遅咲きの桜
サクラローレル


サクラローレル 天皇賞・春

有馬記念

中山記念

オールカマー

金杯(東)





日本:21戦9勝
海外:1戦0勝
競走成績

王座譲渡・第113回天皇賞

 平成8年4月21日、春の天皇賞は三冠馬ナリタブライアンと年度代表馬マヤノトップガンの対決に沸いた。ナリタブライアンは前走の阪神大賞典でマヤノトップガンとの死闘の末に1年ぶりの勝利を収めており、3頭目の5冠に向けて倒す敵はマヤノトップガンただ1頭だと思われていた。レース前にまさかこの2頭をまとめてちぎり捨てる馬がいようとはほとんど誰も思わなかった。
 2週目の坂の下り、予定通りナリタブライアンとマヤノトップガンが馬体をあわせて先頭に立ち、場内のボルテージは最高潮に達した。そして直線に入り、ライバルのマヤノトップガンを競り落としたナリタブライアンはあとは念願の天皇盾へ向けて、5冠へ向けてゴールへと突き進むだけであったが、その背後から前脚を高くあげるダイナミックなフットワークで猛然と襲いかかってきた馬がいた。前走中山記念で13ヶ月ぶりの9番人気ながらものすごい豪脚でジェニュインらを一気に切り捨てたブライアンの同期の桜・サクラローレルであった。サクラローレルはナリタブライアンを並ぶまもなくあっという間にかわすとそのまま2馬身差をつけてゴールへ飛び込む。場内から上がるああっという悲鳴の中、サクラローレルの鞍上横山典弘の左手が天高く突き上げられた。かつてナリタブライアンと同期ながら弱い体質のためクラシック路線を歩むことができず、三冠街道を驀進するナリタブライアンを横目で見るしかなかった遅咲きの桜・サクラローレルが現役最強馬の座を力づくでナリタブライアンから奪い取った瞬間であった。

弱い体質・本格化も

 サクラローレルは凱旋門賞馬レインボウクエストの持ち込み馬としてそれなりの期待を受けて4歳の1月にデビュー戦を迎えたが、ソエの影響などもあり9着に敗れた。3戦目の未勝利でようやく勝ち上がったもののそのあとは条件戦で惜敗・惨敗を繰り返すまさにそこらへんにいるただの馬であった。ただ、青葉賞で3着するなど所々でその能力の片鱗を見せてはいたが、慢性的な脚部不安がその能力の開花をどんどん遅らせていた。そしてようやく本格化の兆しを見せてきたのが4歳秋からである。もう既に菊花賞は終わり、ナリタブライアンが三冠を達成してしまっていたが、ローレルはここから条件戦を含めた3連勝で念願の初重賞金杯に勝利する。その勝ちっぷりは鮮やかで、陣営は春の天皇賞を意識するようになった。こうしてサクラローレルは徐々にその能力が全開になりつつあったものの、次の目黒記念で鞍上の油断により2着に敗れ、その後両前脚深管骨折という重傷を負い、春の天皇賞はおろか1年以上の休養を強いられることになってしまった。「無事ならば春の天皇賞を勝っていた馬だ」そう言っていた小島騎手の言葉は幻となり、その言葉は1年という長いブランクの間に忘れ去られてしまっ ていた。
 6歳になった中山記念、13ヶ月という長いブランクを経てターフに戻ってきたサクラローレルだったが、長期休養開けでメンバーもそろったここでは9番人気。しかし1年という時間はサクラローレルからひ弱さをなくし、そのパワーを熟成させるには十分なものだった。直線だけで他馬を一気にごぼう抜き。レース前には忘れ去られていた馬がレース後一気に天皇賞の有力候補に数えられるようになっていた。思えばこの中山記念からサクラローレルの王道は幕を開けたと言ってもよいだろう。

