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映画メモ 2006年3・4月

(劇場・レンタル鑑賞の記録、お気に入り作品の紹介など。はてなダイアリーからの抜書です)

ブロークバック・マウンテン / 理想の恋人.com / かもめ食堂 / サハラ 死の砂漠を脱出せよ / ダイヤモンド・イン・パラダイス


ブロークバック・マウンテン (2005/アメリカ/監督アン・リー)

アメリカ西部のブロークバック・マウンテンから始まった、二人のカウボーイの20年にわたる愛の物語。

役者の話からすると、私はジェイク・ギレンホールの顔がすごく苦手なんだけど、テンガロンハットをかぶったところはなかなか見ごたえがありました。ヒース・レジャーは、ぶーたれ風の口元に、わざとらしいほどの朴訥喋り演技がはまってた。
女優さんでは、ジャック(ジェイク)の妻を演じたアン・ハサウェイがとても良かったです。馬が大好きなお金持ちのお嬢様(ダイヤが並んだ蹄鉄型のペンダントをしているのが可愛かった)。ラスト近く、ジャックの死を知ったイニスと電話で話すときのマットな化粧顔の延々アップ、指についた赤いマニキュアの残骸が印象的。
イニス(ヒース)の妻役のミシェル・ウィリアムズは、私には、お気に入り映画「キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ!」でのキルスティンとのコンビが思い出ぶかい。忘れられない顔だよね。
それから、大好きなアンナ・ファリスが、お喋り女の役で出てたのには笑ってしまった。

次いで食事の話。冒頭からあれこれ出てくるけれど、初めての(「食べ物」ではなく)「食べる」シーンは、イニスが撃ったエゾシカをさばいて焼いたものを、二人でがっつく場面。
ちなみに鹿を撃つはめになった理由は、食糧担当のイニスが熊に遭遇して荷物をなくしてしまったから。ジャックは「羊を一匹撃っちまおう」と提案するが、イニスは「オレは豆でガマンする」。二人の性格はまったく違うけれど、人懐こいジャックはイニスの気持ちをときほぐし、狩もさせれば、生い立ちも告白させる。
閑話休題。一番印象的だったのは、真夜中のダイナーでイニスが一人つつくアップルパイ。皿に残ったパイ底の生白い部分は、最後にとってあるのか、残しちゃうのか、ともかく、彼はものをあまり美味しそうに食べる人ではない。でもそこへやってきた女性、かつて彼を愛した女性は、自分のつまらなさを自覚している男に対し、「女は面白いから惚れるんじゃないのよ」と言う。

二人の最後の逢引、最後の朝の会話。

「お前のせいでこんなになってしまった、オレは負け犬だ」
「何があったか、知ったらそのときはお前を殺す」


この映画を観て、二人が一緒に暮らせればよかったのになあ、という感想をもつのは、傲慢とまでは言わなくとも、何かもやもやしたものを感じさせる。
人によって愛のありかたは違う。何が幸せか、何が可能か、他人には分からない。生活を共にすることで、ときめきが失われたり、相手の嫌な部分が目につくようになったり、そういう理由からだけでなく、個人の嗜好や、病気と呼ばれてしまう性質、環境、状況から、あるいはそれこそ「物語に鍵をかけ」て慈しむことを選んだり、だから、求めながらも何もできない、しない場合もあるし、求め合いながら別れる場合もある。イニスの人生も、これはこれで、彼の人生なんである。つくづくそんなことを思った。


理想の恋人.com (2005/アメリカ/監督ゲイリー・デヴィッド・ゴールドバーグ )

30代の幼稚園教諭サラ(ダイアン・レイン)は、夫に出て行かれて8ヶ月。周囲に男を作るようしきりに勧められても、なかなかその気になれない。
ある日、業を煮やした姉のキャロル(エリザベス・パーキンス)が恋人募集サイトにサラを名乗って登録。幾人もの男と「初デート」をこなすうち、同じく「友達に勝手に」名前を語られたジェイク(ジョン・キューザック)と出会う。

