| 楯を制した公営三冠馬 |
| ヒカルタカイ |
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天皇賞・春 宝塚記念 青雲賞 全日本3歳優駿 黒潮盃 羽田盃 東京ダービー 東京王冠賞 地方・20戦12勝 中央・11戦3勝 競走成績 |
史上空前の大差・天皇賞・春
大差勝ちというのは気持ちがいい。馬群をみるみる突き放し、ただ一頭でゴールイン。そしてカメラは後方に視線を移し、2着争いへ。ホクトベガのエンプレス杯やサイレンススズカの金鯱賞にしびれた人は多いだろう。サイレンススズカが1秒8もの差をつけて金鯱賞を圧勝したとき、久々に日の目を見た記録がある。JRA重賞で史上最大の2秒8・17馬身もの大差を付けて天皇賞・春を制したヒカルタカイの記録である。
以下にヒカルタカイの天皇賞の実況の一部を記す。(参照:天皇賞史1)
「ヒカルタカイが1着だが、2着にはタイヨウが伸びる、タイヨウが伸びる、ヤマニリュウが粘る、タイヨウが2着に上がる、タイヨウが上がるか、タイヨウが上がるか、1着ヒカルタカイ、2着にタイヨウが入りました。」
直線に入った時馬群の先頭集団にいたヒカルタカイは抜け出すとみるみる差を広げていき、羽根が生えているかのような他馬とはまるで違う走りで完全に独走に入った。カメラはヒカルタカイを追うのをやめ、2着争いのタイヨウとヤマニリュウに視線を移したため、ヒカルタカイがゴールインする姿はカメラに写っていない。上の実況はヒカルタカイの1着が確定してからの実況である。2秒8という時間があればこれだけしゃべれるのである。
鞍上の野平祐二騎手はこの大楽勝の後、「楽勝だね」という問いかけに対し、「ゴールに入るまで夢中で何も分からなかった」と答え、すぐに「冗談ですがね」と付け加えたという。地方最初の三冠馬
ヒカルタカイは大井競馬場出身の馬である。母親ホマレタカイは初代年度代表馬ハクリヨウの産駒で大井の抽せん馬として走り、7戦未勝利で終わっている。一方父親のリンボーは地方競馬に多数の活躍馬を送り出していた種牡馬である。その2頭の間に生まれたヒカルタカイは母と同じ大井の抽せん馬として120万円で買い上げられた。
3歳7月の早い時期にデビューしたヒカルタカイはデビュー戦を8馬身差で圧勝、2戦目・3戦目も勝って3連勝を飾ると、その勢いで3歳重賞・青雲賞と全日本3歳優駿を制覇して3歳チャンピオンの座に着いた。そして4歳の初めに早くも古馬と対決し、勝利を収めファンを驚かせると、公営三冠第一弾の羽田盃も楽々と逃げ切ってしまった。このころから「地方にヒカルタカイあり」とその名声は全国に知れ渡るようになった。ヒカルタカイはその期待に応えるかのように東京ダービー・東京王冠賞も勝ってあっさり公営三冠馬を達成してしまった。
地方競馬で三冠レースの体系が整ったのが昭和39年であり、ヒカルタカイはその三冠レースを全て勝った最初の馬になった。そしてかねてより目標にしてきた「中央での天皇賞制覇」を目指して5歳で中央に転厩した。地方での成績は20戦12勝・2着5回3着3回で実に安定した成績であった。天皇賞・宝塚記念を大楽勝
中央に転厩したヒカルタカイは3月2日の中山オープンで中央場所に初登場した。ヒカルタカイは圧倒的一番人気に押されたものの、希代の癖馬カブトシローに大差で破れ、手痛い洗礼を浴びる形になった。そして2戦目・3戦目も2着と破れ、中央未勝利のまま天皇賞に向かうこととなった。しかし3戦目のオープンから騎乗していた野平祐二騎手はヒカルタカイのミシン針のような整然としたフットワークに惚れ込み、天皇賞はこの馬が勝つだろうと確信を持っていた。
未勝利ながら天皇賞では圧倒的一番人気に押されたヒカルタカイは、重馬場の京都競馬場を整然としたフットワークで駆け、前述のように2秒8の大差を付けて大圧勝した。あまりの大楽勝に戸惑ったのか、天皇賞勝利後「重馬場に恵まれた」とか「相手馬の不調によるところが大きい」とかヒカルタカイの勝利をフロック視する見方もあった。しかしヒカルタカイはそのようなうるさ方を黙らせるように、続く宝塚記念でも2分14秒7の日本レコードで圧勝した。この勝利によってヒカルタカイの実力に疑問符を持つものは誰もいなくなり、みな公営の三冠馬の実力に声を失った。「ヒカルタカイは『強い』の一言に尽きる、と野平祐二は語った。
結局中央ではこの2勝を含めた11戦3勝で終えたヒカルタカイは種牡馬入りしたが、2流血統がたたったのかさほど良い子供は残せなかった。
さて、ヒカルタカイがターフを去ってから20数年後、また一頭の馬が大井からやってきた。その馬イナリワンはヒカルタカイとそっくり同じように「天皇賞を取るため」に中央入りし、未勝利のまま天皇賞に出走・圧勝を飾った。そして続く宝塚記念も制覇し、ヒカルタカイと同じ中央11戦3勝でターフを去った。この2頭、なんの関係もあるわけではないが、こういう偶然の一致を探して過去の馬と今の馬を結びつけるのも競馬の楽しみ方のひとつである。
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