最強馬の証明・そして海外へ

 ナリタブライアンを倒し、天皇賞のタイトルを手に入れたサクラローレルは春秋連覇を目指してオールカマーから始動した。ここはマヤノトップガンとの一騎打ちになったが、ふがいないトップガンに対してサクラローレルは堂々と抜け出し完勝。秋の天皇賞はサクラローレル絶対のムードが漂った。しかしその秋の天皇賞で鞍上横山の騎乗ミスで前が壁になり続けるアクシデントに遭い無念の3着。取れるはずのビッグタイトルをまんまと天才4歳馬バブルガムフェローに奪われてしまった。陣営は雪辱に燃え、必勝を期すためジャパンカップを見送って有馬記念1本に絞って調整を続けた。この年の有馬記念はサクラローレルにマヤノトップガン、そしてマーベラスサンデーにJC2着のファビラスラフイン、そして女傑ヒシアマゾンと近年希にみる豪華メンバーの有馬記念となったが、サクラローレルは食い下がるマーベラスサンデーをいとも簡単に振り切ってぶっちぎりでゴールに飛び込んだ。「最強」ということを万人に力づくでなっとくさせた、そんな有馬記念であった。
 年度代表馬に選ばれ、国内では疑うものなき最強馬となったサクラローレルは、現役最後の年の目標を凱旋門賞制覇に置いた。シンボリルドルフ以来の最強馬による海外遠征である。陣営はじっくりと調整に入り、国内最終戦として天皇賞・春を選んだ。ここで天皇賞・春連覇を手土産にフランスへと旅立つという青写真ができあがっていた。しかしこの天皇賞ではここで意地でもサクラローレルを倒さねばならないマヤノトップガン・そしてマーベラスサンデーがサクラローレルの相手として立ちはだかり、堂々マッチレースを挑んできたマーベラスは何とか退けたものの、これまでにない豪脚を繰り出したマヤノトップガンには叶わず2着と敗れた。しかしこの敗戦はマヤノトップガンの評価をサクラローレルと同等まで押し上げることはあっても、サクラローレルの評価を下げることはなかった。事実堂々勝負を挑んで差し返されたマーベラス陣営は「ローレルは化け物だ」と舌を巻いている。残念ながら天皇賞連覇はならなかったが、予定通りサクラローレルはフランスへ向けて旅立った。
 しかし運命とはこうしたものだろうか。凱旋門賞の前哨戦に選んだフォワ賞でサクラローレルは8頭立て8着のしんがり負け。レース中に右前屈腱断裂を発症してしまい、即引退が決定。凱旋門賞挑戦の夢は幻に終わってしまった。かつてシンボリルドルフが海外初戦で故障・引退に追い込まれたのと同じようにサクラローレルも同じ道を歩むことになってしまった。時を同じくしてマヤノトップガンも屈腱炎発症・この2頭のライバルはほとんど時を同じくして引退が決定した。
 
 サクラローレルが活躍した年の古馬のレベルは相当に厚く、ナリタブライアン・マヤノトップガン・そしてサクラローレルという3頭の年度代表馬の戦いが何度も実現した競馬史上でもきわめて希なハイレベルの年であった。そんな時代にチャンピオンとして君臨したサクラローレルは歴代の名馬の中でも最強馬の1頭に数えられても良い馬である。ただ一つ、脚部の不安さえなければ海外での勝利を含め、もっと素晴らしい成績を残せたかもしれない、その点だけが残念である。やがて生まれてくる子供たちにその足下の弱さが伝わらなければと願う次第である。

サクラローレル 牡 栃栗毛 平成3年〜

生産地・生産者 北海道静内 谷岡牧場 総収得賞金 625.840,000円
馬主 (株)さくらコマース 繋養地 北海道静内 静内スタリオンステーション
調教師 境勝太郎、小島太 主な産駒
騎手 横山典弘、小島 太、オリビエ・ペリエ、的場 均、武 豊


Rainbow Quest
(鹿 1981)
Blushing Groom Red God Nasrullah
Spring Run
Runaway Bride Wild Risk
Aimee
I Wish Follow Herbager Vandale
Flagette
Where You Lead Raise a Native
Nobless

ローラローラ
(栗 1985)
Saint Cyrien Luthier Klairon
Flute Enchantee
Sevres Riverman
Saratoga
Bold Lady ボールドラッド Bold Ruler
Misty Morn
Tredam High Treason
Damasi