「痕(あと)」の後書き……のようなもの


 やれやれ、やっと終わりましたです。
 長かった。ホントに長い道のりでした、完結まで。
 で、出来あがったところでいろいろと思うところを少しだけ……

 当初、夏に向けていっちょホラーでも書いてみようか……などという
お気楽なく気持ちで書き始めたのが、この話でした。
 ところがあにはからんや、いざ始めてみるとホラー小説という
とんでもない難しい分野に踏み込んでしまった事に気づき、愕然……。
 恐怖を文章によってえがくというのが、こんなにも大変なことだったなんて。
 認識不足を悟った時には、すでに連載は始まっており、読者もいて
一度出してしまったからには途中で放り出す訳にはいかない……。
 あとはもう七転八倒、必死の思いで書いておりました。いや、ホントに(笑)
 HPという広い媒体に載せていたのでなければ、もしかしたらこの話は完結しなかったかもしれません。
 きっと中途半端のまま放り投げていたに違いない。
 だから、この話が無事完結できたのは、すべて皆様のおかげです。
 読んでくださっている方がいる、暖かい感想を送ってくれる、続きを望む声がある、
そんなものがあるからこそ頑張ってこれた。
 読者の後押しがあったからこそ、書き終えることが出来たのだと思います。
 皆様、本当にありがとう。

 さて、書き終えた今思うこと。
 ふふふ、きっとこのラストには賛否両論あるだろうなあと思います。
 「何故?」「どうして?」「それはないだろう!」と思う方達がいっぱいいるんじゃなかろうか。
 でもね、ほら、ホラーだからさ。怖いものを書きたくて書いたんだから、
最後がラブラブじゃなくったって、しかたがないじゃないですか(笑)
 当初からこのラスト部分だけはしっかり決めておりましたし、変える気もありませんでしたが
ただひとつ自分でもちょっとだけ意外だったのは、思いもがけず登場人物達が愛を語りはじめたこと。
 本当はこんなにラブラブな二人にする気はなかったのだ。ドライでクールな関係が、
ちょっとだけ色付いた……ぐらいな気持ちでおりましたのですよ。
 なもんで、最後にあっさり引き離すのは多少可哀相な気はしましたです。
 でも、ほら、ホラーだからさ。あきらめておくれよね、俊、朔哉(笑)

 さて、この話を考えた時、頭の中には昔見たひとつの映画がありました。
 結構古い作品なので、知らない方も多いと思いますが、「エンティティ(霊体)」という映画です。
 実話を元にして作られたというその映画、ある女性が突然霊体にレイプされることから始まります。
 それはいきなりです。どうして、とか、何故とか、そんなものは一切なし。
 何故襲ってくるのか、どうして彼女が狙われたのか、襲ってくる霊は何物なのかも
まるでわからぬまま、その恐怖は彼女の上に理不尽にのしかかってきます。
 結局最後まで謎は謎のまま、ただ科学者(霊能力者ではなく、科学者ですよ!)の手によって
一応彼女は救われます。 
 この正体の知れぬものの恐怖、理由のわからぬ恐怖というものを書いてみたくって、
「痕」という話を考えました。
 何もわからないということぐらい怖いものはないのではないかと、私は思います。
 だから、お岩さんもお菊さんも、本当はあまり怖くないのです。
 そこには愛する者を裏切る人間という恐怖があり、死者の怨念という恐怖はありますが、
霊として怖い訳ではない。だって彼女らの化けて出る理由も対象も、ちゃんと決まっているのですから。
 その点、なにもわからないということで「ポルターガイスト」は怖かった。
 あれもまた、突然理不尽にやってきた恐怖です。それに翻弄され、振りまわされる普通の人達の恐怖があります。
 だから、2、3と話が進み、少女が神格化され、霊が襲う理由や因縁がはっきりと語られるにつれ
その恐怖は色を失っていきます。わからないから怖いのに、わかってしまったら、それはもう別の恐怖なんです。
 まあそんなわけで、私の中の「怖い」を書いてみたくて、始めた小説でした。
 しかし、本当に苦労しました。自分の実力のなさを痛感させられました。
 恐怖って、五感で感じるものなんですよね。目で見て、耳で聞いて、体で味わって、怖いものなんです。
それを文章で感じさせるのは、私にとっては至難の技。今でも出来についてはかなり不安があります。
 本当にこの話を読んで、怖いと感じる方が少しでもいらっしゃってくれるのだろうか?
などという恐怖に震えております(笑)
 しかしまあ、勉強にはなりました。書いてる間は苦しかったものの、終わってみると楽しかった。
 それが創作のいいところです(^_^)

 それと、この話を書く上での苦労には、もうひとつありました。
 それは、いろいろと雑事が重なって、スムースに執筆を進められなかったことでした。
 途中いろいろとインターバルが長すぎて、創作のテンションを維持できなかったことが
苦労した原因です。
 こういう話は、PCの前に座って、ハイ……という具合には書けません。
 自分の中で気持ちを高めて、この世界に中に感情移入して、それからでないと、なかなか書くことが
出来ないのです。
 ですから、尚更途中で執筆を中断させられたのは辛かった。
 辛いから、別の方向に逃げる。そしていっそう意欲が萎える。そんな悪循環でしたね(^_^;)
 それでもまあ、なんとか書き終えましたから良しとしましょう。
 でも少し日がたって読み返したら、いろいろと不満な部分がいっぱい出てくるような気がします。
 その時には、手直ししたいもんです。もっと良い子供にする為に。

 長々とくだらぬことを書きましたが、
 最後までこの話を読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
 途中長い休憩に忍耐強く付き合ってくださって、とても感謝しております。
 これからも頑張って創作を続けていきますので、応援よろしくお願いしますね。
 それでは、長く実のない後書き、これにて……(^.^)

                                              辻 桐葉


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