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■ 少女漫画に出てくるロックバンド

「ロックバンド」ものの少女漫画を紹介するコンテンツを作るつもりだったのですが、なかなか手がつけられないので、差し当たり、こんなものを作ってみました。
なぜ手がつけられないかというと、切り口が多すぎるから…ロックバンドの出てくる少女漫画はたくさんあります。音楽もの、芸能界もの、そうでないもの。男オンリーのバンドが主役のもの、主人公の女の子がバンドに加わるもの、部外者としてバンドマンと恋するもの。
ここでは、漫画における「音楽」「ロック」「バンド」の比重に関係なく、バンドっぽい匂いのするもの、作者がロック好きなのが伝わってくるもの、などを幾つか選んでみました。昔のばかりなのは、自分の年代にもよるし、少女漫画とロックの蜜月はやはりこのころだと思うので…(ロックをやる男の人が、少女にとって無条件で「カッコいい」時代だったと思うので…)


山岸凉子 「ル・コック」('74)

異母兄を慕う美少年、ミシェル・デュトワが主人公の連作もの第3話。他の話の前フリとなる一編で、ミシェルがピアノの腕を買われてバンドに誘われる。山岸凉子がバンドの演奏シーンを描いたのってこれくらいじゃないかな?貴重だと思うんで掲載。
この作品、いまでは入手困難かと思いますが(角川全集の「グリーン・カーネーション」ならたまに古本屋に置いてあるかも)、あらためて読むととても面白い。山岸凉子は初期の頃から「同性愛」ものに進んで取り組んでおり、「白い部屋のふたり」('71)は漫画で初めて少女同士の恋を描いた作品。話それましたが。


青池保子 「イブの息子たち」('76〜)

いまさら説明するのも何ですが、タイプの違う美青年三人組が異次元にトリップして歴史上の有名人と騒動を起こす連作もの。メンバーの一人、ジャスティンの職業?はロックバンドのボーカリストなので、この世に戻ってきた折には、たまにライブやってます。ピアニストのヒースはキース・エマーソンがモデルで、バイクに乗ったりピアノ壊したりしてる。
パタリロやコレのように時事ネタのギャグがバンバン出てくるのって、後年初めて読むのはキツイかもね。私はそういう漫画、潔くって好きですが…


くらもちふさこ 「わずか1小節のラララ」('76)

くらもちふさこも初期は音楽モノが多いけど、バンドものといえばこの蘭丸団シリーズ。
地味で無口な「ミスでくのぼう」が、メガネを取れば、学校のアイドル「蘭丸団」のギタリスト・佐藤ちゃんにそっくり!はじめはケガした彼の代理として、それから、ピアノ弾けるんだ、じゃあ一緒にバンドやらない?変わり者の代理ドラマーとの可笑しな軋轢、他の女のコの出現に対する戸惑い、そしてクライマックスはやっぱりコンテスト!ライバルの陰謀で、一拍くるったら彼が感電しちゃう、大ピンチ。
デビュー当初から、さりげない心情描写が冴え渡ってます。


一条ゆかり 「星降る夜にきかせてよ」('77)

「ときめきのシルバースター」('79)も音楽もの…というか芸能界ものですが、こちらのほうがバンドっぽいので。
学園の女のコのハートを一手に引き受けるバンド「ペニーレイン」。そんなの私は興味ないわ!だけどある日、寮を追い出されて迷い込んだのは彼等の暮らす大きなおうち…というおハナシ。おおやちきの「おじゃまさんリュリュ」とちょっと似てるかも。
一条ゆかりは音楽もロックもそれほど興味なさそうだけど、さすがに何描いても率がなく、美少年バンドをキラキラ仕上げてます。


小野弥夢 「ロックンロールペテン師」('77)

小野弥夢といえばバレエ・オペラ漫画、いまはレディス系なんかを描いてますが、初期の短編は「ロック好きなんだな…」というのがひしひしと伝わってくるものばかり。このデビュー作は、ブラコンの女のコがボーカリストのお兄ちゃんのためにライバルバンドに潜入するが、ギタリストと恋におちちゃって…というお話。これがデビューとは思えないほど面白い。
ちなみに収録単行本の表題作「ショパンに捧げるロックンロール」は、クラシック好きな女の子とロックな男の子の恋の顛末。トラブルを経た末、ぼくらは違うからこそ面白いんだ…という話は結構色んな人が描いていて、たとえば小椋冬美の「ラヴァーズ・コンチェルト」('80)も似たようなカンジ。
その他「陽水」という名の歌手が出てくる連作「風街ロマン」「センチメンタル・シティ・ロマン」なんていう作品もあります。


森脇真末味 「おんなのこ物語」('81〜)

