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映画メモ 2005年7・8月

(劇場・レンタル鑑賞の記録、お気に入り作品の紹介など。はてなダイアリーからの抜書です)

ウィスキー / ローカル・ヒーロー / ドッジボール / ボーイ・ミーツ・ラブ / おまけつき新婚生活


ウィスキー (2004/ウルグアイ-アルゼンチン-ドイツ-スペイン/監督フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール)

ウルグアイの町で靴下工場を経営するハコボの家に、ブラジルから弟のエルマンがやってきた。古参従業員のマルタは、妻のフリをしてくれとの頼みを受け入れる。
付け焼刃で夫婦を演じた二人だが、エルマンはお返しに彼等を海辺のリゾート地へと招待。三人の旅は静かに続く。

オープニングは、車高の低いらしいボロ車の中。建物がせせこましく並んで陽が当たらない通りをのろのろゆくんだけど、暗くて暗くて、でもさほど息苦しさは感じない。そして、車から降りた長身のハコボは、毎日朝食をとるカフェ(看板には「bar」の文字)で一言、「電気をつけてくれ」。主人はイスを持ってきて、頭上の蛍光灯をはめ直す。
見たところ大して明るくなってもいないんだけど、ハコボはパンを食べはじめる。彼のパンの食べ方は汚い。どのくらい食べようという意識もないらしく、適当に食べて適当に残す。
電気といえば、彼の経営する靴下工場も照明は蛍光灯のみ。スイッチを入れるとジーッと音がする。機械のスイッチを入れるとそっちもジーッ。女性従業員は気晴らしにラジオを入れる。「局替えていい?お喋りが面白いの」
ハコボは電気をすぐ消してしまう。マルタを家に呼んで部屋を見せてまわるんだけど、彼女が室内にいるうちに毎回電気を消してしまう。ようするに、あまりものを考えないタイプのようだ。

初老に差し掛かった三人のロードムービーですが、淡々と、でもわざとらしいほど色濃く、三人の個性があらゆるシーンに描かれています。

着たきり雀状態の兄に比べると、弟のエルマンはそれなりの洒落者で、伊達男。アタマが薄いのがいかにもそれっぽくて可笑しい。会話はあまりないけれど、兄弟だから、一緒にいるだけでいいのかな。兄のズボンは先が細くって、弟の革ジャンは肩がいかっている。
妻役を頼まれたマルタは、おそらく、華やかなデートなんてしたこともないような初老の女性。それがある日突然、男二人に挟まれてホテルに滞在するはめに。彼等が若くもカッコよくもなく、大して気もきかないというのがまたリアルで、彼女の心中を察してしまう…
ラストもえっ?というようなブチ切り方で、色々想像させられて、面白かったです。

「ウィスキー」というのは、ああそういう意味なのかと、みればわかる。かわいらしい映画でした。

(05/08/25・劇)


ローカル・ヒーロー (1983/イギリス/監督ビル・フォーサイス)

久々にお気に入り旧作映画の紹介。
(いま検索してみたら、いつの間にかDVDになってるらしい)

ヒューストンの大手石油会社が、コンビナート建設のため、スコットランドの漁村の買収を計画。さっそく社員のマッキンタイア(ピーター・リガート)が派遣されることに。天体観測マニアの社長(バート・ランカスター)は彼に彗星を見てくるよう声をかける。
マッキンタイアは支社のオルセンと交渉に向かうが、意外にも村人たちはすんなり話を受け入れる。

ようは「多忙な都会のビジネスマンが、田舎で真の人間の生活に触れて…」という話なのですが、全然説教くさくない。とくにビジネスマンの二人がエトランゼ的な体験をする前半は、夢の中のような雰囲気があって、何度見ても面白いです。そのうち二人とも、スーツを脱いで、セーターばかり着るようになって、ヒゲもそらなくなって、すっかり馴染んじゃうんだけど。最初のうちは、本社に「そっちはどうだい?」と電話をかけるも「君が行ってまだ2日だよ」などと言われ、「ずいぶん長く感じるな」と嘆いてるんだけど。
なにげないシーンのひとつひとつがすごく面白くって、たとえば、冒頭二人がクルマで村に向かう途中、霧に阻まれて一晩を道端で過ごし、翌朝目覚めたあと、外に出て足腰のばしたり…って説明しがたいけど、そういうのがいちいち心に残る。ちなみにこのシーンでは、ウサギがとても可愛いです。その後かわいそうなことになるんだけど(笑)
そうそう、相棒のオルセンは「日本語が話せる」ので、惚れた女(彼女の地味な美しさがいかにもイギリス映画らしくって良い)に海辺で日本語を教えるの。「タイヨウ」「サカナ」、これが「アシ」、そして「キス」…と、彼女の脚にキスをする。

