
     気象とか
     交通事情とか
     道端の空き缶とか
     そういったものに
     我々は何ひとつ
     奉仕をせずに恩恵だけを
     手に入れようとしている
     まして それらに
     手痛い仕打ちでも受けようものなら
     まるで信じられぬという
     顔をして食って掛かる
     理不尽
     便利な言葉だ
     
     誰もが望むままに
     自由で快適な− 
     民主主義のスローガンにのっとれば
     地球は自由に揺れ
     熱帯性低気圧が気紛れに
     進路を西に傾け成長し速度を上げ
     政府が税収の増加を図り
     最寄りの国道が渋滞し
     或いは道端の空き缶が
     老人をつまづかせようと
     彼らの罪ではない
     
     彼らの罪ではないのだ
     
     ある朝
     僕は遅い朝食の献立に思い悩み
     玉葱を刻んで
     水をたっぷり入れた鍋をガスに掛けるだろう
     沸騰したそれにスパゲティをぶちまけ
     塩を振ったとする
     十二分ほどの暇を
     ボンゴレロッソにするか
     ミートソースにするかナポリタンにするか
     悩むことで過ごしてもいい
     歌を唄ってもいいし
     水割りを一杯空けてもいい
     スパゲティに関する思い出を辿って
     かつて愛した女の子に行きついたところで
     さして人類の行く末に多大の損害は
     与えないだろう
     さて
     その十二分の間に
     ぐらりと来るのだ
     揺れは徐々に高まり
     茶だんすでは食器が合奏を始め
     壁の絵が落ち
     本棚も倒れる
     揺れは横から縦に
     僕は煙草に火を点け
     スパゲティの茹で上がるのを待つだろう
     クッキングタイマーが
     チン
     と ささやかに役目を果たすと
     世界は崩壊する
     茹で上がりながら
     ついに名も与えられず
     食されることもなかったスパゲティは
     まだ人生の目的を見出していなかった僕や
     来年度予算を審議中の国会や
     ようやく新居を手に入れ
     移り住んで間もない家族や
     ニジュウヤホシテントウや
     オコゼや
     セイタカアワダチソウと共に
     滅び去る
     それでもそれが
     悲しいことだろうか
     
     何もかもが消え去って
     最も地上らしくなった地上には
     我々の信じてきたものや
     信じようと思ってきたものや
     信じたいと考えてきたものたちが
     ゆらゆらと
     陽炎のように立ち昇っては消えるだろう
     
     その次に来る地震をもう
     誰一人
     呪ったり恐れたり
     苦々しく考えたりする者はないのだ
     お前の為に
     そして実は僕や
     僕のスパゲティや
     地上に今在る全てのものの為に
     そんな朝の来ることを
     願ってみるのは
     罪
     なのだ
     ろうか
     
     何の権利が有って
     我々人類は
     地球に生息しているのか
     判らず 今でも
     眠れぬ夜を
     過ごすことが あるのだ
     
                           1984.9.31.
     
     
     
     
     
      断 章 ・ 冬 
     
     
     オリオンは冬の星座
     飽きる程にこれまで見上げ
     その下をもう
     数十キロと歩き
     何リットルもの酒を飲んだ
     俺が廃人になり
     海が腐り切っても
     この星たちは このようにして
     我々を見下し続けるのだ
     
     ストーブの燃え残る臭いときたら
     人が裏切る時の あの
     冷え冷えとした 充実感に似ている
     俺は老いて果てるまで
     冬ごとにその臭いに息を詰まらせるだろう
     裏切るにせよ
     裏切られるにせよ
     ストーブのぬくみは やがて
     濁った空気にすり変わるのだ
     
     冬を疎ましく思い始めて もう
     一世紀が過ぎ
     愛しく思い出してようやく
     半世紀だ
     あとの一世紀で俺は
     冬を抱きしめ接吻し
     凍え死ぬだろう
     そのようにして
     これまでにも数人の男たちが
     死んできた
     寒々と危険で
     信ずるに値せず
     かといって 見限るには
     身の血肉ほどに近すぎる
     愛がそのようなものであれば
     まさしく彼女は
     情死するに相応しい
     相手であったことだろう
     
     眠れぬ夜も三時を廻れば
     時間も身ぶるいして停止し
     毛布にくるまって
     祝杯を挙げるに相応しい
     凍った大気も徐々にゆるみ
     遠く宇宙の泣き叫ぶ声が聞こえる
     身の内に積もった疲労や不安を
     押しもどそうと
     飲むほどに 煽るほどに
     俺は人間という
     哀れな化け物にと成り下がっていく
     