「バンドの話ですが、いわゆるロック漫画ではない(略)観念的なテーマはナシ、アートの世界とは無縁(略)カルチャーより、人間の心の軋轢や動きに興味があった」 (中公愛蔵版の作者前書きより)
タイトルは「女の子が出てくる漫画を」と編集部に言われて付けたらしいけど、「おんなのこ」は…あまり出てきません(笑)とにかく、メンバーのキャラクターとその関係描写がキモ。私にとってロックとは、バンドとは、見て感じるものであり、やるものではないので、少女漫画としてもそういう目線を求めてしまうんだけど、これはドラマとして面白い。
ちなみに、ライブハウスでケガをした八角が運ばれた病院の孫娘(オジイチャン先生に「絵描きさんになれるね」と誉められる)は、当時の親友・高橋由佳利がモデルと思われます。互いの作品をちょくちょく手伝っていたようで、「おんなのこ〜」の前作「緑茶夢」の番外編「笊のような神経」には、下記「プラスティック・ドール」のマリエのポスターが出てくる。絵柄全然違うんで、ちょっと浮いてるのですが(笑)


高橋由佳利 「プラスティック・ドール」('82〜)

全然バンドの匂いなんてしない芸能界モノですが、森脇真末味つながり&私が好きなので。高橋由佳利の「りぼん」時代最長の連載作(といっても新書版で全3巻。当時はそんなものだった)。
17歳のシンガーソングライター・マリエと、彼女を追いかけ?芸能界に入ったものの振り回されっぱなしの篤郎の恋物語。日本全国を股にかけた芸能界モノなのに、どことなく漂うお茶の間感覚(笑・そういうとこが好き)。子供のころは、マリエのマネージャーの降ちゃん・黒サングラスの27歳、がお気に入りでした。
二人ともソロシンガーですが、マリエがスーパーバンドに参加するくだりがあるので、画像はそこから。
(余談ですが、この作品を知ってる人が塩森恵子の「とびきりとばしてミッドナイト」を読むとちょっとびっくりするよ…(描かれたのは塩森恵子のほうが先))


山下和美 「カーニバル」('82〜)

ぶ〜けでの「私が愛した悪魔」、ヤングユーでの「ゴースト・ラプソディー」、モーニングでの「ROCKS」などなど、山下和美のロックものはたくさんありますが、今回はデビュー数年後にマーガレットで描かれた一番最初のバンドものを。まだまだ青臭いですが(主人公の一人称は「あたい」だし)、少女漫画としては正統派な一作。
恋仲の二人が人気ロックバンド「カーニバル」のメンバーとして共にがんばるお話。活動の場はイギリスまで広がるのですが、うーん、80年代の音楽(芸能界)ものって唐突に外国進出するパターンが多いけど(総領冬実「THREE」など)、今読むとそこんとこは気恥ずかしい…


多田かおる 「愛してナイト」('82〜)

This is 少女漫画。彼女の漫画は決して憎めない!ただそれだけ。


小椋冬美 「さよならなんていえない」('83〜)

本人は後にいわく「バンドものって描くのが恥ずかしい」。
というわけで、音楽ものではありませんが、「りぼん」時代の代表作を。家庭の問題により心を閉ざしていた美少年・隆生が、主人公・麻美との交流や仲間とのバンド活動を通して素直になってゆく物語…と書くと死ぬほど陳腐だけど、何が起こるわけでもない青春のひとコマが情緒ゆたかに描きあげられています。80年代の東京郊外の雰囲気も味わいぶかい。
このバンド、メンバーの雰囲気がバラバラで、どんな音楽やってるのかいまいち想像できないのですが、とりあえず、隆生を引き込んだ幼なじみはストレイキャッツなどが好きなよう(バンド名は「ロッキン・ストリート」というダサ可愛さ)。ちなみにライバルバンドの美形ボーカリストのモデルは陣内孝則。


紡木たく 「机をステージに」('85)

当時は紡木たくって全くなじめなかったのですが、今になってみると素直に読めます。ひとめでそれとわかる紙面はやっぱりすごい。
私は彼女の功績のひとつは、高口里純と並んで「一重まぶたの男の子・女の子でも美形でありえると表現した」ことだと思ってます。土着のよさ。音楽だって、洋モノじゃあ全然なくて、ほんとにそのへんの中学生がやってる、生活感ありまくりのロック。震えがくるくらい身近。
ちなみにこの作品が描かれたのは「ホットロード」の前、85年。バンドブームの夜明け前。バンドやってる中学生ってまだそれほどいなかったように思うのですが。
(しかしバンド名が「マーガレット」(=掲載誌別マ)って…カワイイ)
紡木たくといえばいくえみ綾につながってくけど、彼女の作品にも音楽・バンドネタたくさんあるけど(「うたうたいのテーマ」など)、そのへんからは省略…



(2005/02/10)


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