美しきマイル飛行
ノースフライト


ノースフライト 安田記念

マイルチャンピオンシップ

阪神牝馬特別

マイラーズC

府中牝馬S

京都牝馬特別

11戦8勝
競走成績

ファンの多い「フーちゃん」

 ノースフライトはファンの多い馬である。担当の女性厩務員・石倉厩務員が呼んでいたように「フーちゃん」と呼ばれ親しまれ、今でも牧場を訪れる人も多いという。
 競走馬の故障が極めて多い昨今、有力馬の引退はそのほとんどが屈腱炎などの故障によるものであり、その引退が惜しまれるほどのピークで引退するものもほとんどいない。(ダンスインザダークやマヤノトップガンなど最高のレースが偶然最後のレースになる場合はあるが。)かつてシンザンは国内の大レースの全てを制し海外遠征もという声もあったが、競走馬の引き際を間違えてはならないという武田文吾師の信念により惜しまれながら引退した。そしてマイルの女王として自分の適正にあったレースのみを使われ、完璧な成績を残してわずか1年半ほどの競争生活でターフを去ったノースフライトも近年では珍しい名馬らしい名馬であり、彼女に今なおファンがたくさんいるのはそのためであろう。

2頭のベガとの激突

 ノースフライトのデビューは遅く、4歳の5月、新潟の未出走戦であった。このレースを直線だけで9馬身差をつけて圧勝すると、2戦目の足立山特別も乗り代わった武豊鞍上で圧勝した。目指すべきクラシックは既に終わっていたので、ノースフライトとは残る牝馬三冠最後の一冠・エリザベス女王杯を目指して調整され、必勝を期して秋分特別に出走した。しかし絶対勝たなければいけないこのレースでノースフライトは5着に敗れてしまう。もうエリザベス女王杯まで時間もなく、出走できる賞金もかせいでいない。
 陣営は一か八かで古馬牝馬重賞の府中牝馬Sに挑戦させることにした。しかしたった2勝しかしていないノースフライトはこのレースにすら賞金が足りず出走取り消し待ち。出走できる保証すらまるでなかったが、陣営は騎手も決まらぬままノースフライトを東京に輸送した。すると運が味方したのか取り消す馬が出てノースフライトは何とか出走する事ができた。4歳の2勝馬のノースフライトのハンデは50キロと軽量。鞍上にはそれまでの武豊に変わって角田騎手。急にノースフライトに乗ることになった角田騎手は普段の体重が51キロ。ノースフライトに与えられた50キロというハンデに見合うだけの体重に落とすのに苦労したという。
 ともあれ府中牝馬Sに出走できたノースフライトは古馬相手に直線馬群の真ん中を鮮やかに抜け出して完勝。重賞を制したことで賞金も上積みされ、はれてエリザベス女王杯に出走できた。ノースフライトは5番人気。牝馬三冠のかかったベガら強豪が相手では1頭の挑戦者に過ぎなかった。
 レースは直線にはいってベガらが大外から追い込んでこようとする中、ノースフライトは内から抜け出して一旦先頭に立った。しかし最内から後の砂の女王・ホクトベガが使ったこともないような末脚を披露してノースフライトを交わし1着でゴールした。今思えばホクトベガとノースフライトという希代の名牝2頭で決まったこのレースだったが、当時2頭ともほとんど評価されておらず、馬連25,650円の大波乱であった。惜しくもビッグタイトルを逃したノースフライトはこの後マイル路線に目標を定め戦うことになる。