     そして春という
     最も偽善めいた おぞましい季節が
     到来してやっとのこと
     我々は彼女の甘美な
     あの手負いの獣の激しさに似た
     面立ちを 或いは肢体を
     ありきたりの繰り返された思い出の一つへ
     閉じ込めることに成功するだろう
     
     そして俺は
     牙を抜かれたショーケースの内の
     毒蛇に対してするように
     立ち去れず 忘れられず 身を焦がし
     胸底に隠した
     冬の種を大事に育てながら
     春を知らず 夏をやり過ごし
     秋すら見ずに
     いつか冬そのものとなって
     打ちのめし
     打ちのめされる時が来るのを
     密かに願っているのだ
     
                          1984.12.25.
     
     
     
     
     
      イタリアン・ドライ・ベルモット 
     
     
     暖かすぎる冬の夜に
     訳もなく醒めていくのは
     グラスで所在なげに揺れている
     安い葡萄酒だけではないだろう
     冷やかな最初の一口が済めば
     あとは喉から胃の底にかけての
     やり切れぬ渋味だけが残り
     意味もなくそれはぬるみ
     香りも失い ただ
     目の前の風景になり下がる
     吸い忘れて いつかただ灰になった煙草が
     奇妙な存在感を残すように
     やがてそのまま下水道に流れ込むお前も
     ささやかな自己主張を試みるだろう
     この空の白む頃には例によって
     
     何一つ産み出せるでなく
     破壊できるでもなく
     ただ イタリアで作られた酒は送り出され
     グラスに注がれ
     忘れられる 遠い異郷の冬の夜に
     音はすでになく
     空転を繰り返した想いも宙に散らばり
     ストーブの燃焼も尽きた
     やがて
     創造も破壊もない よく似た一日が始まり
     やり過ごされ 忘れられる
     
     革命は まだ起こらないだろう
     
     醒めるに任せた恋があった
     消えるに任せた喜栄もあった
     グラスに残った酒が最早
     どれほどの味臭も留めぬように
     古い記憶など
     辿ったところで何になるのか
     この汚れた夜の底で
     
     にも関わらず
     語らず思わず眠らず
     酔いもしなかった夜が 朝と共に
     ひとつの心地よい偏頭痛となって
     明ける頃には信じられるのだ
     イタリアの安葡萄酒が或いは
     一夜をやり過ごした酔漢が
     或いは
     一世紀も昔に終わった恋の記憶が
     やがて始める
     当ての無い革命を
     
     いつか叛軍が壊滅し
     再び夜の底に深く逃げ込んだ折りには
     今度こそ
     イタリアン・ドライ・ベルモット
     お前を美味いと思い 人の世の
     あらゆる空しさを
     美味いと 思えるだろうか
     
                           1985.2.3.
                                        


     
      状 況 下 の 孤 独 
     
     
     独りで居ると
     自分が訳もなく肥大し
     とんでもない化け物になっていくのが
     よく判る
     豊か
     であることは悪いことじゃない
     他人を必要とせず
     誰とも逢わず語らずとも
     時間をやり過ごせるのは
     幸福なことだろう すでに
     この時代には
     
     人はいつからか
     人以上の物になり始め
     それを恐れて皆
     誰かを傍らに置きたがるのだろう
     人であり続ける為に
     自分のどこかを 静かに
     腐らせていく為に
     
     時代は
     時間の大量生産を始め
     過剰に作り出されたそれを持て余しては
     悲しい殺戮を繰り返していく
     生き残ることではなく
     生き続けることが問題とされ
     国会は
     年金法改正案に紛糾する
     情報量が人口を越え
     情報機器が情報量を凌駕する
     誰もが誰かを恋しがっては
     知らん顔をしてすれ違って行く
     豊かであることは悪いことじゃない
     ましてこんな春の夜に
     
     そして そんな春の夜に
     僕は行きつけの古い酒場に出掛け
     冷えた一杯のギブソンを注文する
     もっと独りになる為に
     泣きわめいて 本当に
     誰かを求め始めるまで
     
                           1985.5.4.
     