役者全員の、とりわけ主役のピーター・リガートの無表情な演技も光ってます。その風貌はカッコよかったころのジェイムズ・スペイダーから輝きを取り去ったような…って見れば分かる(笑)実際この映画がアメリカで作られてたら、彼が主演でもおかしくない、でもって、冒頭の彼のビジネスマンぶり(ヤッピーぶり)は、もっといやらしく強調されてるに違いない。いや、ハリウッドならやっぱりマイケル・J・フォックスかな?「ドク・ハリウッド」ってこんなカンジの話だもんね。

最後、マッキンタイアはヒューストンの自分の住処に帰るのですが、いかにも中堅独身ビジネスマンらしいごちゃごちゃした部屋、窓からは、大都会ってほどでもないけどビルの明かりが見えて、私ならやっぱりこっちがいいけどなあ、なんて思ったりして。
詳しくは述べませんが、さらっとしたラストも、エンディングに流れる曲(音楽担当のダイアー・ストレイツによる)もよくって、観終るとああ映画っていいなあ、と思わせられます。


ドッジボール (2004/アメリカ/監督ローソン・マーシャル・サーバー)

「アメリカではバカでも出世できる」という話、ではなくて…
とある街角に、超有名フィットネス・ジムと零細ジムが並んでいた。後者はオーナー・ピーター(ヴィンス・ボーン)のお人よしとやる気の無さが災いして、隣のグロボジムに買収される寸前。常連客の提案で、優勝賞金目当てにドッジボール大会に出場することとなるが、グロボの経営者・ホワイト(ベン・スティラー)もチーム「紫コブラ」を組んで立ちはだかる。

ヴィンス・ボーンが常識人の役で、新鮮でした。ふつうにカッコよかった。ベン・スティラーは毎度のことながらキャラしっかり作っててエライ。
それにしても、クリスティン・テイラーは髪おろしてるときはそうでもないのに、お下げにするとなぜあんなに長くなるのか…

ちなみにこの映画、「ギャラクシークエスト」の出演者が二人ばかり出ています。キワメイクしてたり年とったりで名前見るまでわかんなかった。アメリっぽい宇宙人女性を演じてたミッシー・パイル(素顔はこんなカンジ)が→ロシア出身の女性選手に(このキャラ、少女漫画読みなら有閑倶楽部に出てくるロシアのスパイ・モルダビアを思い出すんじゃない?)、PCを通じて協力するオタク少年のジャスティン・ロングが→チアリーディングをやる少年に。この二人のからみ、もうちょっと欲しかったなあ。

余談だけど、私は小学校に勤めてるんで、ドッジボールに結構縁がある。といっても自分は生き物の世話から遊びまで、何でも子どもにまかせて「へー」と見てるんで(だってわかんないんだもん!)、いまだにルール知らないけど。
(そもそもドッジボールにはローカルなルールが多数存在するらしい。いちおう日本のドッジボール協会が定めた公式ルールはコチラ
日本の子どもがやる「ドッジボール」は勿論この映画とはずいぶん違うけど、私の時代(20年前)とも結構違ってて、そうそう、大体体育の授業だって「ラジオ体操」やらないもん。私のころは体育といえばまずラジオ体操やって、馬とびやって(自分の番のときだけ全員に頼んで馬低くしてもらってた、めんどくさかった)…だったけど、いまじゃあストレッチでかるく身体ほぐすだけ。それも(私の授業じゃ)得意なコ前に出して適当にやらせてるし。最近の子はいいねほんと(笑)えーとドッジボールについては、昔より激しくなってるんじゃないかな?なんか話がそれてきたので、これで終わり…


ボーイ・ミーツ・ラブ (2004/カナダ-イギリス/監督ジミ・ミストリー)

インド系青年アリム(ジミ・ミストリー/「踊るマハラジャ・NYへ行く」の主役)は、ロンドンでボーイフレンドのジャイルズと暮らしている。故郷を出てトロントで一旗あげた両親は、そろそろ孫の顔でも見たい年。従兄弟のカレドの結婚を機に、アリムの母ヌルも、息子をせっつくためロンドンにやってきた。