安田記念で外国の強豪を撃破

 暮れの阪神牝馬特別で同期のベストダンシングを破ったノースフライトは年明け同じく牝馬限定のマイル戦・京都牝馬特別に出走、ここも難なく圧勝した。そして、春のマイルG2マイラーズCに挑戦した。ただマイラーズCとはいうもののこの年は中京競馬場で行われたため1600mではなく1700mでの実施だった。このレースにはこの年の秋天皇賞を勝つネーハイシーザーと、JCを勝つマーベラスクラウン、そして両マイルG1を勝つノースフライトという後で考えればそれは豪華なメンバーが出走していた。この2頭の強豪相手にノースフライトは直線まずネーハイシーザーを競り落とすと、追い込んでくるマーベラスクラウンを楽々抑え重賞3連勝を飾った。次は春の最大目標・安田記念である。
 しかしこの年の安田記念はかつてないほど強豪外国馬が来日し、前哨戦の京王杯スプリングCは武豊のスキーパラダイスを先頭にザイーテン・サイエダティ・ドルフィンストリートと上位4頭はみんな外国馬で占められてしまっていた。さらに最強スプリンター・サクラバクシンオーなどもおりノースフライトは5番人気にすぎなかった。ノースフライトの主戦武豊はスキーパラダイスを選び、またしても角田騎手に代打騎乗がまわってきた。余談だがノースフライトはどうも武豊騎手と巡り合わせ的にあわなかったようだ。武豊騎手が他の馬を選んだとき決まってノースフライトの方が好走しているし、唯一5着に沈んだレースもやはり武騎手だ。まあ武騎手が下手ということはありえないので、ノースフライトにとっては角田騎手のほうがただ巡り合わせなどの相性が良かったということだろう。
 外国馬圧倒的有利の風潮で始まった安田記念だったが、ノースフライトは大外からサクラバクシンオーや強豪外国馬達をかわし、1着でゴールに飛び込んだ。そして2着も最後方をぽつんと進み、直線一気に追い込んできた日本の牝馬トーワダーリンで、終わってみれば日本の、しかも牝馬のワンツーという意外な結果に終わった。担当のにとっては初のG1制覇であり、女性厩務員によりG1も史上初のことであった。

ベストマイラー対ベストスプリンター

 安田記念を制したあと放牧に出たノースフライトは秋の目標をマイルチャンピオンシップに定め、スワンSから始動した。すでに秋はこの2戦を最後に引退・繁殖入りを決めてしまっていたノースフライトだったが、残された秋2戦はいずれもサクラバクシンオーとの一騎打ちとなった。スワンSは1400mという距離のためノースフライトよりも生粋のスプリンター・サクラバクシンオーの方が適正に勝り、レコードで駆けるバクシンオーの前にノースフライトは2着に敗れた。そして目標であり、引退レースとなるマイルCSを迎えた。前走でバクシンオーに敗れたにも関わらずマイル適正を評価されたノースフライトは1番人気。そしてレースでも文句のつけようのない完璧なレースを見せた。直線に入り、先に抜け出したサクラバクシンオーに並びかけたノースフライトは、執拗に粘るバクシンオーを突き放して後続には付け入る隙すら与えずレコードでゴールした。このレースを圧勝したことで生涯マイル戦は5戦5勝。文句のないベストマイラーに輝いた。そして予告どおりこのレースの最後に引退、現在は故郷の大北牧場で繁殖生活に入っている。そしてライバルのサクラバクシンオーも次走のスプリンター ズSで後続を2馬身半突き放し、1分7秒1という驚異的な日本レコードで圧勝、こちらもこの勝利を最後に引退した。

 今年の3歳にノーザンテーストとノースフライトとの間の子がおり、デビューの時を待っている。この子が走るかどうかはまだやって見なければわからない。しかし昔から言われていることに競走であまり使われずに繁殖入りした馬ほど走る子を出しやすいというのがある。一概にそうではないとは思うが、余力を十分に残して引退したノースフライトの仔が活躍する日が来る確率はとても高いのではなかろうか。
ノースフライト 牝 鹿毛 平成2年〜
生産地・生産者 北海道浦河 大北牧場 総収得賞金 458,094,000円
馬主 (有)大北牧場 繋養地 北海道浦河 大北牧場
調教師 加藤敬二 主な産駒
騎手 角田晃一、武 豊、西園正都


トニービン
Tony Bin
(鹿 1983)
カンパラ Kalamoun ゼダーン
Khairunissa
State Pension オンリーフォアライフ
Lorelei
Severn Bridge Hornbeam Hyperion
Thicket
Priddy Fair Preciptic
Campanette

シャダイフライト
(鹿 1973)
ヒッティングアウェー Ambiorix Tourbillon
Lavendula
Striking War Admiral
Baby League
フォーワードフライト Porterhouse Endeavour
Red Stamp
Bashful Girl Khaled
But Beautiful