最初から最後まで、ダイアン・レインがマーク・ウォルバーグに見えてしょうがなかったです。額のシワのせいかな。最近あらためて思うんだけど、私のアタマには、有名女優の顔といえども全く焼き付いていないことが多い。
サラの父のクリストファー・プラマーや、その恋人のストッカード・チャニングは、見たらすぐわかるんだけど。脇役が豪華でした。

…というのはともかく、すごく「めまぐるしい」雰囲気の作品でした。サラ宅に家族が押しかけ、独身、妻帯者、「もうすぐ独身になるかも」まで男を押し付けまくる…というオープニングからして気ぜわしいんだけど、その後もとにかく落ち着かない。ダイアンとジョンが初めて会うシーンも、二人の会話はフワフワ飛び交い、本人達も気付いて「仕切りなおしね」となるんだけど、やっぱりどうもダメ。そのまま最後までもつれこんじゃう。

夫と共に働いて買った一軒家に住むサラは、彼に出て行かれた後、食事は「胸肉一枚」を買って「台所で立って」すませるけど、おフロではティーセットや電話まで持ち込んでくつろいでいる。人によって、おざなりになっちゃうものと、どんなときでも大事にしちゃうものって、違うんだなあと、当たり前のことを思ったり。


かもめ食堂 (2005/日本/監督荻上直子)

出掛けてみたら初日だった。舞台挨拶があるの知らなかったし、あんなに混んでるとは思わなかったよ〜。うちらの後でちょうど「ここからは立ち見です」と切られてました。
ヘルシンキでおにぎりとコーヒーの店「かもめ食堂」を営むサチエ(小林聡美)のもとに、ミドリ(片桐はいり)やらマサコ(もたいまさこ)やらが居付いてしまうというお話。

はじめのうち、晴れ渡って明るい町、小林聡美の小奇麗な柄on柄の仕事姿(ブラウス+エプロン)に、カウリスマキファンの私はなんかなあ?と違和感を覚えてたのですが、そりゃあ私のほうが違うのであって(笑)たぶん実際に行ってみたら、少なくとも市場の様子なんかは、あんなかんじなんだろうな。マルック・ペルトラも、えらくさわやかな印象。

それにしても印象的だったのは、片桐はいりのでかさ。最初のうちは、右端の席に座ったから、スクリーン右手に映る片桐はいりが大きく見えるのかなあ、と思ってたんだけど、場面のどこへいってもでかい。ちいさな食堂がよりちいさく感じられる。
対して小林聡美は小柄で、いつも髪アップにしてるから、華奢なうなじが目立つ。彼女の話すフィンランド語も、骨細な人のそれ。むこうの女性(といって私が一番に思い出すのは勿論カティ・オウティネンなわけだけど)の喋り方ってやっぱり、もっと繰り出される感があるもんね。片桐はいりはフィン語、喋んないし…
食堂で作られるシナモンロールも、薄手の控えめなもの。アイシングもないの。もっともムーミンベーカリーに置いてる「シナモンプッラ」も似たようなカンジだから、あちらの感覚も似てるのかな。いずれにせよ食べてみたくなった。観る前にポップコーン買っちゃったんだけど、食べる気にならなかった、まあそういうカンジの映画でした。しずかな楽しさ。


サハラ 死の砂漠を脱出せよ (2005/アメリカ/監督ブレック・アイズナー)

劇場に行きそびれたのでDVD借りてきました。
アメリカ海洋機関のダーク(マシュー・マコノヒー)は、謎の男に追われていた女医のエヴァ(ペネロペ・クルス)を助ける。病原菌調査のためマリを目指す彼女は、南北戦争時に姿を消した「テキサス」艦の発掘に向かうダークと相棒のアル(スティーブ・ザーン)の船に同乗。しかし汚染は世界的な陰謀によるものであり、彼等の身には次から次へと危険が迫る。