これは良かった!映画って、他愛ないハナシでも、すごく雰囲気がよくって、ああ観てよかった〜というのがたくさんあるけれど、この作品は、冒頭からそんな予感でいっぱいに。
物語は、カイル・マクラクラン演じるケイリー・グラントが観客に語りかける場面から始まります(ちなみに本作の原題は「Touch of pink」、つまりケイリー主演の「Touch of mink」のもじり。しょうもない邦題のせいで手に取る人が減ってしまう…)。「?」と思っていると、このケイリー・グラントは、幼いころ母親に捨てられた(と思っている)アリムが、観まくった映画をもとに作り上げた想像上の存在。ことあるごとに現れては彼に助言してくれるんだけど、このマクラクランが上手い&笑える。風呂場でアワアワになってたり、「インドの結婚式だから」と象連れてきたり。

主役のゲイカップル(写真)もいいカンジなんだけど(二人とも首がしゃんとしてて、黒髪と金髪、顔立ちの組み合わせも妙)、まわりの身内も皆、味があって。
母親のヌルは、一見、いわゆる「勝ち組」になることしかアタマにない女性のようにみえるんだけど、話はそう単純ではない。「ルームメイト」と紹介されたジャイルズがロンドンの町に連れ出すと、ウィンドウをみて(このウィンドウが赤いディスプレイで、私は赤いウィンドウにちょっとした思い出があるので、しみじみしてしまった。余談でした)「ずっとスーツにあこがれてた」なんて言う。着てみたらすごく似合って、そのままジャイルズと踊りに出かけ、「息子に嫌がられるから」と言いつつお酒をたしなんだりする。かつて「何十年も前のだなんて知らずに」故郷の映画館でハリウッド映画を観、白人社会にあこがれた彼女は、若くしてロンドンに出てきたものの、「インド人のドリス・デイなんて馬鹿にされるだけ」と、イスラム社会にひっこんでしまったのである。なにかというとふるいモノクロ映画で心を落ち着ける息子に苛立ちをぶつけるのには、そういう背景がある。

(すみません、途中で切れてしまった…)


おまけつき新婚生活 (2003/アメリカ/監督ダニー・デヴィート)

作家のアレックス(ベン・スティラー)と編集者のナンシー(ドリュー・バリモア)はニューヨークに暮らす新婚カップル。ブルックリンの豪華な二世帯住宅(原題「Duplex」)を手に入れるが、2階に陣取ったコネリー夫人は相当な曲者で…
監督ダニー・デビート、といえば想像つくとおり、軽いブラックコメディです。

冒頭、アニメーションで幕を開けるのですが、ドリューの顔は、アゴがちゃんと?二重なの。でもやっぱりカワイイ。
これはチャリエン・フルスロットルの次に撮られたそうだけど、作中二階に忍び込む場面では、エンジェル時の彼女を思い出しちゃった。
でもって、冬のハナシなんで、ベンとドリューが買物などする場面を見つつ、ああもう夏にも飽きたなあ、やっぱり二人で歩くなら寒い時季だよなあ、コート着た男の人の腕にぶらさがるの大好き…と思ったり。
ドリューのマフラーがどれも可愛かったです。今回はパンツばかりだったけど(膝下でさえ一度も見せなかったんじゃないかな)、職場での白いシャツも、レストランでのざっくりめのセーターも、すてきだった。

たとえばお店でお茶でもおひるでも注文して、全然こないとき、一緒にいる男の人はどういう態度に出るだろう?こっちが困っちゃうくらい当り散らす人は言語同断。あっちもこっちも立てつつ、トラブルに対処するのってたいへんだ。
この話のベン・スティラーは、まあ普通の男性である。ドリューのほうは結構寛大で、夫がとんでもないヘマ(ばあさんのテレビの音量が凄まじいので、手を叩くと電源が切れるセンサーを取り付けに忍び込むんだけど、説明書付の箱を置き忘れてきてしまう)をした後も、ちゃんと彼のほうを向いて眠る。私だったら…いや、そういうときだからこそ、いちおう、彼の手やら何やら、握って眠るかな(笑)

イジワルばあさん役のアイリーン・エッセルの顔も、すごくよかったです。少々下品なネタがあるので、ゴハン食べながら見たらツライって人もいるかな…

最後に余談だけど、私が、この映画観ながら思い出したもの→大島弓子の「ノン・レガート」(宝くじを当てて高級マンションを購入したが、まわりの老人軍団に困らせられる少女の話)/以前も好きな映画として書いたけど「ニューヨークの亡霊」(これも出版社に勤めるジェイムズ・スペイダーが購入したアパートに、マイケル・ケイン&マギー・スミスの亡霊カップルが住んでたという話。巻尺持って立ち尽くすスペイダーがカワイイ←まだギリギリ可愛かったころ・笑)

(05/07/24・劇)


表紙映画メモ>2005.07・08