| 日本競馬史最初の名馬 |
| コイワヰ |
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帝室御賞典(東京) 帝室御賞典(横浜) 優勝戦25勝 82戦45勝 競走成績 |
馬券禁止時代の名馬
顕彰馬で最初に取り上げられているのは第8回のダービーを勝ったクモハタであり、日本の名馬史はそこから始まったような印象を受ける。しかしクモハタ以前にもダービーは行われており、またダービーが行われる昭和7年以前にも各地で競馬は行われていた。ということは秀でた能力と成績を残し、名馬と呼ばれても良い馬もいたはずである。
今回取り上げるコイワヰはそんなダービーもなかった時代、江戸時代終わりより始まった日本近代競馬史において最初に取り上げられるべき名馬である。
日本で近代競馬が始まったのは江戸時代終わりの文久元年(1861)、横浜で居留外人が行ったのが始まりとされている。その後軍馬の改良という大義名分のもとに明治39年から日本人による近代競馬が始められ、全国各地に競馬場が作られてたちまちのうちにブームになった。しかし馬券によって身を持ち崩す者も少なくなく、始まってからわずか2年で馬券発売の禁止が決定された。
しかし競馬そのものが禁止されたわけではなく、入場者激減、賞金の減額など厳しい状況ながら政府から補助金が支出されるなどしてなんとか競馬は続けられた。この馬券を発売しない奇妙な競馬は以後14年間、大正12年まで続くこととなる。
コイワヰが活躍したのはそんな馬券禁止時代、明治の終わりから大正のはじめまでである。当時は当然日本ダービーというものはなく、大レースといえば各地の競馬場で行われた帝室御賞典(現天皇賞の前身)ぐらいのものであった。コイワヰはこの帝室御賞典を東京と横浜で2勝している。他にも明治44年に目黒競馬場に距離2マイルの各クラブ連合競走などが作られたりしているが、コイワヰはそれには出走していない。しかしこの勝ち馬であるラングトンという馬はコイワヰには全く歯が立たなかったそうだ。持ち込み馬のハシリ
コイワヰについては正直あまり多くのことは分かっていない。父はチャッツウォース、母はエナモールド。母が腹の中にチャッツウォースの仔を宿したまま輸入され、日本で生まれたのがコイワヰであり、いわば持ち込み馬のハシリであった。コイワヰの曾祖父に当たるのがその遺伝力で世界のサラブレッドを変えてしまったと言われる無敗の名馬サンシモン(セントサイモン)で、その血を強く受け継いだらしいコイワヰはその馬体写真が背ったれな所などサンシモンのものにとてもよく似ている。その能力と共に遺伝力も受け継いだらしく産駒にもカノウ・ハクシヨウなど何頭か活躍馬を出している。しかしなにぶんにもかなり昔の名馬なので、現在血統表でその名を見ることはほとんどない。
コイワヰを生産した岩手の小岩井農場は下総御料牧場と並んで戦前のサラブレッド生産における2代巨頭であった。戦前の名馬を見ていくとこの2大牧場生産の馬がほとんどである。しかし国営の下総御料牧場は戦争終結と共に解体、現在その敷地はは新東京国際空港となっている。そして岩手県の小岩井農場も戦争終結後の昭和24年にサラブレッドの生産をやめている。コイワヰの競走成績
さて、コイワヰの成績だが、4歳から10歳の間に82戦もして45勝している。2日連続でレースに出走しているのもしばしばある。まあ現在とは競馬そのものに対する考え方も馬資源の数も違っていたのでこの数字はさほど驚くことではないのかも知れない。当時のレース体系は、一開催が4日間で編成され、4日目の優勝戦に勝つことが目標とされていたようである。優勝戦に勝ったものがその開催でのチャンピオンと言うことで、ちょうど現在の夏の3歳戦によく似ている。その優勝戦をコイワヰは25勝もしている。成績表をよく見ると1開催4日間全てに出走して4連勝で優勝戦をかっさらっているのもある。
記録が確かではないのではっきりしたことは言えないが、当時は収得賞金によってハンデが決められており、コイワヰのように勝ち続けると当然酷量を背負わされるようになる。その極量が160ポンド(77キロらしい)だったのだが、目黒に残されておる記録だけでも77キロを背負って勝つこと10回にも及んでいるらしい。おそらくほとんどの競走を極量を背負って走っていたのだろう。
ちなみにこの斤量の制度だが、のちにポンド制からキロ制に改められたときに極量77キロに達してしまった馬は満量引退と称して引退しなければならなくなっていたらしい。強い馬がいれば現在では競馬が盛り上がるものだが、馬資源の少なかった当時は競走自体が成立しなくなったのだろう。
戦前の競馬を見てきた岡田光一郎氏によると、日本で競馬が始められて以来、コイワヰの前にもそれなりに名馬と呼ばれる馬は存在したらしいが、コイワヰに匹敵するほどの成績は残していなかったそうだ。このコイワヰこそが日本競馬史初めの名馬にふさわしい馬のようである。
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