「フェンスの向こうに」の後書き……かもしれないもの

 『フェンスの向こうに』に最後までお付き合いくださいました皆様、本当にありがとうございます。
 そして、恒例のくだらぬ駄文にまで目を向けてくださいました方々、重ね重ねありがとうございます。
 


 『フェンスの向こうに』……ようやく完結の文字を打ち込むことができました。まったく、長い道のりでございました(笑)

 HPなどを開いて作品を公開させていただいてますと、時々皆様方の後押しやご声援がなければ、きっと最後まで書き上げることができなかっただろうなぁ、と思うような場合がしばしばあります。
 今回の作品も、まさしくその状態だったかもしれません。と言うより、そもそも手をつけることなく終わったものだったかもしれません。
 以前より自覚はしていたのですが、私は思ったよりも続編というものを書くのが苦手なようで、構想は頭の中に抱いていても、それを具体化させて形にすることはあまりなかったのであります。何故か? うーん、多分飽きっぽい性格なのでしょうね(笑)こと小説に関しては。
 ひとつの作品を書き終えたすぐあとは、それから派生する様々な事件や出来事を思いついて、是非とも続編を書こう!……と考えたりもするのですが、そこで一本別の作品などを挟んでしまうと、もう前のものはどーでもよくなってしまうことがしょっちゅうでして、結局そのまま構想はお蔵入り……なんてことがしばしばでした。
 今回の作品も、大方の話の流れは考えてはいたものの、いざ実際に……となると、最初の情熱もいささか薄れ、面倒だなぁと二の足を踏んでいたのであります。
 そんな私の重い腰を上げさせてくださったのが、皆様方の熱い叱咤激励の数々でした。
 いつも続編、続編と私のお尻を叩いてくださった方々、わざわざ感想メールでご要望くださった方々、そして十万ヒット記念でリクエストしてくださった方、そんな皆様の声がなければ、この作品は多分生まれなかった……。本当に本当にありがとうございます。
 さて、この作品、一番苦労したのは、篤志のバイクのレースに関する資料集めでした。私はバイクレースをテレビで観戦するのは大好きですが、実際にサーキットに足を運んだこともないし、ましてやバイクも、レースのことも、まるっきりのド素人。何一つ確かなことは知りません。しかし曲がりなりにも小説という形で多くの人々の目に触れさせようと目論んでいる以上、まるっきりの嘘を書くわけにはいかない。
 そんなわけで、まずは資料探しからスタート。しかし、これが思った以上に大変で、なかなかこれだと思うものが見つからず、結局自分一人の力では手におえず、何人かの方々のご協力を仰ぐ形となりました。
 プロでもなく、たかだか素人の趣味の小説の為に、いろいろと骨をおって下さった皆様、本当にありがとうございました。特に、ある日突然見知らぬ人間からのメールで情報を提供する羽目になってしまわれたKご夫妻には、感謝のしようもありません。この場を借りて、深くお礼申し上げます。
 さてさて、次に苦労した点……。それは実は、この作品が皆様に望まれて書き出したものである……ということでした。
 前作『声を聞かせて』が思いもよらず皆様に好意的に受けいれられ、それはもう非常に嬉しかったのでありますが、逆にそこから続くものであるということが、次を書く上でプレッシャーでした。続編を書くからには、前よりも一段と面白いものでなければ書いた意味がない。読者の方々も当然それを期待する。そんな中で、いつも自問自答しながら書いていたような気がします。
 「この話は果たして本当に面白いのか」……それは私の中で、最大の壁でありました。これだけは、書いている自分にはどうあがいても本当の答を見つけることはできない、どうしても見えない壁の向こうでありました。実際、ここまで不安を抱えながら書いた話は、これと「痕」ぐらいだったような気がします(笑)
 しかしそれでもなんとか仕上げられたのは、やはり皆様の応援のおかげでした。期待されるからこそ苦しみもあり、また逆に活力も湧き出してくるものだと、素人モノ書きながらしみじみ実感した次第です。
 内容のほうですが、前回の『声を聞かせて』が知らないことから生まれる不安と苦しみをテーマにしていたとすれば、今回のお話は、知ることから生まれる不安と苦しみが中心となっております。どちらがより苦しいか……なんてことは虚しい比較でありましょう。恋愛とはいつも様々な不安や苦痛を内包しているものなのですから。
 そしてもうひとつの軸は、三角関係でした。実はこの話の中には二つの三角が絡みあっております。ひとつははっきりと形になって現れ、ひとつは形なく密やかに隠されています。読んでいただけたのなら、もうおわかりかもしれませんが(笑)
 そんな中で誰よりも株を上げたのが悟くんでしょう(笑)実際彼は書きやすかった。あまりに書き易いので、思った以上に存在が大きくなってしまって、ちょっと失敗したかなぁと反省しております。
 ストーリーに関しては、今更私がアレコレ言い訳つけても始まりません。今となっては、少しでも皆様方を楽しませ、心を震わせることができたら……と祈る以外にはありません。どうかそうありますように……。

 なんだかずいぶん後書きが長くなってしまいました。
 優れた作家は多くは語らず。語りすぎる私は未熟者(笑)
 しかしまあ、そんな程度ではありますが、これからも一生懸命頑張って書いていきますので、皆様、今後ともよろしくお付き合いのほどお願いいたします。

                                       辻 桐葉


 
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