原作を知らない私はもっと「砂漠」な映画かと思ってたんだけど(喉が渇いてしょうがないとか)、そうではなくて、海洋学者が世界危機を救う話でした。でも途中に出てきた、モカのアイスクリームをなでつけたような人工的な砂漠の風景はキレイだったなあ。
ほぼ全篇ハダカかタンク姿のマシュー・マコノヒーは、軽妙な不死身の男。追われる途中に壊れた飛行機をみつける「飛べ!フェニックス」的場面ががあるんだけど、どうするのかと思ったら、直すのはムリだから…と飛行機でウィンドサーフィンしながら逃げるの。

ワークパンツ履いて頭はドリフのマシュー・マコノヒーとペネロペ・クルスに対し、中間管理職的な悪役のランベール・ウィルソン(以前書いたけど私は彼のファン)は砂漠でも頑なにスーツ姿。カッコよかった。最後にはメガネ姿も披露してました。
でも一番美味しいトコどりだったのはマシューとスティーブの上司のウィリアム・H・メイシーで、サングラスかけて立ったり座ったりしてるだけなのに、最後には政府に新しい船まで買わせちゃう。いいなあ。


ダイヤモンド・イン・パラダイス (2005/アメリカ/監督ブレット・ラトナー)

これはよかった!ここ数ヶ月に劇場で観た中でいちばん面白かったです。
ちなみに新宿での上映は客席数44のピカデリー4、以前最後にここに来たのは「最‘狂’絶叫計画」だったっけ…

泥棒稼業をリタイアしたマックス(ピアース・ブロスナン)とその相棒で恋人のローラ(サルマ・ハエック)は、バハマで悠々自適の暮らしを送っていた。
しかしある日、マックスを追い続けてきたFBIの捜査官スタン(ウディ・ハレルソン)が現れる。これまで盗んできた「ナポレオンのダイヤ」最後のひとつが、近々やってくる豪華客船での展示会にかかるとのこと。平穏な生活をのぞむローラにクギをさされつつ、美しいダイヤモンドに心惹かれるマックス…

いかにも70年代のクライムムービー的なオープニング(でもさっさと終わる、クドくないの)に心浮かれてると、場面はバスケの試合会場へ。幾度となく観てきたよねこういうシーン…捜査官がのぞきこむ双眼鏡の中にはいかにもリラックスした表情で観戦するマックスの顔。勿論その後は、チームワークばっちりの華麗な泥棒プレイが楽しめます。
とはいえ泥棒プレイに関しては、冒頭のコレがいちばん面白くって、クライマックスの盗みは拍子抜けするほどあっさりしてるし、他にも緊迫感あふれる場面は皆無なのですが、どのシーンも適度に粋で、ダサくて、笑えて、観終わったあと、面白い映画ってこういうんだよな〜としみじみ。
女性二人のキャラクターは、固めであまり面白くないんだけど、「少女漫画の主人公はいい子」みたいなお約束で、これはこれでいいかな…

間抜けな捜査官役のウディ・ハレルソンがすごくよくって、ナチュラルボーンキラーズだったのが信じられないくらい(笑)私の中では出演作でベストになるかも。マックスと釣りに出かけた彼が「FBI」のキャップかぶってるのが可笑しくてしょうがなかった。
ドン・チードル演じる幼稚な「島の実力者」がクルマの中でママス&パパス聴いてるのも笑える。彼が連れてる二人の女もカッコ見ただけで可笑しいんだもん。

「これからあなたと私、年寄りになるまでこのデッキで夕陽をみるのよ」
原題は「After the Sunset」。高価なものを求めてきたが、ほんとうに欲しかったものは近くにあった…などとマックスが最後に語るのですが、え〜そんなんで終わっちゃうの?と思っていると、美味しいオチがついてて、満足。

(06/03/06・劇)



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