     
     
     
     
      世 紀 末 
          ─J.M.に─ 
     
     死にもせず
     目覚めてしまった朝に
     また生き残ってしまったという
     後悔めいた自己嫌悪と共にあるのは
     ささやかな時代錯誤かもしれない
     
     古い唄の聞こえる朝だ
     
     意識的であり続けることは
     いま
     すでに罪以外の何物でもない
     創造ではなく 選択を
     拒絶ではなく 寛容を
     そして
     群れる少年たちは
     蹴散らされる
     
     唄が
     音楽と呼び換えられる
     自己催眠のような
     巨大な詐欺の時代を
     ぼくらは皆 目をつぶって渡ってきた
     J.M.
     ぼくは何時から
     君を聴かなくなったのだろう
     変わりばえもしない
     ありふれた愛の繰り言を
     ただ綺麗なだけの旋律に乗った
     乾いた音楽を
     ぼくらは何時から
     無造作に
     受け容れるようになったのだろう
     
     あの嵐の時代に ぼくらはまだ幼く
     ようやく身の内の暗がりから
     抜け出した頃には すでに
     安保 反戦 反核─ 
     伝説だけが語られ
     古い詩人たちは 時代に媚を売り始め
     革命家たちは おめおめと生き延びて
     哲学者たちは 意味もなく死んでいった
     
     昔話だ
     毒を抜かれた甘受の時代に
     ひっそりと語られる
     罪もない おとぎ噺だ
     
      めでたし めでたし
     
     古い唄にあるように
     時代は変わる 転がる石のように
     風に吹かれて
     花はどこかへ行ってしまった
     
     人々は黙り込み
     当局はほくそえむ
     庭付き一戸建ての四LDK
     あの頃 彼らが要求したのは
     そんな物でしかなかったのか
     
     戦争の無い世の中で 否
     戦争の隠された世の中で
     街頭募金のささやかな自己犠牲が
     全てを帳消しにしてくれる
     そういう 詐欺の時代を
     ぼくらはそっと 忍び足で
     横切ってきた
     
     だから J.M.
     ぼくは もう歌わない
     ただこうやって
     時代が腐っていくのを
     見送るだけだ
     
      めでたし めでたし
     
                         1985.7.29-30.
     
     

     
     
      遅 い 朝 に 
     
     
     前のめりに心が傾いていく朝に
     欲しかったのは
     いつか成就する夢でも
     理想でも
     まして 惚れた女の横顔でもなく
     あと半時間ほどの眠りだ
     どこぞにかさかさと
     積み重なる
     日常と自分とが擦れ合って削り落ちる
     日々の落片を今さら
     踏み越えた先に
     誰が待っている訳でもないと
     うすうす感じながら
     ひたすら貪る
     ささやかな惰眠だ
     やがて目覚め直す二度めの朝には
     人間になれるかも知れぬ− 
     はかない望みを抱いて
     胃を押さえ
     汗を流し
     背を丸めていつか心地よい
     浅い眠りだ
     
                          1986.10.11.



                                
     
      肖 像 
     
     
     闇の内に浮き上がった面立ちの
     眼のふちは厚くむくみ
     頬はぎこちのない曲線を描いて落ち込み
     どれほどにシェーバーを擦りつけても消えぬ
     貧しげな剃り跡は
     毛穴の数だけ黒々と− 
     白い のではなく
     脱色された肌はむらを伴って 荒れ
     乾き切った髪はつやを失って
     闇に溶け入ることすら
     拒まれている
     誰だ
     という問い掛けさえ空しい
     他人の振りをして目を逸らす
     これは 私だ
     かつて でもない
     やがて ですらない
     時間に閉じ込められた
     限定され 認知され 決定された
     今の私だ
     目を逸らして気が休まるほど
     利口に育った覚えはないと
     卑屈な笑いを浮かべる
     二十八歳の冬の私だ
     
                 1986.12.5. 1992.2.23. 加筆



     
      祝  詞 
     
     
     酔いに任せて
     身をコンクリートの壁に打ち付け
     二度三度と
     軽い脳震蕩のあと
     胃の中の全部を吐き出し
     汚れたセーターを拭って
     それも
     壁に擦り付け
     本当は
     泣いてしまえば良かったのだ
     あの時
     頭上を走り去る貨車の騒音に紛れて
     しかし
     痙攣を繰り返す胃の中から絞り出したのは
     苦い胃液と
     獣に似た唸り声だけで
     辛さににじみ出た涙に
     何ら同情の余地は無い
     
     本当は
     何になりたかったのだ
     お前
     
     壁に背を預けて坐り込み
     それでも
     笑うことだけは上手になったと
     褒めてやるにも
     深夜二時
     
                           1986.12.6.